語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【欧州】身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業 ~ISが戦術を転換~

2017年09月14日 | 社会
 (1)欧州では2015年から、意図的に一般市民を巻き込むテロが多発し、観光客の足が遠のく懸念が増している。
 2015年の観光客数は前年比5%増えたが、テロが多発した2016年は2%増にとどまった。
 今回のバルセロナのテロで、今後マイナスに落ち込む可能性もある。

 (2)フランス・・・・
 観光客が最も多い国で、2015年は8,400万人もの人が訪れた。
 しかし2015年11月、パリ同時多発テロ事件が発生(犠牲者130人)。
 2016年7月、「イスラム国」(IS)がニースで花火の見物をしていた人々の列にトラックで突っ込み、84人が死亡した。
 この事件後、ニースのホテル予約は10%以上落ち込んだ【宿泊斡旋業者のエクスペディア】。

 (3)チュニジア、エジプト、トルコ・・・・
  (a)チュニジア・・・・ISの標的にされている欧州の国々に代わる観光地として注目されていたのが、地中海に面しているチュニジア、エジプト、トルコの3国だった。しかし2015年3月の博物館襲撃テロ(犠牲者22人、うち3人は日本人)、そのたった3カ月後に起こったリゾート地での連続テロにより、チュニジアの人気は途絶えた。2016年の観光収入は連続テロ前の2014年に比べると34.1%も減少した。
  (b)エジプト・・・・宗教間の対立をもくろむISが、キリスト教を標的としたテロを相次ぎ実行している。2010年には観光で2兆3,000億円も稼いでいたのだが、2015年にはその半分に落ち込んだ。
  (c)トルコ・・・・昔からくすぶっているクルド問題やテロに加え、エルドアン大統領の独裁に対する懸念が高まり、欧州の観光客はそっぽを向いている。

 (4)これら3国を代替できる条件を備えたのがバルセロナだ。地中海に面し、文化的水準が高く、洗練されたバルセロナは、2015年に「永遠の都」ローマを抜き、ロンドンとパリに次ぐ観光都市となった。昨年の観光客数は9.2%も増え、観光業は約50万人の雇用を創出している。製造業やファッション関連とともに経済の大黒柱だ。
 観光客の急増で、居住場所の減少、治安悪化、景観の俗化、買い物の不便(地元民のスーパーなどが店を閉じて観光客向けの店に替わる)など、地元民との摩擦もあった。他方、GDPの16%を担う観光業の発展により、スペインは南欧金融危機からいち早く立ち直り、一番多くの職を供給していた。
 しかし今回のテロで風向きは変わるだろう。

 (5)自然災害の影響の方がテロよりも長引くのがこの業界の常識だが、これだけテロが頻繁に、しかも身近で起きると話は違ってくる。
 米国同時多発テロのような大掛かりな爆破テロは準備に手間がかかる。だからISは、バス・乗用車で通行人を轢いたり、ナイフで切り付けたりするような、「専門性」を必要としないけれども警察による制止が困難なテロに切り替えつつある。
 また最近は「ソフト・ターゲット」(防御のできない一般人)を標的にしている。ISは戦場では追い詰められ、地盤がなくなりつつあるため、主戦場以外での活動を活発化するためにこのような戦術の変更を行っている。
 このISの戦術転換は、欧州経済に大きな痛手を与えるだろう。テロには決して屈しない姿勢を持つ英国市民でさえ、観光スポット選択の第一条件として97%が「安全」を挙げているのだ。

□竹下誠二郎(静岡県立大学経営情報学部教授)「ISが戦術を転換/身近で頻発するテロで苦境に陥る欧州の観光業」(「週刊ダイヤモンド」2017年9月9日号)
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 【参考】
【欧州】総工費8兆円超の英高速鉄道プロジェクト ~高まる期待と漂う懸念~
【欧州】スペイン経済は大打撃、欧州金融危機の再来か ~カタルーニャ独立~
【欧州】のゴミ箱扱いに憤慨する東欧諸国 ~深まるEUの東西分裂~
【英国】の地政学的優位性がBrexitで喪失 ~領内で高まる独立気運~
【欧州】北欧も難民入国規制強化へ ~形骸化するシェンゲン協定~
【スウェーデン】文化多元主義の限界 ~移民問題~
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【保健】長距離タイムは血液型しだいか ~影響は普段の練習に匹敵~

2017年09月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)血液型と性格、病気等々、ABO式血液型の話題は尽きない。
 イタリア・ヴェローナ大学の研究によると、O型は天性のマラソンランナーらしい。
 この研究は、同大学の生物医学教室が主催するランニングと科学のイベント、「R4S(ラン・フォー・サイエンス)」で実施された。週平均4.5時間の持久運動を行っている白人52人(平均年齢49歳、平均体格指数(BMI)23.4)のR4Sボランティアが参加し、ハーフマラソンの距離にあたる21.1kmの走行タイムと血液型との関連が調べられた。

 (2)イベント当日、参加者は午前9時に一斉にスタート。天候は曇り、スタート時の気温は14度、湿度は50~73%。最終的には参加者全員が無事にゴールし、平均タイムは1時間52分だった。2時間を切れば上出来というのが市民ハーフマラソンで、アマチュアでも平均以上~上級レベルのランナーといえる。
 ゴール後、事前の調査に基づき普段の練習と年齢、BMI、そして血液型との関連が分析された。
 その結果、走行タイムはやはり普段の練習や年齢と有意に関連していた。
 しかし、BMIの高低とタイムとの間には関連が認められなかった。
 一方、血液型は他の要因から独立して関連することがわかった。特に、O型は好タイムと強く関連することが示された。

 (3)研究者によると、ハーフマラソンの成績は次の要因が関係する。
   ①年齢しだい・・・・41.6%
   ②練習量や内容の影響・・・・10.5%
   ③血液型・・・・10.1%
 つまり、血液型は練習なみに重要だというわけだ。
 ちなみに日本を代表するマラソン選手では、高橋尚子氏、野口みずき氏、瀬古利彦氏、藤原新氏がO型だ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「長距離タイムは血液型しだい?/影響は普段の練習に匹敵 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.365~」(「週刊ダイヤモンド」2017年9月16日号)
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【保健】主食をしっかり食べると公平な判断ができる
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【南雲つぐみ】平均寿命 ~現代、明治時代、縄文時代~

2017年09月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 さきごろ2016年の日本人の平均寿命が厚生労働省から発表された。男性が80.98歳。女性が87.14歳で、男女とも香港に次ぐ世界第2位の長寿国となった。
 明治期には、現在のほぼ半分。同省が公開する「完全生命表」には、男性42.80歳、女性44.30歳(1891~98年)と記されている。
 当時も70~80歳あたりまで生きた人はいたはずだ。乳幼児の死亡率が高かったことや、戦争や疫病で多くの人が若くして亡くなったことが、平均寿命に影響している。
 さらにさかのぼって、縄文時代ではどうか。当時の遺跡から発掘した頭蓋骨の状態や歯のすり減り具合から、10~20代で多くの人が亡くなっていたという推定がある。
 国立社会保障・人口問題研究所が公表している「将来推計人口」では、平均寿命はさらに上昇すると予測されてる。2065年には男性で84.95歳、女性で91.35歳に達する可能性が示された。100歳まで委切るつもりで、健康づくりが必要な時代なのだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「平均寿命 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年9月8日)を引用
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