恐懼に堪えない日々

【恐懼】(きょうく)・・・ おそれかしこまること。日々の生活は恐懼に堪えないことばかりですよね。

11/21(土)連雀亭昼席

2020年11月21日 | 噺とか
今日から11月下席がスタート。
一之輔師匠が珍しく鈴本の昼席になっているのと、
龍玉師匠が池袋で初トリになっているのが何とも魅力的なのですが、
ここは連雀亭でコンパクトに楽しもうと昼席へ。
今回は落語協会からの出演はなく、講談も1本入ります。
いずれの方も初めてお目にかかる新鮮な顔付けでありました。

「無精床」            吉馬
「片棒」             かしめ
「妲己のお百 十万坪の亭主殺し」 桜子
「縁切榎」            ぽん太

三遊亭吉馬さんは芸術協会の所属。
んー、芸術協会の芝居に積極的に行かないためにあまり詳しくない。
葛飾区の出身ということでそれをマクラにあれこれ。
葛飾区でイメージされる、寅さん・こち亀・キャプテン翼についてあれこれ。
町おこしで作られた「キャプテン翼公園」はボール遊び禁止だとか。
また、葛飾区にゆかりのあるリカちゃん人形についても。
リカちゃんの彼氏ってもう6代目なんだそうな。
本編が短いのでマクラ長目で許してください、と言いながら「無精床」へ。
この噺、よく寄席でもかかるのですが、個人的にはあまり好きではなかったり。
とはいえ、今日の吉馬さんのやった「無精床」は知っているものとちょっと違うかな?
ような床屋の親方がそこまでしつこくなく、小僧がけっこう前面に出てくる。
比較的軽めの構成ということなんでしょうかね。
そのためか、楽しく聞かせていただきました。

立川かしめさんはこしら師匠のお弟子さん。こちらもそんなに詳しくありません。
「片棒」をやられましたが、これもトリネタか仲入りのネタのイメージで、
きちんとやると長くなりそうなのですが、これもだいたい20分ぐらいでした。
次男の銀がもっと弾けてもいいかなーと思ったりもしましたが、
あんまりしつこくやるよりもこれぐらいでいいのかも。
三男の鉄のところはかなりあっさりと。
まぁ見せ場は次男のお祭り騒ぎのところですもんね。
にぎやかで楽しい一席でした。

講談は神田桜子さん。この日の演目「妲己のお百」はちょっと怖いお話ですね。
悪女、ではなく「毒婦」という表現をかつては用いていたそうで。
現在なら、ドキンちゃん・ドロンジョ様・峰不二子あたりがそれに当たります、
なんていう軽いマクラから本編は結構ダークな内容ですね。
落語に比べて講談はまだまだ私自身が聞いている本数も少ないためか、
新しい話にあたるといろんな発見があって面白いものです。
最後の池に突き落とすシーンあたりも迫真の演技でありました。

トリは三遊亭ぽん太さんで、こちらは円楽党から。好楽師匠のお弟子さんなんですね。
マクラもそこそこに「縁切榎」に入ります。この噺を聞くのも初めてでした。
江戸時代が終わって明治維新でいろいろと社会が変わる中で、
それぞれの身分も変化が求められていく時代のお話。
2人の女性を選びきれない若旦那。何ともこの辺は現代調ですがね。
いつの時代も人の悩みというのは変わらないということなんでしょう。
最後のサゲは何となく読める展開なのではあるのですが、それでも面白いですね。
迷って迷って仕方のない若旦那と演者のぽん太さんのキャラクターも相まって、
楽しく最後まで聞かせていただきました。

たまには顔見知りの噺家さんが出ない会も行ってみると発見があるもので。
しかしまぁ、コロナ第3波の到来で、年末の寄席もどうなりますやら。
何とか無事に興行ができるようであってほしいと願わずにはいられません。

恐懼謹言。
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11/7(土)三遊亭天どん「新作大全」@お江戸両国亭

2020年11月07日 | 噺とか
新作と古典の使い手・三遊亭天どん師匠の会です。
三遊亭圓朝・円丈・天どんのそれぞれの新作を口演するということで、
本来は昨年の今頃に行われていたはずなのですが、
台風のために延期となって今に至るという曰くつきの会。
なんでも文化庁芸術祭参加公演なんだそうで、
詳しいことはよくわかりません、客席の後方には審査員席もありました。
会場は予約で満席とのことで、実に盛況でありました。

「女子高生の設定」  ごはんつぶ
「にゅう」      天どん
「ジャグリング」   ストレート松浦
「ぺたりこん」    天どん
-仲入り-
「ともびき寄席」   天どん

ごはんつぶさんのネタは1年ほど前にきく麿師匠の会で聞いています。
演題はわかりませんでしたが、今回貼り出されて「女子高生の設定」と判明。
深夜にオフィスで働くサラリーマン二人の他愛もない話から始まる噺。
以前と比べると改良されていたのでしょうかね。
客席も非常に沸いておりました。
マクラでは前座名「ごはんつぶ」についてひとくさり。
思えば高座で師匠をいじるのを聞くのは初めてかも。
そろそろ二つ目も見えてきましたかね。

天どん師匠一席目は圓朝師匠の作品から。
「牡丹灯籠」などの大ネタの多い圓朝作品の中にも、軽い話があり、。
去年は無理に牡丹灯籠なんてネタ出ししたから台風が来た、と。
あまりやる人がいないのは、面白くないからだとはいうものの、
過去の作品を掘り出すことに意義がある、ということで「にゅう」という噺へ。
当然初めて聞いたわけなのですが、演題だけ見ると新作みたい。
もちろん、中身は古典なのですが、もっと演じられてもいいぐらい楽しい話でした。
若干、しょうもない下ネタが入るあたりが広まらない原因か。
茶道具の名前なんかが難しくてわかりにくいといいますが、
「金明竹」でも同じようなものですからね。

ゲストはストレート松浦さんで、ジャグリング。
ただ、いつもの感じではなく、お江戸両国亭が狭いこともあって、
今回はスタンディングではなくて高座に座ってやるスタイル。これは初めて。
いつものお手玉や中国ごまも座ったままやるとかなりきついんだそうで、
とにかく体幹が試されるとおっしゃっていました。
寄席の高座では見られないネタを見ることもできて、非常に楽しいものでした。

仲入り前に今度は円丈師匠作の「ぺたりこん」。
これも何度か聞いていますが、円丈師匠の代表的な新作落語なんでしょうね。
高座に上がるときの出囃子が円丈師匠の「官女」だったことから、
露骨にテンションが下がるという天どん師匠。
いつもながらの師匠いじりも面白いもので。
天どん師匠の演じる炎上作品としては、「横松和平」「肥辰一代記」などを聞いていますが、
どれも原作に忠実でありながら天どんカラーが出ていますね。
世の不条理を描きつつも、なんだか可笑しい、そんな新作です。

仲入り後は天どん師匠自身の作である「ともびき寄席」。
この噺も幾度となく聞いていますが、その時その時でくすぐりなどにも変化がみられ、
天どん師匠を代表する鉄板ネタかもしれません。
この日も会場を大いに沸かせておられました。
正直なところを言えば、天どん師匠の他の新作を聞いてみたい感じもしたのですが、
終わってみての満足感はやはりさすがといったところ。

立冬とはいいながらも秋晴れの気持ちのいい一日。
楽しい一日を過ごさせていただきました。

恐懼謹言。
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11/1(日)黒門亭2部(主任:柳家小袁治)

2020年11月02日 | 噺とか
興行が再開された黒門亭。
定員の40名から大きく減らして10名しかお客を入れず、
さらには完全電話予約制といった厳戒態勢です。

久しぶりの黒門亭ですが、この日に来た理由としては、
小袁治師匠がネタ出しで「柳田格之進」を出していたことと、
他にも新作のぐんまさんや、しん平師匠、紙切りの楽一さんが出るということもあって早々に予約。
以前、別の会に少し出遅れて申し込んだら満席だったこともあったので、
心配したのですが、結果的にこの日のお客さんは総勢5名。
完全に特定されてしまいそうですが・・・。

「寿限無」   まんと
「野ざらし」  ぐんま
「時そば」   しん平
-仲入り-
「紙切り」   楽一
「柳田格之進」 小袁治

前座のまんとさん、寿限無をたっぷりと演じました。
前座でありながら15分の持ち時間がきっかりあるのはここと鈴本ぐらい?
なかなか芸達者で前座さんの噺ながら楽しく聞かせていただきました。

ぐんまさんは新作で来るだろうと思っていたらまさかの古典。
噺に入る前に録音機器を操作されていたのでネタおろしなんでしょうかね。
前座の時には古典をよく聞いていましたが、二つ目になってからの古典は初めて。
この噺の見せ所であろう音曲もなかなかいい声でこなすあたり、
思いのほか芸達者なのかなぁと思ってみたり。
新作だけでなく古典でもしっかりと楽しませてくれるぐんまさんでした。

しん平師匠は最近ハマっているというパーコー麺についてあれこれ。
噺家であるとともに映画監督でもあるこの師匠、
やはり才能のある人なんだろうなぁと思います。
ひとしきりパーコー麺について語ったうえで、そこからの「時そば」。
しん平師匠の古典もあまりきちんと聞いた覚えがないのですが、
これが始まるとなかなかに面白い。
聞き飽きるぐらいに聞いた話でも、しん平師匠のアレンジ、さすがですねぇ。

紙切りの楽一さん。いつもの鋏試しではなく、
ぐんまさんがマクラで話したエピソードに由来して、
「雑司ヶ谷霊園で太鼓を鳴らしてしまい、カップルを驚かせた」一枚と、
しん平師匠がはまっているパーコー麺の話題から、
「肉の万世でパーコー二枚乗せのパーコー麺を食べるしん平師匠」を。
その後注文で「藤井聡太」「肉を食べるたぬき」「酉の市」を切り抜かれました。
黒門亭だとなかなか洒落をきかせてくれますね。

トリの小袁治師匠、「柳田格之進」は久しぶりで、
しかもこの噺をきっちりやったら50分はかかると。
それなのに今日の持ち時間は25分。どうしたもんか、とぼやきつつ本題へ。
「柳田格之進」自体聞くのは初めてであり、演題こそ知っていたものの、
詳しい予備知識もなく話を聞かせていただきました。
武士の生き様とそこから繰り出される悲喜こもごも。
冬の定番の噺になっている「柳田格之進」ですが、
たった5人しかいない客席でたっぷりと味わえたのは贅沢以外の何物でもありません。
寄席や大きなホールではわからない息遣いや迫力はさすが。
終わってみると45分の熱演だったわけですが、時間を感じさせない一席でした。

たった5人しかいない客席というのは初めての経験かもしれません。
かつての池袋演芸場がこんな様子だったようですが、
それでもかなりクオリティの高い濃密な空間でした。
コロナ禍で仕方なくこのような環境になっていて、
噺家さんの収益の部分からしてもいいことなんてないのでしょうが、
それでもこの贅沢な空間はコロナ禍だからこそ味わえたもの。
できないことを嘆くより、その中から楽しみを見つける。
そんな一日になったのかもしれません。

恐懼謹言。
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