語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】聖夜

2012年12月24日 | 詩歌
 クリスマス・イブには
 いつも セルマ・ラーゲルレーヴの薄い書物
 「キリスト伝説集」を読み返えす

 小学生の息子は毎晩三時間はテレビを離れない
 たしか おととしごろから
 サンタ・クラウスも信じなくなった

 私は四十才をすぎてもなお
 スエーデン人の語る聖なる幼な子を愛している
 しかし息子にセルマのような優しい祖母はいない

 神さまというかたがおいでだとすれば
 家族そろって食卓を囲んだときに
 かならず欠けている あの寂しい誰かのことだ

 クリスマスの夜も妻は寝しなに
 粉ぐすりの袋をかさかさ振る
 どんな病気だか生涯知らせることもできまい。

□安西均「聖夜」
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