鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事 2/11(火) 11:01
1月末、ノルウェー最北端の都市トロムソで「北極圏ユース・カンファレンス」(Arctic Youth Conference)が開催された。
北極圏の急速な変化がもたらす課題や機会について、若者たちが話し合うためのプラットフォームとして誕生したこの会議は、北極評議会が主催する。
北極評議会は、カナダ、デンマーク(グリーンランド、フェロー諸島を含む)、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、米国の8カ国と6つの先住民グループによって構成されている。
北極圏の共通課題について協力・調整を促進する政府間フォーラムである。
大人が集まる北極圏会議Arctic Frontiersの直前に開催されたユース会議。両方参加する人もいて、「北極圏の課題解決にユースは絶対に欠かせない」という意識が共有されていた 筆者撮影
北極評議会の議長国のもとで開催される、初の若者主導の会議
北極評議会の広報チーフ、クリスティナ・バーさんは、「これまでも若者を巻き込んだ会議はありましたが、このような形式は初めてです。現在の北極評議会の議長国であるノルウェーが、若者が自ら創設し主導する会議として設計することを決定しました」と取材で語った。
このカンファレンスでは、軍事や地政学の議題を除き、環境保護、ウェルビーイング、汚染、社会的課題、アートなどが主要なトピックとして取り上げられる。形だけの取り組みに終わらないよう、若者たちが実際に会議の企画や運営に参加できる仕組みが整えられている。
北欧やアラスカなどの「北極圏の先住民ユースたち」が、対話する場所も特設されていた。筆者撮影
世代を超えた対話
「18歳から30歳までの参加者を主に歓迎」とされているが、実際には年長者の姿も多く見られた。これは、若いリーダーと上級職員や専門家が関与し、世代間の対話を促進することが目的だからだ。
「私はもう若くないが、若者を応援したい」と熱意溢れる参加者もおり、彼らは自らを「シニア・ユース」と表現していた。
「シニア・ユース」という初めて聞く英語に筆者は驚いて、「それって何!?」と聞くと、大人たちは照れながら、「……応援したい気持ちの表れだ」と説明した。筆者撮影
先住民としてのアイデンティティ
会場で筆者が出会ったのは、グリーンランド出身のダオラナ美雪さん(1999年生まれ)。日本人の母を持ち、ノルウェーのトロムソ大学で先住民学を専攻している。彼女にとって、このような場は非常に貴重だ。
「先住民として生まれることは、政治の中に生まれるということです。自分の権利が侵害されているから闘うという選択肢しかない。これは単なる趣味や仕事ではなく、私の人生そのものです」と語る。
グリーンランドを巡る緊張
近年、トランプ元大統領の「グリーンランド買収」発言が世界的に注目を集めた。これについて美雪さんは、「米国は採掘や軍事支配を通じて他国を搾取し、より多くの権力と富を得ようとしている。私たちは売り物ではありません。私たちは物ではなく、感情を持つ人間でし」と話した。
デンマークとの交渉も人間性を奪うものです。どうして人を買うという発想が出てくるのか。私たちは奴隷ではないし、土地を明け渡すつもりもありません。
米国はすでに先住民を搾取しており、現在も、過去も、そして現在も、パレスチナの人々や、アラスカの北極圏先住民など、アメリカ大陸の先住民を搾取しています。ですから、私たちは何に対しても抵抗します。
私たちはコラボレーションにはオープンです。自分たちで話し合い、未来を決定します。ですから、私たちを人間として見てください、と言いたいですね。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b179fe831ed5f8da941abb835adb1ec5f683808f