語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】人生を豊かにする本、猫も人もカロリー過剰、度外れなロシア的天性

2016年10月18日 | ●佐藤優
   
 ①高樹のぶ子『オライオン飛行』(講談社 1,600円)
 ②デブねこ研究会・編『読むだけでやせる! デブねこ格言』(辰巳出版 1,200円)
 ③清眞人『ドストエフスキーとキリスト教 イエス主義・大地信仰・社会主義』(藤原書店 5,500円)

 (1)①は、1936年に九州で墜落し、重傷を負って九州帝国大学附属病院に入院したアンドレ・ジャピー(フランス人飛行士)という実在の人物に、創作上の人物を何人か絡ませて編んだ作品だ(感動的)。ところどころに高樹氏が登場し、作品を鳥瞰したコメントを差し挟む(面白い)。
 〈例〉
 <他人の人生を想像すること、心身の内側に入って動き回ることは、その人への愛の実践そのものだと覚悟してみると、彼らも不完全な人生の中から、精一杯の宝を差し出してくれるのではないか。これは希望である。すでに骨になり、魂も記憶も消えてしまった人たちと関わり合うのに、他にどんな方法があるだろう>
 読めば人生をより豊かにしてくれる本だ。

 (2)②には、立派な体格の猫が次々に登場する。
 <オレ、猫。オレたちの世界で有名なことわざ「エサは寝て待て」。ゴロゴロしながら上目遣いでにゃーんっていっとけばエサが出てくる。カロリー消費ゼロなのに摂取カロリー過剰。太るよね>
 この指摘は人間にも当てはまる。佐藤優も摂取カロリーを減らさなくてはと再認識した。ちなみに、本書には佐藤優宅の猫が2匹、名は記されていないけれども登場している。

 (3)日本人によるドストエフスキー論はこれまでに幾つも出ているが、③はキリスト教に焦点を絞った優れた論考だ。
 <総じて、ドストエフスキー文学にあっては作中人物たちはほとんど皆長広舌を振る。彼らは論争に熱中する。熱中し過ぎるほどに熱中する。長広舌とは、実にくだんの5冊(引用者注:『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』)の長編世界のいわば会話作法の如きものである。ドストエフスキーは、ロシヤ人の気質・天性を何よりも「度外れ」であることに、その比類なき激情性・熱中性に見た(参照、第5章・「カラマーゾフ的天性とロシヤ人・・・・」節)。実に一言でいうなら、このロシヤ的激情性・「度外れ」ぶりは本質的にカーニバル的であり、パフチン的にいうなら「真面目な茶番」としてしか展開しようのないものなのだ>
 ここにロシア人知識人(インテリゲンチャ)の特徴が端的に示されている。
 プーチン・ロシア大統領も知識人なので「度外れ」で「比類なき激情性・熱中性」を持つ。北方領土に関してプーチン大統領は長々とさまざまなおしゃべりをするが、その一つ一つに真面目に取り合うことはない。こういったプーチン発言が「真面目な茶番」であることを理解しておけば十分なのだ。

□佐藤優「人生を豊かにする本 ~知を磨く読書 第170回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年10月22日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【佐藤優】テロリズム思想の変遷を学ぶ ~沢木耕太郎『テロルの決算』~
【佐藤優】住所格差と人生格差、人材育成で企業復活、教科書レベルの知識が必要
【佐藤優】数学嫌いのための数学入門、西欧的思考にわかりやすい浄土思想解釈、非共産主義的なロシア帝国
【佐藤優】ウラジオストク日本人居留民、辺野古移設反対を掲げる公明党沖縄県本部、偶然歴史に登場した労働力の商品化
【佐藤優】「21世紀の優生学」の危険、闇金ウシジマくんvs.ホリエモン、仔猫の救い方
【佐藤優】大学にも外務省にもいる「サンカク人間」 ~『文学部唯野教授』~
【佐藤優】訳・解説『貧乏物語 現代語訳』の目次
【佐藤優】「イスラム国」をつくった米大統領、強制収容所文学、「空気」による支配を脱構築
【佐藤優】トランプの対外観、米国のインターネット戦略、中国流の華夷秩序
【佐藤優】元モサド長官回想録、舌禍の原因、灘高生との対話
【佐藤優】孤立主義の米国外交、少子化対策における産まない自由、健康食品のウソ・ホント
【佐藤優】アフリカを収奪する中国、二種類の組織者、日本的ナルシシズムの成熟
【佐藤優】キリスト教徒として読む資本論 ~宇野弘蔵『経済原論』~
【佐藤優】未来の選択肢二つ、優れた文章作法の指南書、人間が変化させた生態系
【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
【佐藤優】人びとの認識を操作する法 ~ゴルバチョフに会いに行く~
【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~
【佐藤優】新しい帝国主義時代、地図の「四色問題」、ベストセラー候補の研究書
【佐藤優】ねこはすごい、アゼルバイジャン、クンデラの官僚を描く小説
【佐藤優】外交官の論理力、安倍政権と共産党、研究不正が起きるシステム
【佐藤優】遅読家のための読書術、電気の構造、本屋大賞
【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~
 





【佐藤優】尖閣諸島から米国が手を引く可能性 ~北方領土交渉と日米安保~

2016年10月17日 | ●佐藤優
 (1)首相官邸は、経済産業省と連携し、経済協力を梃子に北方領土交渉を動かそうとしている。しかし、領土問題の根幹で、首相官邸も外務省も準備不足であるというのが実態だ。
 そのことが、10月3日の衆議院予算委員会における前原誠司・衆議院議員(民進党)、安倍晋三・首相、岸田文雄・外相との質疑応答で明らかになった。
 <前原氏 ロシアとの北方領土交渉でウクライナ・クリミア問題を絡めるか。
 安倍晋三首相 領土交渉の中でクリミア問題を話すことはない。首脳会談の多岐の話の中で、私から(ロシアにウクライナ周辺の停戦に関する)ミンスク合意をしっかり行うよう言っている。
 前原氏 クリミアはロシアが力で現状変更した。ロシア側の立場をおもんぱかり、原則を曲げることはないのか。
 安倍首相 原則を曲げることは考えてもいない。ウクライナと南シナ海で起きているのは現状変更の試みで認められない。日本の不変の立場だ。>【注1】
 前原氏は民主党政権時代に外相を務めたので、北方領土交渉をめぐる過去の経緯を熟知している。日露平和条約交渉が締結されるときに、双方が互いに領土保全を認める結果としてロシアによるクリミア併合を日本が認めることになる。前原氏が安倍首相からクリミア併合問題について「原則を曲げることは考えてもいない」との言質を取ったことで日本外交のインテグリティー(首尾一貫性)は確保された。

 (2)もっとも、プーチン大統領としては、平和条約に領土の相互承認・保全の文言を入れることでロシアのクリミア併合承認を認めさせることには大きな利益がある。実際に平和条約交渉が加速すると、前原氏への安倍首相の答弁を政府が反故にする可能性は十分にある。
 <前原氏 外務省の基本方針は「四島の帰属問題を解決し、平和条約を締結する」。日本への帰属ということでよいか。
 岸田文雄外相 日本への帰属を含め四島の帰属を明らかにする。四島の帰属、日本への帰属、これらを明らかにする。その上で平和条約を締結する。
 前原氏 なぜ2段階(に分けての答弁)なのか。
 岸田外相 四島の帰属先、日本への帰属を明らかにする。
 安倍首相 北方領土は日本固有の領土との不変の立場がある。四島の帰属問題を解決し平和条約を締結する。一言一句付け加える考え方はない。
 前原氏 2島の先行返還はあるのか。
 安倍首相 報道のような事実はない。>【注2】

 (3)日本においては、外務省が外交を専管するので、外務省の立場が政府の立場になる。日本政府の北方領土問題に係る基本方針は、1991年10月に従来の「四島一括変換」を「四島に対する日本の主権が認められるならば、実際の返還の時期、態様、条件については柔軟に対処する」に変更され、今日に至っている。四島に対する日本の主権をロシアが承認することが北方領土問題に係る日本政府の基本方針だ。
 ただし、安倍政権が「新しいアプローチ」による北方領土問題の解決を言い出してから、首相官邸も外務省も四島に対する日本の主権確認が原則であると言わなくなった。その代わり、「四島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」という文言を繰り返すようになった。
 これは、日本政府の基本的立場ではなく、1993年10月に細川護煕・首相(当時)とエリツィン大統領(当時)の間で署名された「東京宣言」の内容だ。これは日露間の合意事項いすぎず、日本政府の基本方針を示したものではない。
 「東京宣言」に基づく四島の帰属問題の解決には、
   ①日本4、ロシア0
   ②日本3、ロシア1
   ③日本2、ロシア2
   ④日本1、ロシア3
   ⑤日本0、ロシア4
という5通りの可能性があるからだ。⑤で平和条約を締結しても、四島の帰属問題を解決したことになる。
 岸田外相が、「日本への帰属を含め四島の帰属を明らかにする。四島の帰属、日本への帰属、これらを明らかにする」という不明瞭な答弁をしたのは、外務官僚が北方領土問題についての政府の立場のなし崩し的変更についてきちんと説明していないからだ。
 これに対して、安倍首相は「四島の帰属問題を解決し平和条約を締結する。一言一句付け加える考え方はない」と断言した。このことから、安倍首相が四島に対する日本の主権確認という原則を変更したということが明確になった。
 その結果、1956年の「日ソ共同宣言」で約束された歯舞群島、色丹島のロシアから日本への引き渡しを実現することで北方領土問題を最終解決し、平和条約を締結する可能性が高まってきた。
 
 (4)日米安保条約では、日本の施政が及ぶすべての領域で米軍が活動できることになっている。
 歯舞群島と色丹島との返還が実現した場合、この2島は日本の施政が及ぶようになる。当然、歯舞群島、色丹島においても米軍が活動できるようになる。
 現在の米露関係の緊張からすれば、米軍の活動が歯舞群島と色丹島に及ばないことをプーチン大統領は引き渡しの条件にするだろう。日本がこの条件を呑めば、日米安保条約の適用除外地域ができることになる。安倍政権がこのような選択をする可能性は十分にある。こんな質疑応答もあった。
 <前原氏 米国との議論はどうか。
 安倍首相 日露平和条約は日本が主体的に判断する。日露交渉の全てを米国と協議はしないが、基本的な考えを米国と話すのは当然行う。
 前原氏 米国は1月から新政権。政権移行期に物事を進めるべきではない。
 安倍首相 国際政治は一国の政治状況とは別に動く。米国内の状況に合わせてしか交渉できないなら、相手の立場なら米国と話をしようとなる。>【注3】
 ここで北方領土については「日本が主体的に判断する」と安倍首相は啖呵を切っている。米国との軋轢が生じても、北方領土交渉で具体的な成果を残すということだ。
 このような形で日米同盟に風穴を開けることができれば、プーチン外交の大勝利だ。
 もっとも、安倍政権が歯舞群島と色丹島を適用除外にするならば、米国が「それならば中国との武力衝突リスクを負う尖閣諸島は日米安保条約の適用除外地域にする」というカードを切ってくる可能性がある。

 (5)外務省の発言から、日米安保条約との整合性といった難問について考えている気配はまったく感じられない。外務官僚は、多くの事象が同時進行する複雑系としての外交をとらえることができていない。だから、このようなリスクの高い交渉に対して、外務省は異議を唱えないのだ。
 歯舞群島、色丹島への日米安保条約の適用を除外するという条件で北方領土交渉がまとまった結果、尖閣諸島に対する共同防衛から米国が手を引き、この空白を沖縄における自衛隊の大幅増強で埋めることを日本政府はやりかねない。

 【注1】記事「衆院予算委質疑詳報」(毎日新聞 2016年10月4日東京朝刊)
 【注2】前掲記事。
 【注3】前掲記事。

□佐藤優「北方領土が日米安保の適用除外になる可能性 ~飛耳長目 第124回~」(「週刊金曜日」2016年10月14日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【佐藤優】ウズベキスタンにIS流入の危険 ~カリモフ大統領死去~
【佐藤優】国後島で日本人通訳拘束/首脳会談への影響は ~実践ニュース塾~
【佐藤優】モサド長官から学んだインテリジェンスの技術
【佐藤優】ロシア大統領府長官にワイノ氏就任の意味 ~北方領土交渉~
【佐藤優】西郷と大久保はなぜ決裂したのか ~征韓論争~
【佐藤優】開発独裁とは違う明治維新 ~目的は複数、リーダーも複数~
【佐藤優】岩倉使節団が使った費用、100億円 ~明治初期~
【佐藤優】反省より不快示すロシア ~五輪ドーピング問題~
【佐藤優】 改憲を語るリスクと語らないリスク ~改憲問題~
【佐藤優】+池上彰 エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】スコットランドの動静と沖縄の日本離れの加速
【佐藤優】沖縄の全基地閉鎖要求・・・・を待ち望む中央官僚の策謀
【佐藤優】ナチスドイツ・ロシア・中国・北朝鮮 ~世界の独裁者~
【佐藤優】急進展する日露関係 ~安倍首相が取り組むべき宿題~
【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~
【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~
【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~
【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~
【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~
【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ
【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~
【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~
【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~

【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~
【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~
【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方
【佐藤優】国内で育ったテロリストは潰せない ~米国の排外主義的気運~
【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~
【佐藤優】知を身につける ~行為から思考へ~
【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて
【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~
【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~
【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~
【佐藤優】分析力の鍛錬、事例、実践例 ~知の教室・抄(3)~
【佐藤優】武器としての教養、闘い方、対話の技術 ~知の教室・抄(2)~
【佐藤優】知的技術、情報を拾う・使う、知をビジネスに ~知の教室・抄(1)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~
【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~
【佐藤優】すべては国益のため--冷徹な「計算」 ~プーチン~
【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 ~ソ連の手口と酷似~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 ~昭和史(10)~
【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

【保健】骨折すると、血が固まって骨になる

2016年10月16日 | 医療・保健・福祉・介護
 骨折した人しかわからない、あの辛さ。痛みもさりながら、骨折部分を何週間も固定しておかなければならないので、体のほかの部分にも負担がかかる。
 さて、骨折が治癒するメカニズムはこうだ。
 固定している間に、ただ単に骨が増殖して折れたところがくっつく・・・・わけではない。血液が固まって、骨に変わるのだ。
 骨が折れると、骨の中の血管が破れて血のかたまりができる。これが内出血を止め、さらに折れた骨の隙間を埋めるように溜まっていく。
 2週間くらい経つと、血のかたまりは、毛細血管が詰まった状態の、盛んに細胞増殖を起こす肉芽という組織になる。
 傷口が治るときに、傷口が赤く盛り上がってくることがあるが、あれと同じようなものだ。この肉芽から丈夫な骨がつくられていくのだ。

□竹内均『時間を忘れるほど面白い 雑学の本』(知的生き方文庫、2011/23刷:2013)の「「血が固まって骨になる」って知っていた?」
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 

【豊洲】都庁は伏魔殿 ~小池百合子・都知事の力量~

2016年10月15日 | 社会
 (1)築地の豊洲移転問題がすっかり暗礁に乗り上げている。
 移転と市場の初期プラン、誰がどのように決めてこうなったのか、調べれば調べるほど訳が分からなくなっている。
 移転と初期プランが決定した時期の都知事は石原慎太郎だが、オレは知らん、と言うばかり。先日は「いまの都政になんかいうことありますか?」とといわれて、「都政は伏魔殿なんだよ、伏魔殿」と車の中から短くいい残して去っていった。

 (2)立花隆が1964年に文藝春秋に入社し、週刊文春に配属されて手がけた最初の仕事の一つが都庁の1965年汚職(都議会議長選挙にからみ都議会議長経験者が連続逮捕)の取材だった。
 都庁は、第一代の安井知事の頃から汚職の巣窟であり、利権の売買が半ば公然と行われていた。都は、昔から小さな国家なみの財政規模を持っていたから、そこで日常的に生まれてくる利権がすぐに取引の対象になった。汚職は大なり小なりいたるところにあった。
 近代政治の営みは、どこの国でもすべて行政と議会が密接に関連するところから生まれてくる。汚職も基本的に行政と議会が重なる部分で起こる。ある法案を通せるかどうかを左右できるだけのパワーを持つ議会の大実力者が実は汚職の中心人物という構図が国政にも都政にも当時からあった。だが、そういう人物ほど尻尾を掴ませない。こういう話は証拠なしには書けない(書けば名誉毀損でやられる)。かといって証拠集めも簡単ではない(それは警察検察の役割)。
 立花隆にレクチャーした都政担当のベテラン記者は、記者の役割は全体の構図をわかりやすく見せることにあると教えた。
 こういうところから記者生活を始めたから、後の田中角栄・ロッキード事件に向かう流れは出発点からできていた。
 あの頃の都庁伏魔殿のすぐ向こう側に、国政の伏魔殿が見え隠れしていて、その中心人物として佐藤栄作政権の陰の実力者、田中角栄・幹事長の名前がしきりに取り沙汰されていた。立花隆も都政の黒い霧から田中幹事長の黒い霧追求に移行した。
 これは事件化する寸前のところまでいき、そのあたりまで立花隆は取材現場にいた。途中から、田中幹事長は佐藤首相から事実上の謹慎処分を受け、政治の表舞台からしばらく身を引くことによって事件化を止めてもらったとされる(記者レベルで語られていた当時の政界ウラ情報、多分ホントのこと)。
 要するに、立花隆の個人史において、都庁伏魔殿とのちの田中金脈・ロッキード事件はほとんど一連の流れとして連続している。
 このたびの豊洲移転問題の背後でさかんに取り沙汰されている都議会自民党の大ボス、内田茂・元幹事長なる人物は、顔つきも、その悪さ加減も、(2)の頃の田中幹事長にそっくりだ。

 (3)豊洲移転問題は、この先どうなっていくか。今予測することは全くできないが、小池知事のこれまでの言動から、下手な幕引きは絶対にできないだろう。背景に横たわる問題をあくまで追求して「見える化」っしていこうということになると、相当のことをしなければなるまいが、それはできるのだろうか。
 (2)の頃の田中幹事長の一連の黒い霧事件がウヤムヤになったのは、当時の佐藤首相がそうしなければ自分の政権に火の粉がかかってくると考えて、押さえにはいったことが最大の要因とされている。
 今回は違う。トップの小池知事が、事の真相をあくまで追求、見える化する側に立っている。それに、その右腕になっている人が、若狭勝・元東京地検公安部長で、彼は近日中に小池知事の後任として東京10区選出の衆議院議員になることがほぼ確実だ。豊洲移転問題の背後には、その開発入札過程にまでさかのぼると事件化する可能性があると、これまで発言してきた人でもある。
 この一件、マスコミを味方につけた小池・若狭主導でどんどん重大事件化に突き進んでいく可能性すら出てきているようだ。

 (4)「文藝春秋」2008年1月号に、小池百合子「小沢一郎と小泉純一郎を斬る」が載っている。実に面白い論文で、彼女が政治評論家としてもなかなかの人物ということがわかる。
 1992年に細川護熙の日本新党に参加するところから政治家としてのスタートを切った彼女は、1990年代の政治の中心に常にいた。小沢一郎と小泉純一郎の二人と距離がきわめて近いところにいて、二人を内側から観察していた。その実体験をもとに、この論文の中で日本の政治の流れを実に見事に分析している。特に、途中まで自分が政治の師と仰いでいた小沢一郎を容赦なく批判し、実は彼は大人物ではなく、「政局カード」と「理念カード」というたった2枚のカードをとっかえひっかえ使うだけのシンプルきわまりない政治家と分析するところなど、ナルホドと思わせる。
 こういうキャリアを持つ彼女は、自民党の長老たちよりずっと巧みに政治の流れを読む人だ。今後も、そのような政治家として独自の政治勢力(都知事プラス小池新党?)をかかえ、日本の政治を面白くしていく人だろう。

□立花隆「都庁伏魔殿」(「文藝春秋」2016年11月号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【豊洲】新市場、解析データで浮かび上がった謎 ~盛り土による地盤沈下にズレ~
【豊洲】は「空洞問題」で終わった ~当事者との合意形成が欠如~
【豊洲】市場では「安全宣言」を出せない ~土壌汚染対策法~
【豊洲】市場移転:宇都宮健児が小池百合子・都知事の決断を分析
【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク
【五輪】が都民の生活を圧迫する ~汚染市場・アパート立ち退き~
【食】移転先の土壌、ヒ素汚染残して開場 ~築地市場~
【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~



【食】バナナを食べるのはスポーツをする前がいいか、後がいいか?

2016年10月14日 | 生活
 (1)バナナは日本人がよく食べる果物のナンバーワン。
 2006年の財務省統計によると、輸入果物のうち1位はバナナで、60.2%を占める。ちなみに、2位はグレープフルーツ、3位はパイナップル。

 (2)バナナはカリウムが豊富で100g当たり360mgを含む。
 1日に必要なカリウムは3,500mgだから、バナナだけで摂るには10本食べなければならない。
 バナナのほかに、カリウム豊富なじゃがいも、トマト、ほうれん草、海藻、納豆などと組み合わせて摂るのが望ましい。

 (3)バレーボールなどスポーツをするとき、①おにぎりと②バナナがある場合、
   事前に食べるのは①
   事後に食べるのは②
がよい。①は②より血糖値を高く長時間持続させる。
 一方、失ったエネルギーを素早くとり戻し、疲労回復させてくれるのは①よりも②のほうなのだ。エネルギーを急いで補給したいときに、バナナは有効なのだ。

 (4)果物としてのバナナを使った一般的な料理は、タンパク質分解酵素の働きで肉を柔らかくするというもの。バナナにはタンパク質分解酵素はなく、さっぱり感を加える酸味もない。しかし、肉を柔らかく、とろみのある料理に仕上げる効果がある。
 肉にバナナをまぶして加熱すると、バナナの糖分が肉の水分と結びつき、しっかり保持することができる。さらにバナナのコーティングが水分の蒸発を防ぐので、ジューシーでおいしく仕上がるのだ。

□NHK科学・環境番組部編『NHKためしてガッテン 雑学読本11』(日本放送出版協会、2007)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 

【保健】ビールを飲むとビール腹になるのか?

2016年10月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 ビールだけを飲んでも太らない。ビールを飲んで太るのは、ビールに食欲増進効果があって、肴をもりもり食べるからだ。
 太りやすいかどうかは、カロリーである程度判断できる。
 食品成分表で見ると、一般のビール100ミリリットルの中のエネルギー量は37kcalだ。これは次のように換算することができる。

 (1)633ミリリットル入りの大瓶・・・・234kcal
   【参考】うどん1玉(250g)と同じくらいのカロリー。

 (2)350ミリリットル入りの缶ビール
   ①一般のビール・・・・129kcal
   ②生ビール・・・・175kcal

 (3)中ジョッキ
   ①生ビール・・・・164kcal
   ②黒ビール・・・・160kcal
   【参考】ご飯1膳・・・・160kcal
       食パン6枚切りの1枚・・・・156kcal

□竹内均『時間を忘れるほど面白い 雑学の本』(知的生き方文庫、2011/23刷:2013)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 


【大阪】の「デフレゾーン」

2016年10月14日 | 社会
 大阪の通天閣周辺にある商店街「新世界」は、串カツ人気やアジアからの観光客増加もあって活況を呈している。
 しかし、有名串カツ店を除けば、このあたりの物価水準は異様に低い。梅田駅周辺と比較すると、別世界の感を与える。
 〈例〉立ち食いそば店では「かけうどん160円」。ゲームセンターでは「テレビゲーム」が50円。居酒屋では、「生マグロ300円、八宝菜200円」。人の流れからやや外れた場所の串カツ店では「1本30円から」。
 理髪店もすごい。よく知られた全国チェーン店の1,080円という価格も安いが、通天閣周辺には通常カット700円という店がある。

□加藤出(東短リサーチ代表取締役社長)「散髪代「700円vs21ドル」/意外な日米インフレ差の象徴」(「週刊ダイヤモンド」 2016年10月1日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン





【食】大根はおろして何分後が最も辛いか?

2016年10月14日 | 生活
 生の大根は、細切りにした大根サラダでは辛くないが、大根おろしにすると辛くなる。
 おろすことによって大根の細胞がこわされ、酵素が出てくるからだ。
 辛みの成分は、おろす前は糖と結合して配糖体という化合物になっている。この状態では辛く感じることはない。おろしたときに出てくる酵素が、糖との結合を切ることによって、初めて辛くなる。ワサビをおろすと辛くなるのも、同じような原理による。
 おろした直後より、糖との結合が十分に切れた7~8分後が一番辛くなる。
 大根の辛味の成分は気化しやすく、おろしてから20分も経つと抜けてしまう。
 だから、辛味がほしいと思ったら、食べる7~8分前におろすのがベストなのだ。

□竹内均(東大名誉教授)・編『時間を忘れるほど面白い 雑学の本』(三笠書房(知的生き方文庫)、2011)の「ダイコンは、なぜおろした途端に辛くなるの?」
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 

【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~

2016年10月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)認知症予防に脳トレを実践している方は多いだろう。さらに有酸素運動をプラスすると脳機能全体の健康に役立つようだ。
 米テキサス大学の研究から。

 (2)調査は、脳機能を向上させるトレーニングの探索を目的に行われた。対象は、56~75歳の男女36人。事前に認知機能検査や鬱病検査、身体検査を受け、健康で認知機能障害を持たないことが確認された。参加者は、
  ①認知機能トレーニング群
  ②有酸素運動群
に分かれ、それぞれ1週間あたり3時間、12週間にわたり、割り当てられたトレーニングを実施。試験開始前、試験中、試験後にウエクスラー成人知能検査など複数の認知検査と、脳血流から脳の活動領域を特定するMRI検査を受けている。
 トレーニング内容は、
  ①グループワークと対面セッション、ホームワークからなる本格的なもの。戦略的注意力、統合的な理由付け、思い込みを排した革新的な解決法をさぐる問題解決能力など脳の高次機能を強化するプログラム。
  ②最大心拍数(個人にとって一番早い心拍数)の50~75%をターゲットに、週3回、1回あたり60分間(5分ウォーミングアップ、50分運動、5分クールダウン)、エルゴメーターやトレッドミルで運動。個人差はあるが、脂肪燃焼が期待できる軽いジョギング程度の強度。
 ①の脳機能はプログラムが進むにつれて順当に向上。それ自体は予想の範囲だったが、興味深いことに、②より脳血流量が約8%増加した。
 研究者は、
 <脳血流量は加齢とともに低下するため、この結果数十年分の若返りにも相当する>
としている。
 一方、②は①より記憶力を司る海馬領域の血流量が増加。長期・短期記憶力のパフォーマンスが増大した。認知症予防に運動が欠かせないことを改めて裏づけた、といえる。

 (3)どうやら、脳トレと有酸素運動は、それぞれ脳の別の領域に効くらしい。
 坐ってじっくり脳トレもいいが、身体を動かすことを忘れないで。

□井出ゆきえ(医学ライター)「脳トレに有酸素運動をプラス/認知機能と記憶力が向上 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.314~」(「週刊ダイヤモンド」2016年9月3日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【食】たこやきの起源

2016年10月13日 | 生活
 
 たこ焼きは大阪に生まれ、全国へ広がった。
 たこ焼きの前身はラヂオ焼きである。一説によれば、ラジウム温泉のラジウムがなまっラヂオになった。
 ラヂオ焼き~たこ焼きの初期には、具としていろんなものを入れた。
 いま西成区にある会津屋は、屋台から始まった。味にいろいろ工夫をこらし、醤油で煮た肉を入れると旨い、ということで、これがしばらくよく売れた。明石の玉子焼きにはタコを入れとるで、と客から聞いて、タコを入れてみたら、これが当たった。たこ焼きの誕生である。昭和10年のことだった。
 ちなみに、明石の玉子焼は明石樽屋町に誕生した。

□熊谷真菜『たこやき』(リブロポート、1993)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで

2016年10月13日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)肥満=2型糖尿病と思われがちだが、BMI(体格指数)22~25(標準から小太り)で高血糖の日本人は少なくない。
 先日、相澤病院(長野県松本市)から、「日本人男性は、わずかな体重増加で糖代謝が悪化し、2型糖尿病発症リスクが増加する」との報告があった。
 研究対象は、2005~10年に同院で健康診断を受け、「ブドウ糖負荷試験」を2回以上実施した地域の成人男女4,234人。このうち、
  (a)血糖値は正常範囲(正常群)・・・・2,083人
  (b)糖尿病一歩手前の「糖尿病前症群」・・・・2,151人
と診断されている。
 平均4.8年間の追跡期間中、
   ①(a)の35.8%が、(b)もしくは2型糖尿病を発症している。その間BMIの変化量は、わずか0.34だったにもかかわらず。
   ②(a)を維持した群のBMI変化量は、さらに小さい0.02だった。
   ③(b)の17.6%は、運動や食事療法のかいあって(a)に回復。これに必要としたBMIの変化量もわずかマイナス0.25だった。

 (2)解析結果から、日本人男性はBMIがたった「1」増加しただけで、2型糖尿病の発症リスクが24%上昇し、血糖値が正常に回復する可能性は28%減少することが示されている。
 女性では、こういう関連は認められなかった。

 (3)なぜ、日本人男性は「標準体重の糖尿病」になりやすいのか?
 順天堂大学の研究グループは、BMI25未満の日本人男性70人を、
  (a)高血圧、高血糖、脂質異常症の3リスクを持たない群 
  (b)いずれか一つ持つ群
  (c)二つ以上持つ群
に分け、BMIと骨格筋および肝臓での血糖消費との関連を調べた。
 その結果、日本人男性は、リスクを一つ持っているだけでBMI23~25未満でも骨格筋での糖消費が「肥満者(BMI25以上)」並みに低下することが示された。
 どうやら日本人男性は、人種的に骨格筋での糖消費が少なく、2型糖尿病を予防するには、高い強度の有酸素運動でこまめにカロリーを消費する必要があるらしい。

□井出ゆきえ(医学ライター)「標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.3~」(「週刊ダイヤモンド」2016年9月17日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~


【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む

2016年10月12日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)この夏、「たばこ白書」(厚生労働省)が改訂された。喫煙、受動喫煙と疾患との因果関係を「確実」~「無関係の可能性」の4段階で評価した点が特徴だ。
 本人の喫煙と疾患との因果関係が証明されている「がん(肺・咽頭・食道など)」は「確実」。
 これまで「可能性あり」だった「脳卒中」「心筋梗塞」「糖尿病」も、「確実」に危険度が上がった。

 (2)受動喫煙の影響に関しても手厳しい。
 「受動喫煙関連の年間死亡者数は1万5,000人と推定される」という国立がん研究センターのデータを引いて、日本の受動喫煙対策は「世界でも最低」と断じ、屋内の100%禁煙化を推進すべきだと提言している。
 ちなみに、受動喫煙による水系死亡者数は、毎年1万人以上が亡くなった1960年代の年間交通事故死亡者数に匹敵する。
 当時は、東京オリンピック(1964年)を3年後に控えた1961年から読売新聞が「日清戦争より多い死者」という刺激的なタイトルで、交通事故の現実を取材した連載「交通戦争」をスタート。欧米の事例から対策の必要を論じた。
 世論の盛り上がりを背景に、道路交通法の改定や取り締まり強化が行われ、安全面の技術革新もあって、交通事故死は減少していった。2015年の交通事故死は、4,117人。1970年に記録した最大1万6,765人の4分の1以下だ。

 (3)受動喫煙関連死については、推計値に疑問の声が上がる一方、直接死ではない点が重大性を見えにくくしている。ただ、死亡者数の多さは侮れない。20年後に向け、何らかの法整備はありそうだ。

 (4)受動喫煙との因果関係が確実とされる疾患に、
   「肺癌」
   「脳卒中」
   「心筋梗塞」
   「乳幼児突然死症候群(SIDS)」
がある。両親とも喫煙者でのSIDS発症リスクは、非喫煙者の5倍、母親の受動喫煙だけで2~3倍に上昇する。
 妊娠の報告と同時に禁煙を迫られる人は少なくあるまい。分煙で勘弁してほしいかもしれないが、喫煙者の身体に付着した残留物が、屋内で再び放散される「サードハンドスモーキング」のリスクも侮れない。自分と子どもの将来を考えて、禁煙したほうがいい。 

□井出ゆきえ(医学ライター)「受動喫煙のリスクは「確実」/がん、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.320~」(週刊ダイヤモンド 2016年10月15日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~

2016年10月11日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)うつ病の心理療法のファーストチェイスは認知行動療法(CBT)だ。しかし、専門家不足や診療点数の低さから日本ではなかなか普及しない。
 こうした中で、CBTより簡単な「行動活性化療法(BA)」が、CBTと同等の治療効果をあげるという報告が英エクセター大学から出された。

 (2)BAは1970年代に開発された「行動療法」の発展型。
 抗うつ薬が脳の神経伝達系に、CBTが認知の歪みといううつ病の原因に焦点をあてるのに対し、BAは原因ではなく「うつ状態を続けさせている行動」に着目する。
 〈例〉「仕事に対する自信をなくし、職場復帰したいのに一日中家でふさぎこんでいる」患者がいる場合、BAの立場からは、その患者は職場で体験する嫌な状況や気分から逃れるため行動を抑制する「回避」状態にあると定義される。
 回避行動は結果的に、「自発的な行動を増やして自己効力感を取り戻す」機会を減らしてしまう。
 この悪循環を断ち切るには、「嫌な気分」や「やる気がでない」状態(うつ病の主症状)にとらわれず、職場復帰したいという本来の目的に近づく「接近行動」(〈例〉朝は起きる、顔を洗う、等を実行すること)が肝心だ。
 毎日の生活で、嫌な気分に自分の行動を決めさせるのではなく、行動で気分を変化させるわけだ。つまり、「やっていれば、そのうち気分も乗ってくる」のだ。論理的に認知の歪みをリモデリングするCBTよりなじみやすい。

 (3)エクセター大学の研究では、成人うつ病患者440人(平均年齢43.5歳)を①CBT群、②BA群に分け、12ヵ月後にうつ病重症度評価スコアを比較(登録時には①、②群とも中等~重症だった)。
 治療の結果、①、②両群ともうつ病スコアが軽微~軽度に改善した。両群で効果の差はなかった。
 BAのミソは、接近行動が次の接近行動を活性化する点だ。体調が悪いときに行動するのは辛いが、あきらめずに続けることで好循環が生まれ、治療効果が持続する。
 秋冬は憂うつな季節だが、何はともあれ日々行動することだ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「うつ病治療に行動活性化療法/嫌な気分の時こそ、動く ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.318~」(「週刊ダイヤモンド」2016年10月1日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【保健】米国でトリクロサン入り石けん販売禁止 ~日本でも抗菌剤入り薬用石けん見直しへ~

2016年10月10日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)米国で、環境ホルモン作用のある殺菌成分トリクロサン【注1】をはじめとする19成分を使った抗菌石けんが販売禁止になることが決まった。
 2016年9月2日、米国食品医薬品局(FDA)が発表した。
 FDAの再評価の最終結果が今回の発表だ。1972年に開始されたOTC薬【注2】の再評価の一環として、抗菌薬の成分として使用されていた22成分についても再評価した結果、19成分が一度に禁止になった。

 (2)トリクロサン以外の18成分は、どんなものがあるか。
 日本の薬用石けんには、トリクロサンとその類似成分であるトリクロカルバン(「ミューズ固形石けん」に使用)以外は、おおむね使われていないようだ。
 例外が「イソジン」の名称【注3】で有名な明治のうがい薬の成分、「ポビドンヨード」で、明治はハンドウォッシュとしても販売している。

 (3)22成分中、トリクロサンを含む19成分については、普通の石けんと比べて感染症予防などの有効性が優れているという証拠も、毎日長期的に使用することでの安全性の証拠も不十分ということで、禁止措置となった。
 ちなみに、残り3成分には、「ファブリーズ」の抗菌剤にも使われる「塩化ベンザルコニウム」も含まれているが、企業からの有効性と安全性のデータ提出の猶予期間が延長されたため、今回の禁止措置の対象には入っていない。

 (4)米国での禁止措置は日本でも報道された。菅義偉・官房長官が販売実態調査と必要な措置の検討を早急に行うと9月7日に発表した。
 実は日本でも、米国に続いてOTC医薬品の再評価1978年から開始されたが、薬用石けんなどの医薬部外品の成分は対象外とされた。医薬部外品は一度承認されると見直しをする制度がないため、法的にどのような措置ができるかは不明なままだ。

 (5)日本の大手メーカーは、海外の規制強化を受けてすでにトリクロサンから別の成分に変更している。花王の「ビオレU泡ハンドソープ」【注4】も、「イソプロピルメチルフェノール」という別の成分になっている。その新成分は、米国における評価対象にはなっていない。日本でしっかり再評価すべきだ。特に普通の石けんより有効性があると言えるのかが問題となる。

 (6)今回の米国での禁止措置は、薬用石けんに限られる。
 実はトリクロサンは、薬用歯磨きや洗口剤にも使われている。そちらは歯肉炎の予防効果が認められていて、米国でも禁止されていない。しかし、口の中に入れることで成分の体内への吸収率が高くなるので、安全性を懸念する声が上がっている。
 日本でも2015年8月の段階では、
   花王「薬用ピュオーラ」
   花王「ディープクリーン」
   サンスター「G・U・Mデンタルリンス」
などにトリクロサンが使用されていたが、2016年のこのたびの調査ではほとんどの商品で変更されていた。トリクロサンは、そもそも不要だったのか?

 【注1】「【保健】薬用せっけんの殺菌剤「トリクロサン」 ~欧州で使用禁止に~
 【注2】ドラッグストアで販売されている一般医薬品。医師の処方がないと買えない医療用医薬品と区別される。
 【注3】ライセンス契約が切れたため、現在では明治のうがい薬から「イソジン」の名前は消えている。
 【注4】【注1】の記事参照。

□植田武智「アメリカでもトリクロサン入り石けんが販売禁止 日本でも抗菌剤入り薬用石けんの見直しへ」(「週刊金曜日」2016年10月7日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

【心理】アニマル・セラピー ~セント・バーナード~

2016年10月10日 | 心理
 
 <ドンツォワ【注】の疲れた顔を見て、気を紛らわすつもりの話が役に立たなかったことをすでに悟った老医師は、このへんで話をやめようとしていた。そのとき、ベランダに通じるドアがあいて、入ってきたのは--犬なのだが、とても大きな、おとなしそうな、まるで人間が何かの理由から四つん這いになったような感じの犬である。ドンツォワは咬まれはしないかとこわくなったが、その悲しそうな人間的な目を見ると、恐怖はたちまち薄らいだ。
 自分が入って行ってだれかが驚くことなど考えられもしないというように、犬は穏やかに、物思わしげに入って来た。そして一度だけ、登場の挨拶のように、箒そっくりのみごとな白い尻尾を持ち上げ、それを空中で一振りしてから、だらりと下ろした。垂れ下がった耳が黒いほかは、全身、茶と白の二つの色が複雑な模様をなして入りまじっている。背は白い衣を着せられたようだが、脇腹は明るい茶色で、尻のあたりはオレンジ色に近い。初め、ドンツォワに近寄って、ちょっと膝のあたりの匂いをかいだが、さしてこだわるふうはなかった。犬らしく、そのオレンジ色の尻をテーブルのそばに下ろし、自分の頭よりもほんの少し高いテーブルの表面に並んでいる食べものに関心を示すということもない。四つ足で突っ立ったまま一切の欲望を超越したかのうように、潤いのある褐色の大きな丸い目でテーブルの上の空間を眺めているだけである。
 「これは何という種類の犬かしら」と、ドンツォワは呆れて尋ねた。その瞬間、女医は今夜初めて自分の病気のことを忘れていた。「セントバーナード」惚れ惚れとオレシチェンコフは犬を眺めていた。「ほかの所は申し分ないんだが、どうも耳が長すぎてね。マーニャが餌をやるとき怒るんだ。『紐ででも縛っておいたらどうなの。お椀の中に入るわよ!』ってね」
 ドンツォワは犬に魅惑された。こういう犬は街の雑踏の中には入れないし、どんな交通機関にも連れて乗ることは許されないだろう。雪男がヒマラヤにしか住めないように、こういう犬は庭のある平屋でしか生きられないのだ。
 オレシチェンコフは肉饅頭の一切れを犬に食べさせた。ただし投げ与えたのではない。人が憐れみから、あるいは面白半分に食べものを投げ与えると、たいていの犬は後足で立ち上がり、友情のしるしに前足を人間の肩にかけたりする。オレシチェンコフは、同等の人間に与えるときように、肉饅頭を差し出したのだ。その掌の皿から、犬も対等の存在として、おもむろに肉饅頭を銜(くわ)えて取った。大して腹は減っていないのだが、一応の礼儀として受け取るというように。>

 【注】ウズベク共和国の首都タシケント市の総合病院のガン病棟(共和国唯一のガン病棟)の責任者、女医。時期は、第一部では1955年2月初旬の1週間、第二部はそれから1か月後の3月初め。

□アレクサンドル・ソルジェニーツィン(小笠原豊樹・訳)『ガン病棟』(新潮社文庫、1971)の「30 老医師」から引用
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン