語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】停止しても25兆円儲ける原子力ムラ ~除染・廃炉ビジネス~

2012年07月24日 | 震災・原発事故
 (1)福島で、廃炉と除染が本格化している。今後40年は継続される作業で、全国の商業炉で繰り返される。そのうえ、使用済み核燃料の処理、中間貯蔵施設、最終処分場の建設まで含めると、今後数十兆円の予算が必要になる。
 ここに登場するのが「原子力ムラ」だ。原発が次々に停止し、新規設置が見込めないため打撃を受けたはずだが、転んでもタダでは起きない。除染・廃炉という新規特需を手にして復活しつつある。

 (2)インフラの再構築、ガレキ処理などがいずれも未曾有の規模で行われる。それを処理する行政は、業務を山のように抱え、入札作業に回す人手が足りない。結局、価格固定でゼネコンへの丸投げが基本となった。
 そのひな型は、宮城県のガレキ処理で作られた。県は、総事業費2,400億円の入札を、昨年9月、提案型のプロポーザル方式【注1】で行い、東北に強い鹿島を中心とするJVが受注した。 
 以降、大成建設、大林組と大手ゼネコンが地元業者の意向を取り入れて受注していった。各社は、「業務屋」を復活させて業者間調整に当たらせている。
 かくして、ガレキ処理は、役所が認める官製談合で行われることとなった。
 一方で、除染を仕切ったのは「原子力ムラ」だ。

 (3)昨年9月、内閣府は、「避難区域等における除染実証業務」を日本原子力研究開発機構に119億円で丸投げした【注2】。同機構は、「原子力ムラ」の中核だ。
 機構も、ゼネコンを中核とするJVに丸投げ。「除染実証業務」の3地区を受注したのは、原子炉建屋などの実績順に、鹿島(24基)、大林(11基)、大成(10基)の3社JVだ。
 こうしたモデル事業での実績をもとにゼネコンは、環境省発注の警戒区域内などの除染、指定された104ヵ所の自治体発注の除染をほぼ独占的に受注し、談合で割り振ることが多い。

 (4)復興庁と国土交通省は、被災地の復興工事で、新たな発注方式、コンストラクション・マネジメント(CM)方式【注3】の導入を決め、7月から宮城県で始めることとした。
 かくして、東北では、莫大な除染・復興予算をゼネコン、サブコン、土建業者などが分け合う体制が確立した。

 (5)暴力団系手配業者が原発に作業員を送り込んでいるのは周知の事実だが【注4】、被災して事業を投げ出した土建業者の組合員資格を買い取った暴力団系業者が、談合でやすやすと工事を受注。彼らは、満員盛況の「除染講習会」に潜り込み、資格をとって除染作業に入りこんでいる。

 (6)除染ブームの恩恵に与ろうとするのは証券界も同じ。先陣を切るのは、リスクを怖れない勢力で、仕手筋が関与する。
 放射性セシウムを吸収するソルガムを汚染農地に植えて除染する一般財団法人「東北農業支援ネットワーク」の理事、顧問を輩出するのが、半導体テスト開発受託が本業のシスウェーブホールディングス(ジャスダック上場)だ。一時、シスウェーブ株の買い占めが進み、株価は4倍にも跳ね上がった。その背後に、除染への期待を煽って株価を操作する勢力がいる、と捜査当局は見て警戒を強めている。

 (7)除染と復興には、膨大な予算が投じられる。2011年度の補正、2012年度予算、今後積み上げられる予算を加えれば総額25兆円と予測されている。
 さらに、40年はかかるとされる福島原発の廃炉費用に、反復される除染作業を積算すれば50兆円を超える、とされる。
 福島第一と第二以外の商業炉も、やがて廃炉となる。その費用は果てしない。
 かくして、「原子力ムラ」は、半永久的に儲け続けることができる。 

 【注1】価格は事業費の8割で固定、技術評価も内容より地元業者をどれだけ優先したかによって決める。事実上、談合を役所が認めた。
 【注2】「【震災】原発>原子力ムラは死なず ~除染で荒稼ぎ~
 【注3】従来、自治体が公共工事を調査・設計、工事施工などに分けて発注していたものを建設管理業者=コンストラクション・マネージャー(CMR)に丸投げし、そこが各業者に発注する。想定されているCMRはゼネコン。要は、ゼネコンへの丸投げであり、現在の「官製談合」の違法性を合法化するシステムだ。
 【注4】「【震災】原発>福島第二原発の汚染 ~ヤクザと原発~

 以上、伊藤博敏「原発停止でも25兆円!「除染・廃炉」利権で儲け続ける原子力ムラのカラクリを知れ」(「SAPIO」2012年8月1・8日号)に拠る。
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