語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】規制委員会委員長候補は「原子力ムラ」の中心人物

2012年07月30日 | 震災・原発事故
 原発の安全と規制を一元的に担うのが原子力規制委員会だ。経産省原子力安全・保安院が原発の推進と規制の両面を担うことの矛盾と弊害から脱するために新設される。国からの独立性を保つため、環境省の外局に置かれる「三条委員会」だ。その人事は、国会の同意事項となる。
 その実務を担う原子力規制庁の職員は、経産省などからの出向だが、5年が経過すれば出身官庁に戻さない「ノーリターン・ルール」が適用される【注】。「内実は経産省と一緒」という批判をかわすためだ。しかし、先行きの不透明さが危ぶまれている。
 部屋が変わったからといって、それまで原発を推進してきた人たちが考え方を変えて働くとは考えにくい。その意味で規制委はマイナスから出発するようなもの。【伴英幸・原子力資料情報室】
 規制委の職権は、原発事故が起こった際の緊急対応のみならず、原発再稼働の是非、40年廃炉基準の見直し、放射線モニタリングなどの専門的な領域にまで及ぶ。 
 
 ところで、政府の人事案は、
  ●委員長(任期5年)・・・・放射線物理を専門とする田中俊一・高度情報科学技術研究機構顧問
  ●委員(任期2~3年)・・・・中村佳代子・日本アイソトープ協会プロジェクトチーム主査、更田豊志・日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門副部門長、大島賢三・元国連大使、島崎邦彦・地震予知連絡会会長。

 とりわけ問題とされているのは、田中俊一・委員長候補。彼は、東北大学工学部原子核工学科卒業後、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)に入所。2004年、同機構副理事長。その後、内閣府原子力委員長代理(2007~2009年)を歴任。要するに、「原子力ムラ」の主流を歩いてきた。
 福島原発事故後、飯舘村に泊まりこみ、除染に取り組んだが、この活動に否定的な見方もある。
 田中は、故郷で暮らすのが一番良いという“美談”の下で除染に取り組んでいる。低線量被曝に対する認識が甘い。原子力賠償紛争審議会では、自主避難者への賠償に最後まで抵抗した。【坂上武・「福島老朽原発を考える会」】

 福島事故に何を感じ、それを国会の場で、委員選任の前に候補者本人たちに聞いてみたい。国会はそのためにあり、国会事故調報告書の精神はそこにある。【吉井英勝・衆議院議員(共産党)】

 7月21日、NGO「FoE Japan」、eシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)、エネシフ・ジャパンなどは、人事案に抗議の声明文を出した。
 7月24日、金子勝・慶應義塾大学教授やマエキタミヤコ・サステナ代表らが人事案に意義を唱える緊急記者会見を開き、人選の再考を求めた。

 【注】ただし、「原子力ムラ」は抜け道を用意している。【「【原発】秘かに進行する全原発再稼働計画」】

 以上、野中大樹(編集部)「「原子力村」の中心人物・田中俊一氏が規制委員長候補に 政府案に再考を求める声広がる」(「週刊金曜日」2012年7月27日号)に拠る。     ↓クリック、プリーズ。↓
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