大阪府都市整備部総合計画課
平成22年12月15日
北部大阪都市計画
区域の整備、開発及び保全の方針
(都市計画区域マスタープラン)変更案についての意見書
1)わたくしが平成元年に島本町に転入してきたときは、阪急水無瀬駅周辺にも農地がまとまって点在していました。JR島本駅周辺(平成20年3月開業)は、かつて農地だけではなく、線路沿いに豊かで多様な「みどり」が広がっていた地域でした。「公園」ではない緑地、里山との一体感、都会育ちのわたしにとっては、まるで「桃源郷」のような存在でした。
島本町で生まれ育った、あるいはここで子どもを育てた同時代の友人が、男女問わず、これ以上田畑を開発しないで欲しい、かろうじて残った当該地区の姿を次世代に伝えたい、と強く願っています。新JR駅誘致開業については、駅ができることそのものよりも、周辺の環境が、開業を機にまた大きく失われてしまうのではないかと危惧することからの反対や慎重姿勢が多かったという事実があります。
かつて多くが農地であった島本町にとって、駅周辺として脚光を浴びることになった西側農空間は、絶滅危惧的農空間、島本町の鴇ともいえる貴重な存在です。この度、人口1000人規模の住宅地に開発するという「土地区画整理事業」素案が、府に提出され、保留フレームとして位置づけされたことに、わたしは相当の危機感を抱いています。
2)島本町は平成20年年3月のJR島本駅開業事業において、西側の土地利用方針を示していませんでした。西側農地については残したいという住民の思いが強かったため敢えて明確にしなかったにせよ、「保全」の余地を残したにせよ、とにかく具体的な計画を公表するのは見送りました。
しかし、駅が開業した後には、駅周辺を「都市的な土地利用」=「開発」するのが望ましいと考える一部の意見に押されるかたちで、第4次総合計画の策定を急ぎ、前倒ししました。しかし、基本計画はいまなお審議の途中であり、当該地区における具体的な計画は示されていません。
平成20年5月30日、3月15日駅が開業した直後に、大阪府の「農空間保全地域」に指定されましたが、指定地区は市町村長との協議を経て公表するとされています。島本駅が開設された3月15日以降、5月に公表されているという事実は非常に重要で、駅の西側となった後に「農空間保全地域」に指定されているということになります。
地権者のご意向とは別に、農空間として保全するに相応しいエリアとして認めている、すなわち、ここに町の意思があり「農空間保全」という一定の方向性を示したといえると、わたくしは考えています。
3)「市街化調整区域内の概ね5ha以上の集団農地」に該当するものとして、農空間保全地域に指定されている桜井の農地区ですが、町は保留フレーム設定により、平成27年を待たずに市街化区域編入を行うことを可能にしました。計画の素案では平成24年に市街化調整区域編入・27年までの4年間を土地区画整理とされています。
起案の趣旨には「将来的に市街化区域への変更を希望される方が、33.3%となっております」と記載されていますが、望まないとした人20人(55.6%)の記載はありません。恣意的です。
農空間保全地域を、将来、市街化地域に編入するとすれば、府の農空間の保全・活用方針に反すると危惧します。33.3%が市街化区域への変更を希望するとのみ明記して保留フレームを設定していることもあり、行政が非公開ですすめる勉強会に信頼を寄せることはできません。
18日に行われるまちづくり勉強会では、いよいよ当該地に感心を寄せている民間業者のプランを「土地利用意向調査」と称して、(財)大阪府都市整備推進センター(勉強会の委託先)が取りまとめ、地権者に紹介する予定です。
アンケート結果を正しく踏まえるならば、おおむね10年以内の土地利用の意向を問う答えに、「農地として利用したい」という人が15人(41.7%)で、売却したい2人(5.6%)を大きく引き離しています。
現在「市街化調整区域」である対象地区が近い将来「市街化区域」になることに、望むとした人12人(33.3%)、比べて、望まないとした人は20人(55.6%)と多数派。売却したい人に至っては2名。将来農業を続ける意思がない16名の方も、土地の売却を望んでおられるわけではないことは、売却したいと答えた人がたった2人であることからみれば明らかです。
アンケートの示している事実に反し、民間業者のニーズを集約し、地権者に示すというのはいかがなものでしょうか。後継者がいない、売りたくないが農業は続けられないという決して少数ではない地権者の思いに答える「農業支援」が必要です。
4)そもそも「土地区画整理事業」は、地価の上昇を前提に成り立ってきたものです。地価の上昇が望めないときは、組合による施行にはリスクが伴うと考えます。「減歩」による土地の面積減少はあっても、周辺整備が行われると土地の利用価値が増し、土地の価格も上昇するため、資産価値は減少しない、という説明がされる場合が多いそうですが、はたしてこれからもそうでしょうか。
「島本駅西側にあり、土地の有するポテンシャルは益々高くなっている地区」として素案を提出し保留フレームを設定しました。駅開業という周辺整備を整え、土地のポテンシャルを上げても、こういった事業的要因とは別に、住宅需要と供給のバランス、人口減少、産業構造の変化や為替の動向などにより、土地価格下落となった場合、土地を担保にした開発事業は成り立ちません。
アメリカがサブプライムローンという衝撃を経験して国力を弱めたことを忘れてはいけません。経済の先行きが不透明な時期は安易に「土地区画整理事業」に着手すべきではないと考えます。
5)景観・歴史・文化の面においても、当該地区桜井の農空間は、北摂山系の稜線と御所が池を一体としての庭園都市構想が可能という点で見逃すことができないエリアであり、近い将来「農地」であることが重要になる日が来ると考えています。
駅東側の桜井の駅跡(楠公さん)、旧麗天館など、昭和という時代を俯瞰したときに非常に重要な場所との連携が可能です。昭和の情景、稲作風景が見渡せる駅としての魅力特化が可能であり、ホームに降り立つ住民の福祉に値する安らぎが提供できる貴重な農空間であるといえます。
上記のことを踏まえまして、
市街化区域への編入を急ぐことになりかねない保留フレームの設定は、この際、撤廃すべきではないかとご意見申し上げます。ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
以上
画像
桜井・農空間からJR島本駅を望む
駅に京都方面行きの電車が停留しています
走行中にぶつかった雪でフロントガラスが割れ
山崎駅で前の車両が停留しているようでした
京都行きを諦めた乗客の方が教えてくださいました
平成22年12月15日
北部大阪都市計画
区域の整備、開発及び保全の方針
(都市計画区域マスタープラン)変更案についての意見書
1)わたくしが平成元年に島本町に転入してきたときは、阪急水無瀬駅周辺にも農地がまとまって点在していました。JR島本駅周辺(平成20年3月開業)は、かつて農地だけではなく、線路沿いに豊かで多様な「みどり」が広がっていた地域でした。「公園」ではない緑地、里山との一体感、都会育ちのわたしにとっては、まるで「桃源郷」のような存在でした。
島本町で生まれ育った、あるいはここで子どもを育てた同時代の友人が、男女問わず、これ以上田畑を開発しないで欲しい、かろうじて残った当該地区の姿を次世代に伝えたい、と強く願っています。新JR駅誘致開業については、駅ができることそのものよりも、周辺の環境が、開業を機にまた大きく失われてしまうのではないかと危惧することからの反対や慎重姿勢が多かったという事実があります。
かつて多くが農地であった島本町にとって、駅周辺として脚光を浴びることになった西側農空間は、絶滅危惧的農空間、島本町の鴇ともいえる貴重な存在です。この度、人口1000人規模の住宅地に開発するという「土地区画整理事業」素案が、府に提出され、保留フレームとして位置づけされたことに、わたしは相当の危機感を抱いています。
2)島本町は平成20年年3月のJR島本駅開業事業において、西側の土地利用方針を示していませんでした。西側農地については残したいという住民の思いが強かったため敢えて明確にしなかったにせよ、「保全」の余地を残したにせよ、とにかく具体的な計画を公表するのは見送りました。
しかし、駅が開業した後には、駅周辺を「都市的な土地利用」=「開発」するのが望ましいと考える一部の意見に押されるかたちで、第4次総合計画の策定を急ぎ、前倒ししました。しかし、基本計画はいまなお審議の途中であり、当該地区における具体的な計画は示されていません。
平成20年5月30日、3月15日駅が開業した直後に、大阪府の「農空間保全地域」に指定されましたが、指定地区は市町村長との協議を経て公表するとされています。島本駅が開設された3月15日以降、5月に公表されているという事実は非常に重要で、駅の西側となった後に「農空間保全地域」に指定されているということになります。
地権者のご意向とは別に、農空間として保全するに相応しいエリアとして認めている、すなわち、ここに町の意思があり「農空間保全」という一定の方向性を示したといえると、わたくしは考えています。
3)「市街化調整区域内の概ね5ha以上の集団農地」に該当するものとして、農空間保全地域に指定されている桜井の農地区ですが、町は保留フレーム設定により、平成27年を待たずに市街化区域編入を行うことを可能にしました。計画の素案では平成24年に市街化調整区域編入・27年までの4年間を土地区画整理とされています。
起案の趣旨には「将来的に市街化区域への変更を希望される方が、33.3%となっております」と記載されていますが、望まないとした人20人(55.6%)の記載はありません。恣意的です。
農空間保全地域を、将来、市街化地域に編入するとすれば、府の農空間の保全・活用方針に反すると危惧します。33.3%が市街化区域への変更を希望するとのみ明記して保留フレームを設定していることもあり、行政が非公開ですすめる勉強会に信頼を寄せることはできません。
18日に行われるまちづくり勉強会では、いよいよ当該地に感心を寄せている民間業者のプランを「土地利用意向調査」と称して、(財)大阪府都市整備推進センター(勉強会の委託先)が取りまとめ、地権者に紹介する予定です。
アンケート結果を正しく踏まえるならば、おおむね10年以内の土地利用の意向を問う答えに、「農地として利用したい」という人が15人(41.7%)で、売却したい2人(5.6%)を大きく引き離しています。
現在「市街化調整区域」である対象地区が近い将来「市街化区域」になることに、望むとした人12人(33.3%)、比べて、望まないとした人は20人(55.6%)と多数派。売却したい人に至っては2名。将来農業を続ける意思がない16名の方も、土地の売却を望んでおられるわけではないことは、売却したいと答えた人がたった2人であることからみれば明らかです。
アンケートの示している事実に反し、民間業者のニーズを集約し、地権者に示すというのはいかがなものでしょうか。後継者がいない、売りたくないが農業は続けられないという決して少数ではない地権者の思いに答える「農業支援」が必要です。
4)そもそも「土地区画整理事業」は、地価の上昇を前提に成り立ってきたものです。地価の上昇が望めないときは、組合による施行にはリスクが伴うと考えます。「減歩」による土地の面積減少はあっても、周辺整備が行われると土地の利用価値が増し、土地の価格も上昇するため、資産価値は減少しない、という説明がされる場合が多いそうですが、はたしてこれからもそうでしょうか。
「島本駅西側にあり、土地の有するポテンシャルは益々高くなっている地区」として素案を提出し保留フレームを設定しました。駅開業という周辺整備を整え、土地のポテンシャルを上げても、こういった事業的要因とは別に、住宅需要と供給のバランス、人口減少、産業構造の変化や為替の動向などにより、土地価格下落となった場合、土地を担保にした開発事業は成り立ちません。
アメリカがサブプライムローンという衝撃を経験して国力を弱めたことを忘れてはいけません。経済の先行きが不透明な時期は安易に「土地区画整理事業」に着手すべきではないと考えます。
5)景観・歴史・文化の面においても、当該地区桜井の農空間は、北摂山系の稜線と御所が池を一体としての庭園都市構想が可能という点で見逃すことができないエリアであり、近い将来「農地」であることが重要になる日が来ると考えています。
駅東側の桜井の駅跡(楠公さん)、旧麗天館など、昭和という時代を俯瞰したときに非常に重要な場所との連携が可能です。昭和の情景、稲作風景が見渡せる駅としての魅力特化が可能であり、ホームに降り立つ住民の福祉に値する安らぎが提供できる貴重な農空間であるといえます。
上記のことを踏まえまして、
市街化区域への編入を急ぐことになりかねない保留フレームの設定は、この際、撤廃すべきではないかとご意見申し上げます。ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
以上
画像
桜井・農空間からJR島本駅を望む
駅に京都方面行きの電車が停留しています
走行中にぶつかった雪でフロントガラスが割れ
山崎駅で前の車両が停留しているようでした
京都行きを諦めた乗客の方が教えてくださいました