(1)「豊洲は終わったと思う」
中澤誠・東京都中央市場労働組合委員長はこう言った。東京都が、豊洲新市場の土壌汚染対策のため4.5mの盛り土などをすると説明してきたが、主要な建物の地下では行われず、空洞になっている問題が発覚したのだ。
豊洲には、すでに市場の建物が完成している。今さら盛り土をするなど対策工事は不可能だ。
中澤委員長の「豊洲は終わった」は、①汚染対策ができない豊洲新市場の可能性が「終わった」、それ以上に、②都への信頼が「終わった」の二重の意味を持つ。
「都が(汚染土壌を封じ込めている)コンクリを厚くして『安全になりました』と言っても、市場の世論が許さないよ。これまでも散々だまされてきたんだから」
〈例〉1998年に仲卸の団体が移転反対を決議した。当時の市場長は「1団体でも反対なら豊洲には絶対行かない」と約束した。ところが、約束を一方的に破棄した。
市場有志が2016年4月に行ったアンケート調査でも、問い「築地と豊洲のどちらで営業したいか?」に対して、回収244件、「築地」という回答203件だった。アンケートには、「全く騙された。(豊洲の)店舗は昭和10年に出来た現在の店舗より狭く、衛生基準を満たせない」などの不満が多数記されている。
(2)豊洲の「空洞問題」が発覚する以前、小池百合子・都知事は、2017年1月に発表される地下水モニタリングの結果が環境基準以下なら豊洲の「安全宣言」を出して、同年3月の移転を考えていた【都の中央卸売市場の関係者】。だが、「空洞問題」で頓挫した。
そもそも、小池知事は2008年刊の共著において「築地再整備」を主張している。
しかし、都は築地再整備が困難な主な理由として、3点をあげる。
(a)築地は狭いので、再整備工事に必要な「種地」(工事期間中業者に仮移転してもらう土地)を確保できない。
(b)築地跡地の売却収入が見込めず、再整備の事業費を賄えない。
(c)築地の跡地を通す予定の環状2号線の工事ができなくなる。
しかし、
(a)’「種地」はある。実際、計画を立てて着工もした。【出口晴三・元都議会議員(自民党)】
(b)’事業費がないなら、民間の資金を利用するPFI方式でやればいい。〈例〉ホテルを入れた複合施設を市場内に建てれば利益も出る。【同】
(c)’環状2号線は暫定道路を造る予定だ。【都の建設局】
(3)中央卸売市場は、出口氏が都議時代の1986年に現在地での再整備を決め、1988年には築地市場再整備基本計画を策定、新市場のイメージを描いた鳥瞰図も作成された。だが、1991年に着工され、400億円も投じて立体駐車場などを整備したのに、事業費の増大や工期の長期化などで1996年に中止された。
業者も冷蔵庫や引っ越し費用で数千万単位の投資をしている以上、まずは豊洲の安全性を追求すべきだ。しかし、豊洲ではどうしてもダメとなったら、築地の再整備も考えるべきだ。その際、業者は腹を割ってみんなで築地をこれからどうしていくべきかという話し合いができるかどうかがポイント。【浅沼進・元東京海洋大学大学院教授(食品流通安全管理)】
(4)「空洞問題」の発覚を受けた9月10日の記者会見で、
Q:2008年刊の共著において「築地再整備」を主張しているが、今こそその主張が生きるのではないか。
A:普通の生活者、また環境大臣としての経験から当時はそう書いたが、客観的な判断を待ってワイズスペンディング(税金の適正利用)な方法を考えるべき。
「小池知事は延期は決められるけど、市場をどうするかは決めらんないの。市場で働く人がうんと言わなきゃ移転も再整備もできないでしょ。これから合意形成をしてみんなで決めるしかないよ」【(1)の中澤委員長】
石原知事時代から、知事や市場当局が市場で働く人びとの意見を充分に聞いて合意形成を図らず、強引に事業を進めてきた報いが、今回の「空洞問題」だ。
□永尾俊彦(ルポライター)「今こそ「築地市場再整備」を 「空洞問題」で信頼が失われた東京都、「豊洲は終わった」」(「週刊金曜日」2016年9月23日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【豊洲】市場では「安全宣言」を出せない ~土壌汚染対策法~」
「【豊洲】市場移転:宇都宮健児が小池百合子・都知事の決断を分析」
「【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク」
「【五輪】が都民の生活を圧迫する ~汚染市場・アパート立ち退き~」
「【食】移転先の土壌、ヒ素汚染残して開場 ~築地市場~」
「【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~」
中澤誠・東京都中央市場労働組合委員長はこう言った。東京都が、豊洲新市場の土壌汚染対策のため4.5mの盛り土などをすると説明してきたが、主要な建物の地下では行われず、空洞になっている問題が発覚したのだ。
豊洲には、すでに市場の建物が完成している。今さら盛り土をするなど対策工事は不可能だ。
中澤委員長の「豊洲は終わった」は、①汚染対策ができない豊洲新市場の可能性が「終わった」、それ以上に、②都への信頼が「終わった」の二重の意味を持つ。
「都が(汚染土壌を封じ込めている)コンクリを厚くして『安全になりました』と言っても、市場の世論が許さないよ。これまでも散々だまされてきたんだから」
〈例〉1998年に仲卸の団体が移転反対を決議した。当時の市場長は「1団体でも反対なら豊洲には絶対行かない」と約束した。ところが、約束を一方的に破棄した。
市場有志が2016年4月に行ったアンケート調査でも、問い「築地と豊洲のどちらで営業したいか?」に対して、回収244件、「築地」という回答203件だった。アンケートには、「全く騙された。(豊洲の)店舗は昭和10年に出来た現在の店舗より狭く、衛生基準を満たせない」などの不満が多数記されている。
(2)豊洲の「空洞問題」が発覚する以前、小池百合子・都知事は、2017年1月に発表される地下水モニタリングの結果が環境基準以下なら豊洲の「安全宣言」を出して、同年3月の移転を考えていた【都の中央卸売市場の関係者】。だが、「空洞問題」で頓挫した。
そもそも、小池知事は2008年刊の共著において「築地再整備」を主張している。
しかし、都は築地再整備が困難な主な理由として、3点をあげる。
(a)築地は狭いので、再整備工事に必要な「種地」(工事期間中業者に仮移転してもらう土地)を確保できない。
(b)築地跡地の売却収入が見込めず、再整備の事業費を賄えない。
(c)築地の跡地を通す予定の環状2号線の工事ができなくなる。
しかし、
(a)’「種地」はある。実際、計画を立てて着工もした。【出口晴三・元都議会議員(自民党)】
(b)’事業費がないなら、民間の資金を利用するPFI方式でやればいい。〈例〉ホテルを入れた複合施設を市場内に建てれば利益も出る。【同】
(c)’環状2号線は暫定道路を造る予定だ。【都の建設局】
(3)中央卸売市場は、出口氏が都議時代の1986年に現在地での再整備を決め、1988年には築地市場再整備基本計画を策定、新市場のイメージを描いた鳥瞰図も作成された。だが、1991年に着工され、400億円も投じて立体駐車場などを整備したのに、事業費の増大や工期の長期化などで1996年に中止された。
業者も冷蔵庫や引っ越し費用で数千万単位の投資をしている以上、まずは豊洲の安全性を追求すべきだ。しかし、豊洲ではどうしてもダメとなったら、築地の再整備も考えるべきだ。その際、業者は腹を割ってみんなで築地をこれからどうしていくべきかという話し合いができるかどうかがポイント。【浅沼進・元東京海洋大学大学院教授(食品流通安全管理)】
(4)「空洞問題」の発覚を受けた9月10日の記者会見で、
Q:2008年刊の共著において「築地再整備」を主張しているが、今こそその主張が生きるのではないか。
A:普通の生活者、また環境大臣としての経験から当時はそう書いたが、客観的な判断を待ってワイズスペンディング(税金の適正利用)な方法を考えるべき。
「小池知事は延期は決められるけど、市場をどうするかは決めらんないの。市場で働く人がうんと言わなきゃ移転も再整備もできないでしょ。これから合意形成をしてみんなで決めるしかないよ」【(1)の中澤委員長】
石原知事時代から、知事や市場当局が市場で働く人びとの意見を充分に聞いて合意形成を図らず、強引に事業を進めてきた報いが、今回の「空洞問題」だ。
□永尾俊彦(ルポライター)「今こそ「築地市場再整備」を 「空洞問題」で信頼が失われた東京都、「豊洲は終わった」」(「週刊金曜日」2016年9月23日号)
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【参考】
「【豊洲】市場では「安全宣言」を出せない ~土壌汚染対策法~」
「【豊洲】市場移転:宇都宮健児が小池百合子・都知事の決断を分析」
「【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク」
「【五輪】が都民の生活を圧迫する ~汚染市場・アパート立ち退き~」
「【食】移転先の土壌、ヒ素汚染残して開場 ~築地市場~」
「【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~」