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サステナブルな旅は“経済成長の要”「WTTC 第24回グローバル・サミット 2024」開催

2024-12-12 | 先住民族関連

Livhub 2024.12.11

2024年10月8日から10日の3日間、西オーストラリア州の州都・パースにて、世界旅行ツーリズム協議会(The World Travel & Tourism Council、以下WTTC)による旅行・観光にまつわる世界的な会議「第24回グローバルサミット」が開催された。

70以上の国から代表団やジャーナリストらが参加した本サミットのテーマは「古来の土地、新たな視点(Ancient land; New Perspectives)」。

AIが観光に与える影響や先住民ツーリズムの重要性について話し合いが行われるとともに、旅行産業が単なるセクターではなく、経済的側面からも持続可能な社会の実現に大きく貢献しうることが示唆された。

このような国際的な会議で具体的な旅行・観光の未来戦略が打ち出されたことは、観光業界の重要性が改めて注目されていることの表れといえるだろう。

開催地にオーストラリア・パースが選ばれた背景

本サミットの開催地に選ばれたパースは、オーストラリア最大の州・西オーストラリアの州都。

西オーストラリア州は、6万年以上も前に世界最古の生活文化を形成したとされている先住民族アボリジニの歴史を有し、現在もその物語を語り継いでいる地域。

現地ではこれまで州主導のもと、先住民アボリジナルについて理解を深められるさまざまなツアーが実施されてきた。

また、手つかずの自然が残されていること、さらには文化芸術を後世に伝える多くの美術館や博物館が点在していることから、持続可能な観光の機会を生み出す模範的な旅行地として西オーストラリアが注目されている。

歴史と文化を守りながらも、都市開発により大型MICEを受け入れるインフラが整備され、情報発信の場としての体制も整えられたパース。観光貿易のリーダーとして世界を牽引していくことが期待されることから、今回オーストラリアで初めて「WTTC グローバル・サミット」の開催地に選ばれた。

グローバル・サミットにおける注目の発表内容

「WTTC 第24回グローバル・サミット」では、経済成長を支える存在になるであろう観光事業に関するさまざまな発表が行われた。

ここで、特に注目された議題のなかから、観光と環境・社会・経済のつながりを如実に示す2つのトピックををみていこう。

旅行・観光事業の環境フットプリント排出量の大幅な減少

旅行・観光事業が占める世界の環境フットプリント排出量が、ピークとなった2019年の7.8%から、2023年時点で6.7%まで減少したことが、WTTCの発表により明らかに。また、世界の温室効果ガス排出量も、2019年の数値を12%下回る結果となった。

環境フットプリント排出量とは、人間の消費活動が環境に対してどのくらいの負担をかけているかを示す数値のこと。カーボンフットプリント(二酸化炭素が環境に与える影響を示す数値)やエコロジカルフットプリント(人間が消費する資源量を分析・評価する指標)などが含まれる。

旅行・観光事業はこれまで、化石燃料エネルギー源(石油、石炭、天然ガス)に依存する形で運営を続けてきた。しかし、サステナビリティが重要視され始めてから、徐々に低炭素エネルギー源(原子力と再生可能エネルギー)への移行が進められ、化石燃料への依存率は2019年から2023年で90%から88.2%に低下している。

パンデミックにより落ち込んだ旅行・観光業の世界GDPがパンデミック前の水準まで上昇したにもかかわらず、環境フットプリント排出量、さらには世界の温室効果ガス排出量までもが減少したことは、旅行業界が環境に配慮しながら成長していることを示しているといえる。

世界経済に大きな影響を与える先住民ツーリズム

WTTCの最新報告では、先住民ツーリズムが今後年平均4.1%で上昇し、2034年までに世界経済に670億米ドルをもたらすという予測が明らかにされた。

先住民ツーリズムとは、先住民の文化に焦点を当てた文化的ツーリズムの一つ。
今回の開催地となった西オーストラリア州の「アボリジナル・ツーリズム体験」では、2023年から2024年に現地を訪れた旅行者の87%がアボリジナル・ツーリズムに興味を持ち、36%が実際に参加し、歴史と文化を体感している。

同地ではアボリジナルが観光産業で働くことを奨励しており、先住民族の雇用機会拡大にも注力。
伝統文化を体験しながら宿泊できるキャンプ場の開発なども進められており、先住民に関わる事業の拡大が見込まれている。

日本でも、先住民・アイヌ民族の保護を目的とする法律の制定や、伝統文化を伝えるイベントの開催などの動きは見られるものの、旅行や観光との結びつきは決して強いとはいえない。
観光事業が経済に影響を与えるといわれている今、先住民の歴史保護や文化継承の一環として、先住民ツーリズムに取り組むことには、大きな意味があるのではないだろうか。

旅行・観光が社会経済を支える世界の未来

経済成長の要として注目されている旅行産業。
その過程では、環境や先住民への配慮が極めて薄かった過去を反省し、守るべきものを守りながら成長を遂げていこうとする様子が、さまざまな数値や結果からも垣間見える。

旅行者である私たちにできるのは、こうした配慮がなされた旅を積極的に選ぶこと。
サステナブルな旅を楽しむことは、間接的に多様な世界を支えることになるのだ。

https://livhub.jp/news/sustainability/wttc-global-summit-in-perth-202412.html

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