恐懼に堪えない日々

【恐懼】(きょうく)・・・ おそれかしこまること。日々の生活は恐懼に堪えないことばかりですよね。

2022/11/19 黒門亭(主任:入船亭扇辰)

2022年11月19日 | 噺とか
かなり久しぶりの黒門亭です。
相変わらずの20名定員と電話予約制で、
気軽に足を運べない感じながら、
この日のネタが「蕎麦の隠居」とあり、
なかなかの珍しい噺の部類。
予定も空いていたので、すかさず電話して足を運んでみた次第。
ちなみにこの日は満員の札止めでした。

みそ豆   ぽん平
定吉殺し  わん丈
幇間腹   我太楼
−仲入り−
七五三   文雀
蕎麦の隠居 扇辰

前座は正蔵師匠の実子、ぽん平さん。
お兄さんのたま平さんとはあまり似ていないような。
なぜか5分遅れて開演し、3分早く下がる。
これからの成長に期待でしょうか。

続くわん丈さん。
最近は色々とご活躍の様子。
前座に続く一席で大ネタとも言える、
双蝶々の定吉殺しなのでありました。
客席にお子さんがいる中で、
この噺もどうかと思うと前置きしつつも、
黒門亭はそういうところである、と。
ここは同意ですね。
他の寄席ならいざ知らず、
珍しい噺を聞きたくてウズウズしてるお客さんの集まりですもんね。
新作に限らず、こういう噺もいいですね、
わん丈さん。人気なのも頷けます。

仲入り前の我太楼師匠は、
いつ以来かわからないぐらいのご無沙汰。
明るく陽気な雰囲気が印象的。
今日の中では、一番スタンダードなネタ。
細部に独自のくすぐりがあり、
子供にも落語ファンにもウケる工夫あり。
定番ながら楽しめる一席でした。

仲入りの後は文雀師匠。
こちらもかなり久しぶり。
今年亡くなった師匠方との思い出から、
金翁師匠の話題へと移り、
生前に稽古してもらったという、
この時期ならではの噺を、と。
この七五三という噺、初めて聞きました。
大家さんから習った狂歌を覚えて、
付け焼き刃で周りに披露するという、
なんとなく同じような設定がありそうな。
とても面白い、楽しい一席でした。

トリの扇辰師匠、各所で活躍する人気者。
蕎麦の隠居という噺は初めて聞きます。
蕎麦屋に来るたびに主人に小言を言って、
また翌日来ては違った小言を残して行く。
「小言幸兵衛」のような、
はたまた「かんしゃく」のような。
最後の最後にくるサゲでアッと言わせる、
そんな展開も楽しいネタでした。
寄席ではなかなかお目にかかれないかも。

総じて珍しい噺に出会えた今日の黒門亭。
おおむね満足なのですが、
一つ気になったのが、
来場していた子どものお客さん。
おそらくは小学校低学年ぐらいで、
親に連れてこられたと推測されますが、
浅草や鈴本ならいざ知らず、
ここ黒門亭ではちょっと難しかったのか、
途中で足をばたつかせたり、
母親に語りかける場面が度々ありました。
私も少し気にはなりながらも、
仕方ないのかなぁとは思っていましたが、
仲入りの時に常連と思しき男性が、
親子に苦言を呈していました。

子供が寄席にくるというのは、
微笑ましい光景ではありながら、
時として迷惑と感じる場面もあります。
我慢できるレベルは人それぞれですが、
注意した男性の気持ちもよくわかります。
出演者も所々でお子さんへの配慮を見せていましたがね。
仲入り後も大きく改善されることもなく、
退屈そうに足をばたつかせたり、
母親に語りかけるシーンがありました。
その度に小声で母親はたしなめるものの、
その気まずさはこちらにも伝わりました。

お母さんが熱烈な落語ファンで、
止むに止まれず子供を連れてきたのか、
想像は尽きませんが、
色々と考えさせられる場面でした。
でも、いきなり黒門亭は難しいかもね。

そんなこともありつつも、
有意義な土曜の午後を過ごすことが出来ましたよ。

恐懼謹言。
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2022/11/02 鈴本演芸場 昼席(主任:古今亭菊丸)

2022年11月02日 | 噺とか
久しぶりの鈴本演芸場です。
平日の昼席ということでゆったり。
かと言って閑散としているわけでもなく、
程よい客入りなのでありました。
菊丸師匠は寄席で何度か見たぐらいで、
トリの芝居はおそらく初めて。






道灌     駒平
初天神    歌彦
ギター漫談  ペペ桜井
寿限無    黒酒
狸鯉     金朝
紙切り    八楽
妻の旅行   はん治
替り目    文菊
漫才     ニックス
金明竹    菊志ん
−仲入り−
太神楽    翁家社中
無精床    志ん彌
芋俵     一之輔
紙切り    二楽
井戸の茶碗  菊丸

歌彦さんの初天神、師匠である歌奴師匠の影響をとても感じる一席。
もともと高知県のご出身なんですね。

黒酒さんは今席から二つ目昇進。
くろき、という読み方は本名の苗字と、
新嘗祭で供される白酒と黒酒に由来。
もともとは、あられさん。
寿限無の下げは少し変わった形。

金朝師匠、お名前は存じ上げていましたが、おそらく初めて。
鈴本でもあまり顔付けされないような。
狸の鯉はよく聞くところですが、
これがなかなかに良く、今日の発見の一つとなりました。
もっと聴いてみたくなった噺家さんです。

八楽さんは長らくの前座生活を終えて、
めでたく紙切りとして11月上席からデビュー。
落語家さんと違って二つ目昇進ではなく、
年季明けという表現をされていました。
体を動かし、間断なく話すスタイルは、
父であり師匠でもあ?二楽師匠そのものですが、
まだまだ緊張があるようですね。
鋏試しは花嫁。注文で暴れん坊将軍と七五三、秋の温泉を切り抜かれました。

正蔵師匠の体調不良に伴って、
はん治師匠の代演。
お馴染みの妻の旅行ですが、
私としてはかなり久しぶりでした。

文菊師匠はたっぷりのマクラから、
替り目をごく短く。
かなり途中省いていたように思います。
コンパクトな一席。

菊志ん師匠も久しぶりですが、
この日は仲入りの出番ながら、
コンパクトに金明竹でした。
まぁ、こういうこともあります。

志ん彌師匠の出囃子が、
どういうわけか次に上がる一之輔師匠のものになっていて、
あれ、と思ったら下座さんのミス。
すぐに訂正した出囃子になりました。
こんなこともあるのね。

一之輔師匠、秋のシャインマスカットやら葡萄の思い出のマクラから泥棒の噺へ。
芋俵、先日も連雀亭で聴きましたが、
遭遇率高めですね。
相変わらずの一之輔節で楽しい一席。

同じ芝居だ紙切りが2人出るのは珍しいとしながら、高座で紙を切る二楽師匠。
この日の鋏試しは芸者さん。
注文では、二楽師匠と八楽さん親子、
ちびまる子ちゃんを切り抜かれました。
八楽さんの命名エピソードは聞いたことがありましたが、この日改めて。
なかなかいいお話でした。

トリの菊丸師匠は井戸の茶碗。
どうもトリネタでこの噺にあたることが多いような。
それでもやはり菊丸師匠は技巧者ですね。
侍同士の意地の張り合いのあたり、
ややとするとだらけてしまうのですが、
この日はしっかり聴き込ませていただきました。

国立では新真打の披露目が行われていますが、
他の定席では二つ目さんの披露目が進行中です。
最近なかなか若手の落語家の名前を覚えるのが苦手になりつつありますが、
それでも寄席におめでたい空気が広がるのはいいことですね。

恐懼謹言。

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