(1)北朝鮮が何をしたら米国が軍事行動を起こすか。このレッドラインが見えない。これは、言わないようにしているのではなくて、決まっていないのではないか。それに、言ってしまうと、やらざるを得なくなる。シリアの場合は毒ガスだったが、オバマ前大統領は、結局できなかた。
また、北朝鮮の場合だと、例えば米国が核実験をするな、というと、作るのはいいんだな、と受け取りかねない。核兵器を全部廃棄しろ、といったら、これは聞かないだろう。廃絶しなければ、ただちになにかやるのか、という話になる。そういうわけで、レッドラインの引き方はものすごく難しい。
普通に考えれば、核の小型化と米国に届く弾道ミサイルの開発の中止だが、そうはっきり言ってしまうと、北朝鮮という国は、「じゃ、ほかのことは何をしてもいいんだな」と考えて行動に移すからだ。
(2)米国は、北朝鮮のレジームチェンジ(その国の政治体制を根本的に変えること)はめざさない、と言っている。
しかし、それはわからない。するかもしれない。それは、どういうことかというと、レジームチェンジを狙わない前提は、北朝鮮が米国にとって脅威にならないことだ。
ところが、今の北朝鮮を見ていると、いずれの日にか、米国の脅威になる。しかも、今だったら北朝鮮を解体できる、という考え方もある。
2月にあった金正男の暗殺も関連している。あの暗殺計画は、公開情報ベースでは2016年12月から始まっている。その頃、国際社会で何があったか。トランプ大統領の誕生だ。2017年1月1日に、金正恩が演説をしている。間もなく、米国を射程に収めたICBMを発射する、と。
すると、すぐ3日に、トランプがツイッターで、そんなことは起こらない、と書いている。
どうやって起こさないようにするのか。二つの方法がある。
(a)今、北朝鮮は地下で核開発をしているから、そこをピンポイントで叩く。ただ、そのためには北にスパイを送って、場所を確認する。ヒューミントで情報を取って、そこにバンカーバスター(地中貫通爆弾)を撃ち込むのだ。2017年4月13日、米軍はアフガニスタンにある「イスラム国」の地下施設に、バンカーバスターの一種であるGBU43-Bを投下したが、これは北朝鮮への索制である、ともいわれている。
(b)金正恩を殺す。米韓合同軍事演習では平壌に突入して、金正恩を殺す訓練をやっていた。斬首作戦だ。あれは十分に可能だ。大事なのは、居所をつかむことだ。これも、ヒューミント。金正恩の居所を知っていそうな奴は誰だ、と探して、誰かに接触する。で、次の奴を捕まえて、より知っていそうなのは誰だ、と聞く。5、6人追っていけば、必ず行きつく。そうすれば、斬首作戦は実行できる。
(3)ただ、殺したあとにどうするか。北の統治をどうするか。金正男を持ってくればいい。彼だって白頭(ペクトウ)の血筋だ、と。亡命政権構想だ。
おそらく、誰かが耳打ちしたのだ、金正恩に。米国のCIAは、おそらく北朝鮮と秘密裏に協議しているから。そのプロセスのなかで、「お前、そんなことをやっていたら、どうなるかわかっているな。べつにお前だけが白頭山の血筋じゃないからな」・・・・こういうようなメッセージを出したのではないか。暗殺、政権転覆もあるんだから、これ以上の核開発はやめろ、と。
それにタイして、金正恩は過剰反応した。政権転覆を防ぐためには、同じ血筋の奴を消せばいいんだ、と。そう考えると、あの暗殺の謎は、矛盾なくまとまる。
□佐藤優・監修『地政学から読み解く米中露の戦略』の「第3章 地政学から読み解く北朝鮮の戦略」の「アメリカには金正恩の首を取る能力がある ~金正男「暗殺の謎」はこれで説明がつく~」
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【佐藤優】北朝鮮の核開発はソ連を信用していないから ~他国からいつでも捨てられる可能性~」
「【佐藤優】演説からわかる北朝鮮経済の実態 ~驚愕の『金正恩著作集』~」
「【佐藤優】中国には北朝鮮核問題に係るビジョンがない ~北朝鮮への対応がフラフラしている理由~」
また、北朝鮮の場合だと、例えば米国が核実験をするな、というと、作るのはいいんだな、と受け取りかねない。核兵器を全部廃棄しろ、といったら、これは聞かないだろう。廃絶しなければ、ただちになにかやるのか、という話になる。そういうわけで、レッドラインの引き方はものすごく難しい。
普通に考えれば、核の小型化と米国に届く弾道ミサイルの開発の中止だが、そうはっきり言ってしまうと、北朝鮮という国は、「じゃ、ほかのことは何をしてもいいんだな」と考えて行動に移すからだ。
(2)米国は、北朝鮮のレジームチェンジ(その国の政治体制を根本的に変えること)はめざさない、と言っている。
しかし、それはわからない。するかもしれない。それは、どういうことかというと、レジームチェンジを狙わない前提は、北朝鮮が米国にとって脅威にならないことだ。
ところが、今の北朝鮮を見ていると、いずれの日にか、米国の脅威になる。しかも、今だったら北朝鮮を解体できる、という考え方もある。
2月にあった金正男の暗殺も関連している。あの暗殺計画は、公開情報ベースでは2016年12月から始まっている。その頃、国際社会で何があったか。トランプ大統領の誕生だ。2017年1月1日に、金正恩が演説をしている。間もなく、米国を射程に収めたICBMを発射する、と。
すると、すぐ3日に、トランプがツイッターで、そんなことは起こらない、と書いている。
どうやって起こさないようにするのか。二つの方法がある。
(a)今、北朝鮮は地下で核開発をしているから、そこをピンポイントで叩く。ただ、そのためには北にスパイを送って、場所を確認する。ヒューミントで情報を取って、そこにバンカーバスター(地中貫通爆弾)を撃ち込むのだ。2017年4月13日、米軍はアフガニスタンにある「イスラム国」の地下施設に、バンカーバスターの一種であるGBU43-Bを投下したが、これは北朝鮮への索制である、ともいわれている。
(b)金正恩を殺す。米韓合同軍事演習では平壌に突入して、金正恩を殺す訓練をやっていた。斬首作戦だ。あれは十分に可能だ。大事なのは、居所をつかむことだ。これも、ヒューミント。金正恩の居所を知っていそうな奴は誰だ、と探して、誰かに接触する。で、次の奴を捕まえて、より知っていそうなのは誰だ、と聞く。5、6人追っていけば、必ず行きつく。そうすれば、斬首作戦は実行できる。
(3)ただ、殺したあとにどうするか。北の統治をどうするか。金正男を持ってくればいい。彼だって白頭(ペクトウ)の血筋だ、と。亡命政権構想だ。
おそらく、誰かが耳打ちしたのだ、金正恩に。米国のCIAは、おそらく北朝鮮と秘密裏に協議しているから。そのプロセスのなかで、「お前、そんなことをやっていたら、どうなるかわかっているな。べつにお前だけが白頭山の血筋じゃないからな」・・・・こういうようなメッセージを出したのではないか。暗殺、政権転覆もあるんだから、これ以上の核開発はやめろ、と。
それにタイして、金正恩は過剰反応した。政権転覆を防ぐためには、同じ血筋の奴を消せばいいんだ、と。そう考えると、あの暗殺の謎は、矛盾なくまとまる。
□佐藤優・監修『地政学から読み解く米中露の戦略』の「第3章 地政学から読み解く北朝鮮の戦略」の「アメリカには金正恩の首を取る能力がある ~金正男「暗殺の謎」はこれで説明がつく~」
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【参考】
「【佐藤優】北朝鮮の核開発はソ連を信用していないから ~他国からいつでも捨てられる可能性~」
「【佐藤優】演説からわかる北朝鮮経済の実態 ~驚愕の『金正恩著作集』~」
「【佐藤優】中国には北朝鮮核問題に係るビジョンがない ~北朝鮮への対応がフラフラしている理由~」