恐懼に堪えない日々

【恐懼】(きょうく)・・・ おそれかしこまること。日々の生活は恐懼に堪えないことばかりですよね。

2022/08/29 末廣亭昼席(主任:三遊亭歌る多)

2022年08月29日 | 噺とか
コロナ禍での経営不振を理由に、
8月末までのクラウドファンディングを行なっている末廣亭。
最近は足が遠のいていたものの、
友の会の会員ということもあり、
手元にはチケットがあります。
夏もあとわずか、ひさしぶりに定席の寄席に足を運んできました。
平日月曜ながら、顔付の良さもあるのか、
客席はそれなりの入りでした。
今席は珍しく昼夜入れ替えありです。

「寿限無」     ひろ馬
「大安売」     伊織
「東北の宿」    馬るこ
「紙切り」     楽一
「新聞記事」    歌奴
「冷蔵庫の光」   和泉
「漫才」      米粒写経
「ぞろぞろ」    龍玉
「一眼国」     正蔵
「ギター漫談」   ペペ桜井
「楽屋外伝」    馬風
「転宅」      さん喬
 -仲入り-
「つる改」     玉の輔
「漫才」      ロケット団
「ほっとけない娘」 小ゑん
「真田小僧」    一之輔
「浮世節」     橘之助
「厩火事」     歌る多

久しぶりにたっぷり寄席を楽しみました。
その中で初めて聴いた噺が2つ。
1つが和泉師匠の「冷蔵庫の光」で、
冷蔵庫の中の整理をめぐる夫婦の噺。
ドレッシングが無駄にたくさんある、
いつ作ったのかわからない自作の調味料、
冷凍庫の中にやたら入っている保冷剤、
などなど家庭のあるあるネタが盛りだくさん。
調べてみると比較的最近の作でしょうか。
面白く聴かせてもらいました。

もう一つが玉の輔師匠の「つる改」。
古典のつるに着想を得たと思われる作。
先日の国立でトリを聴いた玉の輔師匠、
寄席でのこういう軽い作品もいいですね。

ペペ桜井先生や、馬風師匠など、
寄席の定席だからこそ出会える大物も、
しっかりと健在でありました。
ペペ先生がハーモニカを使ったネタをやるのは初めて見ました。
馬風師匠も安定の楽屋外伝ですが、
真っ白な頭髪と危なげない足取りながら、
口調はしっかりとしている。
こういうのもいいですねぇ。

ロケット団の漫才は毎度時事ネタをうまく突っ込んでくるところはさすが。
今回は合同結婚式ネタ。かなりヒヤヒヤ。

久しぶりの小ゑん師匠ですが、
本来はここは圓歌師匠の出番。
コロナの陽性の関係で連日の代演。
この後の橘之助師匠も先日まで陽性で療養していたし、
一之輔師匠も先月陽性になっており、
寄席にくる客だけでなく、
出演者も命懸けですよね。

トリは歌る多師匠。
8月のこの時期のトリが恒例で、
夏休みに来やすいということもあるので、
私としてはもう何度目かというところ。
軽いネタからトリネタまで、
立て板に水の如くの語りで、
スーッとネタが入っていきます。
厩火事はそこまで好きな噺でもないものの、この日は気持ちよく聞かせていただきました。

さ、朝晩涼しくなってきて、
いよいよ夏も終わりが近づいてきた感じ。
頭をしっかり仕事モードにしていかねば。

恐懼謹言。
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2022/08/25 連雀亭ワンコイン寄席

2022年08月25日 | 噺とか
またしてもワンコイン寄席に。
前日に出番の変更があって、
本来は春風亭吉好さんだったところに、
三遊亭ふう丈が代演という形になり、
全員が落語協会の出演者になりました。
少し時間があったので、行って来ました。
会場は大体10人ぐらい。
前回は札止めになりましたが、
これぐらいがちょうどいいですね。

「たらちね」  緑助
「芋俵」    㐂いち
「アンテナ」  ふう丈

緑助さんから始まるワンコイン。
マクラでは話題の漫画、「あかね噺」についてあれこれと。
若い層にも人気があるということで、
先日のらくごカフェに出演した際も、
明らかに「あかね」の客と思しき女子中学生が落語を見に来ていたエピソード。
真偽の程は定かではありませんが、
落語を楽しむ裾野が広がるのはいいこと。
そんなお客さんとの縁、という話題から、
「たらちね」へ。
いくつかパターンはあると思いですが、
言い立ての部分は長いパターンで。
天どん師匠がアレンジする「タラチネ」もこのパターンを踏襲していますね。
最後まで行かず、お焼香のところで切る。
前座話だ鍛えたであろう「たらちね」。
楽しませていただきました。
気になったのは、八五郎が大家さんのことを隠居、と呼ぶシーンがあったこと。
大した事ではないんですがね。

続くいちさんは国立で見て以来。
今日の出演者は前座時代の同期ながら、
決して仲良くなることがなかった、
そんな不思議なメンバーなんです、と、
皮肉を交えてあれこれ。
こういう話し方も師匠譲りですかね。
泥棒にまつわる小噺を少し振ってから、
「芋俵」へと入りました。
先日の国立では少しウトウトしてしまったものの、
この日は楽しく聴かせていただきました。
泥棒の若い衆のやりとりが軽妙で楽しいですね。

トリのふう丈さんは急遽の代演。
一昨日が誕生日だったそうで。
この流れで古典かなーと思いきや、
新作の「アンテナ」という噺。
とある中学校に転校生がくる、
という一見よくあるストーリーですが、
ここはやはり円丈一門のパワーでしょう、
落語ならではの技法を用いてどんどんぶっ飛んだ展開になります。
頭にアンテナの生えた転校生マサオが繰り広げるドタバタが楽しい、そんな新作。
調べてみると今月末の池袋で行われる、
二つ目勉強会でネタ出しされていました。
一度連雀亭で試験的に、という感じなのかもしれませんね。
こういう新作、どんどん聴いていきたいものです。

コンパクトに楽しめるワンコイン寄席。
時間が比較的とれるこの時期だからこそ、
足を運べるわけですが、
来るたびに発見があるのは嬉しい限り。
さ、夏もそろそろ終わりですね。

恐懼謹言。

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2022/08/19 連雀亭ワンコイン寄席

2022年08月19日 | 噺とか
今月2度目のワンコイン寄席です。
前回と大きく違うのは客入り。
前回はわずがな人数でしたが、
今回はなんと満員札止め。
おそらくは、つる子さんのおかげなんでしょうけど、こうも差が出るとは。
しかも圧倒的に男性客が多いという。
そんな熱気の中で開演しました。

「宿替え」  紋四郎
「猫の皿」  彦三
「たがや」  つる子

上方落語の紋四郎さんは、はじめまして。
夫婦のマクラから「粗忽の釘」へ。
搾乳器に関するエピソードは面白い。
上方では演題が違うんですね。
これは知りませんでした。
噺の筋は大体同じなのですが、
上方の言葉でポンポンと心地よく展開していくのが聞いていて楽しいもので。
本来の下げまで行かず、
途中で切り上げましたが、
時間があったら最後まで聞いてみたかったなぁと。

続く彦三さん。
あまりお目にかかりませんが、
文筆業もやられているんですね。
新宿紀伊國屋書店で、自著の本が、
小三治師匠と木久扇師匠の本に挟まれていたんだそうな。
さらに、名古屋の大須演芸場に出かけ、
ういろう屋さんと話したエピソードをあれこれと。
商売の難しさの話から、「猫の皿」へ。
やや冗長な感じもしましたが、
聞き慣れたものとは少し違い、
笑いこそ多くないものの、
最後はしっかりと笑いを取っていました。
会場を温かい空気に包んだ一席。

トリはおそらく会場の多くのお目当て、
つる子さん。
寄席ではしばしば見かけますが、
どちらかといえば久しぶり。
コロナ禍ながら満席の連雀亭、
とはいえまだまだソーシャルディスタンスを取らなければならず、
かつてのような熱気は戻っていない、と、
改めてコロナ禍の厳しさを語ります。
同様に歌舞伎なども種々の制限があり、
大向こうをかけることも禁止されている、
なんていう話題へと移って、
この辺りで夏らしく「たがや」だな、
と察しました。
とんとんと噺は展開しつつも、
そこは林家らしく、所々にくすぐり。
圧の強さを感じないこともありませんが、
それもつる子さんらしさということで。
満員の観客を前に熱愛でありました。

少人数でのんびりと聞ける連雀亭も、
それはそれで良さはあるものですが、
満員御礼の熱気の中で聞く熱演も、
なかなか良いものであります。

個性豊かな3人をそれぞれ堪能できた、
そんなワンコイン寄席でありました。

恐懼謹言。
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2022/08/08 国立演芸場(主任:五明楼玉の輔)

2022年08月08日 | 噺とか
久しぶりの国立演芸場です。
調べると去年の9月以来。
難聴を患って以来、マイクを使う寄席は、
マイクの反響音が気にかかって、
しばらく遠ざかっていましたが、
発症から7ヶ月ほどたって改めて。
やはり反響音は気になるので、
小さめの落語会の方が居心地がいいなー、と感じるものの、
今日はなかなかに密度の濃い芝居で、
それを補って余りある感じでした。






「狸鯉」    枝次
「寄合酒」   㐂いち
「漫才」    一風千風
「鼻ほしい」  百栄
「天災」    小里ん
-仲入り-
「湯屋番」   桃花
「ぞろぞろ」  一琴
「奇術」    マギー隆司
「子は鎹」   玉の輔

前座の枝次さん、前も聞いた狸鯉。
かなり手の内に入っているのか、
安心して聞いていられます。
特徴的なくすぐりは前回のまま。

ここからしばらくご無沙汰の人続き。
㐂いちさんはひょっとすると前座以来?
師匠を感じる口調のイメージでしたが、
今回はそんなこともなく。
しばらく見ないと変わるもんですね。
寄合酒を時間たっぷり、楽しい一席。

一風千風さんもかなりご無沙汰。
ネタは相撲関係のあれこれ。
ロケット団と比べてしまうと、
寄席の漫才としてはもう一声、
という感じなのですがねぇ。
しかし、千風さんってかなり大きめなイメージだったのですが、
今日久しぶりに見てびっくり。
ほっそり、というかすらっとした感じで、
最初は人が変わったのかと思ったぐらい。
んー、時が経つというのは恐ろしい。

百栄師匠、先日コロナ感染の話題がありましたが、影響もなさそうでお元気。
ほとんど新作ばかり聴いているのですが、
今席では古典もやられているようで。
ネタは初めて聴く、鼻ほしい。
今となってはほとんど見ることのない病人の症状で、差別にも当たらないのかな。
独特の空気の抜けた喋りが、
百栄師匠のキャラと相まって楽しい。
新作以外にもまだ発見がありそうです。

小里ん師匠は仲入りの出番で、天災。
いやー、久しぶりに聴きましたが、
しっかり聴かせて楽しい噺ですね。
以前も末廣亭でトリを聴きましたし、
落語研究会でも一人酒盛を拝見。
本格的な古典をこの師匠に任せると、
とにかく聞き応えのあるものに。
最後まで引き込まれてしまいました。

仲入り後は新真打の桃香師匠。
昇進してからは初めてお目にかかります。
今席ではトリではないものの、
熱心なファンがかなりいるようで、
中央最前列はおそらくその面々。
他の席はほとんど一つおきに座っているのに対して、中央最前列はギッチリ。
かなりの人気ぶりが伺えます。
真打になってから髪型も変わり、
新たなスタートを切ったわけですね。
噺は湯屋番。よく寄席でもかかりますが、
桃香師匠の芸達者ぶりが伺える、
そんな一席でした。
短い噺だけでなく、トリネタも聴いてみたいものです。

一琴師匠もかなりのご無沙汰。
この方も実力はあるのでしょうが、
なかなかお目にかかる機会がありません。
昨日はご自身の会に出るため、
代演になっていたようですが。
ネタはごく軽いぞろぞろ、で。
出だしのところや、細かいところなど、
あまり聞いたことのないパターンかな、
と思いました。

奇術のマギー隆司先生も久しぶり。
国立の高座で独特のゆるーい感じの奇術。
やっぱり肩肘張らずに見られるのがいいですね。
紐の手品からレコード、そしてトランプ。ヒザの仕事をしっかりと果たし、トリヘ。

玉の輔師匠のトリは初めてです。
寄席だと浅いところから深いところまで、
比較的オールラウンドのイメージ。
全体的に軽めの噺しか聞いたことがなく、
トリネタではどんなネタをやるのか、
という期待感もあります。
いつものマクラから子供の話へ。
ん、と思っていると、子別れへ。
Twitterの情報で、今席では3日にこのネタを出したはずなのですが、
ここで再度、ということでしょうか。
最初は、んー、という感じでしたが、
言い淀みなく、適度なスピード感のある語り口にしだいに引き込まれます。
もちろん、じっくり重厚なパターンもいいのでしょうが、
これぐらいのスピードが心地良い。
まして、自分自身が人の親になって、
初めて聴くこの噺。
少し妻や子供との接し方について考えてしまいまして。
落語も聞く側の心待ちにによって印象も変わってくるものですね。

時間的にはコンパクトに、
スペースはゆったり楽しんだ国立演芸場。
この9月にさよなら公演があり、
しばしの改装に入るようですが、
ゆったりのんびり楽しめる空間は貴重。
週の初めから上質な時間でした。
帰り道に私服姿のマギー隆司先生が歩いていく後を追いかけて、地下鉄で帰りました。

恐懼謹言。



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2022/08/01 連雀亭ワンコイン寄席

2022年08月01日 | 噺とか
久しぶりの連雀亭です。
連日の感染者が3万人を超え、
人の密集する場所への出入りが躊躇われら今日この頃ではありますが、
連雀亭のワンコインなら少人数、かつ、
短時間でいいだろうと足を運びました。
予想が的中してこの日の客は4人。
感染対策としては喜ばしいものの、
演者としては微妙な気持ちでしょうね。

「黄金の大黒」  晴太
「ラブレター」  市寿
「死ぬほど律儀」 花飛

一席目は春雨や晴太さん。
この日は代演ということで、
本来の出番は三遊亭仁馬さん。
お名前は「はれた」さんというのですね。
どちらも初めての方なので、
関係ないと言えば関係ないのですが、
晴太さんで当たりだったかな。
この日唯一の古典で、「黄金の大黒」を途中で切らずに最後まで。
芸協の演じ方だからなのか、普段はあまり聞かないくすぐりなどもあり、
面白く聴かせてもらいました。
なかなか技巧者だなーという第一印象。

続いて市寿さん。
前に出た晴太さんがメガネをかけていることから、自身のメガネトーク。
普段は目が悪く、基本的にはメガネ着用。
コンタクトも体質に合わないので、
高座の際は裸眼なのだそうですが、
この日は試しに、客席に意見を聞き、
メガネをかけて演じることに。
高座でメガネをかける噺家について触れ、
円丈師匠や円蔵師匠などの例をあれこれ。
そんな流れから入って、比較的古い新作「ラブレター」へ。
柳家かゑるさんから教わったそうで、
そのかゑるさんは故喜多八師匠から教わった噺だそうな。
なるほど、確かに時代を感じる「新作」かもしれませんね。
かつては新作は芸協というような時代もあったのですかね。
ところが三遊亭円丈師匠の登場以来、
新作落語の概念も大きく変わったと、
聞き齧った程度の知識で認識しています。
演じている市寿さん、色々と自分なりに工夫はされているんでしょうね。
短いながら楽しく聴かせてもらいました。

トリは花飛さん。先日の黒門亭以来。
別に狙っているわけではないのですが、
こんなこともあるもんです。
先に出たかゑるさんの話をいくつか。
経験上、絶対に仲良くならないタイプの人なのに、なぜか仲が良い。
仲良くする秘訣は相手に期待しないこと、
だそうですね。
どうしても古典のイメージの強い方ですが、この日はまさかの新作。
演題で調べてみると、最近よく演じられているようですね。
現代を舞台に、やたらと律儀な会社の同僚?部下?が訪ねてくるところから。
予期せず新作が続いてしまいましたが、
全くタイプの違う新作なので、
疲れることもなく、いい意味で力を抜いて聴くことができました。
柳家花緑一門で新作というと、
花いちさんのイメージが強いんですが、
恐るべし花緑一門。

少人数で短時間ながら、
面白い発見のたくさんあった連雀亭。
良い時間を過ごすことができました。

恐懼謹言。

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