西日本新聞朝刊 2012/07/05付
カナダの極北の先住民イヌイットは、白という色を表す言葉を数多く持っている、と何かの本で読んだ。彼らが生きる雪と氷の世界がそうさせる
▼温帯の極東の島国に生きる日本人は、「雨」を表現する言葉を数多く持っている。ほぼ一年を通して降る雨に、四季折々の景色を重ねて種々名づけてきた
▼「木の芽起こし」や「虹の小便」のように、降られてみたい雨もあれば、「婆(ばば)おどし」や「鍋割(なべわり)」のように、遠慮願いたい雨もある。帰ろうとする人を引き留めるかのように降りだす「遣(や)らずの雨」など、心の風景も映した雨の名を持つ国はほかにない
▼豊かに降る雨が千変万化の呼び方を可能にした。日本の年間平均雨量は地球表面全体の平均の2倍近い。約1800ミリと学校では習った。温暖化で雨量は増えているかもしれない。近年は「ゲリラ豪雨」など無粋な名を耳にすることが増えた
▼無粋を昔から代表してきた豪雨が今夏は九州を襲う。大分県や福岡県では一部で避難指示・勧告が出された。1時間の雨量が110ミリを記録した地域もある。気象庁によると、時間雨量が80ミリを超えると「恐怖を感じる」。110ミリの恐怖は想像を超える
▼梅雨は二つの雨を持つ。アジサイをやさしくぬらす雨と、もう一つは気象用語に言う「猛烈な雨」(80ミリ以上)のたぐいだ。今回は死者や行方不明者も出た。暴力的な雨に対しては天をにらんで耐えるしかないのがつらい。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/311159
カナダの極北の先住民イヌイットは、白という色を表す言葉を数多く持っている、と何かの本で読んだ。彼らが生きる雪と氷の世界がそうさせる
▼温帯の極東の島国に生きる日本人は、「雨」を表現する言葉を数多く持っている。ほぼ一年を通して降る雨に、四季折々の景色を重ねて種々名づけてきた
▼「木の芽起こし」や「虹の小便」のように、降られてみたい雨もあれば、「婆(ばば)おどし」や「鍋割(なべわり)」のように、遠慮願いたい雨もある。帰ろうとする人を引き留めるかのように降りだす「遣(や)らずの雨」など、心の風景も映した雨の名を持つ国はほかにない
▼豊かに降る雨が千変万化の呼び方を可能にした。日本の年間平均雨量は地球表面全体の平均の2倍近い。約1800ミリと学校では習った。温暖化で雨量は増えているかもしれない。近年は「ゲリラ豪雨」など無粋な名を耳にすることが増えた
▼無粋を昔から代表してきた豪雨が今夏は九州を襲う。大分県や福岡県では一部で避難指示・勧告が出された。1時間の雨量が110ミリを記録した地域もある。気象庁によると、時間雨量が80ミリを超えると「恐怖を感じる」。110ミリの恐怖は想像を超える
▼梅雨は二つの雨を持つ。アジサイをやさしくぬらす雨と、もう一つは気象用語に言う「猛烈な雨」(80ミリ以上)のたぐいだ。今回は死者や行方不明者も出た。暴力的な雨に対しては天をにらんで耐えるしかないのがつらい。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/311159