椏アを追加しました。
亜 [亞] ア・つぐ ニ部
発掘された陵墓(「枕流亭ブログ」より)
解字 甲骨文は王墓の象形で、意味は王墓、および王に近い貴族[甲骨文字辞典]。地下につくられた陵墓の墓室の平面図の形。墓道を降りてゆくと、中央の部屋の左右・前後に墓室がある様子を描いたもの。金文から旧字までほぼ同じ形を継承するが、新字体は、旧字の亞⇒亜に変化する。意味は金文で氏族の徽号キゴウ(はたじるし)や官職名に用いられたが、のち、つぐ・準じる意となった。この意味について、[字通]は、墓葬を司る王に次ぐ聖職者からの意とし、[漢字源]は、墓室は地下にあるので、表に出ない下の支えの意から転じて、次ぐ意になったとする。覚え方としては、「地下にあるので表の下」がいいと思う。なお、亞の語源を知らなかった[説文解字]は、人が背をまるめた形と解釈し「醜シュウ也(なり)」と、みにくい意と解釈した。
意味 (1)次ぐ。準じる。二番目。「亜熱帯アネッタイ」「亜流アリュウ」(二流。独創性がない) (2)亜細亜(アジア。Asiaの音訳)の略。「東亜トウア」 (3)外国語の音訳に用いる。「亜米利加アメリカ」 (4)[説文解字]みにくい。醜シュウ也。
イメージ
「主たるものの下にある」(亜・錏)
「地下の墓室」(堊)
「形声字」(啞・椏)
「その他」(悪)
音の変化 ア:亜・錏・堊・啞・椏 アク:悪
主たるものの下にある
錏[鐚] ア・エ・しころ 金部
錏(しころ)「精選版 日本国語大辞典 」より
解字 「金(金属)+亞(主たるものの下にある)」の会意形声。金属性の兜かぶとの下にたらす「しころ」をいう。また鐚アとも書く。
意味 しころ(錏)。かぶとから垂らして首筋をまもる金属の覆い。「錏鍜アカ」(錏も鍜も、しころの意)「錏屋根しころやね」(母屋の屋根から一段低く出た屋根)
地下の墓室
堊 ア・アク 土部
解字 「土(つち)+亞(地下の墓室)」 の会意形声。地下の墓室の壁に塗る土の意。周代の官制を記した[周礼シュライ]に墓所の牆壁(しょうへき)の部分は白く塗ることが見えており、しろつちの意がある。また、白以外の色土、および塗る意がある。
意味 (1)しろつち。しっくい。「白堊ハクア」(①やわらかい石灰岩。白墨の原料となる。②白壁=白亜)「白堊館ハクアカン」(ホワイトハウス)「堊牆アクショウ」(白土で塗ったかき) (2)いろつち。「丹堊タンア・タンアク」(赤色の壁土。赤く塗った壁)「黝堊ユウアク」(黒い壁土) (3)塗る。「堊塗アクト」(白く塗る)
形声字
啞[唖] ア・アク 口部
解字 正字は啞で「口(くち)+亜(ア)」の形声。口からアーと声を出すだけで発語ができないこと。また、アッと驚いて声を上げること。新字体字に準じた唖が通用する。
意味 (1)言葉の不自由な人。「聾啞ロウア」(耳の不自由なことと言葉の不自由なこと) (2)ああ。驚いて上げる声。また、カラスの鳴く声。「啞然アゼン」(驚きあきれて口もきけないさま)「啞啞アア」(①笑う声。②カラスの鳴く声)
椏 ア・また 木部
解字 「木(き)+亞(ア)」の形声。アは丫ア(ふたまた)に通じ、ふたまたになった木の枝の意。
意味 また(椏)。きのまた(椏)。木の枝が分かれるところ。「椏枝アシ」(ふたまたになった枝) 「杈椏またぶり」(叉またになっている木の枝)「三椏みつまた」(ジンチョウゲ科の落葉低木。枝は三つに分かれる。樹の皮を和紙の原料とする)
三椏みつまた(「Awagami Factory 和紙の原材料」より)
その他
悪 アク・オ・わるい 心部
解字 旧字は惡で「心(こころ)+亞(みにくい)」 の会意形声。亞の語源を知らなかった[説文解字]は、人が背をまるめた形と解釈し「醜シュウ也(なり)」と、みにくい意と解釈した。すると悪は、醜い心の意となるが[説文解字]は、この字を「過(あやま)ち也(なり)」としている。しかし、字書の[通論]は「醜陋シュウロウ(みにくくいやしい)也(なり)」とし、醜い意を継承している。また韻書の[廣韻]は「不善(善でない)也(なり)」としており、不善は即ち悪であることから、こうした経緯を経てこの字の意味が定まったと思われる。(なお原義が陵墓であることを理解していれば、「先祖を祀る所+心」で厚いの意味になっていただろう。)
意味 (1)わるい(悪い)。正しくない。みにくい。いやな。「悪事アクジ」「醜悪シュウアク」 (2)そまつな。へたな。「悪文アクブン」「粗悪ソアク」 (3)ひどい・はげしい。「悪戦苦闘アクセンクトウ」「悪寒オカン」(発熱のため感じるゾクッとする寒け) (4)にくむ。「憎悪ゾウオ」
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
亜 [亞] ア・つぐ ニ部
発掘された陵墓(「枕流亭ブログ」より)
解字 甲骨文は王墓の象形で、意味は王墓、および王に近い貴族[甲骨文字辞典]。地下につくられた陵墓の墓室の平面図の形。墓道を降りてゆくと、中央の部屋の左右・前後に墓室がある様子を描いたもの。金文から旧字までほぼ同じ形を継承するが、新字体は、旧字の亞⇒亜に変化する。意味は金文で氏族の徽号キゴウ(はたじるし)や官職名に用いられたが、のち、つぐ・準じる意となった。この意味について、[字通]は、墓葬を司る王に次ぐ聖職者からの意とし、[漢字源]は、墓室は地下にあるので、表に出ない下の支えの意から転じて、次ぐ意になったとする。覚え方としては、「地下にあるので表の下」がいいと思う。なお、亞の語源を知らなかった[説文解字]は、人が背をまるめた形と解釈し「醜シュウ也(なり)」と、みにくい意と解釈した。
意味 (1)次ぐ。準じる。二番目。「亜熱帯アネッタイ」「亜流アリュウ」(二流。独創性がない) (2)亜細亜(アジア。Asiaの音訳)の略。「東亜トウア」 (3)外国語の音訳に用いる。「亜米利加アメリカ」 (4)[説文解字]みにくい。醜シュウ也。
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「主たるものの下にある」(亜・錏)
「地下の墓室」(堊)
「形声字」(啞・椏)
「その他」(悪)
音の変化 ア:亜・錏・堊・啞・椏 アク:悪
主たるものの下にある
錏[鐚] ア・エ・しころ 金部
錏(しころ)「精選版 日本国語大辞典 」より
解字 「金(金属)+亞(主たるものの下にある)」の会意形声。金属性の兜かぶとの下にたらす「しころ」をいう。また鐚アとも書く。
意味 しころ(錏)。かぶとから垂らして首筋をまもる金属の覆い。「錏鍜アカ」(錏も鍜も、しころの意)「錏屋根しころやね」(母屋の屋根から一段低く出た屋根)
地下の墓室
堊 ア・アク 土部
解字 「土(つち)+亞(地下の墓室)」 の会意形声。地下の墓室の壁に塗る土の意。周代の官制を記した[周礼シュライ]に墓所の牆壁(しょうへき)の部分は白く塗ることが見えており、しろつちの意がある。また、白以外の色土、および塗る意がある。
意味 (1)しろつち。しっくい。「白堊ハクア」(①やわらかい石灰岩。白墨の原料となる。②白壁=白亜)「白堊館ハクアカン」(ホワイトハウス)「堊牆アクショウ」(白土で塗ったかき) (2)いろつち。「丹堊タンア・タンアク」(赤色の壁土。赤く塗った壁)「黝堊ユウアク」(黒い壁土) (3)塗る。「堊塗アクト」(白く塗る)
形声字
啞[唖] ア・アク 口部
解字 正字は啞で「口(くち)+亜(ア)」の形声。口からアーと声を出すだけで発語ができないこと。また、アッと驚いて声を上げること。新字体字に準じた唖が通用する。
意味 (1)言葉の不自由な人。「聾啞ロウア」(耳の不自由なことと言葉の不自由なこと) (2)ああ。驚いて上げる声。また、カラスの鳴く声。「啞然アゼン」(驚きあきれて口もきけないさま)「啞啞アア」(①笑う声。②カラスの鳴く声)
椏 ア・また 木部
解字 「木(き)+亞(ア)」の形声。アは丫ア(ふたまた)に通じ、ふたまたになった木の枝の意。
意味 また(椏)。きのまた(椏)。木の枝が分かれるところ。「椏枝アシ」(ふたまたになった枝) 「杈椏またぶり」(叉またになっている木の枝)「三椏みつまた」(ジンチョウゲ科の落葉低木。枝は三つに分かれる。樹の皮を和紙の原料とする)
三椏みつまた(「Awagami Factory 和紙の原材料」より)
その他
悪 アク・オ・わるい 心部
解字 旧字は惡で「心(こころ)+亞(みにくい)」 の会意形声。亞の語源を知らなかった[説文解字]は、人が背をまるめた形と解釈し「醜シュウ也(なり)」と、みにくい意と解釈した。すると悪は、醜い心の意となるが[説文解字]は、この字を「過(あやま)ち也(なり)」としている。しかし、字書の[通論]は「醜陋シュウロウ(みにくくいやしい)也(なり)」とし、醜い意を継承している。また韻書の[廣韻]は「不善(善でない)也(なり)」としており、不善は即ち悪であることから、こうした経緯を経てこの字の意味が定まったと思われる。(なお原義が陵墓であることを理解していれば、「先祖を祀る所+心」で厚いの意味になっていただろう。)
意味 (1)わるい(悪い)。正しくない。みにくい。いやな。「悪事アクジ」「醜悪シュウアク」 (2)そまつな。へたな。「悪文アクブン」「粗悪ソアク」 (3)ひどい・はげしい。「悪戦苦闘アクセンクトウ」「悪寒オカン」(発熱のため感じるゾクッとする寒け) (4)にくむ。「憎悪ゾウオ」
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