語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~

2016年03月31日 | ●佐藤優


 (1)構成。
 第1章 殺しあいを生む! 「格差」と「貧困」が広がる世界の読み方
 第2章 殺しあいを生む! 「資本主義」の読み方
 第3章 殺しあいを生む? 「これからの日本」の読み方 
 第4章 殺しあう! 「戦争が起き続ける」世界の読み方

 (2)高額所得者10%においてビリの人の年収は580万円だ。上位1%の底が年収1,270万円。ピケティに日本のデータを提供した森口千晶・一橋大学教授が2012年のデータを示している。
 NHK職員の平均年収は、1年目の新人も含めて1,200万円以上で、民放はもっと高い。銀行員も放送局員もほとんど上位1%だ【田原】。
 日本の場合、ものすごい大金持ちが増えているわけではなく、高所得層の下部、中所得層の上部が膨らんでいる感じだ。

 (3)貧困でいちばん差が出てくるのは子どもの貧困問題だ。待機児童の問題が議論されるが、富裕層には関係ない。無認可でも外国人教師もいて、相当いい教育を提供するプレスクール型保育園があって、そこに入れればいい。ただし、月15~20万円を負担できる家庭ならば。世の中の問題の相当の部分がカネで解決できる。
 そんなカネは絶対に払えない、という家庭が増え散ることが問題だ【田原】。
 明治以降、日本経済は不景気や戦争で右肩下がりになることもあった。でも、教育だけは一貫して右肩上がりだった。佐藤優(1960年生まれ)の世代は、その祖父母は自分たちより高いレベルの教育を父母世代に受けさせた。佐藤の世代以降は、子どもに自分たちより高いレベルの教育を受けさせることが経済的にできなくなる。いままでにない教育の右肩下がり現象が始まっている。
 年収1,000万円の人がどれくらいの手取りになるか。40歳、奥さん、子ども2人、ボーナス4か月で計算すると、月額手取りが43万円。それで山手線の中にマンションを買って、子ども2人を私立にやれるか。無理だ。
 佐藤のときは同志社の初年度納付金が50万円くらいで、そのうち授業料が32万円だった。いまの私立大学の初年度納付金は100万円より200万円に近い。授業料も120~130万円くらい。2人とも仕送りすれば毎年300万円以上だから、手取り43万円では家賃すら払えない。
 ハーバード大学やスタンフォード大学の授業料は、だいたい年500万円で、大学院までいくと3,000万円かかる。
 いま4年でならせば年150万円くりあの私立大学コストが、5年、10年で200万円、300万円と上がっても不思議はない。
 中高とカネのかかる進学校に行き、大学でもダブルスクール(予備校や専修学校)ができる経済力がないと、公務員試験にも合格しなくなってきた。

 (4)水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書、2014)は、大きく遡って歴史に学び、現在の状況をとらえている。
 国際的には有名だが、日本ではあまり読まれていないフェルナン・ブローデル『地中海』(藤原書店、2014)は、「長い16世紀」(1450~1640年)の中世から近代への移行をダイナミックに描いている。地中海の文化圏がどういうふうにでき、どう崩れていったかを分析している。ポイントは、ある段階で利子率が2%くらいに低くなってしまうと、その社会システムは発展しなくなる、と。
 水野氏は、「21世紀の日本の将来を考えるには、イタリア・ジェノバの超低金利の背景を探ることが不可欠だ。『地中海』を読めば、近代システムの限界が明らかとなって、次のシステムへの移行プロセスの真っ只中にいることがよくわかる」といっている。
 21世紀の日本も同じで、もはや国内には投資先がなくなってしまったのだ。

 (5)利子率が低いのは、「資本の過剰」からだ。カネがいくらあっても、投資する場所がなく、儲かる場所がない。
 そのネックになるのが労働力だ。人間の消費や生産によってつくられる労働力は、機械のようにつくり出すことができない。いま日本各地で公共事業はじめ土木建設関係の入札がうまくいっていないのも、労働力が不足し、賃金が上がっちゃっているからだ。近代経済学のいうところのコストプッシュ(賃金や原材料の値上げなどによる生産コストの上昇)の問題が出てくる。とりわけ労働力、賃金というところが常に根っこになる。
 これまで業者は、やりたい仕事とやりたくない仕事をミックスしてやっていた。あちらで損しても、こちらで取り返せばいいというような考えで。ところが、いまは、損する仕事は絶対やらず、儲かる仕事だけやる。その仕事も非常に少ない、ということだろう。【宮崎】

 (6)中国は、人口13億人以上で、富裕層は1割の1億3,000万人といわれている。中国は、あの大陸に日本列島があって、そこに住む人全員が富裕層というのも同然の、とんでもない国になってしまった。これこそ、資本主義が生んだ、新中国経済という新しい妖怪だ。当面しばらくは続くであろう資本主義は、この新妖怪の登場によってどんな方向に進むのか。【宮崎】

□佐藤優『「殺しあう」世界の読み方 (田原総一朗責任編集 オフレコ!BOOKS)』(アスコム、2015)/共著:田原総一朗・宮崎学の「第1章 殺しあいを生む! 「格差」と「貧困」が広がる世界の読み方」
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【メディア】危ういテレビの将来 ~4K8Kどころか、開発メーカー激減~

2016年03月31日 | 社会
 (1)テレビが危ない。
 安倍政権のテレビ干渉の話ではない。
 テレビ受信機の開発メーカーが激減しているのだ。
 4K8K(現行よりも解像度/画素数が高い映像放送)のテレビの将来が語られる中、足下のテレビメーカーが崩壊している。
 1990年代、米国のテレビメーカーが次々と開発を中止し、韓国などに買収された歴史が思い出される。

 (2)日本のテレビ開発を支えてきたのは、TMSHといわれる。(a)東芝、(b)松下電器(パナソニック)、(c)ソニー、(d)日立製作所の4社だ。
 (d)は、テレビ事業からすでに撤退。
 テレビ事業の赤字が続き、分社化された(c)、そして経営問題で混乱が続く(a)は、テレビ部門の売却が噂されている。このままでは(b)の1社状況になりかねない。

 (3)地デジを支えた車の両輪は、間違いなくテレビ局とテレビメーカーだった。
 しかし、その地デジ化がメーカーの首をしめた、という。
 テレビの生産、開発には膨大なヒト、モノ、カネがかかる。デジタルテレビの受信機開発にかけた経費を回収する前に、2011年の期限が迫り、低価格競争の結果、開発費をリクープ(回収)することができなかった。
 さらにデジタル化を契機に、多額の開発経費をかけなくても部品を購入し、組み立てればテレビの塩梅が可能になったことも開発メーカーの苦境に拍車をかけた。

 (4)次世代テレビという4K8K。
 2016年はリオデジャネイロ・オリンピックに期待を寄せ、8Kの試験放送が始まる。しかし、いまだ地上での4K(いわんや8K)の実施計画はない。地上での実施が見えないかぎり、本格的な普及はあり得ない。オリンピックを契機に普及させる、という総務省の計画も効果は疑問だ。

 (5)地デジ受信機に必ずついてくるB-CASカードは暗号化の塊だが、その技術は東芝、パナソニックが中核技術を担い、日立も関わるメーカー3社が鍵を握る。
 4K8Kの暗号・スクランブル技術の検討も進められているが、その体制に影響尾与える恐れもある。

 (6)インターネット上の動画配信がますます増えていく中、テレビ番組をテレビ受信機で見る機会は減少する。そのことに間違いはない。
 だからといって、テレビメーカーが減少していくのでは、日本の技術開発お点から問題が多い。
 4月1日、デジタル放送推進協会(Dpa)と次世代放送推進フォーラム(Next-TV-F)が合併し、放送サービス高度化推進協会(A-PAB)となる。テレビ局とテレビメーカーも会員の組織がどんな活動を行うのか。
 
 (7)日本のテレビ技術の規格は、テレビ局とメーカーが侃々諤々の議論の末、策定し、それが高品質かつ低廉なテレビを可能とした。
 外国メーカーばかりでは、視聴者もメリットはない。

□砂川浩慶「4K8Kどころか開発メーカー激減で危ういテレビの将来」(「週刊金曜日」2016年3月25日号)
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