【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。
<稲畑汀子選>
①包丁の抜き差しならぬ西瓜(すいか)かな (東かがわ市)桑島正樹
②一瞬に満開となる水中花(神戸市)森岡喜恵子
⑥一生とはまこと短かし魂迎 (北海道鹿追町)高橋とも子
⑨他人(ひと)事のやうな白寿や生身魂(高崎市)山口博
【評】一句目。大きな西瓜に包丁を入れたものの、切ることも抜くことも出来なくなった作者の困惑。二句目。ガラスの器の水に沈めた水中花。一瞬で満開になるとは妙。(後略)
<金子兜太選>
①戦記もの読む渾身(こんしん)の夏休み (横浜市)本多豊明
④夾竹桃(きょうちくとう)原爆の死は続きをり (浜松市)北河覚
⑤潮時と思ふ一事や髪洗ふ (横浜市)渡辺萩風
⑦探し得ぬまま迎火を焚(た)けるかな (大阪市)今井文雄
【評】時節柄戦争を詠む句が多かった。本多さん、忘れないぞの意気込み。(後略)
<長谷川櫂選>
①捨て石の三百万や敗戦忌(福島県伊達市)佐藤茂
⑤原爆の日を刻み打つ時計かな(和歌山県上富田町)中松健
⑧鮎とどく然(しか)も長良の香して(愛西市)小川弘
【評】戦争の秀句が並ぶ。一席。一個の捨て石も生まぬ外交と国造りを、と願う。(後略)
<大串章選>
①つむじ風空蝉(うつせみ)そらを飛びにけり (横浜市)守屋雅
③揚花火終焉の美を教へけり (岡崎市)米津勇美
④原爆忌気温三十七度なり(横須賀市)海老名さつき
【評】第一句。つむじ風のおかげで、初めて空を飛ぶことができた。空蝉の喜び。第二句。敗戦後七十二年経った今も、マッカーサー元帥のサングラスとパイプが忘れられない。第三句。フィナーレの美しさ、人生もかくありたい。
□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年9月4日)
「朝日俳壇」
↓クリック、プリーズ。↓
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【参考】
「【朝日俳壇抄】蟻地獄あなたの帰り待つてます ~8月28日~」
「【朝日俳壇抄】八月や骨で還れの骨さへも ~8月21日~」
「【朝日俳壇抄】戦争の滴り落つる日本かな ~8月14日~」
「【朝日俳壇抄】渾渾と泉湧きくる日野原忌 ~8月7日~」
「【朝日俳壇抄】天の川鳴門の渦に流れ入る ~7月31日~」
「【朝日俳壇抄】ヒアリ来る地球はますます炎えてくる ~7月24日~」
「【朝日俳壇抄】為政者の驕り露見や青嵐 ~7月10日~」
「【朝日俳壇抄】叩かれて叩かれてなほ油虫 ~7月3日~」
「【朝日俳壇抄】政権も徒党に堕すや走り梅雨 ~6月26日~」
「【朝日俳壇抄】妻はヨガ吾は吟行風薫る ~6月19日~」
「【朝日俳壇抄】あの人も人間失格桜桃忌 ~6月5日~」
「【朝日俳壇抄】地響きに滝の重さのありにけり ~5月29日~」
「【朝日俳壇抄】聖五月人には青の時代あり ~5月22日~」
「【朝日俳壇抄】戦後よりまた戦前へ四月馬鹿 ~5月15日~」
「【朝日俳壇抄】空爆の次は花見のニュースかな ~5月7日~」
「【朝日俳壇抄】鞦韆は蹴るべし愛は返すべし ~5月1日~」
<稲畑汀子選>
①包丁の抜き差しならぬ西瓜(すいか)かな (東かがわ市)桑島正樹
②一瞬に満開となる水中花(神戸市)森岡喜恵子
⑥一生とはまこと短かし魂迎 (北海道鹿追町)高橋とも子
⑨他人(ひと)事のやうな白寿や生身魂(高崎市)山口博
【評】一句目。大きな西瓜に包丁を入れたものの、切ることも抜くことも出来なくなった作者の困惑。二句目。ガラスの器の水に沈めた水中花。一瞬で満開になるとは妙。(後略)
<金子兜太選>
①戦記もの読む渾身(こんしん)の夏休み (横浜市)本多豊明
④夾竹桃(きょうちくとう)原爆の死は続きをり (浜松市)北河覚
⑤潮時と思ふ一事や髪洗ふ (横浜市)渡辺萩風
⑦探し得ぬまま迎火を焚(た)けるかな (大阪市)今井文雄
【評】時節柄戦争を詠む句が多かった。本多さん、忘れないぞの意気込み。(後略)
<長谷川櫂選>
①捨て石の三百万や敗戦忌(福島県伊達市)佐藤茂
⑤原爆の日を刻み打つ時計かな(和歌山県上富田町)中松健
⑧鮎とどく然(しか)も長良の香して(愛西市)小川弘
【評】戦争の秀句が並ぶ。一席。一個の捨て石も生まぬ外交と国造りを、と願う。(後略)
<大串章選>
①つむじ風空蝉(うつせみ)そらを飛びにけり (横浜市)守屋雅
③揚花火終焉の美を教へけり (岡崎市)米津勇美
④原爆忌気温三十七度なり(横須賀市)海老名さつき
【評】第一句。つむじ風のおかげで、初めて空を飛ぶことができた。空蝉の喜び。第二句。敗戦後七十二年経った今も、マッカーサー元帥のサングラスとパイプが忘れられない。第三句。フィナーレの美しさ、人生もかくありたい。
□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年9月4日)
「朝日俳壇」
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【参考】
「【朝日俳壇抄】蟻地獄あなたの帰り待つてます ~8月28日~」
「【朝日俳壇抄】八月や骨で還れの骨さへも ~8月21日~」
「【朝日俳壇抄】戦争の滴り落つる日本かな ~8月14日~」
「【朝日俳壇抄】渾渾と泉湧きくる日野原忌 ~8月7日~」
「【朝日俳壇抄】天の川鳴門の渦に流れ入る ~7月31日~」
「【朝日俳壇抄】ヒアリ来る地球はますます炎えてくる ~7月24日~」
「【朝日俳壇抄】為政者の驕り露見や青嵐 ~7月10日~」
「【朝日俳壇抄】叩かれて叩かれてなほ油虫 ~7月3日~」
「【朝日俳壇抄】政権も徒党に堕すや走り梅雨 ~6月26日~」
「【朝日俳壇抄】妻はヨガ吾は吟行風薫る ~6月19日~」
「【朝日俳壇抄】あの人も人間失格桜桃忌 ~6月5日~」
「【朝日俳壇抄】地響きに滝の重さのありにけり ~5月29日~」
「【朝日俳壇抄】聖五月人には青の時代あり ~5月22日~」
「【朝日俳壇抄】戦後よりまた戦前へ四月馬鹿 ~5月15日~」
「【朝日俳壇抄】空爆の次は花見のニュースかな ~5月7日~」
「【朝日俳壇抄】鞦韆は蹴るべし愛は返すべし ~5月1日~」