語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【国土】ダム機能を脅かす堆砂 ~ダムと原発に共通するもの~

2012年12月18日 | 社会
 12月2日、山梨県の中央道・笹子トンネルで崩落事故が起きた。死者9人。社会インフラの老朽化は、人命の損失に直結する。 

 (1)球磨川中流に位置する熊本県営荒瀬ダムが撤去される。
 本格的コンクリートダムを代替施設を造らずに完全に壊して自然の状態に戻す・・・・という作業は、荒瀬ダムが日本初の試みだ。
 荒瀬ダムは、熊本県企業局が1955年に完成させた発電用専用ダムだ。貯水容量1,014立米の築57年の中規模ダムだ。
 ダム計画が持ち込まれたとき、地元は大賛成だった。いい話ばかり聞かされたからだ。しかし、ダムができたら大違い。水質が悪化し、川底は下がり、漁業被害も生じた(魚が激減)。球磨川の激変ぶりに衝撃を受けた住民は、ダム撤去の運動を始めた。10年前から本格化した。理由の一つは、発電用ダムとしての役割低下だ。県内電力供給量に占める割合は、完成時の16%から0.6%まで急落していた。発電設備の更新、水利権の問題もあった。

 (2)ダム撤去には大きな壁がある。費用の調達だ。建設には国の財政支援があるが、撤去にはない。原則は管理者の全額負担だが、そもそも国はダムの撤去を想定していない。壊すための制度が確立されていない。
 荒瀬ダムの場合、熊本県の方針が、ダムの存続と撤去とに二転三転した。結論からすると、撤去費用は最終的に88億円と見積もられ、このうち熊本県企業局が内部留保を取り崩して69億円を用意し、残りの19億円は国が既存の制度を援用して支援することになった。
 社会インフラを撤去する際のルールを作るべきだ。撤去費用は、施設を造ったときの出資者が、その割合に応じて負担すべきだ。【五十嵐敬喜・法政大学教授】
 壁は、資金調達だけではない。河川や海に、いかにダメージを与えずに工事を進めていくか。ダムを壊すのは、さほど難しくない。しかし、一気にやると、水や土砂が下流や海に大量に流れてしまう。そのため、治水面や環境面に配慮した工法で撤去を進めなければならない。しかし、前例がない。手探りの工事を余儀なくされる。
 採用されたのが、「右岸先行スリット工法」だ。ダムの基礎部分に水抜き用の穴を2つ開け、ダム湖の水位を下げる。その上で8つの水門用鉄板を右側から一つずつ撤去していく。6工程を6年かけて進める計画だ。ちなみに、建設に要した時間は2年だった。

 (3)撤去作業で厄介なのは、ダム貯水池内に堆積している土砂(堆砂)だ。荒瀬ダムでも、50年間に溜まった堆砂量は80万立米。うちヘドロ10万立米、砂礫10万立米を浚渫し、取り除く計画だ。この処理に費用がかかる。

 (4)インフラの老朽化が問題になるのは、安全性や機能に支障をきたしている場合だ。
 ダムの機能とは、一般的なダムの場合、洪水期に水をため、渇水期に水を放流することで流量調整することだ。この機能を低下させるものが、貯水池内にたまる堆砂だ。
 堆砂容量は、あらかじめ計算される。100年間でたまる土砂量を想定し、この「堆砂容量」と治水・利水容量を合計したものがダムの総貯水量になる。換言すれば、ダムは100年以上使える構築物と想定されている。
 しかし、想定を大幅に上回る速度で堆砂が進むダムが少なくない。中には、完成後わずか10年ほどで実際の堆砂量が堆砂容量に迫っているダムさえある。
 国交省は、「社会資本メインテナンス戦略小委員会」で、ダムもその対象としているものの、なぜかダム堤自体と放流設備などにとどまり、堆砂についてはテーマとして挙げていない。しかし、
 ダムにとって一番のネックは堆砂だ。きちんと対策を取らないとダムの機能は維持できない。堆砂問題こそ、真正面から取り上げるべきテーマだ。国交省も問題意識は持っており、20~30年前から堆砂対策の議論を重ねてきている。さまざまな処理策が考案されたが、ベストな方法は見つかっていない。今では堆砂を除去するために新しいダムを造る、という構想さえ出ている。【宮本博行・元国交省キャリア技官】

 (5)きちんと堆砂対策をとっているダムはある。神奈川県の相模ダムがそれだ。
 総貯水容量6,320立米。県民の貴重な水瓶だ。だが、1947年に建設され、築65年超。ダム湖には堆砂容量を大幅に上回る堆砂がたまっている。このため、神奈川県は堆砂を取り除く事業を継続的に実施し、現在は1993年度から2019年度までの27年間の事業が進行している。今年度は、15億円の予算額で、15万立米の堆砂を取り除く計画だ。
 工事は、特殊な船を駆使して行われる。相模湖上流部で土砂を浚渫し、それをダンプカーでよそに運搬している。一部は侵食の進む相模湾沿岸に運ばれ、砂浜の回復や保全に活用されている。昨年度までに投じたカネは346億円。浚渫した土砂は430立米だ。
 こうした努力も、堆砂量の減少にはつながらない。新たな土砂の流入が続くので、堆砂量は浚渫しても横ばいだ。
 ダムは、原発と同じように、21世紀最大の産業廃棄物だ。【五十嵐教授】

 以上、記事「橋・ダム・高速道路・・・・が危ない 朽ち始めたインフラ」(「週刊ダイヤモンド」2012年10月30日号)に拠る。

 【参考】
【国土】朽ち始めたインフラ ~危ない橋・ダム・高速道路~
【国土】老朽化の進行、破裂、長寿命化への挑戦 ~水道~
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【食】見直される缶詰 ~美味も美肌も、缶詰で薬膳~ 

2012年12月17日 | 生活
 (1)世は空前の缶詰ブームだ(そうだ)。
 地味なイメージだった缶詰が、ここ数年、見直されている。グルメもうなる【注】「おつまみ缶」や「総菜缶」なども開発された。缶詰を使ったレシピ本も続々刊行されている。

 (2)「mr.kanso」神田店には、高さ2mほどの棚に、150種類もの缶詰がぎっしり。おなじみの「サンマのかば焼き」「サバのみそ煮」はもとより、おしゃれなデザインの缶、ハングルなどが書かれた海外製もあり、200~2,000円の値段が貼ってある。好きな缶詰を選ぶと、店が温めたり焼いたり、ひと手間加えて出す。
 「mr.kanso」の店名は、「缶詰倉庫」と、システムが「簡素」に由来する。2002年に大阪・なんばに第一号店がオープンして以来、珍しさや気軽さが受けて、いま8都道府県に18店舗を展開している。
 缶詰がおいしく、長期保存が可能なことに目を付けた。客は年々増え、今後は2年後に50店舗、5年後には100店舗をめざしている。【運営会社のクリーン・ブラザーズ(大阪市)】

 (3)「国分」(食品・酒類卸売大手)が一昨年から酒の肴として販売している「K&K缶つま」シリーズは、少し高めだが、大ヒットしている、という。「広島かき燻製油漬け」が500円(税抜き、以下同じ)、「ムール貝のワイン煮」が400円、「霧島黒豚角煮」が800円など。
 1年目は14アイテムで売上げ100万缶、2億円弱。2年目(昨年)は24アイテムで売上げ180万缶、3億5千万円、とほぼ倍増。今年は「小鰯のオリーブオイル漬け」「マテ貝の塩漬け」など新たな15アイテムを加え、300万缶、5億円以上の売上げを見込んでいる。【「国分」】
 缶詰のつまみというと「おじさん、しょぼい、カップ酒」のイメージだったが、その逆を衝くおしゃれでプレミアム感のある商品をめざした。【森公一・「国分」商品開発担当】
 イメージアップは成功した。酒の売場にも置かれるようになった。ABCクッキングスタジオと連携し、女子向けのレシピを開発。女子会イベントを頻繁に開催している。

 (4)「マルハニチロ食品」(水産缶詰大手)も今年、缶詰の新たな活用方法として、いつもの料理に缶詰を汁ごと足す「缶たし」を提唱。コクと味わいが増すといい、社員有志で「缶たし部」を発足させ、レシピを開発。同社のサイトで紹介するほか、11月にはレシピ本を刊行した。
 これまで100~150円の商品が売れ筋だったが、最近は200円前後のこだわり商品や季節限定の缶詰のニーズが高まっている。今春、「たけのこおかか煮」「さといもそぼろ飴」(いずれも180円)などの総菜缶も発売した。

 (5)缶詰の汁にはうまみはもちろん、栄養分も詰まっている。<例>サバ缶・・・・家でサバを料理した場合よりカルシウムが30倍多くとれる。【黒川勇人・「缶詰博士」】

 (6)缶詰は、下ごしらえが済んでいるため、本格的な料理が簡単に作れる。多忙な人にはぴったりの食材だ。
 缶詰で薬膳ができ、美しく健康になれる。私の体は、9割5分、缶詰料理でできている。【池田陽子・薬膳アテンダント/『缶詰deゆる薬膳』の著者】
 薬膳の理論(中国の伝統医学に基づく)によれば、すべての食材は体のいずれかに必ず作用する。<例>青魚(サバ、イワシ、サンマなど)は、「活血」食材(老廃物を洗い流す)で、美肌に効果がある。ホタテ貝は、アンチエイジング食材で、肌に潤いを与え、中医学の五臓のうち老化とかかわりの深い「腎」にも効く。カニは、血行を促進し、肩こりに効く。
 しかし、青魚を多忙な生活に採り入れるのは非常にハードルが高い。残業を終えて帰るころにはスーパーも閉まり、青魚は買えない。買えたとしても、調理が面倒だ。そこで、缶詰に目をつけた。缶詰は保存や調理が簡単。骨もやわらかいのでまるごと食べられる。一番おいしい旬の時期に詰めているので、薬膳にぴったり。缶詰を食生活に採り入れてからは、肌の調子も良くなり、月に数万円かけてい化粧品代は3千円に。肩こりやむくみも改善し、体重も5kg減った。いい化粧品を使うより、何を食べるかのほうが大切だ。一食一食をエステやサプリ、化粧品だと思って見直したほうがよい。【池田アテンダント】

 (7)「見直し」の一例。
  (a)ホタテ缶たし白ごはん<肌乾燥やシワ対策>・・・・焼きたてご飯1合にホタテ缶を汁ごと入れて混ぜ、数分間蒸らす。
  (b)パプリカとマヨあえ<血行促進や肩こりに>・・・・耐熱皿に薄切りにしたパプリカ1個とカニ缶1缶を汁ごと入れ、ラップをかけて1分間温め、マヨネーズ大匙1とすりおろしたニンニク少々を加え混ぜ、コショウをふる。
  (c)サケ缶温たまラダ<疲労回復、胃もたれにも>・・・・器に盛ったベビールーフの上に、温泉タマゴと汁を切ったサケ水煮缶1/2をのせ、ドレッシング(マヨネーズ大匙1、レモン汁大匙1、粒マスタード適量を混ぜ合わせたもの)をかける。
  (d)サバケット<シミ、クマ撃退、美白も>・・・・サバ水煮缶1/2、タマネギ、ケッパー、パセリのみじん切り、各大匙1、ヨーグルト大匙2、すりおろしニンニク1をかけ、粒マスタード、塩、コショウ(各適量)を混ぜて、バケットの上にのせる。

 【注】久住昌之・原作/谷口ジロー・作画『孤独のグルメ』(扶桑社文庫、2000)の第15話では、馬肉入りコンビーフを夜食のメニューに加えている。

 以上、深澤友紀(編集部)「美味も美肌も缶詰女子急増」(「AERA」2012年11月26日号)に拠る。
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【選挙】地域分散型エネルギーで創造するニッポンの未来

2012年12月16日 | 社会
(1)脱原発批判を批判する
 脱原発をすると電気料金は上がり、化石燃料の輸入も拡大するために、雇用状況や景気が悪くなって経済がダメになる・・・・という批判は、旧い産業構造に引きずられた「大声」であって、現実は真逆だ。
 電気料金が上がるという批判は、原発ゼロの場合だけを取り上げた意図的な誇張にすぎない。原発の比率にかかわらず、計算モデルでは、電気料金は1.4倍から2倍程度に上がる。しかも、これはあくまで「計算モデル上のお話」にすぎない。現実がそのようになるという「予測」ではない。
 自然エネルギーの費用は、現在、予想を超えて大幅に下がりつつある。<例>自然エネルギー費用の減免を受けているドイツの産業界は、むしろ自然エネルギー普及による電力費用低下という恩恵を受けている。
 日本の産業界の生産費用に占める電気料金の割合は1.3%にすぎない。これが2割上がったとしても、日本経済が壊滅することはない。
 大きな影響を受ける電力多消費産業(電力費用が製造費の10%)の売上げや雇用に占める割合は0.1%程度にすぎない。そうした産業だけに配慮すればすむ。
 むしろ、脱原発によって自然エネルギー転換という大規模な需要が創造され、日本経済が活性化する可能性が高い。脱原発が早ければ早いほど、再生可能エネルギーの導入が大きければ大きいほど、雇用や経済投資効果が大きく、経済が活性化する。
 原発は、電力会社の地域独占・市場独占を中心とする産官学の中央独占体制によって支えられてきた。これが、オープンで公正な電力システム改革によって、開放的で創造的な経済を生み出すビッグバンとなる可能性が期待できる。

(2)今後必要な3つの「転換」
 (a)「産業エネルギー」から「環境エネルギー」への基本思想の転換
   日本のエネルギー政策は、歴史的に経済成長を目的とする産業政策に位置づけられてきた。そのため「安く・大量のエネルギーを安定供給する」ことに重点が置かれた。一方、環境対策は「エンド・オブ・パイプ」(<例>煙突や排水溝に汚染除去装置を付ける)に留まってきた。
   エネルギーは文明を営む上でもっとも重要な要素なのだが、今日のエネルギー供給の主力(=化石燃料・原子力)は持続可能なエネルギー資源ではない(資源量が有限、地球温暖化や核廃棄物など深刻な環境影響をもたらす)。
   北欧など欧州の多くは、「持続可能な開発」をエネルギーにも具体的に適用している。単に産業経済のためではなく、環境面を軸に、社会的にも経済的にも持続可能で、かつ、将来世代や南北間の公平性を政策目標に盛り込みつつ、エネルギーシフトを進めてきた。

 (b)「供給側」から「ユーザー側」への転換
   日本のエネルギー政策やその産業構造は、徹底的に「供給側の視点」で作られてきた。電力会社が地域独占、ユーザーはエネルギーも電力会社も選択できない。政策も供給側への施策(<例>技術開発などの技術的対策、発電所設置補助)がほとんどだった。
   ユーザー側の視点からエネルギー政策の体系を見直す必要がある。「需要プル・市場プル」と呼ばれる政策体系だ。ユーザー側・市場側の価値・リスクに焦点を当て、電力市場改革や送電線のルール整備、融資債務保証といった制度面の改善や社会モデルの構築などの施策を重視するものだ。
   <代表例>「固定価格買取制度」だ。自然エネルギーを一定期間にわたって採算の取れる価格で購入する。日本では2012年7月に始まったばかりだが、この制度によって、欧州を筆頭とする多くの国・地域では、自然エネルギーが著しい普及を迎えている(農業・工業・ITに次ぐ「第4の革命」)。代替エネルギーとしての役割に留まらず、「新しい経済」として期待されるようになったからだ。

 (c)「大規模・中央集中・ヒエラルキー」から「小規模・地域分散・ネットワーク」への転換
   開かれたデモクラシーが必要だ。「第4の革命」では、エネルギー種が変わるだけでなく、大規模集中から小規模分散へと、エネルギーの体制やパラダイムが大きく変わろうとしているのだ。

(4)エネルギー小規模分散で地域経済が活性化
 地域社会にとって、これまでのエネルギー開発との関係は「開発される側」という受け身の関係だった(水力発電や炭鉱から、火力発電所や原発の立地まで)。地域は、自然環境、労働力、土地、さらには安全まで提供し、見返りに固定資産税、国の交付金、従属的な雇用を得てきた。かかる「植民地型開発」の行き着いた先の一つが、今回の原発事故にほかならない。
 自然エネルギーは、本来的に地域分散型だ。今後、エネルギーと地域社会との関係を根本的に変える可能性を秘める【注】。
 これまでエネルギーのほぼすべてを外部・他者に委ねてきた地域社会は、その見返りに(地域に十分な投資先がないことも相まって)、数兆円規模の地域マネーを地域外に流出させていた。このエネルギーとマネーを地域内に閉じるだけで、大きな地域経済効果が生じる。
 自然エネルギーは、小規模分散型だから各地に分散し、無数に広がっていく。地域社会との接点や衝突が増え、トラブルや紛争が発生する可能性がある。地域社会と折り合える「新しいルール」を編みだして、合意形成していくしかない。そのためにも、エネルギー自治(自然エネルギー事業に対する地域参加型の意思決定とオーナーシップ)が不可欠だ。
 21世紀は知識社会だ。自然エネルギー普及政策も地域づくりも、すへて洗練された知識創造から生まれる。そうした知識創造は、自由で開かれた創発的な雰囲気の地域社会がカギをにぎる。

 【注】「【選挙】【原発】安部自民と石原維新がもたらす経済損失 ~経済システムの変化~」 

 以上、環境エネルギー政策研究所「地域分散型エネルギーで創造するニッポンの未来 ~脱原発こそが経済成長への道~」(「週刊金曜日」2012年12月7日号)に拠る。

 【参考】
【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾
【選挙】安倍自民党総裁が財界に支持される理由 ~官僚的体質~
【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~
【選挙】安部自民「タカ派路線」のジレンマ
【選挙】世界はネットで政治参加している ~米国と韓国~
【選挙】国家と資本への隷属からの脱却 ~自分の情動をとり戻す~
【選挙】小泉「改革」の悪夢は甦るのか ~「失われた20年」の元凶~
【選挙】【原発】安部自民と石原維新がもたらす経済損失 ~変化しつつある経済システム~
【選挙】【原発】3・11以降の実践に希望 ~民主主義を問い直す~
【選挙】【原発】維持にうごめく種岡成一・電力総連会長
【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~
【選挙】右派勢力にとって千載一遇の好機 ~戦後民主主義のレジーム解体~
【選挙】「人々が生活できる社会」を考えない政治 ~最低賃金の廃止~
【原発】推進派が牛耳る原子力規制庁 ~安井正也緊急事態対策監~
【選挙】負担に口をつぐむ各党 ~世代間移転~
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【選挙】負担に口をつぐむ各党 ~世代間移転~

2012年12月15日 | 社会
(1)社会保障制度改革が争点にならない理由
 今回の総選挙で、社会保障制度の改革は重要な争点とは見なされていない。その理由は、
  (a)緊急の問題ではない。TPPのようにここ数ヵ月間で基本的な態度を決めなければならない問題ではない。
  (b)社会保障制度改革を真面目に考えれば負担増や給付削減を提案せざるをえないが、それは確実に不人気な政策となる。
    →どの党も、知らぬ顔の半兵衛を決め込む。
    →他党が口をつぐんでいるなら、わざわざ言い出して批判されたくない。
  (c)脱原発問題と比べて、わかりにくい。「どこに問題があり、それが何故問題か」が明確に理解されていない。550兆円の積み立て不足の問題が、まったく問題として意識されていない。政府は「問題でない」という誤った説明をしている(積極的に手をつけない)。すると、負担は将来世代につけ回しされる。

(2)世代間移転
 年金制度が世代間移転をもたらすこと自体は、かなり広く認識されている。しかし、「それが何故問題か」は、十分に理解されていない。
 世代間移転とは、「ある世代が得して、他の世代が損する」損得の問題だ。<例>遺産相続、(移転の範囲を広くとれば)扶養や教育。
 例と合わせて考えれば、年金制度が直ちに問題だ、とは言えない。しかし、世代間移転は次の問題をもたらす。
  (a)将来の経済パフォーマンスに悪影響を及ぼす。その理由を例示しよう。2012年をXとし、その10年後の2022年をYとする。
    ①年金の場合、将来時点(Y)において生産年齢人口が重い負担を負うが、年金受給者が同じ社会(Y)に存在している。よって、現時点(X)から将来時点(Y)に負担が転移されるわけではない。問題は、将来時点(Y)において、若年者から高齢者への移転が起こる、ということだ。生産年齢人口が負担を負えば、ただでさえ高い日本の人件費は、さらに高くなる。現在すでに、社会保険料の負担は企業が人を雇う際の最大の障壁になっている。非正規労働者の増加は、社会保険料の負担を免れようとする企業の行動によってもたらされた、という面も強い。かくして、日本の国際競争力が削がれる。
    ②個々の加入者は、自分の貯蓄で老後生活を賄う必要がなくなるので、貯蓄を減らす。しかし、政府は、それに対応する積立金を持っているわけではない。よって、資本蓄積が阻害される。それが経済の生産性を低下させる。
    ③要するに、世代間移転とは、単なる世代間の損得問題ではなく、経済全体のパフォーマンスの問題でもある。
    ④贅言ながら、国債がもたらす問題も③と同じだ。内国債の場合、将来時点(Y)において償還や利払いのために増税すれば納税者は負担を負うが、同時点(Y)に存在している国債の保有者は償還や利払いを得る。つまり、現在(X)から将来(Y)への異時点間移転が起こるわけではない。だから、国債で「負担を将来に残してはならない」という論説は誤りだ(負担の異時点移転が起こるのは、対外資産が関わる場合だ)。とはいえ、国債の累増は、資本蓄積の阻害などを通じて、経済のパフォーマンスを低下させる。

  (b)世代間移転は、世代内の公平の問題を引き起こす。
    ①年金制度がない社会では、高齢者は自分が蓄積した資産を取り崩して老後生活の資金にする。しかし、老後生活が年金で保障されれば、資産を取り崩す必要はないから、多額の資産を保有する高齢者は、多額の遺産を残し、彼らの子がそれを受ける。保険料負担は社会全体で負うから、年金制度は富裕層に有利な仕組みだ。   
    ②介護保険についても①と同じことが言える。高齢者が保有する多額の資産は、介護保険制度の下では介護費用に使われず、子に相続される。他方、介護費用は社会全体で負担する。この問題も、①と同じく問題であることがほとんど意識されていない。しかし、格差是正を言うならば、真っ先に手を付けるべきものだ。

(3)対策
 不公平の是正には、税制の活用が必要だ。
   (a)相続税と資産所得課税を強化する。・・・・「税と社会保障の一体改革」は、本来こうした政策を意味すべきものだった。消費税は、高齢化社会の財源としてあまり適切なものではない。それは、社会保険料を負担する若年者世代も等しく負担するものだからだ。
   (b)本来は、高齢化社会の受益と負担の全体的体系を示す必要がある。その際重要なのは、「負担なくして受益なし」という自明の事実だ。問題は、「誰が負担するか」だ。これを決めるのが政治だ。
   (c)誰が負担するかを明示しない政治綱領は、不誠実な綱領だ。その情報がなければ、どこに投票するかを決められない。
   (d)2009年の総選挙で、民主党のマニフェストは、何の負担もなしにバラ色の社会が実現できる、という幻想を振りまいた(この点で不誠実な綱領だった)。
   (e)今回の総選挙で、民主党と自民党の政策公約には負担の全体像がまっったく読み取れない。
   (f)日本の政治が大衆迎合、ポピュリズムと呼ばれる最大の原因は、政党側で誠実な綱領を出さないことだ。打ち出の小槌がないことを、国民はよく知っている。

 以上、野口悠紀雄「総選挙で社会保障の負担の全体像を示せ~「超」整理日記No.639~」(「週刊ダイヤモンド」2012年12月15日号)に拠る。

 【参考】
【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾
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【選挙】「人々が生活できる社会」を考えない政治 ~最低賃金の廃止~

2012年12月14日 | 社会
 (1)大久保哲朗・弁護士は、11月末に「働き方ネット大阪」が大阪市内で開いた集会で、同市の生活保護受給者が増えた背景として、失業率の高さ、非正規率の高さなどを挙げた。つまり、生活保護率の高まりの背景に、雇用政策の無策がある。

 (2)(1)の集会の前日、維新の会が公約で「最低賃金の廃止」を打ち出した。賃金を下げれば人を雇えるという企業が多い、故に最低賃金を廃止すれば雇用が増える・・・・という論法だ。
 しかし、最低賃金を廃止すれば、賃金下落に歯止めがきかなくなる。働いても食べられなくなった人々が大阪市(ほかの大都市)に大量流入し、最後のセイフティー・ネット=生活保護が壊れてしまう。
 反発の大きさにびっくりしたのか、維新の会は公約を「廃止」から「改革」に修正した。
 まともな雇用の創出を放棄し、働き手んい負担を押しつけ、失業率を形だけでも下げようとした姿勢が、はしなくも露呈した。

 (3)「雇用を劣化させることで雇用数を増やし、失業率を名目上は抑え込む」・・・・という政策は、ちっとも目新しくない。
 1999年、労働者派遣法が規制緩和され、26業種でしか認められていなかった派遣労働が、原則すべての業務で認められるようになった。この緩和も、「不況で失業率が上昇しているので、雇いやすくすれば失業率が下がる」という経済界の大義名分の下で行われた。

 (4)(3)のツケは大きかった。
 2002年からリーマン・ショック(2008年秋)まで、日本の景気は長期回復を続け(「イザナギ越え」)、過去最高の利益を記録する企業もあいついだ。
 だが、こうした規制緩和によって、非正規の働き手は働き手の3人に1人に急増した。彼らは労働組合に組織されず、短期契約で次の契約更新を断られることを恐れて賃金交渉もできなかった。
 この間、大手企業の経常利益に対する人件費比率は下がり続けた。非正規を増やすだけで労使交渉なしに人件費を抑え込める。利益が働き手に分配される仕組みは壊れた。1997年以降、主要先進国では唯一、賃金が低下傾向を続けている国となった。
 その結果、消費は盛り上がらず、力強い景気回復は蜃気楼となった。

 (5)最低賃金廃止がもたらす歪みは、(4)だけではない。
 働き手が生活できる賃金の下値がなくなれば、まともな賃金を払う産業づくりをめざすインセンティブが企業から失われる。「企業が困ったら賃金を下げればよい」という底辺への競争が激化する。
 雇用とは、働き手が身を立てられる対価があることが前提だ。だからこそ、雇用の増加によって生活保護などの社会保障負担が軽くなる。
 そのような条件を欠いた雇用は、もはや「雇用」とは呼べない。

 (6)最低賃金の廃止にせよ、解雇規制の緩和(同じく維新の公約)にせよ、共通するのは、「人々が生活できる社会」への政治の意志の放棄だ。
 産業構造の転換への対応策を欠いた橋下“維新かぶれ”徹の治政の下、食べられない雇用を生活保護でかろうじて支える人々が急増する大阪市は、日本社会の近未来像になりなねない。維新の公約は、そんな世界の象徴だ。

 以上、竹信三恵子(和光大学教授)「維新の雇用政策は政治の意志の放棄だ もはやこれを「雇用」とは呼べない ~竹信三恵子の経済私考~」(「週刊金曜日」2012年12月7日号)に拠る。

 【参考】
【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾
【選挙】安倍自民党総裁が財界に支持される理由 ~官僚的体質~
【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~
【選挙】安部自民「タカ派路線」のジレンマ
【選挙】世界はネットで政治参加している ~米国と韓国~
【選挙】国家と資本への隷属からの脱却 ~自分の情動をとり戻す~
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【選挙】【原発】安部自民と石原維新がもたらす経済損失 ~変化しつつある経済システム~
【選挙】【原発】3・11以降の実践に希望 ~民主主義を問い直す~
【選挙】【原発】維持にうごめく種岡成一・電力総連会長
【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~
【選挙】右派勢力にとって千載一遇の好機 ~戦後民主主義のレジーム解体~
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【選挙】右派勢力にとって千載一遇の好機 ~戦後民主主義のレジーム解体~

2012年12月13日 | 社会
 (1)早期解散は、自民・公明にとって干天の慈雨だった。第三極の態勢がが整わないうちに、民主党の分解を伴って解散してくれたのだから。党首討論における安部総裁の狼狽を補って余りあるプレゼントだ。
 野田首相が一発で倒したのは、実のところ、民主党自体だった。

 (2)新旧の大根役者が入り乱れて戦う選挙戦で、本当に問われているのは政争争点(原発やTPP)以前に、民主主義の基本原理を持続できるかどうか、だ。
 自民党は、安部総裁の下で、憲法改正と国防軍創設を前面に打ち出している。
 さらに、その右端には、日本維新の会が立ち上がり、核武装や徴兵制を「個人的に」唱える政治家が指導者となっている。
 自民党と日本維新の会に共通しているのは、戦後レジームの打倒【注】という意欲だ。
 民主党の政権能力欠如ゆえに強い指導者を待望する空気が強まっている上に、隣国との領土紛争でナショナリズムを刺激しやすい状況が重なり、右派勢力にとっては積年の願望を実現する千載一遇の好機となった。

 (3)言うまでもなく、改憲だの核武装だのは、日本の国難を顧みない的外れの自己満足だ。
 そもそも民主主義における国家とは、国民の生命を守り、生活の土台を整備、確保するために存在する。
 今、日本国民の生命を脅かしているのは、外敵ではない。福島第一原発事故に起因する放射能だ。この事故によって、広範な国土が毀損され、10万人超の国民が故郷から締め出されている。日本という国は、国家といしての義務を果たしていない。

 (4)戦後レジームが権利意識を肥大させ、国民が利己的になった・・・・などと説教したがる見当外れの政治家が、右派政党のトップにいる。
 冗談ではない。
 増長し、自分の利益だけを追求しているのは、
  (a)原発事故を引き起こした電力会社の経営幹部、
  (b)そうした政策を続けてきた官僚や学者、
  (c)そうした政策を最終的に決定してきたかつての政権党
ではないか。
 教育だの憲法だのを語るのは、政治、行政、経営に携わる者が償いの義務を果たしてからにしてもらいたい。

 (5)政治の任務という点では、民主党も厳しい反省から選挙戦を戦わねばならない。
 民主党の最大の誤りは、官僚的発想に染まったことだ。
 国家財政という狭いまな板に生身の国民を載せて、はみ出す部分を切り捨てるのが役人の発想だ。民主党政権も、被災者救済について同じ発想に染まってしまった。

 (6)これから、社会保障でも(5)と同じことが起きそうだ。
 本来の政治の任務は、国民の生命を守るためにどれだけの資源が必要かを測り、国民を説得してそれを集めることだ。細かい政策より、この基本姿勢を明らかにすることが民主党に求められる。

 (7)民主主義の基本を守るのか、捨てるのか、という選挙において、メディアの果たすべき役割は極めて大きい。
 選挙報道において、候補者の扱いについて公平を確保することは言うまでもない。しかし、人間の尊厳をわきまえないような政治家を同列に扱うのは疑問だ。
 他方、当たり前のことだが、民主党は政権党として、これまでの政権運営について厳しい追及を受けなければならない。
 同時に、かつての政権党や右翼的第三極の指導者は、過去の言動、行状が吟味され、政治家の適格性が問われる。
 
 【注】例えば石原慎太郎・維新の会代表の、地方自治レベルにおける戦後レジーム解体(「【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~」)。

 以上、山口二郎「総選挙で論ずべきことは民主主義に対する姿勢」(「週刊東洋経済」2012年12月15日号)に拠る。

 【参考】
【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾
【選挙】安倍自民党総裁が財界に支持される理由 ~官僚的体質~
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【選挙】国家と資本への隷属からの脱却 ~自分の情動をとり戻す~
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【選挙】【原発】安部自民と石原維新がもたらす経済損失 ~変化しつつある経済システム~
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【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~
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【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~

2012年12月12日 | 社会
 石原慎太郎、都知事選(1967年4月15日)、落選【当選者は美濃部亮吉】。都知事選(1999年4月11日)、当選【1期目】。都知事選(2003年4月13日)、当選【2期目】。都知事選(2007年4月8日)、当選【3期目】。2012年10月25日、都議会議長に辞表を提出。

(1)福祉
 (a)1期目、当選するや否や、「何が贅沢と言えばまず福祉」と気炎をあげ、都独自のさまざまな福祉政策を切り捨てた。
   ①特別養護老人ホームの運営費補助、廃止。
   ②区・市町村に対する特別養護老人ホーム用地費助成、廃止。都内の特養入所待機者43,060人(2010年)にも拘わらず。
 (b)東京都23区の餓死者数は、26人(1999年)から60人(2011年)と2倍以上増えた。
 (c)群馬県渋川市の高齢者施設「たまゆら」で火災が起き、焼死者10人(うち7人が都民、うち6人が生活保護受給者)の事件に関して理事長および職員が逮捕されたことを受け、石原は記者会見で「カネがない」と突き放した。他方、オリンピック招致のため、150億円を浪費。4,000億円の基金も積んでいる。ちなみに、都の予算規模は12兆円(2012年度)だ。

(2)医療
 (a)2001年、「都立病院改革マスタープラン」を策定。16あった都立病院のうち11病院を8に統廃合し、残り5は4の病院に統合したうえで、民営・公社化した。
 (b)医師不足の直接の責任は医学部定員を抑制してきた国にあるが、都にも責任がある。2008年までの10年近く、都立病院の医師給与は全国の自治体病院の中で最低水準だった。
 (c)2008年、36歳の妊婦が7病院に受け入れ不能と言われ、最終的に、最初に問い合わせた都立墨東病院が当直以外の医師を呼び出し、やっと受け入れた。帝王切開で胎児は産まれたものの、女性は死亡した。産科医不足から、同病院が母体搬送を制限していたことが直接の原因だった。都の「選択と集中」政策で、築地産院と母子保健院が墨東病院に統廃合されたことが、事故の背景にある。東京都東部地域の産科機能は集約され、同病院はリスクが高い新生児と妊婦に24時間態勢で対応する総合周産期医療センターに都から指定されていた。だが、産科が地域に分散していたら母親は救えたかもしれない。都の、119番通報を受けてから救急車が患者を医療機関に搬送するまでの所要時間は、平均54.3分だ(2010年、全国最下位)。2006年と比較して10分以上遅くなっている。
 (d)看護師が不足しているにも拘わらず、都立の看護学校と定員を11校1,340人(2000年)から7校560人(2009年)に削減した。団塊世代が75歳以上になる2025年問題では看護師不足から医療が崩壊すると言われているのに、逆行している。
 (e)都立の3小児病院も統廃合され、2010年、府中に小児総合医療センターが設立された。
 (f)1999年9月、重症心身障害児(者)の施設、府中療育センターを視察した後の記者会見で、石原は、「ああいう人っていうのは人格があるのかね」という感想を述べた。

(3)教育
 (a)1期目、2000年に、都教委は人事考課制度を導入した。教職員の「通信簿」だ。この成績が人事や給与に反映される。内容は①自己申告と②業績評価の2本立てだ。②は副校長による4段階絶対評価と教育長による4段階相対評価で行われる。当然、教育長、校長、副校長の管理が強まり、「従順」でない教員の評価は低くなる。
 (b)2001年、主幹制度が導入された。2013年、指導教諭制度も始まった。
 (c)2006年、職員会議での挙手・採決が禁止された。職員会議の形骸化だ。(b)の中間管理職の増加と相まって、教職員が対等に協働する自治的学校運営は上意下達の学校運営に変わった。最近都教委が呼ぶところの、学校「経営」となった。
 (d)2009年、「東京都高度情報化システム(TAIMS)」が導入された。教員各自に1台、都教委直結のパソコンが貸与され、入力した教材プリント、試験問題などが都教委に丸見えとなるシステムだ。
 (e)管理は、思想統制と表裏一体化している。その象徴が、2003年の「10・23」通達だ。卒業式や入学式などで国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する、という内容だ。違反者に対する処分は苛烈だ。①不起立1回目で戒告。昇給延伸3ヵ月、勤勉手当1割カットなどの経済的制裁を伴う(退職金や年金にも反映する)。②不起立2回目で減給10分の1が1ヵ月。③3回目で減給10分の1が6ヵ月。④4回目で停職1ヵ月。⑤5回目で停職3ヵ月。⑥6回目で停職6ヵ月。・・・・これまで累計441人の教員が処分された。
 (f)通達違反の教員は、丸1日かかる「服務事故再発防止研修」を受けねばならない。反省文を書かされ、公務員法の講義を受講する。しかも自校の校長同伴だ。校長は隣に座って監視する。トイレに立つと、都教委の職員が監視のためについて来る。しかも、違反教員の同僚教員全員が^「校内研修」を受けさせられる。連帯責任だ。個人を集団で監視し、縛りつける巧妙な方法で、戦前の隣組と同じだ。
 (g)管理や統制になじめず、病気になって休職する教員が増えている。都の公立高校の病気休職者は、75人(2003年度)から114人(2010年度)の1.5倍に増えた。

(4)株式会社新銀行東京
 (a)2期目の公約にあげた新銀行は、単なる思いつきから生まれた(2007年、都知事選における浅野史郎候補との討論)。1期目に、大手銀行への外形標準課税導入失敗でメンツをつぶされたことへの報復もあったらしい。
 (b)当初、石原は、都が出資した1,000億円は将来数兆円になる、と豪語していた。しかし、都の出資金を毀損したのみならず、追加出資はしないとの確約を翻し、400億円もの追加出資を決めた。
 (c)2008年6月、都と新銀行の経営会議記録(「ブリーフィングメモ」)が都議会で暴露され、都が新銀行にマスタープランの目標額達成を迫った圧力が過剰融資の原因だ、と追及された。石原のために、都官僚が新銀行に圧力をかけたのだ。
 (d)新銀行破綻の原因をめぐる外部調査報告書によれば、2006年7月には「デフォルト(こげつき)による損失と利息収入との均衡は完全に崩壊」していた。新銀行の内部にはストレスが満ち、労働問題が惹起した。横山剛は、モビング(職場における集団いじめ)被害の損害賠償を求めて新銀行を提訴した(2012年11月、勝訴)。

(5)築地市場移転
 (a)1期目、1999年9月に築地市場を視察、「古い、狭い、危ないなあ」と述べ、豊洲買収交渉が本格化、翌年10月には知事の腹心、浜鍋武生・副知事が乗り出した。
 (b)2001年1月、東京ガスは、自社の都市ガス製造工場があったことから、豊洲が高濃度のベンゼンなどの有害物質で汚染されている、という調査結果を公表した。だが、石原は同年2月に都議会で、「移転候補地は豊洲」と表明した。そして、同年7月、東京ガスと基本合意を締結。石原は、汚染を承知の上で豊洲買収を決定した。
 (c)2005年、都は、東京ガスが汚染の一部は撤去するものの、汚染は拡散を防止すればよい、とする確認書を取り交わした。この確認書には、東京ガスの汚染対策完了後に新たな汚染が見つかっても同社に処理費用を負担させる「瑕疵担保条項」がなかった(2010年1月5日、朝日新聞がスクープ)。
 (d)2006年、都議会公営企業会計決算特別委員会で、東京ガスの処理完了後に同社の操業に基づく汚染物質が発見された場合に同社が処理する「瑕疵責任」はあるか、という質問に対し、後藤正・新市場建設調整担当部長は、「東京ガスが処理をするという了解を得てございます」と虚偽答弁を行った。
 (e)都の汚染対策費は508億円(このほかに東京ガスが78億円を負担)は、土地の購入費1,980億円の25.6%になる。一般の土地売買では、汚染対策費が土地価格の2~4割を越えると不成立になる場合が多い。本来「塩漬け」になりそうな土地を、都は、東京ガスから通常の価格で買収した。
 (f)築地市場の仲卸ら13人は、汚染されていない前提で地価を算定、購入したのは違法だ、として2010年5月、石原らに、都に公金返還を求める訴えを東京地裁に起こした。
 (g)東京中央卸売市場労働組合が豊洲移転反対のデモを行い、集会を開いたことから、2007年の都知事選は豊洲移転問題が争点になった。石原はやむをえず汚染の調査と対策を公約した。三選後、専門家会議が設置され、会議の方針により調査した結果、土壌からベンゼンが環境基準の43,000倍、シアンが930倍など深刻な汚染が判明した。反対運動がなければ、汚染実態は解明されなかった。
 (h)都は、土壌汚染対策した上で、計画から2年遅れの2014年に開場を予定している。
 (i)2011年の大震災では豊洲も液状化し、108ヵ所で地価の砂や水が噴出した。地震で液状化すれば地中の汚染物質が噴出し、市場機能は停止して大混乱が起こるだろう。
 (j)2012年9月、都の調査で、不透水層内部からも大量の汚染が見つかった。
 (k)日本環境学会は、土壌汚染対策について調査や公開討論会を何回も申し入れたが、都は拒否し続けている。<豊洲に行かなければリスクはゼロ。豊洲移転でリスクを負うのは市場で働く人々や消費者。利益を得るのはゼネコンや流通業者と、それらに支えられた石原知事だ>【坂巻幸雄・日本環境学会】

 以上、永尾俊彦(ルポライター)「石原都政で何が失われたか」(「世界」2013年1月号)に拠る。

 【参考】
【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾
【選挙】安倍自民党総裁が財界に支持される理由 ~官僚的体質~
【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~
【選挙】安部自民「タカ派路線」のジレンマ
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【選挙】国家と資本への隷属からの脱却 ~自分の情動をとり戻す~
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【選挙】【原発】安部自民と石原維新がもたらす経済損失 ~変化しつつある経済システム~
【選挙】【原発】3・11以降の実践に希望 ~民主主義を問い直す~
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【選挙】【原発】維持にうごめく種岡成一・電力総連会長

2012年12月12日 | 社会
 (1)連合(会長:古賀伸明)は、解散発言の翌日、11月15日、民主党と「国政選挙に向けた連合と民主党の政策協定」を締結し、民主党支援を確認した。協定は、原発政策について次のように記す。
 <原子力エネルギーに代わるエネルギー源の確保、再生可能エネルギーの積極推進および省エネの推進を前提として、中長期的に原子力エネルギーに対する依存度を低減していき、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会を目指していく。>

 (2)連合は、労働組合だが、被曝労働者を生む原発を推進する立場にあった。その自己批判はいまだにないが、今年9月、「脱原発依存」をめざす方針を打ち出した。
 しかし、その方針も今回の政策協定も、いつ原発をゼロにするのか、あるいは原発を残すのか判然としない。玉虫色だ。
 連合内部では、原発問題については真っ二つに割れていた。中央執行委員会でも議論しにくかったらしい。野田内閣で「2030年代に原発稼働をゼロにする」という見解が出て、やっと合意に至った。【元連合系労組幹部】

 (3)連合は、方向性の違う2つの労組が一緒になってできた組織だ。
   (a)旧総評系・・・・永年、反原発運動を支援してきた。原水爆禁止日本国民会議を戦後長らく支援してきたのは旧総評だ。
   (b)旧同盟系・・・・原発を推進してきた。わけても、原発推進に力を入れているのが、電力会社の労働組合、電力総連(会長:種岡成一)だ。東京電力労働組合執行委員長などは、原発事故後に脱原発を掲げる議員を「裏切り者」と非難した。
 
 (4)連合で一応「脱原発依存」の方針が決定された今でも、電力会社労組では、政策協定の中に原発推進の内容を盛り込んでいるところもある。
 民主党議員は、労組依存度が高い。
 近畿地方選出のある候補者は、今回、(3)-(a)の労組と脱原発をめざす政策協定を交わしながら、一方で電力会社労組と原発推進の協定を結んでいる。

 (5)民主党内で原発ゼロをめざす議員の中には、今回の選挙で電力労組の支援をあえて受けない候補者もいる。
   (a)古川元久・前国家戦略担当大臣・・・・愛知県選出。中部電力労組からの推薦を辞退した。
   (b)脱原発を掲げ、電力労組からの推薦を辞退する民主党の候補者は、他にもいる。「脱原発法制定全国ネットワーク」【注】が議員会館で開いた院内集会では、電力労組からの原発推進「圧力」の具体的な報告が相次いだ。
 電力労組から推薦をもらう際に交わす政策協定には、原発推進が明記されている。それでは原発に反対することができない。仮に支援を要請して、対面で協定の文言に反対しては喧嘩になってしまうから、辞退した人はいるようだ。【民主党関係者】

 (6)甚大な被害を出しながら、原発推進をやめない労働組合は、働く者をどうやって守るのか。

 【注】「脱原発法制定全国ネットワーク

 以上、村上力(ジャーナリスト)「労働組合にもかかわらず原発維持にうごめく種岡成一会長」(「週刊金曜日」2012年12月7日号)に拠る。

 【参考】
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【選挙】【原発】3・11以降の実践に希望 ~民主主義を問い直す~

2012年12月11日 | 社会
 (1)この総選挙、自分のことしか考えていない人たちが、恥もプライドもかなぐり捨てて、ただ生き残るために繰り広げる壮絶な椅子取りゲームとしか見えない。勝ち残るためには、少しでも多くの力を獲得するためには、政治家にとってもっとも重要である(はずの)政策に多少の差異があろうとも、それどころか正反対な意見があろうとも気にせずに組むらしい。
 こうした積み重ねが政治への信頼を奪い尽くした。が、彼らには、どうでもいいことらしい。

 (2)震災と原発事故を受け、この国では1年8ヵ月の間、「私たちは何を基準に、何を大切にして生きていくのか」という真摯な問いに多くの人が向かい合い続けた。
 その問いに対する一つの回答が、「再稼働反対」を訴えて官邸前に20万人が集結した「紫陽花革命」だ。デモなど、ちっとも収束しない全国各地の動きだ。

 (3)3・11で、この国のさまざまな問題が噴出した。
 原発事故はまだ収束していない。いまだに多くの人が避難生活を余儀なくされている。復興は遅々として進まない。
 社会保障制度は綻び、失業率は高止まりしたまま。貧困ライン以下の暮らしを強いられる人々が増え続ける。
 一刻を争う問題が山積みなのだが、多くの政治家たちは覇権争いに終始しているとしか見えない。
 こんな光景から、「絶望」の二字が浮かび上がる。

 (4)しかし、楽観してよい。なぜなら、3・11以降、民主主義を一から問い返す実践が重ねられてきたからだ。数百万人単位の人が街頭に繰り出し、直接民主主義を行使した。あの日以降露呈したこの国のさまざまな矛盾と政治のあり方について、必死で考え、議論してきた。
 原発は、エネルギー問題であると同時に、戦後日本政治の矛盾の象徴だ。決して情報は公開されず、非民主的な手続きがまかり通る。さまざまな利権が幾重にも絡んでいる。自民党政治の最悪な部分を凝縮した犠牲のシステムだ。

 (5)いま、脱原発運動に取り組む人たちは、各政党の原発に対するスタンスを調べ、公開している【注】。
 脱原発に対するスタンスを調べ、着実に実践してくれそうなのは誰なのか。

 (6)むろん、争点は他にもたくさんある。増税、社会保障、TPP、基地問題、雇用、そして復興。
 それぞれに、この国一人一人の生活と命がかかっている。
 私たちはどんな社会を目指し、どんな未来を次世代に残すべきなのか。総選挙を機に、大いに語り、考えたい。

 【注】例えば、
反原発議員補完計画始動! <反原発候補者リストについて>」(「ガイガーTIMES」)
「脱原発基本法案」提出・賛成・賛同議員」」(「脱原発法制定全国ネットワーク」)

 以上、雨宮処凛「民主主義を問い直す 3・11以降の実践に希望 ~国会前の怒りの声を聞け!~」(「週刊金曜日」2012年11月30日号)に拠る。

 【参考】
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【選挙】【原発】安部自民と石原維新がもたらす経済損失 ~経済システムの変化~

2012年12月10日 | 社会
 今回の選挙の争点は、脱原発、社会保障(消費税)、TPPで、歴史的な選択となる。何が歴史的選択なのか。

(1)全体状況
 (a)近過去
   1930年代の大恐慌以来、「100年に1度」の世界的経済危機が続いている。欧州の経済危機は、簡単には収束しそうもない。米国も「財政の崖」に直面し、4,000億ドル以上の緊縮財政を迫られる危険が年末に迫っている。それはアジアにも及び、中国も経済成長率が10%台から7%台に下がり、韓国もゼロ成長だ。
   日本は、金融機関の不良債権処理に失敗して以来「失われた20年」が続き、さらにリーマン・ショックで、それまでの新自由主義的な経済政策による矛盾が貧困・格差の拡大などの形で広く社会に顕在化した。
   それが民主党の政権交代(2009年)につながったのだが、マニフェストが実現できなかったり、公約にないことをやったりで、民主党への信頼が失われていった。挙げ句のはて、野田民主党政権は、それまで失政を続けてきた自民党と公明党との連携を模索し、社会保障改革なき消費増税で、党を割っても「3党合意」を優先した。

 (b)現在
   不良債権処理に始まり原発事故に至る無責任体制をごまかすために、再び劇場型政治が展開され、威勢のよい極端な主張がもてはやされるようになった。
    ①自民党・・・・その公約は、もはや戦時体制と似てきた。昔は戦費、今は公共事業。改憲による国防軍の創設は、米軍と一体化していく軍事国家の推進。教育委員会の独立をなくす教育改革。
    ②維新の会・・・・当初の「原発ゼロ」の看板を下ろし、TPPも業献金も看板を下ろし、新党首の石原慎太郎は核武装を唱える。「維新八策」は、もうボロボロだ。

 (c)近未来
   安部自民と石原維新が組んだら、中国・韓国をはじめ、アジアで孤立し、経済的な利益が失われる。
   日本の輸出市場は中華圏で3割、アジア全体では5割超。日本は生きる糧を失う。実際、尖閣諸島をめぐる領土問題では、世界一の自動車市場である中国への日本車生産が84%も落ちた。
    ①選択肢(その1)・・・・経済が閉塞すると、ますます軍事化に拍車がかかる。世論調査によれば、日本は今、そういう道を選択しようとしている。
    ②選択肢(その2)・・・・「脱原発、反消費税、反TPP」を掲げる側、「未来の党」はどれだけ浸透するか未知数。原発に反対する人たちも、経済性を犠牲にしても安全性を優先すべき、といったレベルの批判にとどまっている。問題は、原発を続けることが日本経済をダメにしている点なのだ。

(2)経済・社会システムの転換
 (a)経済システムの変化
   今回の総選挙の歴史的選択とは何か。それは、日本が新たな経済・社会システムに移行できるかどうか、だ。 
   日本および世界の経済システムは、20世紀型から21世紀型へどう変わろうとしているのか。その将来ビジョンの中に原発、社会保障、TPPの筋道を描く必要がある。いま、次の(a)から(b)に変わっていく過程にある。
    ①「集中メインフレーム型」/スーパーマーケット型・・・・20世紀の経済システム。「重厚長大産業」を中心に大規模化してコストを下げ、大量生産・大量消費の社会を作りだした。
    ②「地域分散ネットワーク型」/コンビニ型・・・・21世紀の経済システム。コンピュータの大容量化・高速化・小型化による情報の総記録社会を基礎とする。小規模分散の法がリスクも少なく効率的になっていく。
   原発事故は①の終わりを意味する。②の再生可能エネルギーは、ITによる住宅・工場・町のスマート化、スマートグリッド(賢い送配電網)いよって省エネと一体化しつつ成り立つようになっていく。

 (b)停滞
   ところが、バブル崩壊後の不良債権問題でも、福島原発事故でも、リーダーたちの経営責任は一切問われていない。その結果、1930年代から戦時中にかけてと非常に似てきている。脱原発こそ、新しい産業と雇用を生み出す。このことを明確に打ち出す必要がある。
    ①金融恐慌で経済が低迷し、2大政党は政策的違いがなくなり、国会ではスキャンダルで相手を攻撃するだけで、毎年のように首相が替わる。
    ②メディアも、今の電力不足キャンペーンのような大本営発表を繰り返す。
    ③そして、ついに軍部のクーデタで戦争体制に入っていく。ドイツでは、バイエルン地域政党だったナチスが国政に進出し、中央政府を乗っ取った。原発依存を続けようとする政官財は、もはや敗戦間際の“戦艦大和状態”なのだ。原発などを続ける限り、新しいシステムへの転換はできず、日本経済は成長できなくなっていく。

 (c)社会システムの転換
   再生可能エネルギーへの転換は、社会システムとも呼応している。社会保障・福祉などでも同じ転換が起きるからだ。
    ①社会保障・・・・今の人口減少社会では、年金中心の社会保障は限界にきている。現物給付を増やし、医療・介護・保育・教育などの分野を重点に雇用を創り出しながら、新しい福祉社会に変えていかねばならない。男女が働くヨーロッパ型をモデルにし、子どもを育てるコストを安くする。これらの現物給付は、地域ごとの独自性を踏まえねばならないから、地域分散ネットワーク型にならざるをえない。
    ②農業・・・・TPP推進派は、集中メインフレーム型から抜け切れていない。大規模化は米国や欧州などと比べれば焼け石に水。それよりも、直売所や産直など、ITをフル活用した効率的なシステムのもとで地域単位での一次産業をベースにした二次、三次産業への展開を図っていく六次産業の方が雇用も増え、安全・安心という点から見てもはるかによい。

(3)結論
 100年に1度の世界経済危機は、集中メインフレーム型から地域分散ネットワーク型へのシステム転換を促している。
 この総選挙では、新しい未来を創るのか、それとも後戻りして無責任体制を温存するために「戦時体制」もどきの後戻りを繰り返すのか、が鋭く問われている。

 以上、金子勝(慶應義塾大学経済学部教授)「脱原発が日本を救う」(「週刊金曜日」2012年12月7日号)に拠る。

 【参考】
【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾
【選挙】安倍自民党総裁が財界に支持される理由 ~官僚的体質~
【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~
【選挙】安部自民「タカ派路線」のジレンマ
【選挙】世界はネットで政治参加している ~米国と韓国~
【選挙】国家と資本への隷属からの脱却 ~自分の情動をとり戻す~
【選挙】小泉「改革」の悪夢は甦るのか ~「失われた20年」の元凶~
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【選挙】小泉「改革」の悪夢は甦るのか ~「失われた20年」の元凶~

2012年12月09日 | 社会
 (1)日本の衰退は、1990年代にバブル破裂の処理を橋本龍太郎の自民党政権が誤り、「失われた10年」を作ったのに端を発する。

 (2)2001年4月に首相に就いた小泉純一郎が率いる自民党政権が、日本の衰退にダメを押した。
 「改悪トリオ」は、小泉に加えて、竹中平蔵・経済財政担当大臣/金融担当大臣(当時)、奥田碩・日本経団連会長(当時)だ。ブッシュ大統領(当時)の言いつけどおり、「貪欲は美徳」とする株主至上主義を強行したのだ。その結果、
 日米そろって所得と富の格差が開いた。
  → 社会不安を招いた。
  → 国家統治の中枢が崩れた。
  → 情実・談合型資本主義となった。
  → 2008年9月に米国ウォール街から始まった「ブッシュ恐慌」が日本を直撃した。

 (3)小泉「改悪トリオ」が強行したのは、政治、行政、司法、社会、教育、そして企業経営の相乗的な複合腐敗だ。それは公正な市場競争ではなく、情実と談合、そして政官産の癒着による国民収奪の制度化だった。経営者の多くは、独占、不正会計、社員切り捨てのマネーゲームを追っている。
 小泉「改悪トリオ」が、政権発足から8年間でいかに日本の国力を落としたかは、次の数字を見れば一目瞭然だ(その後も急落が続いている)。
  (a)一人当たりGDP・・・・ 世界第4位 → 世界20位
  (b)長期経済成長の源泉の国民科学力・・・・ 世界2位 → 世界6位
  (c)国民数学力・・・・ 世界1位 → 世界10位
  (d)国語読解力・・・・ 世界8位 → 世界15位
  (e)経済の国際競争力・・・・ 世界2位 → 世界33位

 (4)小泉「改革」の5大欺瞞は、
  (a)金融改悪・・・・不良債権処理を口実として行われたが、その実態は、経営責任の追及がないままの、銀行と保険会社の対米売却促進と銀行同士のもたれ合い合併にすぎなかった。この結果、中小企業や個人への貸し渋りや貸金のやみくもな剥ぎ取りが横行した。日本経済は弱った。
  (b)財政改悪・・・・①「郵政改革という名の郵貯、簡易保険、郵便の3事業の解体民営化」へのすり替えが行われた。ブッシュ大統領の指示どおりに、庶民のカネでブッシュ帝国主義の膨張を支えるために米国債を買い続けた。他方、②財政改革に欠かせない税制改革については、勤労者減税ではなく、株式交換での企業乗っ取りと解体に係る税負担を軽くした。
  (c)司法「改革」・・・・国民が政府や地方自治体、そして大企業の不正と横暴を牽制する「市民意識と行動」を押さえ続けたから、憲法違反の司法腐敗が横行している。日本に必要な司法改革は、裁判官の官僚統制を止め、判検癒着と判政癒着を牽制することだ。刑事裁判では、検事や官僚による被疑者の冤罪防止だ。このためには、警察や検察の取り調べ可視化と弁護人立ち会いが欠かせない。これが確立していないから、被疑者の米兵の日本側への引き渡しを米軍が拒んでいる。司法「改革」の目玉とされた裁判員制度は、裁判員が公判以前の肝要な証拠処理から締め出されていて、改革の名に値しない。
  (d)「企業ガバナンス」・・・・奥田経団連は、労働基準法を改悪し、企業内での正規と派遣社員の賃金・身分格差を拡大した。パートのワーキング・プアが増え、日本における所得と富の格差が拡大し、日本経済を支えてきた設備投資と国民消費増大が消滅してしまった。
  (e)教育改悪・・・・日本再生に必要な教育改革は、お上に忠実な「引きこもりの化石人間」ではない。少子化を好機とし、小・中・高校の学級定員を半減し、ワーキング・プアの臨時教員を正規教員として、世界でも高水準だった19500年代のカリキュラムを復活させることだ。しかるに、いまや、「日の丸」と「君が代」の国権主義の押しつけなどで、分数計算ができない大学生、思いやり、けじめ、思考力と読書力のない社会人が人口の過半数を占めるに至った。日本人留学生は、質量とも低下している。

 (5)11月6日の大統領選挙で、米国の有権者は、オバマ大統領を大差で再選し、加えて連邦上院の第一党の民主党を3議席増やし、上院での立法権を固めさせた。下院では、第一党の共和党の勢力を削るにとどまったものの、オバマ大統領と民主党による米国経済回復策と社会保障改革を徹底的にサボタージュしたティー・パーティ狂信派の議員を続々と落選させた。
 共和党は、超富裕層の献金を得て、大統領府と上院の奪回のために巨額のカネをテレビでの民主党攻撃に注いだ。この選挙は、こうした共和党の決定的な敗北だった。

 (6)日本では、米国の動きとは逆の方向へ進みつつあるかのように見える。
 日本をここまでダメにしたブッシュ政権言いなりの小泉「改革」が、「ゾンビ」のように復活しようとしている。
 安部“ゾンビ”晋三や、石原“ヒトラー”慎太郎らが、商業大メディアに煽られて、「失われた20年」の元凶、小泉「改革」を今度は倍加して実行しようとしている。

 以上、霍見芳浩(ニューヨーク市立大学教授)「再び甦るのか小泉「改革」の悪夢 ~国会前の怒りを聞け!~」(「週刊金曜日」2012年12月7日号)に拠る。

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【選挙】国家と資本への隷属からの脱却 ~自分の情動をとり戻す~

2012年12月08日 | 社会
 (1)安倍晋三が首相に返り咲き、竹中平蔵がブレーンに就く・・・・これが各種調査の描き出す総選挙後の布置だ。我々を待ち受けているのは、極端な右傾化と新自由主義の逆襲にほかならない。
 こうした冬の時代への傾斜をつき動かしているのは、情動の働きであり、単なる理性による批判は無力だ。

 (2)3・11後、国家の強権を求める気運が高まったのは明らかだ。紐帯の感情が喧伝され、それはやすやすとナショナルな合意へと接続されていった。そして、同じ危機の亢進のなかで、今年10月には、IMFと世界銀行の総会が東京で開かれた。2万人にも及ぶスタッフが来日し、たわいもないおしゃべりのために、会場となった帝国ホテル周囲の街路は無数の警官によって占拠された。それは、会議というより、新自由主義の使徒たちの大規模な恣意行動であり、我々が資本のくびきを生きるほかはないことを告げるものだった。

 (3)19世紀の資本家は、設備投資によって、労働者を工場や炭鉱に封じ込めた。支払われるのは、かろうじて生き延びることができるにすぎない賃金だった。田園から締め出された労働者は、単に餓えの恐怖から働くのであって、階級の衝突は不可避だった。
 これに対し、20世紀の労働者は消費者でもある。我々の作ったもので、我々の賃金を購う。
 この循環が労使協調のフォーディズム(フォード自動車による大量生産・大量消費システムのモデル)をもたらし、それを支えていたのは福祉国家の財政出動だった。

 (4)(3)のフォーディズム体制のもとでは、賃金労働者に相対的な自律性があった。資本家を駆りたてるのは琴線の蓄積に係る欲望だった。それは労働者を働かせることで達成できるが、ル同社にもたらされるのは苦しみでしかない。
 だが、それも、獲得した賃金によって消費者となるとき、報いられる。この消費の喜びによって、労働者はかりそめにも資本家と同じ欲望を生きることになった。消費がもたらす別の生の展望によって、資本への隷従は相対化された。

 (5)ところが、1970年代以降のフォーディズム体制の縮減とともに、我々ば資本家と同じ欲望を生きることを強いられる。
 主人の欲望を自分自身の欲望と思わせること、これこそが賃金労働者を「機能させる」要諦だ。捕獲のためにせっせと働くことは、自分自身の「自己実現」のために働くことだと信じ込ませることだ。彼らの欲望は、彼らがいる場所にあると信じさせること、そこでは幸運にも快適性と有益性が重なり、主体の「自己実現」が主体の物質的再生産の必要性と重なり合っている、と信じ込ませることだ。こうした想像力を利用した感情的誘導のすべての操作は、感情の搾取だ。そして、それが功を奏したとき、組み込まれた者には最早歩くのではなく、走り出すのだ。【フレデリック・ロンドン『なぜ私たちは、喜んで“資本主義の奴隷”になるのか? 新自由主義社会における欲望と隷属』】
 かかる新自由主義的生の惨状をつくりだす「感情的誘導」の要因は複数だ。
 まず何より、金融市場の量的拡大によって、株主による企業への圧力がいっそう高まった。収益の目標が持続的に引き上げられ、労働への圧力は際限のないものとなる。生産活動の中核がサービス業へ移行したこともあろう。そこでは、自分自身への不断のコントロールが求められる。いずれにせよ、常に労働に支配されている。最早フォーディズム体制のように、労働の外側に喜びを見出すことはできない。ゆえに、労働による支配の状態そのものを、自ら望んだものと見なそうとする情動が形成される。我々の欲望は、主人の欲望と重なり合いつつ、主人の欲望を生きる「自己実現」の隷属の中に沈み込んでいく。

 (6)我々が、総選挙後に生きようとしているのは、安倍晋三の欲望であり、竹中平蔵の欲望であり、橋下徹の欲望だ。
 あるいは、原発の欲望であり、TPPの欲望であり、消費増税の欲望でもある。
 こうした事態に対して、理性は無力だ((1)で述べたとおり)。
 <例>原発推進派を理性的に説得できない。推進派の根底にあるのは、原発という主人の欲望を生きようとする情動だ。それは、推進派が原発への恐怖を見下すのと同じ質のものだ。その言説が、つねに上からの目線で、しかも落ち着きなく執拗なのは、深部に、滞留する主人の欲望を生きるという自らの情動にふれることを回避しているからだ。
 浮上してくるのは、感情をめぐる内乱状態だ。

 (7)総選挙で問われているのは、これら主人たちの欲望を断ち切ることだ。自らの欲望を生き直すことだ。それは、新自由主義的な生の回路の社団を伴う、情動や感情の回復という筋道をだどるしかない。
 その際、一つの手がかりとなるのは、ニートや引きこもりの若者たちとの交流から掴み取られた「モラトリアム」の概念だ。今日の若者たちが生きる時間が「目的論化」していて、大学のカリキュラムは就職という目的のためにすみずみまで組織され、若者たちへの支援事業も多くは労働への「動機づけ」を目的としている。
 新しいモラトリアムの「放浪」がなければ、主人の欲望を生きるしかない。
 若者に限らない。我々は主人の欲望を生きることを止めなければならない。賭けられているのは、我々の情動のありかそのものだ。

 以上、白石嘉治「国家と資本の奴隷から脱却せよ ~国会前の怒りの声を聞け!~」(「週刊金曜日」2012年11月30日号)に拠る。

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【選挙】世界はネットで政治参加している ~米国と韓国~

2012年12月07日 | 社会
 (1)米国大統領選(11月6日)で、ソーシャルメディア(ツイッターやFacebookなど)が果たした大きな可能性を感じている人は多いだろう。
 大統領選(12月19日)を控える韓国でも、選挙活動におけるソーシャルメディアが話題になりつつある。

 (2)米国では、前回(2008年)の選挙の時から、ソーシャルメディア活用のお手本としてよく引き合いに出されてきた。現在も、2,400万人に近い人からツイッターでフォローされ、Facebookでは3,300万人から「いいね」されている。
 オバマが再選を決めた直後につぶやき、とても話題になったツイッター投稿があった。それはオバマが妻のミシェルをハグする画像で、「もうあと4年」という簡単なメッセージを添えていた。投稿後わずか22分で20万回以上共有された。国民とそれまでに交わしてきた真摯な対話があってこそ起きた現象だ。

 (3)米国大統領選を通じ、ソーシャルメディアはどのように活用されたか。
  (a)ツイッターなどを活用して市民から意見、アイデアが発信された。・・・・第1回目のテレビ討論の際には、1,030万回のつぶやきが寄せられた。こうしたイベントが行われる際、ハッシュタグ(「#」)で始まるキーワードを含んだ投稿によって、そのイベントやテーマに関係する投稿をしている多様な人の意見やアイデアを目にすることが可能になる。実際の投票日には、「#vote」「#voted」などのハッシュタグを添えた投稿を多くの人が行うことで、実にたくさんの人が投票している様子が明らかになった。大きな会話の集積が可視化された。
  (b)Facebookでも特設サイトが開設され、自分がいつ投稿したかを「友達」と共有することが可能になった。・・・・合計1,000万人近い人がこのサービスを利用し、選挙そのものがイベントのように感じられることを可能にした。
  (c)その他。・・・・ソーシャルメディアを活用することで、①人(ボランティア集め、イベント集客)、②金(オンライン寄付)、③情報(市民の声、政策に関する批判・提案、etc.)が巧みにコーディネイトされた。市民の声・意思が大きなうねりになって、キャンペーンの方向性に影響力を与えることも可能にした。
  (d)今回の選挙における特徴的なのは、「ビッグ・データ」のアプローチだった。・・・・世論調査・人口動態・、ソーシャルメディア上で話題になっている市民の声などの膨大な量のデータを分析・解析、可視化した。小さな声や行動(何気ないつぶやき、ニュース記事の共有、アンケートへの回答、etc.)が蓄積され、ビジュアル化されることで、何らかの「意思」や「意味」を導き出すことを可能にした。

 (4)(3)のような米国型ソーシャルメディア選挙は、いま韓国でも垣間見ることができる。韓国中央選挙管理委員会がインターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用を禁じた選挙法の規制を撤廃すると発表した(2012年1月13日)からだ。
 韓国の選挙で特徴的な活用法は、投票所で撮影した自分の写真をツイッターやFacebookで共有することで仲間に投票を呼びかける「認証ショット」だ。「自分撮り」することで大きな影響力を行使する人気アイドルや著名人も数多くいる。「認証ショット」をFacebookに投稿すれば割引する焼き肉レストランや下着通販サイトも登場している。

 (5)日本では、選挙活動にインターネットを利用できない。選挙期間が始まると、各候補者のソーシャルメディアからの情報発信がピタリと止まる。
 だが、じつは公職選挙法第146条は、各候補者のみならず、一人一人の国民の行動に適用される。この事実は、あまり知られていない。
 同条には明確なガイドラインが存在しない。だから、広範囲に適用される危険性を孕む。しかし、その一方で、市民が自前のガイドラインを作成し、ソーシャルメディアを活用して選挙を盛り上げていく可能性をも含んでいる。

 以上、市川裕康「世界はネットで政治参加している ~国会前の怒りの声を聞け!~」(「週刊金曜日」2012年11月30日号)に拠る。

 【参考】
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【選挙】安部自民「タカ派路線」のジレンマ
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【選挙】安部自民「タカ派路線」のジレンマ

2012年12月06日 | 社会
 (1)300あった衆院議席が119まで減る壊滅的打撃を受けた3年前の総選挙を機に、自民党の「右ウイング化」が始まった。
 国会に戻ることのできた有力議員は、固い保守層を支持基盤を持つ長老とタカ派ばかりだった。ハト派は軒並みに落選し、戻ってきたのも政治力がなく、ケンカに弱い議員ばかりだった。
 下野した自民党は、ハト派の谷垣禎一を総裁に選んだが、しょせんタカの上にハトが乗っているようなものだった。谷垣総裁(当時)は、憲法改正草案作りにも指導力を発揮できず、強い意欲を見せていた総裁選も、結局、立候補辞退に追い込まれた。

 (2)憲法改正は、1955年の自民党結成以来、党是となっている。それを訴え続けることで、支持基盤の保守層を固めた自民党は、時に政策の優先順位を巧みに入れ替えながら(<例>憲法改正と真逆の政策を掲げる)、支持を左ウイングにも広げ、政権を維持した。
 しかし、1990年代に入ると、衆院の単独過半数確保が困難になり、「国民政党」とは呼べない存在に変貌していった。

 (3)議員の世襲化が進んだ。
 他方、1996年の衆院選から小選挙区が実施され、それまでなら自民党から立候補したはずの人材が続々と民主党から選挙に出るようになった。
 その象徴は、自衛隊員を父親に持つ野田佳彦・首相だ。野田は、初めて臨んだ千葉県議選(当時・無所属)で、谷垣前総裁側近の逢沢一郎・自民党前職/同じ松下政経塾1期生の事務所から、選挙のやり方を手取り足取り教わった。
 自民党の左派から中道ぐらいの思想信条を持つ有力議員は、民主党にゴロゴロいる。民主党から出たのは単に選挙区事情に過ぎない。【関係者】
 民主党の勢力伸長の末、2009年の自民党大敗で生き残った議員が右派ばかりだったのは、当然の帰結だとも言える。

 (4)議席大幅増で、3年ぶりの政権復帰が指呼の先に近づいた、とされる自民党。
 だが、「悪材料」も出始めた。熱心に支援する一部宗教団体や地元医師会が、微妙に「消極支持」に転じつつある空気が醸成されつつあるのだ。
 原因は、公約に憲法改正や集団的自衛権行使の見直しなどを打ち出した安部晋三・総裁の発言だ。
 自民党の公約は、(1)の「憲法改正草案」や、谷垣時代の公約原案を基本にしたものだ。だから、自民党候補者にとって困るのは、公約の中身ではなく、安部の説明、パフォーマンスぶりなのだ。
 安部は、国防軍への改称理由を、軍でないと戦時にジュネーブ条約による捕虜の扱いが受けられない、などとテレビで口を滑らせた。今すぐにでも「国防軍」に戦争させるかのような口ぶりだった。
 安部は「テンションが高すぎる、危なっかしい、と支持者が言っている。マイルドな自民支持層を逃しかねない」。【自民党中堅前職】

 (5)タカ派の安部自民は、政権に復帰したとたん、ジレンマに直面する可能性が高い。
 こんど勝ち上がってくる自民候補は、前回落選した人たちが多い。彼らは、安部の主張に乗って、というより、民主党への失望や個人的同情票など様々な要因で当選してくる。かつての小泉チルドレンや小沢ガールズとは違う。【薬師寺克行・東洋大学教授】
 自民党は、勝てば勝つほど、安部カラーが薄まることになる。そもそも票の中身が違うからだ。
 となれば、華々しく掲げた「憲法改正路線」も思うように進まなくなる可能性が出てくる。民主党は、2009年版マニフェスト違反、ウソつき呼ばわりをされた。こんどは、自民党が、ウソつき、二枚舌の非難を浴びせられる。
 安部のコアな支持者は、熱狂的だ。彼の政治信念を、憲法改正を訴えて自衛隊に押し入り、自殺した三島由紀夫の主張と同列視する本も出版されている。
 安部首相(見込み)が、コアな熱狂的支持者から、ウソつきを理由に自決用の日本刀を渡される可能性は高い。

 (6)憲法改正発議には衆参両院とも3分の2以上の賛成が必要だ。だが、参院の改選は毎回定数の半分であり、改憲発議を実現するには衆院の3分の2はもちろん、参院で2回選挙をやって、それで3分の2を超えなければ難しい。機が熟するまでの長い間、ずっと改憲の強い政治的エネルギーを持続しなければならない。
 制度的にたやすいものではない上に、政権党には難しい政治的課題がわんさと待ち受けている。景気回復と財政再建、消費増税、社会保障制度の見直し、国会議員の定数削減・・・・。
 悪いことに、自民党は三年寝太郎で、3年前に下野する原因となった党の宿痾(<例>族議員、利益誘導政治、官僚支配、党と内閣の二元的政策決定過程)を何一つ改革していない。自民党は、何時また有権者から「ペケ」マークを突きつけられるかわからない体質は変わっていない。
 なお悪いことに、来年7月には参院選が控えている。今年の衆院選で落ちた候補者には、わずか半年後に捲土重来の機会があるというわけだ。

 以上、小北清人(編集部)「「タカ派路線」のジレンマ」(「AERA」2012年12月10日号)に拠る。

 【参考】
【選挙】自民党の公約を整理すると浮き上がる矛盾
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【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~
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【選挙】安倍晋三の軽佻浮薄と無定見 ~経済政策~

2012年12月05日 | 社会
 (1)次期首相の最右翼と目される安部晋三・自民党総裁の言動が物議を醸している。

 (2)注目を集めたのは、11月7日。安部蔬菜が日本アカデメイア主催の講演で、無制限金融緩和に言及した。「インフレターゲットを設定して、無制限にお札を刷ることで、円相場を操作する方式に切り替える」
 さらに、爆弾宣言も飛び出した。「建設国債も大量発行し、日銀に引き受けてもらう」
 安部総裁はそれまでも、日銀に対する圧力ともとれる発言を繰り返していた。
 だが、「日銀引き受け宣言」には、さすがに「論外だ」と、市場や海外メディアから一斉に失笑を買った。
 政府が好きなだけ財政出動するための日銀引き受けは、財政規模が失われ、既に巨額な債務を抱える日本では金利が不安定化しかねない。

 (3)安部総裁は、日銀が積極的にマネーを供給し続ければデフレから脱却できる、と主張するリフレ派の立場だ。
 「政権奪回後、インフレターゲットを設けたいと考えている。私はターゲットは3%がよいと思う」
 「日銀と政府の間の政策協定に盛り込みたい。もしできないのであれば、日銀方を改正する」

 (4)ところが、その後、こうした過激な発言が市場や財界の間で批判的に騒がれ始めると、一点、発言内容は徐々にトーンダウンし、訂正されていった。
 物価目標は2%となっった。
 日銀引き受けについても、「直接引き受けとは言っていない」。
 「日銀法改正にこだわっているわけではない」
 ・・・・首相候補の軽はずみな発言、変節ぶりは目を覆うばかりだ。

 (5)日銀法改正という脅しを交えて日銀に圧力をかけるのは、先進国では見られない愚行だ。
 戦時の財政ファイナンスや、金融政策が為替政策に銃zくすることでバブルが起きる、という歴史の教訓を、どの先進国も痛いほど理解しているからだ。

 (6)反リフレ派も金融緩和を否定しているわけではない。彼らは、ゼロ金利下における日銀の緩和策は効果が限定的で、デフレ脱却にはまず国内経済の構造改革が必要だ、と主張する。
 ところが、リフレ対策のほうが、要人が発言するだけで、一時的に円安・株高に振れやすく、国民にとって目先の痛みが見えづらい。
 票ほしさに主張しているだけで、これで政権を取り戻そうとしているのdから、ついていけない。【政府関係者】
 いくら中身が素晴らしくても、票目当ての絵に画いた餅なら、意味がない。

 以上、池田光史/山口圭介(本誌)「安部の無定見と橋下の妥協 混沌極まる「選挙後」の経済政策」(「週刊ダイヤモンド」2012年12月6日号)に拠る。

 【参考】
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