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先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

最後となる新得「空想の森映画祭」実行委員長 藤本幸久(ふじもと・ゆきひさ)さん

2022-09-11 | アイヌ民族関連
北海道新聞09/10 09:27

 1996年の初回から実行委員長を務め、17~19日に十勝管内新得町で開かれる「空想の森映画祭」。優れたドキュメンタリー映画を上映し続けてきたが、実行委メンバーの高齢化などで25回目の今回が最後となる予定だ。「体力の限界。やり残したことはない」
 新得在住の映画監督で、三重県四日市市出身。最初の監督作品は、マレーシアとシンガポールの民衆の証言を通し、戦時中の日本の侵略と加害の事実を明らかにした「教えられなかった戦争―侵略マレー半島」(92年)。上映のため新得を訪れ、「このまちの人はおもしろい」と95年に移住を決めた。
 町内に映画館はなく、「多くの仲間に良質な映画を見てほしい」と映画祭を発案。有志約20人と実行委をつくり、開催を続けてきた。最後となる今回は、北大が持ち去ったアイヌ民族の遺骨が返還され、再埋葬されるまでを追った特集のほか、ドキュメンタリー映画監督の原一男さんの作品など9本を上映。アイヌ民族衣装のファッションショーや、自身が「米兵とは何か」と疑問を抱き2004年から撮影を続ける沖縄の戦後を語るなど、内容は盛りだくさんだ。
 「戦争で犠牲になるのは罪のない市民ばかり。絶対に起こしてはならない」との思いが映画作りの原動力だ。1988年、取材で訪れたアフガニスタンで、宿泊先のホテル横のバス待合所にロケット弾が着弾。大勢が殺された現場にカメラを向けた記憶が生々しく残る。今後は「戦争と環境破壊をテーマに、残った時間を撮影に費やしたい」と意気込む。(伊藤圭三)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/729098/

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よそものは思う、白老はウポポイだけじゃない 名古屋外大生が研修で滞在、町の魅力探る

2022-09-11 | アイヌ民族関連
北海道新聞09/10 05:00

成果報告会で白老の魅力や課題を発表した学生たち
 【白老】名古屋外国語大の学生7人が授業の一環で町内に11日間滞在し、町中心部の大町商店街での聞き取り調査やアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の見学を通じて町の魅力や課題を探った。2日には「白老とは、○○」「ウポポイもある白老町」など、道外の学生ならではの視点で考えたPRポイントや改善案を町民に発表した。
 同大世界共生学部が行っている、多文化共生の現状や課題を現地で住民と考える「地域創生科目」の一環。実地研修として8月24日~9月3日、町に滞在した。町での研修は2019年以来3年ぶり。
 2日の報告会では学生7人が3グループに分かれ、町で感じたことを発表。町民ら約40人が参加した。
 3年の千神美琴さん(20)は「よそものの私が思う白老のおもしろポイント」として人と人との距離の近さを挙げ、「いればいるほど好きになる」とキャッチコピーをつけた大町商店街のポスター案を紹介。滞在する中で、多くの人が長い年月をかけて創り上げた町だと感じたと話し「白老とは、一枚の編みかけの布」と締めくくった。
 別のグループは、白老には自然豊かで没頭できるアクティビティが多いと報告し、「ウポポイは数ある白老町の魅力の一つ。白老イコールウポポイと印象づけるのはもったいない」と訴えた。JR白老駅から大町商店街までの道のりが分かりにくかったといい「木彫りの看板など目印を設置しては」と提案する学生もいた。
 報告会に参加した町教委の安藤尚志教育長は「学生たちが白老に新しい風を吹かせてくれた。見つけた町の良さを愛知県でも発信してほしい」と期待した。
 学生を引率した同大世界共生学部の地田徹朗准教授(44)は「調査対象を大町商店街に絞ったことで前回以上の成果を上げられた」と振り返った。学生たちは今後、研修の成果をポスターにまとめ、10月下旬の学祭で発表する予定。(竹田菜七)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/729024/

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祖先の慰霊、継続を誓う 日高アイヌ協会がイチャルパ

2022-09-11 | アイヌ民族関連
北海道新聞09/10 05:00

「カムイノミ」でいろりに神酒をささげる参加者
 【日高】日高アイヌ協会(門別初男会長、12人)は4日、町富川西の富川高台墓地の無縁納骨堂に眠るアイヌ民族の祖先を慰霊する「イチャルパ」(供養祭)を富川生活館で行った。
 日高アイヌ協会が2017年に発足後、供養祭を行うのは初めて。北海道アイヌ協会と静内民族文化保存会、鵡川アイヌ文化伝承保存会の3団体が協力した。
 この日は、各団体の関係者のほか、大鷹千秋町長ら計54人が参加。神に神酒をささげる「カムイノミ」に続き、供物を祭壇に供えた。この後、静内民族文化保存会と鵡川アイヌ文化伝承保存会による古式舞踊も披露された。門別会長は「慰霊祭の開催は今回で終わりにはしたくない。参加した方々には今後も協力していただきたい」と話した。
 町内に点在していたアイヌ民族の無縁墓地の改葬に伴い、富川高台墓地には現在、5115体の遺骨が納められている。(石井純太)
◆イチャルパのルは小さい文字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/728849/

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【レビュー】和人の苛烈なアイヌ支配、くっきりと 「平沢屏山とその時代」展 市立函館博物館で10月16日まで

2022-09-11 | アイヌ民族関連
美術展ナビ2022.09.10
平沢屏山とその時代
会期 2022年6月28日(火)~10月16日(日) 
会場市立函館博物館
http://hakohaku.com/ 
観覧料金
一般300円、大学・高校生200円、小・中学生100円
※10名以上の団体は団体割引(2割引)適用
※函館市に住所を有する、または市内の学校に在学する小・中学生は無料
※函館市に住所を有する65歳以上の方は150円
休館日
毎週月曜日、7月19日(火)、8月11日(木・山の日)、9月20日(火)、9月23日(金・秋分の日)、9月30日(金)、10月11日(火)
※詳しくはホームページの開館日カレンダーをご覧ください。
開館時間
09:00~16:30 (午後4時30分までに入館した方は午後5時まで鑑賞できます)
幕末から明治初期にかけて箱館(函館)を拠点に、アイヌの人たちの暮らしを生き生きと描いた平沢屏山(ひらさわ・びょうざん、1822-1876)の作品を紹介する展覧会です。
屏山は1822年(文政5年)、現在の岩手県花巻市で、裕福な名主の長男に生まれました。父が亡くなってから困窮し、弘化年間(1844-1848)に、20歳代の時に弟を連れて箱館に渡りました。その後、1854年の日米和親条約で箱館は開港され、活況を呈する街で屏山は絵師として活躍。アイヌの人たちを労働者として使役する漁場の経営を請け負う大商人の知遇を得て、現在の十勝地方や日高地方などにも足を伸ばし、時にアイヌのひとたちと生活を共にしながら、その暮らしを描くようになりました。
アイヌの人たちの暮らし、生き生きと
当時の箱館(函館)を記録した絵や写真も展示されており、開港した箱館がいかに賑わっていたかが実感できます。屏山は街の中心部に住み、外国人や商人らの求めに応じて絵を描いて生計を立てていたようです。どこで絵を学んだのかは明らかではありませんが、そのダイナミックな表現、鮮やかな色彩感覚、細部の観察眼は見事です。代表作のひとつである《アイヌ風俗十二ヶ月屏風》は海や山を舞台に、自然の恵みを得て助け合いながら生きるアイヌの人たちや、漁場で働くアイヌの人たちの生活を活写。四季折々の自然描写も含めて見応えがあります。

函館市指定有形文化財《アイヌ風俗十二ヶ月屏風》1月~7月は宮原柳僊写 8月~12月は平沢屏山の直筆 市立函館美術館蔵
担当の奥野進学芸員は「屏山以外にもアイヌを描いた画家はいるのですが、表現力の点で屏山は突出しています。さらに様々な道具や習俗も正確に描かれているので、資料的な面でも価値が高いのです」と説明してくれました。
松前藩、幕府とアイヌの力関係
とりわけ、和人とアイヌの力関係が現れている作品は興味深いです。

《ウイマム図絵馬》安政年間 市立函館博物館蔵
古い時代から和人とアイヌの間では、対等な関係で交易が行われていましたが、時代とともに和人の蝦夷地への進出が深まり、両者の間で戦いが繰り返されるようになりました。それに勝利した松前藩はアイヌの人々を支配下に置き、労働者として搾取。次第に日本の経済構造の中にアイヌが組み込まれていきました。上の絵はアイヌのリーダーたちが松前藩主に会いに行く場面です。背景に松前家の大きな家紋が描かれていることが、この作品の意味合いを明確に表現しています。
蝦夷地近海にロシアなどの外国船が度々出現するようになり、蝦夷地東部のクナシリ・メナシ地方のアイヌ蜂起(1789年)などもあって、危機感を強めた幕府は蝦夷地を直接の統治下におくようになりました。上の作品は、漁場での作業終了時などに、慰労や統治のために行われた「オムシャ」と呼ばれる儀礼の一場面を描いています。幕には葵の紋が描かれ、長老たちが一段低いお白砂から役人に頭を下げています。屋敷に入ることを許されない女性や子供らは遠巻きにその様子を眺めています。幕府は農耕や日本語の習得を奨励するなど、アイヌの人々の「和人」化を進めました。
奥野学芸員は「アイヌがロシア側に付くことを恐れた幕府は、搾取一方だった松前藩のやり方を改め、『撫育』の名のもとにアイヌの人々への待遇を改善するなどしましたが、それはアイヌの人たちの意思を尊重したものではなく、結局は固有の文化や習俗を無視した同化政策でした。そうした和人側のスタンスを、屏山の作品から読み取ることができます」と解説。
《種痘図》 函館市中央図書館蔵
上はアイヌの人たちに種痘を打つ場面を記録した作品。江戸時代、和人の往来が盛んになったことなどに伴い、アイヌの人々の間でも天然痘も大流行。幕末になって種痘のノウハウが広まり、幕府はアイヌの人々にも種痘を推進しましたが、身体に異物を入れるという経験のない施術だったため、忌避する人が多かったといいます。褒美をつけるなどしてかなり強引に進めたといい、「こうしたこともある種の同化政策、といえると思います」と奥野学芸員。
《地引網図》 個人蔵
和人による労働搾取の様子がはっきりわかるのが《地引網図》です。網を引くアイヌの人たちの脇に、明らかに和人と分かる男が立ち、作業の成り行きを見守っています。もともと、アイヌに地引網の文化はなく、和人が持ち込んでアイヌの人たちを使役しました。漁獲は増えましたが、取りすぎでアイヌの人たちが食べる魚が減り、とても困窮したそうです。
屏山、アイヌへの優しい眼差し
《熊狩図》 函館市中央図書館蔵
《熊送図》函館市中央図書館蔵
《母子図》 市立函館博物館蔵
ダイナミックな熊狩りや、にぎやかで荘厳な熊送り(イオマンテ)、母と子の情愛あふれる場面など、アイヌの生活や文化を描いた作品の数々です。屏山に「アイヌの権利や文化を守りたい」という意識があった、とまで考えるのは後世の人の牽強付会に過ぎるでしょう。あくまで注文主のリクエストに応じて描いたものであるはずです。しかし、その作品には単にアイヌを画題として描いた、以上の優しいまなざしを感じるのも事実です。
屏山は気分が乗らなければ筆を執らず、身なりは構わず、酒好きで、野原に寝っ転がって寝込んだり、他人の家の屋根で寝てしまったりなど、ちょっと浮世離れした奇人ぶりも伝えられています。子供好きでも有名だったそうです。一連の作品からも、アイヌの人たちと対等に付き合い、喜怒哀楽を共にしたであろう屏山の人柄が浮かび上がってきます。そういう人でなければ描けなかった作品でしょう。
屏山は幕末から明治にかけての激動の時代を蝦夷地・北海道で過ごし、1876年(明治9年)8月2日、函館でその生涯を閉じました。今年はちょうど生誕200年の節目です。『ゴールデンカムイ』などをきっかけにアイヌへの注目が集まっている今、こうした作品がまとまって見られるのは貴重な機会でしょう。
(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)
https://artexhibition.jp/topics/news/20220909-AEJ967551/

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19日、上映会とトークイベント 映画「からむしのこえ」  白老

2022-09-11 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2022/9/10配信
 アイヌ民族文化財団(札幌市)は、白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)の体験学習館で19日午前10時20分から、映画「からむしのこえ」の上映会とトークイベントを開く。  アイヌ文化のみならず、国内の伝統文化を紹介するイベントとして同財…
この続き:313文字
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https://www.tomamin.co.jp/article/news/area2/87394/

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アートを通じてルーツに思いを馳せる旅。「ROOTS & ARTS SHIRAOI 2022-白老文化芸術共創-」を訪ねて

2022-09-11 | アイヌ民族関連
美術手帖9/10(土) 16:04配信

展示風景より、野生の学舎《ホロケナシー土地の記憶》。後ろは廃校に残る遊具の一部
 北海道・白老町各所で道内外15組のアーティストが参加する芸術祭「ROOTS & ARTS SHIRAOI
2022-白老文化芸術共創-」が開催中だ。会期は10月10日まで。
 白老駅に向かう車窓から樽前山などの山々や牧場が見える。2020年、ポロト湖畔に開館した「ウポポイ」(民族共生象徴空間)をはじめ、アイヌ文化にも触れることができる北海道の白老町。同町各所にある「ROOTS & ARTS SHIRAOI
2022-白老文化芸術共創-」の会場は大きく3つのエリアに分けた、22会場で展示されている。白老駅を起点としたまちなかの「白老エリア」。入植と鉱山開発で発展しながらも現在は住む人のいない「森野エリア」。そして、江戸時代からサケ漁が行われ、アイヌの伝承・伝説が多く残り、現在は数多くの温泉施設がある「竹浦・虎杖浜エリア」だ。実際には白老駅から作品数が最多の「白老エリア」から巡ることになろうが、本展の「ルーツとアーツの出会い」「共創」において象徴的な「森野エリア」から紹介したい。
ものづくりのルーツに触れる、100人以上でつくった野焼きの土面─森野エリア
 かつてホロケナシ(アイヌ語で大きな川端の木原)と呼ばれた森野地区。閉校した旧森野小中学校の野外に200点を超える土面が並ぶ。洞爺湖を拠点に活動する学び舎「野生の学舎」を主宰する新井祥也を中心として、子供からお年寄りまで100人を超える町民とともに、縄文時代からの技法「野焼き」に初挑戦したものだ。
 「白老の陶芸家・吉田南岳さんの指南で、森野の河川の地層から粘土を採掘し、焼き物用の粘土づくりから始めたんです。町民の皆さんには、粘土がどんな顔になりたがっているか、粘土と対話するようにかたちをつくっていただきました。野焼きでは、最初は割れてしまうなど試行錯誤でしたが、6時間くらい火を囲んでみんなで話したことも大切な時間になりました」(新井)。
 福井県出身の新井は、自転車旅行の途中でアイヌ文化や人類の古層にある表現に関心を持ち、洞爺湖に移住。2020年から「まねび─学び」の原点に還り、多様な視点が混ざり合う協働や集合的記憶が育まれる場として「野生の学舎」を営んでいる。今回は、土と仮面による根源的な表現を通じて、自然や人との関わりから生み出されるものづくりのルーツを感じたという。土面は、会期中も増えていく予定だ。
アーティストたちによるさまざまなアプローチ─白老エリア
 若い頃、知里幸恵の『アイヌ神謡集』と知里真志保の『アイヌ民譚集』を読み、北海道に関心を持っていたという京都在住の青木陵子+伊藤存。喫茶「休養林」の隣に、青木のドローイングや、海岸の砂から着想したという伊藤の刺繍作品を展示している。併せて、ふたりが「スケール感や自分の尺度が入れ替わるような感覚を覚えた」という店主・相吉正亮氏がつくった古生代のとんぼ、カジキマグロ漁のモリ、台所の神様のスプーンといった3点の木彫も展示されている。
 ふたりはもう1ヶ所、現在は廃品を分解・処理・保存する場として使われている旧堀岡鉄工所でもインスタレーションを展示している。登別の「アフンルパル」(あの世の入口)と呼ばれる、役目を終えたものの霊を天上界に返す「送りの場」と、本来の役目を終えたものの集積所が頭のなかでつながり、青木は絵を描く際に出るゴミともいえないものたちに、伊藤は家で保管していて虫食いや汚れがついた刺繍作品に手を加えて再生。その場に残るものたちのあいだに設置した。
 同じ鉄工所の奥では、梅田哲也もインスタレーションを展開。廃業したガソリンスタンドから譲り受けた「ガラス玉」に光が反射し屈折する。
 梅田は「札幌国際芸術祭2017」で実現しなかったプロジェクトを準備していたが、再びプランの実現が困難になり、4日前に会場が決まったそうだ。「場所」から着想する普段通りの制作ができないため、「それまで調べてきたものを一旦捨て、人やものにまっさらな気持ちで出会い、ここにあったもの、いただいたりお借りしたりしたものに反射神経で反応していくように切り替えて制作した」という。さらに「跨ぐ」「慎重に歩く」といった環境によって動かされる観客も作品の一部となる。「導線の振付」も含めた空間を体感したい。
 白老名物のアンテナショップだった「旧しらおい発掘堂」では、鈴木ヒラクとRekpo(レㇰポ:アイヌの伝統歌「ウポポ」の伝承と再生をテーマとした女性ボーカルグループ「マレウレウ」のメンバー)とのライブセッション映像を上映。レㇰポがムックリ(竹製の口琴)を即興で演奏し、鈴木が紙の上に拾った貝や石を転がしたり、マーカーや枝などで線を描いたりする手元を、書画カメラが撮影しプロジェクターで投影する。音楽とドローイングとの対話を一発録りしたドキュメントだ。
 壁には、鈴木が北海道の旅で撮った洞窟壁画などの写真も展示。宮城県生まれの鈴木は幼少期から考古学に興味を持っていたという。人はなぜ絵を描くのかをテーマに、ストーンサークルやアボリジ二文化を訪ね、2014年に帰国後は東北~北海道の縄文文化圏を旅する。2004年にアイヌの音楽家・安東ウメ子のライブに感動し、その安東に学び、複数の声を受け継ぐレㇰポとのセッションができたことも土地の力だと感謝する。今回を機に、これまでの探求や縁といった複数の線がつながり始めているという。
 地域の台所として愛される「スーパーくまがい」にカラフルな壁画を描いたのは吉田卓矢。多くの人が使う場所に向けて「現在進行形のルーツ」に描く気持ちで、動物と人が共存する平和な世界、スーパーの食材でもある海の幸・山の幸などを描いた。
 スーパーのオーナーの熊谷威二氏は「どんな絵になるのかなと思っていましたが、できあがった作品を見て、何年も前からあったみたいで嬉しく思いました」と笑顔。芸術祭の終了後も残していきたいという。また、吉田は「ファミリー居酒屋
河庄」の奥にある空き店舗の壁面にもドローイングし、2つの壁画の原画展示をhaku hostel+cafe barで行う。
 是恒さくらは、7年ほど前からクジラに興味を抱き、2019年から北海道に通い、2021年秋から約半年間、苫小牧に移住してクジラやイルカを観察した。その間、室蘭から勇払(ゆうふつ)まで東西に弧を描くような海岸線の鯨にまつわる語りをリサーチし、数千年前の地層から出土する鯨の骨、漁村の鯨信仰、季節移動するイルカの群れなどと出会った。それらの物語を縫い取った刺繍作品、海辺の日光で染めたサノアノタイプ(青写真)作品を展示。また、7編の短編「ありふれたくじらのかけら」を無料配布している。白老町立図書館、「Cafe結」、しらおい創造空間「蔵」の3会場で、ビーチコーミング(漂着物を収集・観察)するように集めたい。
 是恒は「自分が立っている土地でいまは見えなくても、例えば鯨の骨を神様のように祀った小さなほこらがあったと知ると、目の前の景色が違って見える。人間以外の視点を持つと見えてくるのではないか」と提案する。
 しらおい創造空間「蔵」では、四辻藍美刺繍展「一本の縄から始まる」と是恒、iruinai(イルイナイ)が参加する企画展「糸と布と物語」が開催。小樽生まれ、東京都国立市育ちのアイヌ刺繍作家、四辻藍美は北海道で初紹介となる。四辻はアイヌ研究家・童画作家である父、四辻一郎が持っていたアイヌ刺繍の美しさが脳裏から離れず、アイヌ民族博物館など北海道の博物館を回りながら技術を習得。伝統を守りながら創造性を発揮している。iruinaiはカナダの先住民族イヌイットの壁掛けを展示。
 ほかに、北見を拠点に、薯(いも、馬鈴薯の「薯」)版画に専心した香川軍男(かがわ・ときお)の、アイヌをモチーフとした作品を展示。香川は敬愛する版画家・川上澄生に認められ、2002年、87歳で亡くなる前に個展も開催している。
ものづくりを通してアイヌの伝承に触れる―竹浦・虎杖浜エリア
 ものづくりを通してその文化圏を知る、ロンドン在住の曽我英子は、2015年からのフィールドワークにより制作した、アイヌの郷土料理「昆布シト」や鮭の皮でつくる靴「チェㇷ゚ケリ 」などを描いた映像作品をそれぞれ3会場で展示。竹浦駅からほど近い「竹浦物産竹材店向かい倉庫」では、雪で反った竹の伐採からムックリをつくる過程を白老で撮影した作品《根曲り竹》を、週末限定で上映している。
 また、札幌在住の大黒淳一は、2016年に役目を終えた「アヨロ鼻燈台」を、高性能LEDレーザーシステムを用いて蘇らせる。オリオン座に関するアイヌの伝承のひとつ、「大鹿を射抜いた伝説の3本の矢」に想を得て、ルーツから過去・現在・未来をつなげる光の矢を夜空に放射する。
 かつて海の指標とされていた灯と、口語伝承されてきたアイヌの星の伝説が重なる光のモニュメント。天候や場所によって見え方が変わる一期一会の作品でもあり、地元の人々がたくさん見学に訪れている姿も印象的だった。店頭は9月中の土日・祝日に開催される。
 虎杖浜神社には「森と街のがっこう」による太平洋と白老町が見渡せるウッドデッキテラス「存在の記憶」がある。こちらには町内で同時期に開催されている「ウイマㇺ文化芸術プロジェクト2022 歩いて巡る屋外写真展」の「虎杖浜・アヨロ」エリアを見ながらたどり着ける。
 プレスツアー後、白老アイヌ工芸グループの展示が始まった。今後、石川大峰による、白老に住む子供の数を光の球で視覚化するイルミネーション作品や、町内5ヶ所をリヤカーで巡るおたのしみ劇場ガウチョスによる人形劇も加わる。
 全体を通じて、白老町の人の豊かさが共創に一役買っていることを思った。それと同時に、ときには人間以外の眼を想像し、人間も大きな世界の一部として見ることが、未来に向けて生きる指針になるのではないかと感じた。北海道の土地のスケール感を体感し、視野を広げる旅に出てみてはいかがだろうか?
文=白坂由里
https://news.yahoo.co.jp/articles/0c4eb195bed65e6c40038c7ef3c57d4ff04bd148

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鳥居龍蔵研究で連携 徳島県立記念博物館が台湾史前文化博物館と協定へ 活動初期に現地で先住民族調査 展示会や研究で協力も

2022-09-11 | 先住民族関連
徳島新聞2022/09/09 18:00

鳥居龍蔵(徳島新聞)
 徳島市出身の人類学者、鳥居龍蔵(1870~1953年)の研究や関連事業に協力して取り組むため、徳島県立鳥居龍蔵記念博物館(同市八万町)は13日、台湾・台東市の台湾史前文化博物館と連携協定を結ぶ。台湾は鳥居が活動初期に現地調査を重ね、その成果は100年以上たった現在も高く評価されている。徳島県内の博物館が国外の博物館との連携協定を結ぶのは初めて。
 1896年、20代後半の鳥居は台湾で先住民族の文化や遺跡などの調査を始め、1911年までに計5回訪れた。各民族の風俗や生活様式を写真でも記録し、学術資料としての価値は高い。一方、史前文化博物館は先史時代や先住民族文化を専門とし、台湾南部を代表する博物館として知られている。
 台湾の研究に取り組む福岡大の宮岡真央子教授(文化人類学)が両館の間を取り持ち、2021年3月に徳島市で開かれた鳥居龍蔵生誕150周年記念国際シンポジウムでは、史前文化博物館の王長華館長からメッセージが寄せられた。その後も両館の学芸員はオンラインで研究会を開くなどして交流を続けてきた。
 今後、相互訪問による現地調査で研究を進めるほか、展示会や講演会といった関連事業でも連携していく。
 鳥居龍蔵記念博物館の長谷川賢二館長は「鳥居の活動の出発点ともいえる地域の博物館との連携は非常にうれしい。両館が協力し、調査研究を加速させたい」と話した。2023年は鳥居の没後70年に当たり、さまざまな事業を企画していく。
 連携協定の締結式は13日午前10時半からオンラインで行われ、長谷川館長と王館長が協定書に署名する。
https://news.goo.ne.jp/article/tokushima/region/tokushima-20220909172712.html

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