「災害が風化するっていうでしょ。
公害だけでも足尾、水俣・・・・。
広島、長崎、福島・・・・。
次はどこだろう」
□永六輔「無名人語録 393」(「週刊金曜日」2013年3月1日号)
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*
①古川美穂『東北ショック・ドクトリン』(岩波書店 1,836円)
②除本理史/渡辺淑彦・編著『原発災害はなぜ不均等な復興をもたらすのか』(ミネルヴァ書房 3,024円)
③斎藤誠『震災復興の政治経済学』(日本評論社 2,376円)
(1)「集中復興期間」が終わるからといって5年を節目と呼んでいいのか。被災者にとっては、復興の実体としての新しい生活はまだ始まってさえいない。
東北の復興で、これまでに25兆円もの資金を投じながら、自宅に戻れない人、自宅を確保できない人が20万人もおり、震災関連死が3,400人にのぼるとは、どこかがおかしい。復興予算の大半がハード事業に費やされ、被災地外でも1兆円以上が使われたが、当の被災地では被災者救済のまともな事業がなされているのだろうか。
「創造的復興」というスローガンのもとで、東北では何が起こっているのか。
①は、被災地で繰り広げられる遺伝子研究、水産特区、空港民営化、カジノ構想などを鋭くえぐり出す。 ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』が暴いた、戦争や災害の混乱に乗じて暴利をむさぼる「惨事便乗型開発手法」が、まさに東北の地で展開されている、と告発する。
(2)東京電力の原発事故による被災者の行く末は、津波被災地以上に見通し不透明だ。
国・東電は除染を行い、線量を下げ、避難指示を解除することによって、帰還=賠償終了へと導こうとしている。こうした中、被災者はどんな状況に置かれているのか。
個々の被災者は様々な事情を抱え、生活再建は極めて複雑だが、起きている事態は要するに、
不均等な「復興」であり、
被災者の分断だ。
②は、大学研究者と被災者を支援する弁護士集団の共同作業による著作で、原発被災者・被災地が置かれている複雑な現状を多面的に描く。
(3)津波・原発被災地のいずれにおいても、明るい未来は見えない。このままのやり方でいいのか、それとも、復興の枠組み自体に問題があったのではないか。
そうした疑問に真正面から立ち向かっているのが③だ。著者は、3年間の共同研究を通し、
震災当初におけるいくつもの錯誤と、
科学的根拠なく拙速に重要政策を決定した誤りが
この間の復興の根底にあること実証していく。ほぼ公表された客観データのみを駆使しながら。
主要論点は、
(a)津波被害を過大評価し、過大な復興予算を組むことによって、実際のニーズに比べて大掛かりな防潮堤やかさ上げ道路の建設、過剰な産業用地や農地、宅地を生み出す集団移転事業などが行われた。
(b)原発事故における初動対応の誤りとそれによる被害の深刻化を過小評価したことが今日の混迷を招いた。
復興途中に生じた政権交代が復興政策にどのように関連したかも説得力を持って分析している。専門書だが、重要な論点を含み、読む苦労にお釣りがくるほどの収穫がある。
□塩崎賢明(立命館大学教授/神戸大学名誉教授)「(ニュースの本棚)震災復興 始まっていない「新しい生活」」(朝日新聞デジタル 2016年3月6日)
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広島、長崎、福島・・・・。
次はどこだろう」
□永六輔「無名人語録 393」(「週刊金曜日」2013年3月1日号)
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①古川美穂『東北ショック・ドクトリン』(岩波書店 1,836円)
②除本理史/渡辺淑彦・編著『原発災害はなぜ不均等な復興をもたらすのか』(ミネルヴァ書房 3,024円)
③斎藤誠『震災復興の政治経済学』(日本評論社 2,376円)
(1)「集中復興期間」が終わるからといって5年を節目と呼んでいいのか。被災者にとっては、復興の実体としての新しい生活はまだ始まってさえいない。
東北の復興で、これまでに25兆円もの資金を投じながら、自宅に戻れない人、自宅を確保できない人が20万人もおり、震災関連死が3,400人にのぼるとは、どこかがおかしい。復興予算の大半がハード事業に費やされ、被災地外でも1兆円以上が使われたが、当の被災地では被災者救済のまともな事業がなされているのだろうか。
「創造的復興」というスローガンのもとで、東北では何が起こっているのか。
①は、被災地で繰り広げられる遺伝子研究、水産特区、空港民営化、カジノ構想などを鋭くえぐり出す。 ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』が暴いた、戦争や災害の混乱に乗じて暴利をむさぼる「惨事便乗型開発手法」が、まさに東北の地で展開されている、と告発する。
(2)東京電力の原発事故による被災者の行く末は、津波被災地以上に見通し不透明だ。
国・東電は除染を行い、線量を下げ、避難指示を解除することによって、帰還=賠償終了へと導こうとしている。こうした中、被災者はどんな状況に置かれているのか。
個々の被災者は様々な事情を抱え、生活再建は極めて複雑だが、起きている事態は要するに、
不均等な「復興」であり、
被災者の分断だ。
②は、大学研究者と被災者を支援する弁護士集団の共同作業による著作で、原発被災者・被災地が置かれている複雑な現状を多面的に描く。
(3)津波・原発被災地のいずれにおいても、明るい未来は見えない。このままのやり方でいいのか、それとも、復興の枠組み自体に問題があったのではないか。
そうした疑問に真正面から立ち向かっているのが③だ。著者は、3年間の共同研究を通し、
震災当初におけるいくつもの錯誤と、
科学的根拠なく拙速に重要政策を決定した誤りが
この間の復興の根底にあること実証していく。ほぼ公表された客観データのみを駆使しながら。
主要論点は、
(a)津波被害を過大評価し、過大な復興予算を組むことによって、実際のニーズに比べて大掛かりな防潮堤やかさ上げ道路の建設、過剰な産業用地や農地、宅地を生み出す集団移転事業などが行われた。
(b)原発事故における初動対応の誤りとそれによる被害の深刻化を過小評価したことが今日の混迷を招いた。
復興途中に生じた政権交代が復興政策にどのように関連したかも説得力を持って分析している。専門書だが、重要な論点を含み、読む苦労にお釣りがくるほどの収穫がある。
□塩崎賢明(立命館大学教授/神戸大学名誉教授)「(ニュースの本棚)震災復興 始まっていない「新しい生活」」(朝日新聞デジタル 2016年3月6日)
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