漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「将ショウ」<肉を供えて神にすすめる>と「奨ショウ」「醤ショウ」「漿ショウ」「蔣ショウ」

2024年02月18日 | 漢字の音符
  増訂しました。
[將]  ショウ・ひきいる・まさに  寸部 jiāng・jiàng

解字 篆文(秦)および旧字は將で「爿ショウ(台)+月(にく)+寸(手)」の会意形声。台の上に手で月(肉)を供えて神にすすめる祭祀儀礼を表し、爿ショウが発音も表している。奨ショウ(すすめる)の原字。また、ひきいる意があるが、この意は、①軍の統率者が祭祀で肉を供え戦勝を祈願したからという説、②仮借カシャ(当て字)説があるが、①が覚えやすい。このほか、「まさに~せんとす」などの助辞に用いられる。新字体は、旧字・將の爿⇒丬、月⇒ノツに変化した将になった。
意味 (1)ひきいる(将いる)。軍をひきいる人。したがえる。「将軍ショウグン」「武将ブショウ」「主将シュショウ」「将棋ショウギ」「女将おかみ・ジョショウ」(旅館・居酒屋などの女主人) (2)まさに~せんとす。「将(まさ)に」「将来ショウライ」(将に来んとする時。未来) (3)はた(将)。それとも。「将又はたまた」 (4)すすめる。=奨。

イメージ  
 「(肉を供えて神に)すすめる」
(将・奨)
 「肉を供える」(醤・漿)
 「形声字」(蔣・鏘)
音の変化  ショウ:将・奨・醤・漿・蔣・鏘 

すすめる
ショウ・すすめる  大部 jiǎng
解字 旧字は「大(ひと)+將(すすめる)」 の会意形声。大は人の正面形で人の意。人が肉を供えて神にすすめること。転じて、すすめる、はげます意となる。新字体は、將⇒将に変化した奨。
※この字は後漢の[説文解字]が、下の大⇒犬にし、現代字は犬の点がとれた大になっている。しかし[字統]は、「本来は廾(両手が変化した形)であろう」としている。現に異体字に㢡ショウがあり、楷書・草書でもこの字体が多い。この解字は両手で肉をすすめる意となる。本稿では覚えやすさを考慮し、大を人と解釈して解字した。
意味 すすめる(奨める)。はげます。力づける。「奨励ショウレイ」(すすめはげます)「奨学ショウガク」(学業を奨励する)「勧奨カンショウ」(勧も奨も、すすめる意)「推奨スイショウ」(推してすすめる)「報奨金ホウショウキン」(行為に報いはげますお金)

肉を供える
醤[醬] ショウ・ひしお  酉部 jiàng
解字 旧字はで「酉(発酵する)+將(肉を供える)」 の会意形声。酉は酒壷のかたちで、中で発酵する意。醤は供えた肉を細かく切り、塩などをまぜて壷にいれて発酵させたもの。ししびしお(肉醤)のことで、肉の塩辛の類をいう。のち、大豆や小麦を材料にした穀醤コクショウ(味噌など)もいうようになった。これが日本の醤油のもとになった。現代字は新字体に準じた醤が用いられる。
意味 (1)ししびしお(肉醤)。しおから。 (2)ひしお(醤)。古代の発酵調味料。現在の味噌の原形。現代中国では、味噌やジャム状食品をいう。 (3)しょうゆ(醤油)。大豆や小麦を原料に麹(こうじ)で発酵させたものに食塩水を加えて発酵・熟成させ、布などで濾して作る液体の調味料。「魚醤ギョショウ」(魚を発酵させて作る液体の調味料)

形声字
漿 ショウ 水部 jiāng・jiàng
解字 「水(液体)+將(ショウ)」 の形声。ショウという名の液体を漿ショウという。[説文解字]は「酢漿サクショウ(古代の一種の酸味のある飲料)」とするが、のちにいろんな意味に用いられるようになり、現在、漿ショウの意味は(1)ある種の成分をふくむ水(しる。つゆ)(2)濃い汁もの。(3)どろどろしたもの。の三種類がある。
意味 (1)しる。つゆ。「漿液ショウエキ」(①しる。つゆ。②粘着物を含まない液)「血漿ケッショウ」(血液の上澄み液。血液の液状成分)「漿果ショウカ」(汁液の多い果物=液果) (2)濃い汁もの。「濃漿こんず」(①米を煮たおもゆ。②美酒の異称)「濃漿こくショウ」(濃く仕立てた味噌汁。鯉こくなど) (3)どろどろとしたもの。「漿飯ショウハン」(かゆ)「岩漿ガンショウ」(火山のマグマ。溶けた造岩物質を主体とする流動体。凝固したものが火成岩)                       
蔣[蒋] ショウ  艸部 jiǎng
解字 「艸(くさ)+將(ショウ)」の形声。將の字に艸(くさ)を配した地名および姓を表す字。蔣姓は、春秋時代に起源をもつ姓。地名・姓以外に「まこも」に当てる。蒋は新字体に準じた許容字体。
意味 (1)周代の国名。「蔣州サイシュウ」(隋代の州の名。昔の蔣国の地。現在の河南省にあった) (2)姓のひとつ。「蔣介石ショウカイセキ」(中国の政治家。国民党指導者として抗日戦を遂行。第二次大戦後、国共内戦で敗れ台湾に退いた) (3)まこも(蒋)。真菰とも書く。イネ科の大型多年草。
 ショウ・ソウ  金部 qiāng
解字 「金(金属)+將(ショウ)」の形成。金属や鈴や玉などの鳴る音を鏘ショウという。
意味 (1)金属や鈴や玉などの鳴る音。「鏘鏘ショウショウ」(①金属や鈴や玉などの鳴る澄んだ音。②鳳凰が声を合わせて鳴く声)「鏘然ショウゼン」(①金属や鈴や玉などがさわやかに鳴る音。②小川のさらさら流れる音) (2)「鏘鳳ショウホウ」(夫唱婦随して夫婦の仲の良いこと)
<紫色は常用漢字>

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