共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

百年以上の時を刻んで ~ 米アンソニア社製の置時計

2016年05月10日 21時45分20秒 | 日記
先週ゴールデンウィーク中ながら、教室として借りている公共施設の開館の関係で二宮町のレッスンをしたため、今日は代休となりました。何だか一週間遅れで連休がやって来たようで、微妙な気分ではあります。

さて、こんなチャンスだからこそ今日中に済ませてしまいたいことがありました。

かつて拙ブログに割りと頻繁に登場していた《Cafeあつめ木》というお店が厚木市内にありましたが、中町から寿町への店舗移転に伴って一昨年春から一時閉店していました。

その後、物件のリフォーム等に思いの外時間がかかっていましたが、この度目出度く明後日12日にリニューアルオープンすることが正式に決まったため、その前に私から開店祝いを兼ねたプレゼントをお持ちすることにしました。それが、上の写真のアンソニア社製の置時計です。

実は何を隠そうこの時計、昨年末に、リロケーションで貸している茨城の祖父母宅から奪還してきた時計の一つなのです(詳細は昨年12月の記事を御覧下さい)。あの時、大小合計7台もの古時計を回収・保護して来て、かつて祖父がお世話になった地元のライオンズクラブ等に形見分けとして差し上げたりしていました。ところが、どういうわけかこの子だけが貰い手が無く、しばらく厚木の我が家にメンテナンスがてら置いていました。

その内、《Cafeあつめ木》のリニューアルオープンの話が具体化してきた時に、

「そうだ!《Cafeあつめ木》にこの子を貰ってもらおう!」

と思い立ち、事前にスタッフさんに確認したところ引き受けて下さるという返事を頂きました。

貰い手が見つかって安心したものの、そうは言っても開店準備に大童な時期にこんなものをお持ちしても御迷惑なだけなので、おおかた準備が落ち着いた頃に…ということで、今日の日を選びました。

雨が心配されましたが、朝方には上がったので安心しました。とは言え、何しろ真鍮とガラスとオニキスで出来た総重量約12kgもの時計を箱詰めして、一人力でエッチラオッチラ運ぶだけでも一苦労です。こういう時になると、若い時に車の運転免許を取っとくんだったなぁ…などと思ってみたりするのですが、現実はそんなこと言っていられません。とにかく、道行く人やバスの運転手にジロジロ見られながら(恐らく運転手は積載重量オーバーを疑っていた様子でしたがシラを切り通して)何とか無事にお店へたどり着き、ちょうど居合わせた工事スタッフの若い衆に荷解きをお願いしました。

アンソニア社は1851年にアメリカ・コネティカットで創業した会社です。当時は真鍮メーカーの一時計部門に過ぎませんでしたが、真鍮や鉄で作った頑丈かつ洗練されたデザイン性と、丁寧な仕事による狂いの少ない性能の高さが世に認められ、当時の時計製作大企業であるイングラハム、セストーマス、ウォーターベリー、ウェルチ等と肩を列べるまでの一大ブランドに成長しました。日本にも明治時代に多く輸入され、アンソニア社のトレードマークである"A"のマークのついたコピー製品まで出回ったとか。

一大企業にまで成長したアンソニア社ですが、1879年ニューヨーク移転した後の1890年に工場火災を起こしたことから徐々に衰退していき、最終的には1929年に当時の帝政ロシアに買収され、約80年の歴史に幕を引くこととなりました。なので、現在アンソニア社は存在していませんが、その丈夫さ故にあちこちに作例が残っていて、今でもオークションにかけられていい値段で取引されていたりもするようです。

この時計の話を何人かにした時も、いっそのことオークションに出して売っちゃえば?という意見が聞かれました。しかし、祖父が大切にしていたこの時計を、何処のどなたかも分からないような人に持っていかれるのも何だか気が進まなくて、私の中でオークションという選択肢は思い浮かびませんでした。それがこうしたかたちで行き先が決まり、尚且つそこが、私自身もこれから先ずっと見守り続けることができる場所であったことは喜ばしい限りです。

この時計は祖父が子供の頃には既にあったものだそうですので、恐らくは明治時代に輸入されたものだと思われます。先にも書きましたが、台座と上部はオニキス製です。枠や頭頂部の飾り擬宝珠は真鍮製で、よく見ると所々に鍍金が残っています。

その枠に囲まれるかたちでガラスが四面に張られています。何しろ百年以上前の時計ですから現在のようにピッチリ出来たものではなく、よく見ると極々小さな気泡が入っていて、角度によって微妙にユラユラと揺らめきます。勿論、時計を見るのに支障はありませんが、この微妙な揺らめき加減がいい味を出しています。

また、こうした時計ではオリジナルのゼンマイキーが無くなってしまっていたりするようなのですが、この子にはちゃんとオリジナルキーが残っています。今日はお店で動作確認を兼ねて私がゼンマイを巻き上げて振り子を装着し、きちんと動作することを確認した上でキーも一緒にお店に託して来ました。

祖父の家の応接間で百年以上時を刻み続けてきた歴史ある時計が、新たな環境下で役割を果たすこととなりました。私も子供の頃から慣れ親しんだ時計が役立っていることが嬉しいですし、恐らく祖父も喜んでいてくれるのではないかと思っております。

この子のお店の中での落ち着き先については、新しいオーナーであるスタッフの皆さんに一任して来ました。明後日のオープン時、一体お店の何処に鎮座坐しているのか、今から楽しみです。
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