漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「咢ガク」と「愕ガク」「諤ガク」「顎ガク」「鍔ガク」「鰐ガク」「萼ガク」「鄂ガク」「鶚ガク」

2024年11月08日 | 漢字の音符
咢[噩] ガク  口部 è
  
解字 金文第一字(上)は、「口4つが四方に配置され、中央の人に横線が入った形」。第二字は人の首の付近に曲がった横線が入った形」。成り立ちの意味は不明だが、金文で国名と人名に用いられている。楚帛ソハク(春秋戦国)は、口四つに十字が配置された形だが、篆文[説文解字]は「口口+屰ギャク」になり、現代字は咢ガクに変化した。一方、楚帛の「口四つに十字形」は、楷書で噩ガクに変化している。両字は異体字で同字とされている。
 字の初形の意味は不明だが、地名・人名以外に、愕ガクの原字である「おどろく」。そのほか「わるい」「やかましい・さわがしい」意がある。また、音符字を見ると「口を大きくあける」イメージで説明できる字が多い。これは「口口+屰(逆向き)」で、口を広げる意味に解したものと思われる。
意味 (1)おどろく。おそろしい。「咢然ガクゼン」(=愕然)(2)わるい。不吉だ。「噩音ガクオン」(訃報)「噩報ガクホウ」(凶報)(3)直言する。「咢咢ガクガク」(直言するさま)

イメージ 
 「おどろく」
(咢・愕) 
 意味(3)の「直言する」(諤)
 「口を大きくあける」(顎・鰐・萼・鍔)
 「形声字」(鄂・鶚)
音の変化  ガク:咢・愕・諤・顎・鰐・萼・鍔・鄂・鶚

おどろく
 ガク・おどろく  忄部 è
解字 「忄(心)+咢(おどろく)」の会意形声。咢には、もともとおどろく意があり、忄(心)をつけておどろく意を明確にした。
意味 おどろく(愕く)。あわてる。「驚愕キョウガク」(非常に驚くこと)「愕然ガクゼン」(ひどくおどろくさま)

直言する
 ガク 言部 è
解字 「言(はなす)+咢(直言する)」の会意形声。おそれず直言する。
意味 おそれず直言する。遠慮なく言う。「諤々ガクガク」(直言する)「侃々諤々カンカンガクガク」(遠慮することなく議論する)

口を大きくあける
 ガク・わに  魚部 è
解字 「魚(さかな)+咢(口を大きくあける)」の会意形声。口を大きくあけて獲物におそいかかる魚(水にすむ動物)のワニ。

ワニ広島市安佐山動物園のブログより)
意味 わに(鰐)。ワニ科の爬虫類。熱帯の川や湖にすむ鋭い歯をもつ肉食性の動物。「鰐口わにぐち」(口の形が横にひろいもの。がまぐち。また、社殿や仏堂につるす扁円の音響具)
 ガク・うてな  艸部 è
解字 「艸(くさ)+咢(口を大きくあける)」の会意形声。口を大きくあけて花を包むように外側にある花のガク。

オカメザクラの萼筒と萼片(「趣味の園芸・オカメザクラ」より)
意味 うてな(萼)。花のがく。花の外側にあって花を保護し支えているもの。花びら(花弁)を下方で包んで支える器官。「花萼カガク」「萼片ガクヘン」「萼筒ガクつつ
 ガク・あご  頁部 è
解字 「頁(かお)+咢(口を大きくあける)」の会意形声。顔の中の口を大きくあける部分である「あご」。
意味 (1)ほお骨の張った顔。(2)[国]あご(顎)。「上顎うわあご」「下顎カガク」(したあご)
 ガク・つば  金部 è
解字 「金(金属)+咢(口をあける)」の会意形声。口があいていて刀身を通す金属製のつば。刀の柄(つか)と刀身の間にはめる金具で、柄を持つ手を保護する。

鍔(つば)(「名古屋刀剣博物館・刀剣ブログ」より)
意味  (1)[国]つば(鍔)。刀のつば。「鍔迫り合い」(相手の刀を鍔で受けて押しあうこと)「金鍔キンツバ」(金で装飾した鍔。また、鍔の形をした菓子)(2)中国では、刀の刃や、刀のみね、の意味で使われる。
形声字
 ガク  阝こざと è
解字 「阝(=邑。くに・むら)+咢(ガク)」の形声。ガクという名の邑(くに・むら)をいう。
意味 (1)殷代の国名。今の河南省沁陽市北西にあった。(2)地名。春秋時代の楚の地名。「鄂州ガクシュウ」(今の湖北省鄂州市)「鄂省ガクショウ」(湖北省の別称)(3)直言する。「鄂鄂ガクガク」(①意見をのべて議論する。=諤諤、②さわがしいさま)
 ガク・みさご  鳥部 è
解字 「鳥(とり)+咢(ガク)」の形声。ガクという名の鳥で鶚(みさご)をいう。
ミサゴ(鶚)(「ウィキペディア・鶚」より)
意味 (1)みさご(鶚)。タカ科の大形の鳥。水辺にすみ、急降下して魚を捕らえる。うおたか(魚鷹)。「鶚視ガクシ」(鋭くみつめる)「鷙鳥シチョウ(猛禽の鳥)は百を累(かさ)ぬるも、一鶚ガクに如かず(後漢書・禰衡デイコウ伝)」(猛禽の鷙鳥を百羽集めても一羽の鶚にかなわない)(2)推薦する。「鶚書ガクショ」(人を推薦する文書。鷙鳥よりも、はるかにすぐれた鶚のような人を推薦する意)「鶚薦ガクセン」(推薦文)「鶚表ガクヒョウ」(推薦する上書)
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


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