昨日19日(水)の午後、向日市にあるNPOエンデバーを訪ねました。友人2名とわたしを含めて議員2名、未就学児1名。統括事業長・Mさんのお話を聴き、同NPOが運営する障害者就労支援事業所「ジョブサポートセンターRINEN」を見学させていただきました。
Mさんとは数年前、知人のアロマセラピストの紹介で出会いました。高槻市の「サニースポット」で知的障害者の施術によるアロマセラピー事業への取り組みをともに見学、体験しました。抱いていた夢、構想を短期間で実現され、軌道にのせておられました。
そのときご一緒したもうひとりの若者が、この春4月より、宇治市にある障害者就業・生活支援センター長に就任されたと京都新聞の記事で知りました。障害者自立への課題、すべてのライフステージをトータルに支援する必要性を、ぬくもりある視線で語られ、その透明なお人柄は今なお忘れることができません。
さて、ジョブサポートセンターRINENでは、20名以上の方が能力に応じてさまざまな難易度の作業を分担、黙々とこなしておられました。ひたむきな姿、目からウロコの働きぶりに頭が下がりました。NPOスタッフと当事者の区別がつかず、管理されているという雰囲気はまったく感じませんでした。
重度の障害の方も、ひきこもりから立ち直った若者も、もしかしたら犯罪を犯して社会復帰を目指す少年少女も(Mさんは元少年課の刑事さん)、それぞれに自分の課題に向き合って働いておられると思います。保護されたり、囲い込まれたり、まして矯正されたりするのではなく、ともにつながって働いている所という印象でした。従って、ごくごく普通の職場の雰囲気です。
仕事の内容は、ホテルの客室で使われ、すでに洗濯されたタオルを畳む作業(比較的簡単、特に清掃員が使用する清掃用のタオルは二つ折りでたたみやすい!)、数を数えて機械でくくる作業(少し難易度が高い)、カートに積んで搬出準備をする作業(数の管理がかなり高度。わたしには無理、絶対に向いていない!)。
あるいは、綿のガウンをハンガーにかけて通路の両サイドから蒸気が出る自動アイロン機に通す作業(レーンが常に流れているので段取り力が必要)、アイロン済のものを畳む作業(タオルより難易度が高い)。家具付き賃貸マンションの布団を圧縮機に入れ、コンパクトにしてまとめる作業(かなりの重労働)。実に多種多様な作業がありました。
驚いたのは、当事者にとって、ここがひとつの通過点であることです。企業に就職することを目標、目的としている方に、その道を用意する独自の事業モデル(ステップアップしシステム)を生み出しておられました。まず最初に、作業と就労(=挨拶・共同作業・就労態度など)の訓練をジョブサポートセンターRINENで行います。
次に、企業にエンデバーの障害者就労支援事業の一部を「委託」するという手法で、障害のある方がチームを組んで企業内就労を経験します(仲間がいれば精神的に安心できる確立が高まると思われます)。本人の能力にあった時給を設定することができるので、一般的な時給よりも安い金額設定になるものの、企業にとってはいきなり障害者を雇用する不安を緩和できます。
障害者雇用のハードルの高さは、本人の能力よりも「誤解」「偏見」「無理解」「不安」に起因するものとMさんの話の中に何度かでてきました。実際に現場で働く様子を知ってもらうことで、雇用者に「理解」「安心」してもらうことができ、やがて「彼なら、彼女ならば雇ってもよい」、あるいは「彼女、彼を雇用したい」という段階を迎えるのだそうです。これがNPOエンデバーのめざす「本当の意味の就労支援」です。
さらに、なんらかの理由でうまくいかなければ(周囲の無理解、仕事になじめない、いじめにあうなど)ジョブサポートセンターにいつでも帰ってきても良い(=セーフティネット)という話を、企業側や本人話してあることもポイント。誤解を恐れずにいうなら、これは雇用する側にとっても一種のセーフティネットになります。
良心的な雇用者ほど万一のときの解雇に悩み、あるいは解雇したくても解雇できないという可能性を恐れ、障害者雇用に前向きになれないということは充分に考えられます。現場は厳しい。就労の継続が難しいとわかっても、いったん雇用すれば安易な解雇は許されず、結果的に当事者にとって極めて居心地が悪い職場になるという事態は、注意深く避けなければなりません。
障害者の方は、障害のない方よりも慣れたり、覚えたりするのに時間が多くかかるかもしれませんが、その分一度覚えてしまえば、同じ作業を黙々とこなす力、ときに嬉々として取り組む力をもっておられます。作業に「はまる」=向いているということです。
機械の上をスルスル滑ってクルクル戻ってくるタオルをみていると、なんとなくわかる気がしました。給料は能力と働いた時間によって、公平平等に分けられています。就労継続支援B型の月平均は3.6万円、A型6.6万円、現在の最高額は約8万円だそうです(A型・B型について、戸田は学ぶ必要があります)。
「障害者自立支援法」の施行によって可能になった事業モデルということでした。しかしこの法律は、「応益負担」という考え方によりサービス料の一割負担がはじまり、重度の人ほど負担が大きくなるという矛盾が問題視されて廃止が叫ばれています。
よい側面も含めて多角的にみる議論にはこれまで出会えませんでした。問題が指摘されている一部のみを知っているだけで、実は他の多くの部分については関心さえ寄せていないという人が多いのではないでしょうか。わたし自身、支援法について無知のまま、廃止されるべき悪法という印象をもってしまっています。これはよくないことです。
地域に就労の場があることは非常に大事です。できることなら次回は実際に働く体験をしてみたいと思いました。ちょっと拝見しただけの印象で「素晴らしい」と断定するのは避けなければなりませんが、島本町にも事業者と当事者をつなぐコーディネート機能がうまく働けば、独自の展開が生まれる可能性があるはずです。
画像はドクダミ(2009年家の前の公園で撮影)
どくだみや花はクルスに支えられ 靖子
Mさんとは数年前、知人のアロマセラピストの紹介で出会いました。高槻市の「サニースポット」で知的障害者の施術によるアロマセラピー事業への取り組みをともに見学、体験しました。抱いていた夢、構想を短期間で実現され、軌道にのせておられました。
そのときご一緒したもうひとりの若者が、この春4月より、宇治市にある障害者就業・生活支援センター長に就任されたと京都新聞の記事で知りました。障害者自立への課題、すべてのライフステージをトータルに支援する必要性を、ぬくもりある視線で語られ、その透明なお人柄は今なお忘れることができません。
さて、ジョブサポートセンターRINENでは、20名以上の方が能力に応じてさまざまな難易度の作業を分担、黙々とこなしておられました。ひたむきな姿、目からウロコの働きぶりに頭が下がりました。NPOスタッフと当事者の区別がつかず、管理されているという雰囲気はまったく感じませんでした。
重度の障害の方も、ひきこもりから立ち直った若者も、もしかしたら犯罪を犯して社会復帰を目指す少年少女も(Mさんは元少年課の刑事さん)、それぞれに自分の課題に向き合って働いておられると思います。保護されたり、囲い込まれたり、まして矯正されたりするのではなく、ともにつながって働いている所という印象でした。従って、ごくごく普通の職場の雰囲気です。
仕事の内容は、ホテルの客室で使われ、すでに洗濯されたタオルを畳む作業(比較的簡単、特に清掃員が使用する清掃用のタオルは二つ折りでたたみやすい!)、数を数えて機械でくくる作業(少し難易度が高い)、カートに積んで搬出準備をする作業(数の管理がかなり高度。わたしには無理、絶対に向いていない!)。
あるいは、綿のガウンをハンガーにかけて通路の両サイドから蒸気が出る自動アイロン機に通す作業(レーンが常に流れているので段取り力が必要)、アイロン済のものを畳む作業(タオルより難易度が高い)。家具付き賃貸マンションの布団を圧縮機に入れ、コンパクトにしてまとめる作業(かなりの重労働)。実に多種多様な作業がありました。
驚いたのは、当事者にとって、ここがひとつの通過点であることです。企業に就職することを目標、目的としている方に、その道を用意する独自の事業モデル(ステップアップしシステム)を生み出しておられました。まず最初に、作業と就労(=挨拶・共同作業・就労態度など)の訓練をジョブサポートセンターRINENで行います。
次に、企業にエンデバーの障害者就労支援事業の一部を「委託」するという手法で、障害のある方がチームを組んで企業内就労を経験します(仲間がいれば精神的に安心できる確立が高まると思われます)。本人の能力にあった時給を設定することができるので、一般的な時給よりも安い金額設定になるものの、企業にとってはいきなり障害者を雇用する不安を緩和できます。
障害者雇用のハードルの高さは、本人の能力よりも「誤解」「偏見」「無理解」「不安」に起因するものとMさんの話の中に何度かでてきました。実際に現場で働く様子を知ってもらうことで、雇用者に「理解」「安心」してもらうことができ、やがて「彼なら、彼女ならば雇ってもよい」、あるいは「彼女、彼を雇用したい」という段階を迎えるのだそうです。これがNPOエンデバーのめざす「本当の意味の就労支援」です。
さらに、なんらかの理由でうまくいかなければ(周囲の無理解、仕事になじめない、いじめにあうなど)ジョブサポートセンターにいつでも帰ってきても良い(=セーフティネット)という話を、企業側や本人話してあることもポイント。誤解を恐れずにいうなら、これは雇用する側にとっても一種のセーフティネットになります。
良心的な雇用者ほど万一のときの解雇に悩み、あるいは解雇したくても解雇できないという可能性を恐れ、障害者雇用に前向きになれないということは充分に考えられます。現場は厳しい。就労の継続が難しいとわかっても、いったん雇用すれば安易な解雇は許されず、結果的に当事者にとって極めて居心地が悪い職場になるという事態は、注意深く避けなければなりません。
障害者の方は、障害のない方よりも慣れたり、覚えたりするのに時間が多くかかるかもしれませんが、その分一度覚えてしまえば、同じ作業を黙々とこなす力、ときに嬉々として取り組む力をもっておられます。作業に「はまる」=向いているということです。
機械の上をスルスル滑ってクルクル戻ってくるタオルをみていると、なんとなくわかる気がしました。給料は能力と働いた時間によって、公平平等に分けられています。就労継続支援B型の月平均は3.6万円、A型6.6万円、現在の最高額は約8万円だそうです(A型・B型について、戸田は学ぶ必要があります)。
「障害者自立支援法」の施行によって可能になった事業モデルということでした。しかしこの法律は、「応益負担」という考え方によりサービス料の一割負担がはじまり、重度の人ほど負担が大きくなるという矛盾が問題視されて廃止が叫ばれています。
よい側面も含めて多角的にみる議論にはこれまで出会えませんでした。問題が指摘されている一部のみを知っているだけで、実は他の多くの部分については関心さえ寄せていないという人が多いのではないでしょうか。わたし自身、支援法について無知のまま、廃止されるべき悪法という印象をもってしまっています。これはよくないことです。
地域に就労の場があることは非常に大事です。できることなら次回は実際に働く体験をしてみたいと思いました。ちょっと拝見しただけの印象で「素晴らしい」と断定するのは避けなければなりませんが、島本町にも事業者と当事者をつなぐコーディネート機能がうまく働けば、独自の展開が生まれる可能性があるはずです。
画像はドクダミ(2009年家の前の公園で撮影)
どくだみや花はクルスに支えられ 靖子