(1)米国で、環境ホルモン作用のある殺菌成分トリクロサン【注1】をはじめとする19成分を使った抗菌石けんが販売禁止になることが決まった。
2016年9月2日、米国食品医薬品局(FDA)が発表した。
FDAの再評価の最終結果が今回の発表だ。1972年に開始されたOTC薬【注2】の再評価の一環として、抗菌薬の成分として使用されていた22成分についても再評価した結果、19成分が一度に禁止になった。
(2)トリクロサン以外の18成分は、どんなものがあるか。
日本の薬用石けんには、トリクロサンとその類似成分であるトリクロカルバン(「ミューズ固形石けん」に使用)以外は、おおむね使われていないようだ。
例外が「イソジン」の名称【注3】で有名な明治のうがい薬の成分、「ポビドンヨード」で、明治はハンドウォッシュとしても販売している。
(3)22成分中、トリクロサンを含む19成分については、普通の石けんと比べて感染症予防などの有効性が優れているという証拠も、毎日長期的に使用することでの安全性の証拠も不十分ということで、禁止措置となった。
ちなみに、残り3成分には、「ファブリーズ」の抗菌剤にも使われる「塩化ベンザルコニウム」も含まれているが、企業からの有効性と安全性のデータ提出の猶予期間が延長されたため、今回の禁止措置の対象には入っていない。
(4)米国での禁止措置は日本でも報道された。菅義偉・官房長官が販売実態調査と必要な措置の検討を早急に行うと9月7日に発表した。
実は日本でも、米国に続いてOTC医薬品の再評価1978年から開始されたが、薬用石けんなどの医薬部外品の成分は対象外とされた。医薬部外品は一度承認されると見直しをする制度がないため、法的にどのような措置ができるかは不明なままだ。
(5)日本の大手メーカーは、海外の規制強化を受けてすでにトリクロサンから別の成分に変更している。花王の「ビオレU泡ハンドソープ」【注4】も、「イソプロピルメチルフェノール」という別の成分になっている。その新成分は、米国における評価対象にはなっていない。日本でしっかり再評価すべきだ。特に普通の石けんより有効性があると言えるのかが問題となる。
(6)今回の米国での禁止措置は、薬用石けんに限られる。
実はトリクロサンは、薬用歯磨きや洗口剤にも使われている。そちらは歯肉炎の予防効果が認められていて、米国でも禁止されていない。しかし、口の中に入れることで成分の体内への吸収率が高くなるので、安全性を懸念する声が上がっている。
日本でも2015年8月の段階では、
花王「薬用ピュオーラ」
花王「ディープクリーン」
サンスター「G・U・Mデンタルリンス」
などにトリクロサンが使用されていたが、2016年のこのたびの調査ではほとんどの商品で変更されていた。トリクロサンは、そもそも不要だったのか?
【注1】「【保健】薬用せっけんの殺菌剤「トリクロサン」 ~欧州で使用禁止に~」
【注2】ドラッグストアで販売されている一般医薬品。医師の処方がないと買えない医療用医薬品と区別される。
【注3】ライセンス契約が切れたため、現在では明治のうがい薬から「イソジン」の名前は消えている。
【注4】【注1】の記事参照。
□植田武智「アメリカでもトリクロサン入り石けんが販売禁止 日本でも抗菌剤入り薬用石けんの見直しへ」(「週刊金曜日」2016年10月7日号)
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2016年9月2日、米国食品医薬品局(FDA)が発表した。
FDAの再評価の最終結果が今回の発表だ。1972年に開始されたOTC薬【注2】の再評価の一環として、抗菌薬の成分として使用されていた22成分についても再評価した結果、19成分が一度に禁止になった。
(2)トリクロサン以外の18成分は、どんなものがあるか。
日本の薬用石けんには、トリクロサンとその類似成分であるトリクロカルバン(「ミューズ固形石けん」に使用)以外は、おおむね使われていないようだ。
例外が「イソジン」の名称【注3】で有名な明治のうがい薬の成分、「ポビドンヨード」で、明治はハンドウォッシュとしても販売している。
(3)22成分中、トリクロサンを含む19成分については、普通の石けんと比べて感染症予防などの有効性が優れているという証拠も、毎日長期的に使用することでの安全性の証拠も不十分ということで、禁止措置となった。
ちなみに、残り3成分には、「ファブリーズ」の抗菌剤にも使われる「塩化ベンザルコニウム」も含まれているが、企業からの有効性と安全性のデータ提出の猶予期間が延長されたため、今回の禁止措置の対象には入っていない。
(4)米国での禁止措置は日本でも報道された。菅義偉・官房長官が販売実態調査と必要な措置の検討を早急に行うと9月7日に発表した。
実は日本でも、米国に続いてOTC医薬品の再評価1978年から開始されたが、薬用石けんなどの医薬部外品の成分は対象外とされた。医薬部外品は一度承認されると見直しをする制度がないため、法的にどのような措置ができるかは不明なままだ。
(5)日本の大手メーカーは、海外の規制強化を受けてすでにトリクロサンから別の成分に変更している。花王の「ビオレU泡ハンドソープ」【注4】も、「イソプロピルメチルフェノール」という別の成分になっている。その新成分は、米国における評価対象にはなっていない。日本でしっかり再評価すべきだ。特に普通の石けんより有効性があると言えるのかが問題となる。
(6)今回の米国での禁止措置は、薬用石けんに限られる。
実はトリクロサンは、薬用歯磨きや洗口剤にも使われている。そちらは歯肉炎の予防効果が認められていて、米国でも禁止されていない。しかし、口の中に入れることで成分の体内への吸収率が高くなるので、安全性を懸念する声が上がっている。
日本でも2015年8月の段階では、
花王「薬用ピュオーラ」
花王「ディープクリーン」
サンスター「G・U・Mデンタルリンス」
などにトリクロサンが使用されていたが、2016年のこのたびの調査ではほとんどの商品で変更されていた。トリクロサンは、そもそも不要だったのか?
【注1】「【保健】薬用せっけんの殺菌剤「トリクロサン」 ~欧州で使用禁止に~」
【注2】ドラッグストアで販売されている一般医薬品。医師の処方がないと買えない医療用医薬品と区別される。
【注3】ライセンス契約が切れたため、現在では明治のうがい薬から「イソジン」の名前は消えている。
【注4】【注1】の記事参照。
□植田武智「アメリカでもトリクロサン入り石けんが販売禁止 日本でも抗菌剤入り薬用石けんの見直しへ」(「週刊金曜日」2016年10月7日号)
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