今日はたまプラーザの教室の出勤前に、赤坂のサントリーホールに行きました。今日はこちらで、月に一度のランチタイムオルガンプロムナードコンサートが開かれました。
今回の演奏者はチェコ出身のオルガニスト、パヴェル・コホウト氏によるものでした。今回のプログラムは
●J.S.バッハ
パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582
●B.ヴィーデルマン
ノットゥルノ
●J.クリチュカ
スメタナの交響詩『ヴィシェフラト』に基づく幻想曲 作品33
の3曲でした。
プログラムを渡されて、一瞬
『うっ…』
となりました。そう、このバッハは昨年私が編曲しながらも、事実上報酬を踏み倒されたという苦い思いをした因縁の曲です。
まぁ、そうは言っても音楽に罪は無いので、気を取り直して鑑賞することに専念しました。
CDでは到底再現し得ない、荘重なペダルの低音で提示されるバス主題の上に紡ぎ出されるパッサカリアは、はじめは静かに進行して行きながらも徐々に熱を帯びてくる、バッハお得意のスタイルです。続くフーガは複雑な対位法によって華やかに彩られ、最後にハ長調の荘厳な終止音を響かせて聴く者に深い印象を残します。
ヴィーデルマンはプラハを拠点として国内外で活躍した、20世紀チェコを代表するオルガニストです。今回演奏されたノットゥルノは1942年、まだ第二次世界大戦の最中にあった時に、彼の妻に捧げられた作品です。不安で不気味な低音の半音階と、それに続く減7度の和音をテーマとして展開していくこの曲は、そこから如何にもオルガニストが作曲した作品らしく色彩豊かな様相を見せていきます。
最後は言わずと知れたスメタナの連作交響詩《我が祖国》の第1曲『ヴィシェフラト』を、スメタナの友人でオルガニストだったヨゼフ・クリチュカによって編曲されたものでした。
ロマン派後期のオルガンは、それまでのものと比べてストップ(オルガンの音色を選ぶスイッチ)の数が格段に増え、各種の管楽器や弦楽器の音色までも模倣するようになり、オーケストラに近い演奏効果をあげることに成功していました。この幻想曲も、元のオーケストラ作品を知っているとその再現力に驚嘆させられます。最後はフルオーケストラに匹敵するフルスエルでの大音響で堂々たる締め括りを迎え、
演奏後は観衆から盛大な拍手が贈られました。
終演後、ロビーでパヴェル・コホウト氏のCD販売会が開かれ、
オルガニストによるサイン会も行われていました。
やはりパイプオルガンの音響というものは、その楽器が鳴っている空間に身を置いて、耳で聴くのは勿論のこと身体全体で空気の震えを体感するものです。たった30分ですが、その体感を気軽に体験出来る貴重なコンサートでした。
次回開催は11月8日㈮、奏者は日本を代表するオルガニスト松居直美さんです。