(1)企業が、大きな不祥事を起こすと、外部から元検事や元裁判官の弁護士らを招聘して第三者委員会を設置し、その原因を探る・・・・といったケースが増えた。
それは有効に機能しているか。
そもそも、当該企業の実態をほとんど知らない部外者に「真相」の究明を委ねること自体に無理がある。第三者委員会は、アリバイ作りのために客観性を装っているにすぎない。
(2)最近の東芝の粉飾決算【注】にしても、第三者委員会が発表した報告書には、本質的な原因に迫る踏み込んだ内容(<例>歴代トップの人間関係や監査法人との関係など)が記されていない。
2014年に起こった「朝日新聞」の「吉田調書問題」でも第三者委員会による調査が行われたが、危機を収拾したい朝日新聞社が目論む結論を誘導するための調査だった、という見方も根強い。このため、同社内では今でも第三者委員会が導き出した結論に不信感が残っている。
(3)第三者委員会ばやりの背景には、組織の「自浄能力」の欠如がある。
さらに、その要因を突き詰めていけば、広報機能の劣化がある。広報部に社内調査を行う力がないので、社内の情報収集を的確に行ってそれを外部へ発表できないのだ。
身内の調査では客観性がない、という批判もあり得るが、内実(<例>人間関係や企業風土など)をよく知る「身内」だからこそ「真相」に迫ることが可能なはずだ。
(4)広報機能の劣化は、「広報のプロ」が不在だからだ。不祥事への対応だけでなく、企業が取材される際にも「広報のプロ」が不在だ。
「広報のプロ」とは、次の二つの能力を兼ね備えた人だ。
①社会や業界全体の動向を見渡して情報を把握し、もって自社の経営や商品・サービスが外部からどのように評価されているかを情報収集する能力(「公聴能力」)に長けている。
②組織の価値観にどっぷり浸からず、半歩踏み出して組織を客観視することができ、問題点を経営トップに意見具申できる。
問題は、①、②のようなことを心掛けて仕事をしていたら、最近の企業では浮いてしまうことだ。短期的な視点で自己保身に走る経営者が増えたため、耳の痛い話を注進しようものなら、左遷人事が待っているのがオチだ。
これは、企業に限らず、政治、社会全般に「総主流化」が進む中、上の立場の意向を忖度して異質な意見を排除する流れともマッチする。
だが、「命に逆らって君を利する(逆命利君)」人材を擁しておかないと、長い目で見て組織は必ず劣化していく。
(5)広報機能の劣化には、メディアにも責任がある。広報とメディアの間で「真剣勝負」の場面が減ったからだ。
<例>記者から企業にとって不都合な質問をぶつけられて、広報担当はそれが事実か否か、社内を取材し、何が起きているのかを把握する。そのプロセスでは、社内で摩擦を引き起こし、「お前はいったい、どちらの味方なのだ」と言われることさえある。
こんな経験を積んで、組織を冷静に見る目を養うことができる。
しかし、スポンサーへの配慮などで不都合な質問をする記者が減ってしまった。
【注】
「【東芝】不正経理の闇(2) ~原発メーカーの経営危機~」
「【東芝】不正経理の闇(1) ~国際原子力シンジケート~」
「【読売】「不正」を隠蔽する「不適切」という表現 ~東芝・不正経理~」
「【古賀茂明】東芝の粉飾問題 ~「報道の粉飾」~」
「【社会】大政翼賛社会の不気味さ ~東芝問題と「ゆう活」~」
「【東芝】「不正会計」の主役は安倍ブレーン ~産業競争力会議の犯罪者~」
□井上久男「第三者委員会ばやりの背景に「自浄能力」の欠如と広報機能の劣化」(「週刊金曜日」2015年9月4日号)
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それは有効に機能しているか。
そもそも、当該企業の実態をほとんど知らない部外者に「真相」の究明を委ねること自体に無理がある。第三者委員会は、アリバイ作りのために客観性を装っているにすぎない。
(2)最近の東芝の粉飾決算【注】にしても、第三者委員会が発表した報告書には、本質的な原因に迫る踏み込んだ内容(<例>歴代トップの人間関係や監査法人との関係など)が記されていない。
2014年に起こった「朝日新聞」の「吉田調書問題」でも第三者委員会による調査が行われたが、危機を収拾したい朝日新聞社が目論む結論を誘導するための調査だった、という見方も根強い。このため、同社内では今でも第三者委員会が導き出した結論に不信感が残っている。
(3)第三者委員会ばやりの背景には、組織の「自浄能力」の欠如がある。
さらに、その要因を突き詰めていけば、広報機能の劣化がある。広報部に社内調査を行う力がないので、社内の情報収集を的確に行ってそれを外部へ発表できないのだ。
身内の調査では客観性がない、という批判もあり得るが、内実(<例>人間関係や企業風土など)をよく知る「身内」だからこそ「真相」に迫ることが可能なはずだ。
(4)広報機能の劣化は、「広報のプロ」が不在だからだ。不祥事への対応だけでなく、企業が取材される際にも「広報のプロ」が不在だ。
「広報のプロ」とは、次の二つの能力を兼ね備えた人だ。
①社会や業界全体の動向を見渡して情報を把握し、もって自社の経営や商品・サービスが外部からどのように評価されているかを情報収集する能力(「公聴能力」)に長けている。
②組織の価値観にどっぷり浸からず、半歩踏み出して組織を客観視することができ、問題点を経営トップに意見具申できる。
問題は、①、②のようなことを心掛けて仕事をしていたら、最近の企業では浮いてしまうことだ。短期的な視点で自己保身に走る経営者が増えたため、耳の痛い話を注進しようものなら、左遷人事が待っているのがオチだ。
これは、企業に限らず、政治、社会全般に「総主流化」が進む中、上の立場の意向を忖度して異質な意見を排除する流れともマッチする。
だが、「命に逆らって君を利する(逆命利君)」人材を擁しておかないと、長い目で見て組織は必ず劣化していく。
(5)広報機能の劣化には、メディアにも責任がある。広報とメディアの間で「真剣勝負」の場面が減ったからだ。
<例>記者から企業にとって不都合な質問をぶつけられて、広報担当はそれが事実か否か、社内を取材し、何が起きているのかを把握する。そのプロセスでは、社内で摩擦を引き起こし、「お前はいったい、どちらの味方なのだ」と言われることさえある。
こんな経験を積んで、組織を冷静に見る目を養うことができる。
しかし、スポンサーへの配慮などで不都合な質問をする記者が減ってしまった。
【注】
「【東芝】不正経理の闇(2) ~原発メーカーの経営危機~」
「【東芝】不正経理の闇(1) ~国際原子力シンジケート~」
「【読売】「不正」を隠蔽する「不適切」という表現 ~東芝・不正経理~」
「【古賀茂明】東芝の粉飾問題 ~「報道の粉飾」~」
「【社会】大政翼賛社会の不気味さ ~東芝問題と「ゆう活」~」
「【東芝】「不正会計」の主役は安倍ブレーン ~産業競争力会議の犯罪者~」
□井上久男「第三者委員会ばやりの背景に「自浄能力」の欠如と広報機能の劣化」(「週刊金曜日」2015年9月4日号)
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