語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】今年のイチ押し ~原発事故に関する9点~

2012年12月30日 | 震災・原発事故
(1)朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠 ~検証!福島原発事故の真実~』(学研パブリッシング、2012.3.)
(2)朝日新聞特別報道部『プロメテウスの罠2 ~検証!福島原発事故の真実~』(学研パブリッシング、2012.7.)
  ※朝日新聞連載記事をまとめたもの。最初の記事が2011年10月3日に掲載され、たちまち惹きつけられた。住民の避難に当たり、SPEEDIが活用されなかった具体的な過程を特報するなど、「徹底した現場主義と調査報道」で、2012年度新聞協会賞(編集部門)を授賞した。読みやすさ、次々に明らかにされる事実がもたらす衝撃という点で、群を抜く。

(3)NHK ETV特集取材班『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』(講談社、2012.3.)
  ※昨年5月、NHKは福島で進行する放射能汚染の現状を赤裸々に報道し、視聴者に衝撃を与えた。この番組はシリーズとなって、フクシマの現実を掘り下げていった。その番組制作者らによる手記が本書だ。
  TV番組は、文化庁芸術祭賞大賞(テレビ・ドキュメンタリー部門)、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞、日本ジャーナリスト会議大賞、シカゴ国際映画祭ヒューゴ・テレビ賞「ドキュメンタリー部門」銀賞、ワールドフィルムフェスティバル・ドキュメンタリー部門銀賞などを受章している。
  しかし、NHK上層部は記者たちの活躍に応えていない。むしろ冷遇しているように見える【注1】。 

(4)吉岡斉『脱原子力国家への道』(岩波書店、2012.6.)
  ※本書は、地震多発国になぜ54基もの原発が設置されたのか、脱原発の概念と方向づけが分かりやすく綴られていて、勉強になった。勉強の過程は「語られる言葉の河へ」で何度かとりあげた【注2】。

(5)東京電力福島原子力発電所事故調査委員会『国会事故調 報告書』(徳間書店、2012.9.)
  ※今年、国会事故調(黒川清・委員長)が報告書をまとめる6月が近づいたころ、原子力ムラから見るとかなり厳しい内容になることが分かってきた。わけても、新らたに作られる原子力規制庁は真に独立した規制機関(完全に国際基準に合致)にすべきだと強く提案する見込みであることが伝わってきた。
   ・全職員の出身省庁への「完全ノーリターン」ルールの設定
   ・民間人職員も原子力ムラの企業への再就職禁止
   ・外国人を含めて真に能力があり独立して安全規制を実施できる職員のみ採用
などの抜本的改革を迫られる。そんなことになったら、当時審議していた規制庁案は全く不十分になるのは必至だ。真の安全規制が実施され、日本の原発は一つも動かせなくなる。
  そこで、報告書が出るまでに何としても法案を通してしまいたい、という原子力ムラの意向を受けて、民自の守旧派、さらに公明党まで入って修正が協議された。
  これを支えたのは、むろん経産官僚だ。彼らの狙いは、原子力安全・保安院の大半の職員を平行異動させた形だけの原子力規制庁を作ることだった。その後、短期間で「新たな」安全基準を作り、「新」規制機関による「新」基準に基づいた「完璧」な安全審査というお墨付きを与えて、原発全基再稼働に突き進もう、という企みだ。
  規制庁設置法案の国会通過から10日前後で出る報告書に何の意味があるか。国会議員自ら作った組織=国会事故調の存在意義を否定する国会は、自らの存在意義も否定している【注3】。

(6)伊藤守『ドキュメント テレビは原発事故をどう伝えたのか』(平凡社新書、2012.3.)
  ※「【原発】テレビは何をしなかったか ~原発事故報道~」など【注4】をご覧いただきたいが、3・11から1週間のテレビ原発報道を徹底的に検証し、マスメディアの問題を剔抉している。

(7)金子勝『原発は不良債権である』(岩波ブックレット、2012.5.)
  ※金子勝『「脱原発」成長論 ~新しい産業革命へ~』の議論をもっとやさしく、安価な本で啓蒙したのが本書だ【注5】。

(8)大鹿靖明『メルトダウン ~ドキュメント福島第一原発事故~』(講談社、2012.1.)
(9)東京新聞原発事故取材班『レベル7 ~福島原発事故、隠された真実~』(幻冬舎、2012.3.)
  ※今年、事故の経緯を追うドキュメントが次々に出版された。(8)は、①事故の1週間、②東電救済スキームの成立、③菅政権の崩壊を追う。(9)は、事故の1週間のドキュメントを出発点に、事故が起きた原因の追及、廃炉までの果てしない道程を示す。

 【注1】「【原発】蠢き始めたNHKの原発再稼働派

 【注2】
【原発】『脱原子力国家への道』
【原発】日本政府はなぜ脱原発に舵を切れないか ~日米原子力同盟~
【原発】福島原発事故による被害の概要
【原発】福島原発事故の教訓
【原発】エネルギー一家の家族会議 ~総合資源エネルギー調査会~
【原発】「国家安全保障のための原子力」という公理
【原発】脱原発が可能な理由 ~エネルギー需給の観点~
【原発】脱原発論者の多様性 ~福島原発事故以後~

 【注3】「【原発】原発官僚というレミングの群 ~再稼働の論理の破綻(4)~

 【注4】
【原発】社会的境界を横断するネット型の情報 ~3・11後の構造的変化~
【原発】「情報の価値」は「所有」か「共有」か
【原発】ネット上の課題 ~「集合知」が生成されるために~
【原発】テレビは何をしなかったか ~原発事故報道~
【原発】テレビは市民の生命・健康・財産を守ったか ~原発事故報道~

 【注5】「【原発】電力改革に必要な3つの条件 ~不良債権処理と国民負担~
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