語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~

2017年09月24日 | 批評・思想
★下山進『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』(講談社、1999)

 2段組み560ページの大著だが、思わず夢中で読んでしまう。技術と市場経済の変化がメディアとジャーナリズムを否応なく変えていく半世紀余りを、トップ経営者から現場記者まで、国際的、複眼的、重層的に描き出す。
 1999年の刊行当時、日本人にもかくも壮大かつ重厚なノンフィクションが書けるのかと驚嘆したものだ。印象深い逸話が幾つもある。日本のメディアの閉鎖性、規制当局との癒着。日本経済新聞社中興の祖・圓城寺(えんじょうじ)次郎が説いた「記者はきちんと解釈できるように勉強しなくてはならない」という“重武装記者論”などは、今でも通じる。
 現在、日本のメディアの変貌は著しく、問題点はさらに鮮明に浮かび上がる。ぜひ、著者には本書の続編を希望したい。

□若田部昌澄(早稲田大学政治経済学術院教授)「メディアの問題点をえぐる ~名著未読・再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年9月30日号)を引用
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【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~

2017年09月24日 | 社会
【欧州】ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決 ~EV普及の契機となるか~

 (1)ドイツ経済の屋台骨、自動車産業が揺れている。同国の自動車業界の誇りだったディーゼルエンジンの将来に影が差しているのだ。エネルギー転換の次は、モビリティー転換がやって来る。

 (2)バーデン・ヴュルテンベルク(BW)州のシュトゥットガルトは、ダイムラーやポルシェが本社を置く自動車産業の中心地。同市の行政裁判所が2017年7月28日に下した判決は、ドイツの政界・産業界に強い衝撃を与えた。
 この街では、窒素酸化物(NOx)の濃度が欧州連合(EU)の上限値を上回る違法状態が7年前から続いていた。シュトゥットガルト行政裁判所は、BW州政府に大気汚染緩和を求めていた環境保護団体の訴えを認め、「違法状態を終わらせるには、来年1月から、ディーゼル車の市内への乗り入れを禁止することが最も有効だ」という判決を下したのだ。裁判官は「市民の健康は、車の持ち主の財産権よりも重要だ」と断じた。

 (3)ドイツでは28の都市でNOx濃度がEUの基準を超えており、この環境保護団体は16の都市で訴訟を起こしている。行政裁判所の判決は確定していないが、国や自動車業界が有効な対策を打ち出せない場合、大都市からディーゼル車が締め出されるという、前代未聞の事態が起こる可能性がある。
 このため現在ドイツでは、消費者のディーゼル離れが急速に進んでいる。連邦自動車庁によると、今年8月に新しく認可されたディーゼル車の数は、前年同期に比べて13.8%も減った。逆にガソリン車は15%増加、プラグインハイブリッド車は213%も増えている。2016年12月に認可された車の45.9%はディーゼル車だったが、2017年8月にはその比率が37.7%に激減した。

 (4)連邦政府、州政府、自動車業界は、ディーゼル車締め出しを防ぐため、8月2日にベルリンで対策を協議。自動車メーカーは、ドイツで使われているディーゼル車530万台のソフトウエアを無償で更新し、NOxの排出量を25~30%減らすことなどを約束した。
 また政府と自動車業界は、普及が遅れている電気自動車(EV)の充電施設を整備するために、10億ユーロ(約1,300億円)規模の基金を創設する。

 (5)だが裁判所や環境省は、「ソフトウエアの更新だけでは、NOxを大幅に削減できない」としており、これらの措置によって来年1月からの乗り入れ禁止を回避できるかどうかは、未知数だ。一昨年に発覚したフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題も収束しておらず、検察庁はダイムラーに対しても捜査を開始。さらに今年に入ってからは、VWやダイムラーが1990年代から技術的な細部について談合していたという疑惑も浮上し、EUが調査している。自動車業界への国民の信頼は深く傷ついた。
 ドイツの就業者の7人に1人は、直接もしくは間接的に自動車関連産業で働いており、この業界は政治家にとって重要な票田だ。メルケル首相は、2017年9月末に行われる連邦議会選挙を意識して「われわれはまだ何十年も内燃機関を搭載した車を使うだろう」と発言している。だがこの国では「内燃機関の時代は終わり、今後はEVの比率が急速に拡大する」という意見が有力だ。

□熊谷徹(ドイツ在住ジャーナリスト)「ドイツ自動車業界を襲うディーゼル締め出し判決/EV普及の契機となるか」(「週刊ダイヤモンド」2017年9月23日号)
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