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<ウポポイとわたし>14 文化継承、地域性も重視を 川村カ子トアイヌ記念館館長・川村兼一さん=旭川市

2020-07-17 | アイヌ民族関連
北海道新聞 07/16 10:58
 ウポポイは、差別と戦いながら鉄道の測量技師を務めた父、川村カ子(ね)トに関する展示もあり、アイヌ文化を知る施設ができることは歓迎します。
 アイヌ文化といっても、地域ごとに言葉や食べ物が少しずつ違います。うちの記念館は地域性を打ち出し、道北の文化に焦点を当てています。旭川はアイヌ民族の人口割合が少なく、文化の維持・継承は大変です。ただ、地域に生きた歴史があるからこそ、訪れた人は深く理解できるのだと思います。自治体や国には、各地で文化継承に取り組みやすい環境を整備してもらいたいです。
 アイヌ民族の遺骨の問題では、昨年12月までに全国の大学が保管する遺骨1574体のうち、1287体がウポポイ内の慰霊施設に納められましたが、その人が生きた地域で弔うことすらかないません。
 昨年施行されたアイヌ施策推進法で、「差別」の禁止が明記されたのはうれしかったです。ただ、麻生太郎副総理は今年1月にも「(日本は)2千年の長きにわたって一つの民族が続いている」と発言しました。アイヌ新法の精神はどこへ行ったのでしょうか。
 ウポポイ開設を機に差別や遺骨返還の問題も含め、アイヌ民族への理解を深めてほしいですね。(聞き手・山口真理絵)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/441106

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「アイヌ文化の精神性見てほしい」「地位向上の基盤に」ウポポイ見どころを聞く

2020-07-17 | アイヌ民族関連
会員限定有料記事 毎日新聞2020年7月16日 09時00分(最終更新 7月16日 09時01分)
 北海道白老町で12日に開業した民族共生象徴空間(愛称・ウポポイ)の見どころや期待について、国立アイヌ民族博物館の佐々木史郎館長と運営にあたるアイヌ民族文化財団の常本照樹理事長に聞いた。
 展示はアイヌが構成や解説に加わり、自分たちの文化を表現することを原則としています。苦難の歴史を歩んでいるため陰の部分が出てしまうものですが、今の若いアイヌはそれをよしとしません。「明るくポジティブな展示にしたい」という意向を尊重しています。
 ガラスケースに着物や工芸品を入れ、デパートのショーウインドーのようにきらきらさせる展示は珍しいのではないでしょうか。アイヌのイメージを一新したい。でも歴史は押さえておきたいという相反する意図を両立させています。
この記事は有料記事です。
残り963文字(全文1283文字)
https://mainichi.jp/articles/20200716/k00/00m/040/009000c

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アイヌ女性ドキュメンタリー「Future is MINE -アイヌ、私の声-」、令和2年度日本博主催・共催型プロジェクト「日本博特別プログラム」にて上映決定!

2020-07-17 | アイヌ民族関連
PR TIMES 7月16日(木)14時41分 
株式会社3ミニッツ(本社 : 東京都新宿区、代表取締役社長兼CEO : 松田昌賢、グリー株式会社100%子会社、以下「3ミニッツ」)が運営するファッション動画マガジン「MINE(マイン)」にて制作した、女性のエンパワーメントを目的とする短編ドキュメンタリー「Future is MINE -アイヌ、私の声-」が、米国アカデミー賞公認 国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)」の一環で実施される、令和2年度日本博主催・共催型プロジェクトの「日本博特別プログラム」にて上映されることをお知らせします。
[動画: https://www.youtube.com/watch?v=QQPqHGG5NGc&vl=ja ]
[画像1: https://prtimes.jp/i/11770/120/resize/d11770-120-905963-1.jpg ]
◾︎日本博特別プログラムとは
今年で22年目の開催を迎える米国アカデミー賞公認 国際短編映画祭SSFF & ASIAが参画する 令和2年度日本博主催・共催型プロジェクトは、世界中から集まるショートフィルム(短編映画、映像)の特性を活かし、 世界の美的感覚から日本古来よりある「侘び寂び」や「粋」に代表される日本人特有の美的感覚を探る企画になります。
今回、短編ドキュメンタリー「Future is MINE -アイヌ、私の声-」は、日本古来よりある「侘び寂び」や「粋」に代表される日本人特有の美的感覚の観点から「アイヌの伝統をつないでいこうとする人、その文化の“美”を感じられる作品」とSSFF & ASIAから高評価をいただいたことから、「日本博特別プログラム」に選出していただき、上映されることが決定しました。
◾︎作品概要
北海道・二風谷に住むアイヌの女性、萱野りえさんは、アイヌが多く暮らす北海道・阿寒湖に生まれ、アイヌの唄や踊りに囲まれて育ちました。成長してゆく中で、アイヌである自分を嫌になったことがありましたが、信頼できる友人との出会いをキッカケに、アイヌ語で歌うボーカルグループ「MAREWREW」の一員として、再びアイヌ文化と共に歩み始めます。しかし、自分の活動に限界を感じ、いつしか自信を失っていったのです。
結婚・出産を経験し、めまぐるしく過ぎゆく日々の中で、時間に限りがあることに焦りを感じたりえさん。一瞬立ち止まったときに湧き上がってきたのは、やはり自分のルーツであるアイヌへの想いでした。
そんなとき、米国フロリダ州南部に居住する先住民・セミノール族の人々との交流するチャンスが訪れます。同じ先住民として独自の文化を持つ彼らの姿に、彼女は何を学び、何を見出したのでしょうか。
Future is MINE -アイヌ、私の声-
YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=QQPqHGG5NGc&feature=youtu.be
◾︎監督
富田 大智
1993年愛知県生まれ。京都大学経済学部卒業後、制作プロダクションROBOTに入社。CM、MVなどのプロダクションマネージャーを経て、3ミニッツに入社。 大手企業のWEB広告映像を手掛け、『おじさん取り扱い講座』『22時の男と女』など、WEBショートコンテンツシリーズにて脚本、監督を務める。
[画像2: https://prtimes.jp/i/11770/120/resize/d11770-120-651162-2.jpg ]
◾︎日本博とは
日本博は、「日本人と自然」を総合テーマに、縄文時代から現代まで続く「日本の美」を体感する美術展・舞台芸術公演、芸術祭などを、年間を通じ、全国各地で展開するプロジェクトです。文化庁、日本芸術文化振興会、関係府省庁、全国の文化施設、地方自治体、民間企業・団体等が連携して、各地域が誇る様々な文化芸術の振興を図り、その多様かつ普遍的な魅力を国内外へ発信し、次世代に伝えることで、更なる未来の創生を目指します。
日本博公式ウェブサイト:https://japanculturalexpo.bunka.go.jp/
◾︎ショートショート フィルムフェスティバル & アジアとは
米国俳優協会(SAG)の会員でもある俳優 別所哲也が、米国で出会った「ショートフィルム」を、新しい映像ジャンルとして日本に紹介したいとの想いから1999年に創立。2001年には名称を「ショートショート フィルムフェスティバル(SSFF)」とし、2004年に米国アカデミー賞公認映画祭に認定されました。また同年、アジア発の新しい映像文化の発信・新進若手映像作家の育成を目的とし、同年に「ショートショート フィルムフェスティバル アジア(SSFF ASIA 共催:東京都)」が誕生しました。現在は 「SSFF & ASIA」を総称として映画祭を開催し、2019年開催までで延べ42万人以上が来場したイベントになっています。
◾︎Future is MINEとは
Future is MINEは、女性のエンパワーメントを応援するドキュメンタリーコンテンツです。
「幸せは自分で決める」をテーマに、自ら未来を切り開きたいと願う女性たちが、旅や人々との交流を通して成長する様子を描き出します。
女性の社会進出が叫ばれる昨今。自分らしく生きたいと願うものの、様々な障害に直面し、なかなか一歩を踏み出せない女性たちが多くいるのも事実です。自分の将来や混沌とした社会に不安を抱えている女性たちの共感を呼び、さらには、自分らしく輝く未来へと後押しするコンテンツを目指します。
◾︎上映概要
上映プログラム名:ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2020 in 阿智
         日本一の星空映画祭 「日本博特別プログラム」
上映日程:2020年8月9日(日) 19:00〜21:00、2020年8月10日(月) 19:00〜21:00
※ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2020 in 阿智は、8月8日(土)〜8月16日(日)まで開催。
主催:文化庁/日本芸術文化振興会
企画・統括:スタービレッジ阿智誘客促進協議会/株式会社パシフィックボイス
協力:ショートショート実行委員会
WEBサイト:http://info.sva.jp/shortshorts2020/
※日本博各事業については、この度の新型コロナウイルス感染症対策を受けて、中止・延期等の可能性がありますので、各事業の詳細については、公式サイト等で最新情報の確認をお願いいたします。
https://news.biglobe.ne.jp/economy/0716/prt_200716_2870087018.html

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ブラジルの新型コロナウイルス感染による先住民族の死者数、500人を超える

2020-07-17 | 先住民族関連
メガブラジル 2020/07/16

7月14日、ブラジリア、国会議事堂前。ボウソナーロ大統領の弾劾要求の提出に合わせて行われたデモ参加した先住民。手中にはブラジル連邦共和国憲法。マスクには「ボウソナーロ大統領は退陣せよ」のメッセージ(写真/Gabriel Paiva)
ブラジルにおける新型コロナウイルス感染症による死亡者のうち、7月14日(火)、先住民の死亡者が501名になったと「オ・グローボ」が報じている。
先住民族の権利保護団体であるブラジル先住民族連合(APIB)によると、1日あたり平均で4人以上が死亡しているという。
発表によると、州別では最も犠牲者が多いのはアマゾナス州(178人)で全体の35%を占めており、パラー州(83人)、マラニョン州(50人)、マットグロッソ州(48人)、ホライーマ州(47人)、アクリ州(20人)が続く。
組織、先住民族の保護地区や各自治体の保健局などから同連合が収集したデータによると、国内で現在までに14,793人の先住民が感染しているとのこと。
アマゾナス州内のソリモンエス川上流域に居住するコカマ族が最も新型コロナウイルス感染症の影響を受けており、次に死亡者数が多いシャヴァンテ族の約2倍となっている。
ブラジルには305の部族があり85万人の先住民が存在しているといわれている。APIBによるとこのうち8万1,000人が危機的な環境下にあるとしている。
また「オ・グローボ」は、ブラジル保健省の傘下機関である先住民保険特別局(SESAI)が現時点(7月14日)では先住民の感染者数は10,130人、死亡者は209人と発表しており、APIBの調査より約2.5倍少ないと指摘している。これは、SESAIのデータは都市部など先住民保護区以外に居住する先住民が考慮されていないためだという。
7月8日にはジャイール・ボウソナーロ大統領が、新型コロナウイルス感染のパンデミック下において先住民の保護に取り組む法案に拒否権を発動したことが報じられている。大統領が拒否した項目には、先住民たちの居住地に、飲料水、基本的な食糧を詰めたバスケット、インターネットのインフラ整備、衛生用品や清掃用品などをサービスする政府の義務などがあった。
この法律では、先住民、奴隷制があった時代に逃亡した黒人たちが隠れ住んだ里の子孫たち、漁師、その他伝統的な暮らしを行っている人々は、「存在が極度な脆弱性を持つグループ」と位置づけられ、公衆衛生上、緊急事態がおこるリスクが高いとしている。
7月15日(水)の20時に「オ・グローボ」、「G1」、「エシトラ」、「フォーリャ・ヂ・サンパウロ」、「UOL」、「エスタード・ヂ・サンパウロ」 によるメディア連合が各紙で発表したデータは以下。
累計感染者    1.931.204人 (7月13日: 1.931.204人)
新規の感染者    39.705人 (7月13日: 43.245人)
累計死亡者    75,523人 (7月13日:  74,262人)
新規の死亡者      1,261人 (7月13日:    1,341人)
(文/麻生雅人)
https://megabrasil.jp/20200716_48467/

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デンマークのアイスクリーム会社、商品名「エスキモー」を変更 先住民に配慮

2020-07-17 | 先住民族関連
AFPBB News 2020/07/16 15:27

© Ida Marie Odgaard / Ritzau Scanpix / AFP デンマーク・イエーヤスプリースのアイスクリーム店「ハンセンス・イス」に並ぶ、「エスキモー」アイス(2020年7月15日撮影)。
【AFP=時事】デンマークのアイスクリーム会社「ハンセンス・イス(Hansens Is)」は15日、先住民イヌイット(Inuit)ら北極圏の人々に配慮し、「エスキモー」という商品名を変更すると発表した。
 同社は当初、商品名の変更に反対だったが、熟慮の末、よりふさわしい名称にすることを決めたという。同社は、「少数民族や先住民族に対する軽蔑的扱いや不平等」をめぐるより多くの情報と議論が今ではあるとしている。
 エスキモーは北極圏の先住民族一般を指す言葉として使われていたが、1970年代からこの言葉に対し、北極圏に14万人ほどいる先住民族から批判の声が上がり始めた。
 デンマーク議会に2人いるグリーンランド代表の一人、アーヤ・ケムニッツ・ラーセン(Aaja Chemnitz Larsen)氏は、エスキモーという言葉は諸説あるものの、「生肉を食べる人」という意味があると指摘した。
 デンマークの別のアイスクリーム会社「プルミエ・イス(Premier Is)」もチョコレートコーティングされたアイスをエスキモーという言葉を含む商品名で販売しているが、同社は名称を変えるつもりはないと報じられている。
 約5万5000人のイヌイットが住むグリーンランドは18世紀にデンマークの植民地に、1953年にデンマーク領となった。1979年に自治政府が発足、2009年に国民投票により自治権が拡大された。
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/デンマークのアイスクリーム会社、商品名「エスキモー」を変更-先住民に配慮/ar-BB16NWMa

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1活発だったアイヌの交易 穂別に伝わる「山庫の宝物」

2020-07-17 | アイヌ民族関連
苫小牧民報 2020/7/16配信
 皆さんこんにちは。夏らしくなってきましたね、いかがお過ごしでしょうか。新型コロナウイルス対策で手洗いの励行やマスクの着用、不要不急の外出自粛などさまざまな予防活動に取り組まれている方が多いこととお察しいたします。  このたび人生で初…
この続き:1,088文字
ここから先の閲覧は有料です。
https://www.tomamin.co.jp/article/feature/koureisya/23918/

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アメリカでリベラルと「レフト」が衝突する「人種主義Racism」。「人種」概念の否定と遺伝的な「ヒト集団」が混乱を起こしている【橘玲の日々刻々】

2020-07-17 | 先住民族関連
ダイヤモンド・ザイ 7/16(木) 21:01配信
 著名な進化心理学者であるスティーブン・ピンカーに対して、アメリカの大学を中心に542人の研究者が、これまでの「人種主義的」発言を理由に、アメリカ言語学会のフェローから除名するよう求める請願書を公開した。それに対して、ノーム・チョムスキー、フランシス・フクヤマ、J・K・ローリング、マルコム・グラッドウェルなどを含む有識者が“A Letter on Justice and Open Debate(正義と自由な討論についての手紙)”で、過剰なポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)が思想信条や表現の自由の脅威になっているとの懸念を示した。
 「この息の詰まるような(ポリコレの)空気は、最終的に、私たちの時代の死活的に重要な大義を毀損するにちがいない。(自由な)討論への制約は、抑圧的な政府によるものであれ、不寛容な社会によるものであれ、ちからのないひとびとを不可避的に傷つけ、民主的な参加への道を閉ざすことになる」との一文が、アメリカのアカデミズムをとりまく状況をよく表わしている。
 この象徴的な事件は今後、日本でも多くの識者が論じることになるだろうが、ここではなぜピンカーが「レフト」の標的になるのか、私見を述べてみたい。それは結果的に、「人種主義Racism」がアメリカ社会においてどれほどやっかいな問題かを示すことになるだろう。
●リベラルの「楽観主義」こそが、レフトにとっては殲滅すべき最悪の敵
 アメリカでは、過激な主張をする左派を「レフト」とか「ラディカル・レフト」と呼んで、「リベラル」と区別するようになった。彼らが、民主党の大統領予備選などを通じて、トランプ=共和党の保守派だけでなく、リベラルとされる知識人たちをもはげしく攻撃したからだ。ピンカーは「リベラルを騙る人種主義者」の代表として、これまでもずっと標的にされてきた。
 2004年に『タイム誌』の「世界でもっとも影響力のある100人」に選ばれたスティーブン・ピンカーは、『暴力の人類史』(青土社)や『21世紀の啓蒙』(草思社)などで、「18世紀の“啓蒙の時代”以降、世界はますますゆたかで平和になり、人類は幸福になった」と繰り返し述べている。
[参考記事]●「世界がどんどん悪くなっている」というのはフェイクニュース。先進国の格差拡大にも関わらず「公正なルール」のもとでの不平等は受け入れられる
 こうした「事実(ファクト)に基づいた楽観主義」は、日本でもベストセラーになったハンス・ロスリングの『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(日経BP)も同じで、いったいどこが「人種差別」なのか戸惑うひとも多いだろう。だがこれは、次のように考えればわかるのではないだろうか。
 ピンカーは著書のなかで「世界はますますリベラル化している」として、同性愛者差別、女性への暴力、子どもの虐待・体罰などあらゆる指標において、「今日の保守層の価値観はかつてのリベラルよりずっと“リベラル”になった」と膨大なデータを挙げて示した。問題は、この「リベラル化」に人種差別も加えられていることだ。
 人種分離を求めるKKK(クー・クラックス・クラン)の最盛期は1920年代で、第二次世界大戦後に白人の「戦友」と共に戦った黒人帰還兵たちが反人種差別の声を上げると、全米に共感の輪が広がって公民権運動につながった。1964年にミシシッピ州で公民権運動家3人を謀殺した事件でKKKの凋落は決定的になり、現在は「カルト組織」として細々と命脈を保っているだけだ。
 処刑した黒人を木に吊るす「奇妙な果実」のようなことはいまでは想像すらできず、ほとんどの白人はマイノリティへの差別を嫌悪している。ピンカーにいわせれば、Black Lives Matter(BLM)の運動もアメリカ社会の「リベラル化」の証拠なのだ。
 だとしたら警察による「黒人差別」はどうなのだろうか?  これについてピンカーは2015年に、ニューヨークタイズムの記事(Police Killings of Blacks: Here Is What the Data Say By Sendhil Mullainathan /Oct. 16, 2015)を引いて、「データ:警官は黒人を不釣り合いに銃撃してはいない。問題:人種ではなく、あまりにも多くの警官による銃撃」とTweetした。
 記事では、黒人はたしかに警官によって銃撃される割合が高いが、これは人種別の貧困率から説明できるとされている。貧困地区では犯罪が多発し、そこに警察官が出動すれば銃撃事件が起きる可能性も高まる。真の問題は黒人の貧困率が高いことで、それを統制すると「警官が人種的偏見を持っている」とは統計的にいえなくなるという。
 ピンカーがいうように、アメリカ社会が「リベラル化」しており、人種差別や黒人への偏見が(かつてと比べて)解消されつつあるとしよう。しかしそれにもかかわらず、人種別世帯収入の公的調査では黒人の苦境が際立っている。2017年の黒人の世帯収入は4万1361ドル(約440万円)で白人(7万642ドル≒760万円)より4割低く、もっともゆたかなアジア系(8万7194ドル≒930万円)と比べると半分以下で、この経済格差は1960年代と比べて縮小していないばかりか「拡大」しているのだ。
 そうなると、「人種差別がなくなったのに、なぜ黒人は貧しいままなのか? 」「同じ人種マイノリティでも、アジア系は白人よりゆたかになったのに、なぜ黒人は貧しいままなのか? 」との疑問が出てくるのは避けられない。
 ここから、「アメリカは人種問題においてもリベラルになっている」との主張をレフトが拒絶する理由がわかるだろう。ピンカーは人種についての言及を慎重に避けているが、「人種差別がなくなれば黒人と白人の経済格差はなくなるはずだ(そうでなければならない)」とのイデオロギーを信奉する者にとっては、(経済格差が拡大しているにもかかわらず"リベラル化"を説く)啓蒙主義は「人種主義(Racism)」以外のなにものでもないのだ。
 世界的ベストセラー『サピエンス全史』で知られるイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは「リベラルな知識人」の代表とされているが、AI(人工知能)によって人類(サピエンス)は「エリート層」と「無用者階級」に分断されると予言する。これはピンカーの「啓蒙的楽観主義」と比べて、はるかに優生学思想に近い。
[参考記事]●グローバル化とテクノロジー革命によって国境がなくなり「上級国民(適正者)」と「下級国民(不適正者)」に二極化していく
 それでもハラリが批判されないのは、未来をディストピアとして描いているからだろう。レフトにとっては、「現在は過去より悪く、将来はさらに悪くなっていく」のでなくては自分たちの存在意義がない。ピンカーやロスリングのいうように「現在は過去よりよくなっていて、将来はさらによくなる」のなら、必要なのは逐次的な改善の積み重ねで、「体制変革」「革命」「暴動(暴力的抗議行動)」の正当性はなくなってしまう。
 トランプの「ファシズム」ではなく、リベラルの「楽観主義」こそが、レフトにとっては殲滅すべき最悪の敵なのだ。
●「人種は存在しないがヒト集団は存在する」
 トランプはSNSなどで、抗議デモを隠れ蓑に略奪を繰り返したり、奴隷制の歴史を正当化する(とされる)記念碑や彫像を破壊する過激な一派を「アンチファ(反ファシズム)」「ラディカル・レフト」と呼んで執拗に攻撃している。これによって、表現の自由を守るために過剰な「ポリコレ」を批判するリベラルも、レフトにとっては「トランプ支持者」の同類になってしまった。アメリカの言論状況は複雑骨折のような状況になっているのだ。
 そこでここでは、錯綜する議論を整理するために、「人種Race」について基本的なことを述べておきたい。近年、アカデミズムの世界で「人種」概念は大きく変容しているからだ。
 結論を先にいうと、いまでは遺伝学的な意味での「人種」は否定され、社会学などを除けば学術論文のなかでRaceやEthnicityが使われることはほぼなくなった。フランスの分子生物学者ベルトラン・ジョルダンの『人種は存在しない 人種問題と遺伝学』(中央公論新社)の書名がその変化を象徴している。
 人種を「社会的構築物」とする主流派の立場に反対するのが「白人至上主義」の「人種現実主義Race realism」で、そこでは大きく2つのことが主張されている。
 ひとつは、人間の本性として、白人は白人同士で、黒人は黒人同士で集住した方が安心できるという「現実」があること。これを「多元主義」の美名の下に国家権力が矯正=強制しようとしてもいたずらに混乱が広がるだけだとする(その意味でこの立場は「黒人を差別しているわけではない」とされる)。
 その主導者がジャレド・テイラーで、渡辺靖氏の近著『白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」』(中公新書)に詳しいが、日本で宣教師の両親のあいだに生まれ、16歳まで香川県や兵庫県で過ごしたことで日本語を流暢に話し、イェール大学卒業後にパリ政治学院で修士号を取得した知識人で、日米間の翻訳・通訳業で成功を収めたのちに「人種現実主義者」になったとされる。
 もうひとつは、遺伝学的に、人種間には肌の色のような外見のちがいだけでなく、認知的・心理的な側面を含むさまざまな差異があるとする主張で、「科学的人種主義Scientific racism」と呼ばれる。こちらはイギリスの科学ジャーナリスト、アンジェラ・サイニーの『科学の人種主義とたたかう 人種概念の起源から最新のゲノム科学まで』(作品社)にアカデミズムの(そして著者自身の)混乱がよく描かれている。
 「科学の人種主義」としてサイニーが批判するのが行動遺伝学と遺伝人類学だが、いずれも現在は「Race」を使っていない。だったらなにが「人種主義」かというと、「Population」という新奇な用語が(主に遺伝人類学で)登場したからだ。――これには「人類集団」の訳もあるが、日本の遺伝人類学では「人類(ネアンデルタール人などを含むすべてのホモ属)」と「ヒト(現生人類/ホモ・サピエンス)」を区別しているので「ヒト集団」とする。
 ジョルダンは「人種は社会的構築物で科学的には否定された」との立場をとるリベラルだが、その著書『人種は存在しない』の内容は、「人種は存在しないがヒト集団は存在する」と要約できる。なぜなら遺伝人類学そのものが、ヒトを遺伝的にさまざまな「集団」にグループ分けし、その来歴や歴史を探る学問だからだ。
●異なるヒト集団で遺伝子の分布に差があるのなら、それに基づいてグループ分けができる
 遺伝人類学については「古代DNA革命」を牽引するデイヴィッド・ライクの『交雑する人類―古代DNAが解き明かす新サピエンス史』(NHK出版)を以前紹介した。
[参考記事]●今、ホモ・サピエンスのアフリカ起源説など人類史の常識が次々と覆されている
 そこでここではより身近に、太田博樹氏による『遺伝人類学入門』(ちくま新書)から「下戸遺伝子(これは私の命名)」を例にあげよう。
 一卵性双生児を除けば、同じDNAをもつひとはこの世にいない。この分子レベルのバリエーションを「遺伝的多型」といい、それを知るのにもっともよく使われるのが一塩基多型(SNPs/スニップス)だ。
 日本では、まったくお酒を飲めないひとを「下戸」と呼ぶ。かつては「無理に飲ませればそのうち慣れる」といわれたが、これはきわめて危険な間違いで、アルコール(エタノール)から生じるアセトアルデヒドを遺伝的に酢酸に分解できないのが理由だ。酢酸は無害だが、アセトアルデヒドは強い毒性があり、血中に溜まると頭痛が起こり、顔が紅くなり、気分が悪くなる。
 アルコールを無害化するには肝臓ではたらくアルコール脱水酵素が必要で、ヒト12番染色体にあるALDH2という遺伝子がコードしている。ALDH2は13個のエキソン(DNAの遺伝子部分)で構成されており、そのうちの12番目の配列は野生型ではGAAとなっているが、このGがAに変わってAAAの変異型になることがある。
 「野生型」はかつては「正常型」と呼ばれたが、変異型=異常を連想させるとしてこの名称に変わった。遺伝子頻度の多い方(マジョリティ)が野生型とされるが、進化論的には主に、狩猟採集の旧石器時代に形成されたのが野生型、農耕・牧畜開始以降の環境の変化によって獲得されたのが変異型ということになる。
 野生型(GAA)から変異型(AAA)への変化は塩基1つのちがいだが、これによってアミノ酸がグルタミン酸からリシンに変化し、アルコール脱水酵素が機能しなくなる。染色体は2本あるから、GAA+GAA(野生型+野生型)、AAA+AAA(変異型+変異型)、GAA+AAA(野生型+変異型)の3つのパターンが考えられる。――このうち、同じ配列の組み合わせを「ホモ接合」、異なる配列の組み合わせを「ヘテロ接合」という。
 SNPsが両方とも変異型のホモ接合(AAA+AAA)だと、アルコール(エタノール)から生じるアセトアルデヒドを酢酸に分解することができずに下戸になる。GAA+AAAのヘテロ接合では脱水酵素がじゅうぶんに機能せずに酒に弱くなる。ちょっと飲むとすぐに顔に出るのはこのタイプだ。
 興味深いのは、このSNPsに顕著な地域差があることだ。日本ではGAA+GAA(酒に強い)が55%、GAA+AAA(酒に弱い)が40%、AAA+AAA(下戸)が5%程度だが、じつはAAAの変異は東アジアにしか存在しない。下戸遺伝子のSNPsを調べるだけでどの大陸出身かを判断できるのだ。
 こうしたわかりやすいSNPsは、ほかにいくつも見つかっている。乳糖不耐症は牛乳などに含まれる乳糖(ラクトース)の消化酵素ラクターゼを分解できないことで、消化不良や下痢などの症状が出る。だが下戸遺伝子とはちがって、病気(乳糖不耐症)の方が野生型で、人類が家畜を飼うようになったことで、その乳を栄養分として摂取できることが生存に有利になり、成長してもラクターゼを分解可能な変異型の遺伝子が広まった。このSNPsで、先祖が牧畜文化で暮らしていたかどうかがわかる(稲作の東アジアには牛乳を飲むとおなかをこわすひとが多い)。
 鎌形赤血球症は遺伝性の貧血病で、変異型の遺伝子を2つもっているホモ接合だと重篤な溶血性貧血症状が起き、黄疸、骨壊死、下腿潰瘍などで死に至ることもある。なぜこのような生存に不利な遺伝的変異が存在するのか不明だったが、やがてヘテロ接合(野生型+変異型)の場合、マラリア原虫に抵抗力があることがわかった。幼児期のマラリアはきわめて死亡率が高いが、変異型を1つもっていると生き延びることができる。こうしてアフリカやインドなど、マラリア原虫を媒介するハマダラカの生息する地域でこのSNIPsが広がったのだ。
 下戸遺伝子や乳糖不耐症、鎌形赤血球症の遺伝子はどのヒト集団にも存在するが、その分布には明らかな地域差がある。たとえば東アジアでは、下戸遺伝子と乳糖不耐症の割合が高く、鎌形赤血球症の割合は低い。これはヒト集団によって「遺伝子頻度(アレル頻度)」が異なるからで、遺伝子頻度は集団内で特定の遺伝的多型がどの程度見られるかの指標になる。
 異なるヒト集団で遺伝子の分布(ハプロタイプ)に差があるのなら、それに基づいてグループ分けができるし、グループ間の距離も計測できる。これが遺伝人類学の基本的な考え方だ。
●科学的に「人種」概念は否定されたものの、遺伝学的な「ヒト集団」の存在が明らかになった
 遺伝学における「テクノロジー革命(ヒトゲノムの解析)」によって、ヒト集団の遺伝的なちがいが浮かび上がってきた。 
 遺伝人類学によれば、「日本人」は遺伝的には、中国人、韓国・朝鮮人、台湾人、モンゴル人、チベット人などとともに「東アジア系」という主要なヒト集団に属している。また「日本」という国は単一民族ではなく、大きくヤマト人、アイヌ人、オキナワ人に分かれる(斎藤成也『核DNA解析でたどる日本人の源流』河出書房新社)。このようにヒトをさまざまなレベルの「遺伝的集団」にグループ分けすることは、「日本」や「日本人」というナショナリズムを相対化する有力な方法になる(「日本人の遺伝子」などというものはない)。
 だがこれと同じ考え方を、白人/黒人という人種問題に適用したらどうなるだろうか。
 アメリカのような多民族社会で、ランダムに選んだひとのDNAを調べると、遺伝子頻度のちがいで5つから6つの大きなグループ分けができる。そしてこの分類は、一般に知られている黒人、白人、アジア系などの「人種」とほぼ一致する。これは祖先がどこで暮らしていたかを示しているので、「大陸系統(Continental Ancestry)」と呼ばれる。
 なぜ人種と大陸系統が一致するかというと、ホモ・サピエンスが7万~5万年ほど前にアフリカを出てユーラシア大陸やアメリカ大陸、オセアニアなどに広がってから、それぞれの大陸で(相対的に)独自の進化を遂げてきたからだ。その結果、肌や髪、目の色などの表現型のちがいが現われた。これは遺伝的なものだから、DNAを解析すれば大陸系統によってグループ分けされるのは当然なのだ。
 もちろん、ヒトはずっと「大陸」を越えて交わってきた。これは国際結婚のような牧歌的なものだけではなく、人類史の大半を通して、戦争や略奪、奴隷制、性暴力などにともなって大陸系統間の交わりが起こるのが大半だった。
 その典型がアフリカ系アメリカ人(アメリカの黒人)で、祖先情報マーカー(SNPsを利用した大陸系統の分類)は西アフリカ系からヨーロッパ系に向けて広く分布している。これは白人と黒人の「混血」が多いからだが、DNA解析ではそれが父系か母系かまで判別できる。父系が白人、母系が黒人であれば、奴隷制時代のプランテーションの主人と奴隷の関係だったかもしれない(ジョルダン『人種は存在しない』)。
 このように、科学的に「人種」概念は否定されたものの、遺伝学的な「ヒト集団」の存在が明らかになり、詳細に解明されるようになった。これが「人種問題」に混乱を引き起こしたことはいうまでもないだろう。
 サイニーは『科学の人種主義とたたかう』で、リベラルな遺伝人類学者であるデイヴィッド・ライクにインタビューしている。サイニーはライクから「われわれが築く社会的な構造と相関する集団間の系統の違いは実際にあります」と断言され、大きなショックを受ける。
 「ライクはアメリカの黒人と白人のあいだには、表面上の平均的な違い以上のものがあるかもしれないとほのめかす。それは認知的、心理的な違いにおよぶ可能性すらあり、アメリカにやってくるまで、それぞれの集団グループは7万年にわたって別個にそれぞれ異なる環境に適応してきたためなのだ。これだけの時間の尺度のあいだに、自然選択は双方に異なった形で作用し、一皮むいた以上に深いところの変化を生み出したかもしれないと彼は示唆する。ライクは思慮深く、これらの違いが大きなものだとは自分は考えず、1972年に生物学者のリチャード・ルウォンティンが推定したように、個人間の差異よりもわずかに大きい程度だろうと付け足す。それでも、こうした違いは存在しないとは考えていないのだ」
 インタビューのなかでライクは、(ヒト集団のちがいを否定する)サイニーに「まったく悪気のない人びとが科学と矛盾することを言うのは少々辛いものがあります。悪気のない人には正しいことを言ってもらいたいからです」と語る。
 この言葉に、科学と政治イデオロギーのあいだの埋めがたい溝が象徴されているのだろう。
 橘 玲(たちばな あきら)
作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『「言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)、『もっと言ってはいけない』(新潮新書) など。最新刊は『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)。
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