語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】資本主義的な論理を超えて ~宗教と資本主義・国家~

2018年03月25日 | ●佐藤優
 <しかし宗教においてはやはり、資本主義的な論理とは違う、何らかの論理がないといけません。例えば教会で礼拝のあとに食べるお昼の代金は、プール金から出しているからお金を徴収しない、というのはよくある話です。そこでは経済的な論理とは違う原理が働いているわけです。
 (中略)
 【経済的な論理、資本主義的な論理とは違うことで心掛けているものについて】
 私の出身である同志社大学神学部は非常に小さい学部ですが、ここで勉強していた当時は、まだ神学の洋書が非常に高価でした。読みたい本が一冊7万円もしたから、学校の授業にまともに出ながら時給400円のアルバイトをしていると、半年経たないとその本が買えません。そこで教授に「アルバイトをしています」というと、翌月ぐらいに廊下ですれ違いざま「これ、あげるよ」などといってその本をくれたりするのです。わざわざ私のためにイギリスやドイツから航空便でその本を取り寄せてくれていたわけです。
 経済面だけでなく、勉強を教えてもらう意味でも、ものすごくお世話になった先生がいました。ところが先生たちに恩返ししようと思っても、彼らはすでに死んでいるので、次の世代に伝えていくしかない。そういうことを強く意識して、私も学生に対してできることをいろいろ一生懸命実践しています。
 池上さんも私も取り組んでいる、この教育というものは、そもそも宗教と強く関係しています。やはり経済合理性とは別のところで成り立っているからです。教会でも、中東のモスクに付属しているマドラサ(イスラムの教義を教える学院)でも、授業料などは取っていません。>

□池上彰・佐藤優・松岡正剛・碧海寿広・若松英輔『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』(KADOKAWA、2018)の「第Ⅰ部 対論」の「資本主義的な論理を超えて」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】「本来の宗教」は存在するのか ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】死生観の変化が私たちにもたらすもの ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】独身であることと権力 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】個別性と普遍性 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】宗教に関する訳語 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】宗教が土着化するということ ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】沖縄における魂観 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】国が追悼施設をつくるべきではない(靖国問題) ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】「国家主義教」 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】出世教、学歴教、etc. ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】お金という神さま ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】人間の思考と魂の根底に迫る ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』の目次
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【佐藤優】「本来の宗教」は存在するのか ~宗教と資本主義・国家~

2018年03月25日 | ●佐藤優
 本来の宗教について問う場合、そこには本来の宗教があったと想定されているはずですが、たぶんそれ自体が、そもそもないのではないかと私は感じています。
 (中略)
 現在の資本主義社会において、われわれはお金から逃れられない。そうである以上、教団のためにカネを出す、お布施を払う、献金することがきちんと組み込まれていない宗教はかえって大変危険だと思う、ということです。
 (中略)
 例えばワークと称して、完全なコロニーの中で共同生活をさせ、実質的には無償労働をやらせる、といったことは危険だということです。「それはお金を超克した生活なのだ」などといって労働させるのは危険です。もちろん特定の教団を指しているのではなく、あくまで一般論としての喩(たと)えですが。
 (中略)
 私の場合は、やはり収入の一割は宗教に使っています。自分の教会ではそのくらいの金額を必ず入れてくるのです。だからキリスト教は、結構、カネを使わせる宗教だと思っているのです。
 (中略)
 キリスト教はどちらかというと、定額制に近いのです。このくらいの収入の人はだいたいこのラインで献金しろという額がある。強制ではないけれど、半ば自主的にその額を献金するようになっています。
 (中略)
 新左翼諸党派の「圧倒的大カンパ」みたいなものではないかと。確かに宗教団体でも、例えば財務の形で一年に一回募る、というところもありますから。
 (中略)
 そのような形で、きちんとお金を取って教団を回していくのは、実はすごく重要です。そうでないと、宗教以外のところに依存した団体になる可能性があるからです。
 「中間団体」論とも関係しますが、宗教団体が中間団体(国家と個人のあいだに存在する集団)としてきちんと成り立つためには、やはりお金の問題は絶対に避けて通れません。お金の問題を回避し、お金の議論をしない宗教団体は、私はいかがわしいと思っているのです。そういう団体ほど、ある段階になると信者の全財産を持っていったり、その人間の労働を全部教団のために使わせる、といったことを平気ですると思うのです。
 (中略)
 そういう形態の宗教は存外多いのです。財産を全部手放してしまうことで、本人は深い宗教的な境地に入った、と短時間なら勘違いすることがありますから。>

□池上彰・佐藤優・松岡正剛・碧海寿広・若松英輔『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』(KADOKAWA、2018)の「第Ⅰ部 対論」の「「本来の宗教」は存在するのか」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】死生観の変化が私たちにもたらすもの ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】独身であることと権力 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】個別性と普遍性 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】宗教に関する訳語 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】宗教が土着化するということ ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】沖縄における魂観 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】国が追悼施設をつくるべきではない(靖国問題) ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】「国家主義教」 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】出世教、学歴教、etc. ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】お金という神さま ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】人間の思考と魂の根底に迫る ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』の目次
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