(1)大久保哲朗・弁護士は、11月末に「働き方ネット大阪」が大阪市内で開いた集会で、同市の生活保護受給者が増えた背景として、失業率の高さ、非正規率の高さなどを挙げた。つまり、生活保護率の高まりの背景に、雇用政策の無策がある。
(2)(1)の集会の前日、維新の会が公約で「最低賃金の廃止」を打ち出した。賃金を下げれば人を雇えるという企業が多い、故に最低賃金を廃止すれば雇用が増える・・・・という論法だ。
しかし、最低賃金を廃止すれば、賃金下落に歯止めがきかなくなる。働いても食べられなくなった人々が大阪市(ほかの大都市)に大量流入し、最後のセイフティー・ネット=生活保護が壊れてしまう。
反発の大きさにびっくりしたのか、維新の会は公約を「廃止」から「改革」に修正した。
まともな雇用の創出を放棄し、働き手んい負担を押しつけ、失業率を形だけでも下げようとした姿勢が、はしなくも露呈した。
(3)「雇用を劣化させることで雇用数を増やし、失業率を名目上は抑え込む」・・・・という政策は、ちっとも目新しくない。
1999年、労働者派遣法が規制緩和され、26業種でしか認められていなかった派遣労働が、原則すべての業務で認められるようになった。この緩和も、「不況で失業率が上昇しているので、雇いやすくすれば失業率が下がる」という経済界の大義名分の下で行われた。
(4)(3)のツケは大きかった。
2002年からリーマン・ショック(2008年秋)まで、日本の景気は長期回復を続け(「イザナギ越え」)、過去最高の利益を記録する企業もあいついだ。
だが、こうした規制緩和によって、非正規の働き手は働き手の3人に1人に急増した。彼らは労働組合に組織されず、短期契約で次の契約更新を断られることを恐れて賃金交渉もできなかった。
この間、大手企業の経常利益に対する人件費比率は下がり続けた。非正規を増やすだけで労使交渉なしに人件費を抑え込める。利益が働き手に分配される仕組みは壊れた。1997年以降、主要先進国では唯一、賃金が低下傾向を続けている国となった。
その結果、消費は盛り上がらず、力強い景気回復は蜃気楼となった。
(5)最低賃金廃止がもたらす歪みは、(4)だけではない。
働き手が生活できる賃金の下値がなくなれば、まともな賃金を払う産業づくりをめざすインセンティブが企業から失われる。「企業が困ったら賃金を下げればよい」という底辺への競争が激化する。
雇用とは、働き手が身を立てられる対価があることが前提だ。だからこそ、雇用の増加によって生活保護などの社会保障負担が軽くなる。
そのような条件を欠いた雇用は、もはや「雇用」とは呼べない。
(6)最低賃金の廃止にせよ、解雇規制の緩和(同じく維新の公約)にせよ、共通するのは、「人々が生活できる社会」への政治の意志の放棄だ。
産業構造の転換への対応策を欠いた橋下“維新かぶれ”徹の治政の下、食べられない雇用を生活保護でかろうじて支える人々が急増する大阪市は、日本社会の近未来像になりなねない。維新の公約は、そんな世界の象徴だ。
以上、竹信三恵子(和光大学教授)「維新の雇用政策は政治の意志の放棄だ もはやこれを「雇用」とは呼べない ~竹信三恵子の経済私考~」(「週刊金曜日」2012年12月7日号)に拠る。
【参考】
「【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾」
「【選挙】安倍自民党総裁が財界に支持される理由 ~官僚的体質~」
「【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~」
「【選挙】安部自民「タカ派路線」のジレンマ」
「【選挙】世界はネットで政治参加している ~米国と韓国~」
「【選挙】国家と資本への隷属からの脱却 ~自分の情動をとり戻す~」
「【選挙】小泉「改革」の悪夢は甦るのか ~「失われた20年」の元凶~」
「【選挙】【原発】安部自民と石原維新がもたらす経済損失 ~変化しつつある経済システム~」
「【選挙】【原発】3・11以降の実践に希望 ~民主主義を問い直す~」
「【選挙】【原発】維持にうごめく種岡成一・電力総連会長」
「【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~」
「【選挙】右派勢力にとって千載一遇の好機 ~戦後民主主義のレジーム解体~」
↓クリック、プリーズ。↓

(2)(1)の集会の前日、維新の会が公約で「最低賃金の廃止」を打ち出した。賃金を下げれば人を雇えるという企業が多い、故に最低賃金を廃止すれば雇用が増える・・・・という論法だ。
しかし、最低賃金を廃止すれば、賃金下落に歯止めがきかなくなる。働いても食べられなくなった人々が大阪市(ほかの大都市)に大量流入し、最後のセイフティー・ネット=生活保護が壊れてしまう。
反発の大きさにびっくりしたのか、維新の会は公約を「廃止」から「改革」に修正した。
まともな雇用の創出を放棄し、働き手んい負担を押しつけ、失業率を形だけでも下げようとした姿勢が、はしなくも露呈した。
(3)「雇用を劣化させることで雇用数を増やし、失業率を名目上は抑え込む」・・・・という政策は、ちっとも目新しくない。
1999年、労働者派遣法が規制緩和され、26業種でしか認められていなかった派遣労働が、原則すべての業務で認められるようになった。この緩和も、「不況で失業率が上昇しているので、雇いやすくすれば失業率が下がる」という経済界の大義名分の下で行われた。
(4)(3)のツケは大きかった。
2002年からリーマン・ショック(2008年秋)まで、日本の景気は長期回復を続け(「イザナギ越え」)、過去最高の利益を記録する企業もあいついだ。
だが、こうした規制緩和によって、非正規の働き手は働き手の3人に1人に急増した。彼らは労働組合に組織されず、短期契約で次の契約更新を断られることを恐れて賃金交渉もできなかった。
この間、大手企業の経常利益に対する人件費比率は下がり続けた。非正規を増やすだけで労使交渉なしに人件費を抑え込める。利益が働き手に分配される仕組みは壊れた。1997年以降、主要先進国では唯一、賃金が低下傾向を続けている国となった。
その結果、消費は盛り上がらず、力強い景気回復は蜃気楼となった。
(5)最低賃金廃止がもたらす歪みは、(4)だけではない。
働き手が生活できる賃金の下値がなくなれば、まともな賃金を払う産業づくりをめざすインセンティブが企業から失われる。「企業が困ったら賃金を下げればよい」という底辺への競争が激化する。
雇用とは、働き手が身を立てられる対価があることが前提だ。だからこそ、雇用の増加によって生活保護などの社会保障負担が軽くなる。
そのような条件を欠いた雇用は、もはや「雇用」とは呼べない。
(6)最低賃金の廃止にせよ、解雇規制の緩和(同じく維新の公約)にせよ、共通するのは、「人々が生活できる社会」への政治の意志の放棄だ。
産業構造の転換への対応策を欠いた橋下“維新かぶれ”徹の治政の下、食べられない雇用を生活保護でかろうじて支える人々が急増する大阪市は、日本社会の近未来像になりなねない。維新の公約は、そんな世界の象徴だ。
以上、竹信三恵子(和光大学教授)「維新の雇用政策は政治の意志の放棄だ もはやこれを「雇用」とは呼べない ~竹信三恵子の経済私考~」(「週刊金曜日」2012年12月7日号)に拠る。
【参考】
「【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾」
「【選挙】安倍自民党総裁が財界に支持される理由 ~官僚的体質~」
「【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~」
「【選挙】安部自民「タカ派路線」のジレンマ」
「【選挙】世界はネットで政治参加している ~米国と韓国~」
「【選挙】国家と資本への隷属からの脱却 ~自分の情動をとり戻す~」
「【選挙】小泉「改革」の悪夢は甦るのか ~「失われた20年」の元凶~」
「【選挙】【原発】安部自民と石原維新がもたらす経済損失 ~変化しつつある経済システム~」
「【選挙】【原発】3・11以降の実践に希望 ~民主主義を問い直す~」
「【選挙】【原発】維持にうごめく種岡成一・電力総連会長」
「【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~」
「【選挙】右派勢力にとって千載一遇の好機 ~戦後民主主義のレジーム解体~」
↓クリック、プリーズ。↓


