語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】ブラック企業の実態

2012年12月29日 | 社会
 (1)ブラック企業とは、「違法な労働条件で若者を働かせる企業」だ。若者労働問題を語るに当たり使用されてきた「フリーター」「ニート」と異なり、「ブラック企業」は明確に企業側の問題を表す。
 問題は、①個人的被害と、②社会問題の両面がある。

(2)ブラック企業前史
 2000年代後半、非正規雇用者が若者の未来を閉ざす事実が世間に知られるようになった。製造業派遣・「請負」労働者はフルタイムで働き、みな親世帯からの「自立」を志向しているのだが、工場の増産・原産に対応して全国各地に配置転換され、派遣・請負会社の寮を点々とする。次の仕事がなくなると寮から追い出され、あっというまにホームレスに転落する。2008年12月、「年越し派遣村」問題が惹起し、非正規雇用問題がクローズアップされるとともに、若者の雇用問題の認識が大きく変わった。
 「若年雇用者問題=非正規雇用の不安定」という構図の理解は、新しい問題を引き起こすことになった。若者を正社員をめざす苛烈な競争に駆りたてたのだ。

(3)ブラック企業
 ブラック企業は、若者雇用問題の流れの中にあって新しい問題を提起している。ブラック企業問題の被害の対象は常に正社員だからだ。
 今や、正社員となっても安泰ではない。
 リーマン・ショック(2008年9月)以降、2009年2月、3月頃から、明らかに若年正社員の扱いに変化が生じた。それは、「使い捨て」と呼ぶにふさわしい扱いを若年正社員は受けるようになった。すでに変化していた正社員雇用の性質が、それまでの好景気の中では見えず、リーマン・ショックを景気としてあらわになった。
 企業への異常なまでの従属、人格破壊・・・・これまでとは明らかに質が異なる問題だ。
  
(4)徹底的な従属とハラスメント ~Y社~
 社員1,000人弱、資本金1億円、売上げ90億円。都内一流のITコンサルティング会社で、成長企業として知られる。ただし、コンサルティング業務は事業全体の1割程度、顧客に従業員を派遣してIT関連の下請け業務を行う派遣業が事業の大部分を占める。
 Y社は、派遣先が見つからない状態を「アベイラブル(未稼働)」と呼び、「アベイラブル」状態の社員を「コスト(赤字)」と認識する。極端にネガティブな再解釈を行われた「アベイラブル」の社員に対して、徹底的な組織性と執拗さで、「教育」「カウンセリング」という名のハラスメントを行う。「人間として根本的におかしい」etc.。「自分が悪い」と思う状況を作り出すのだ。その結果が「自己都合退職」だ。
 「自分が悪い」と思うに至る別の重要な要因は、異常な職場統治だ。社内ではハラスメントや退職強要が横行していて、多くの社員は同僚が徹底的に追い詰められ、辞めていくさまを日常的に目撃している。次は自分かもしれない、という恐怖に支配されている。
 Y社がハラスメントするのは、派遣要員社員の「アベイラブル」だけではない。派遣のない社長アシスタントも、就業時間外でも呼ばれて社長や副社長の雑用(社長の出迎え、カバン持ち、ペットの散歩)をこなし、副社長の移動管理をこなし、残業時間1日平均5時間働いても、「仕事が遅い」「気がつかえない」「おもしろくない」と評価され、叱責され、なぜ「おもしろくない」のかと問い詰めて「自己都合退職」に追いやる。

 (続く、年末のスキマ時間に)

□今野晴貴『ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~』(文春新書、2012)の「はじめに」および第1章「ブラック企業の実態」
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【原発】推進派が牛耳る原子力規制庁 ~安井正也緊急事態対策監~

2012年12月29日 | 震災・原発事故
 (1)「原子力規制委員会」の売り物は、「推進勢力からの独立」だった。
 しかし、売り文句には発足当時から大きな疑問符がついていた。田中俊一・委員長を始め、5人のうち3人が「原子力ムラ」出身者であることが批判を浴びたのだ【注1】。

 (2)委員の出自とともに、いや、それ以上に大きな問題は、事務局組織「原子力規制庁」が原子力ムラの住民に牛耳られていることだ。これまでに強引に原子力推進行政を進めてきた経済産業省や文部科学省の役人がずらりと顔を揃えているのだ【注2】。
 その代表格が、事務方ナンバー3の安井正也・緊急事態対策監だ。
 安井は、京都大学工学部原子核工学科卒。経産省で原子力を推進した。2004年に発覚した原発の使用済み核燃料の直接処分に係る試算結果隠しに深く関わった。
 「再処理をせずに直接処分した時のコスト試算はないか」
という国会質問(福島みずほ・参議院議員/社民党代表)に対して、経産省資源エネルギー庁の幹部は試算の存在を否定する答弁を行った。しかし、その後、その存在が発覚した。虚偽答弁だ、と批判を浴びたが、試算の存在を知らないので虚偽答弁には当たらない(単に業務を管理する能力が無いだけ)、という不透明な決着をみた。
 この「虚偽答弁」の案を作成したのが、安井正也・原子力政策課長(当時)だ。安井は、この時、寺坂信昭・電力・ガス事業部長(当時。原発事故当時の原子力安全・保安院長でもある)とともに厳重注意の処分を受けている。
 実は、安井は「直接処分」コスト試算の隠蔽を主導していた。「世の中の目に触れさせないようにしろ」と部下に厳命したメモが存在し、関係者の証言と併せて、この事実が今年1月発覚した。【毎日新聞 2012年1月1日】【注3】
 全量再処理が国策だが、「直接処分」コスト試算が明らかになれば、直接処分が再処理より安価である(再処理19兆円の4分の1~3分の1以下ですむ)ことが判明し、政策変更を求める動きが加速したはずだった。再処理を巡り、2002年以降、東京電力と経産省の首脳らが再処理事業からの撤退を模索していた。安井は、「原子力ムラ」が撤退する動きを封じた形だ【注3】。
 「総合資源エネルギー調査会・電気事業分科会」では、2004年5月に複数の委員から、直接処分のコスト計算を求める意見が出た。原子力政策課は分科会の担当課だったが、委員らに試算の存在を伝えなかった。分科会は、同年6月、19兆円を産業用、家庭用の電気料金に上乗せする新制度の導入案をまとめた。この結果、「国内全量再処理」の国策が堅持された(現行の原子力政策大綱)【注3】。

 (3)規制委員会発足以来、頻繁に記者会見などが行われている。しかし、安井はほとんどマスコミの前に姿を見せない。質問に答えない。
 9月の規制委員会発足時にも、ウィーンに出張し、原子力推進の国債組織、国際原子力機関(IAEA)の総会決議に関する調整や、天野之弥・事務局長の再選に向けた根回しをしていた、とされる。

 (4)規制庁において、安井に次ぐ幹部は3人の審議官だ。
  (a)桜田道夫・・・・東京大学工学部原子力工学科卒。資源エネルギー庁が長いが、規制に熱心だったわけではなく、規制委員会発足に向けた国会議員や記者との応答では、たびたび言葉に詰まり、事務局員が代わりに説明する局面も多い。「その資質を疑問視せざるをえない」【与党議員】
  (b)名雪哲夫・・・・文部科学省出身。旧・科学技術庁原子力局などでの勤務経験があるムラの住民。
  (c)山本哲也・・・・原子力・安全保安院からの横滑り。

 (5)規制庁において、450人の一般職員も、大半が文科省や保安院などでこれまで原子力行政に関わってきた役人の横すべりだ【注2】。
 その中には、電力会社や原発メーカー、電力関連企業など推進企業から旧組織に出稿していた人物が、そのまま「異動」した例も少なくない。
 これが、国会事故調による厳しい指弾を恐れ、報告書が出る直前に急いで自公民が談合修正して作った規制庁の実態だ【注4】。

 【注1】
【原発】規制委員会委員長候補は「原子力ムラ」の中心人物
【原発】原子力規制委員会委員案の違法性 ~欠格人事~
【原発】委員の欠格 ~原子力規制委員会の記者会見~

 【注2】
【原発】秘かに進行する全原発再稼働計画
【原発】天下り容認の規制庁人事 ~民自公修正談合~

 【注3】
核燃サイクル:直接処分コスト隠蔽 エネ庁課長04年指示 (毎日新聞)

 【注4】
【原発】天下り容認の規制庁人事 ~民自公修正談合~

 以上、水木守(環境ジャーナリスト)「安井正也緊急事態対策監 推進派が牛耳る原子力規制庁」(「週刊金曜日」2012年12月7日号)に拠る。

 【参考】
【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾
【選挙】安倍自民党総裁が財界に支持される理由 ~官僚的体質~
【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~
【選挙】安部自民「タカ派路線」のジレンマ
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【選挙】小泉「改革」の悪夢は甦るのか ~「失われた20年」の元凶~
【選挙】【原発】安部自民と石原維新がもたらす経済損失 ~変化しつつある経済システム~
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