四季菜遊土 菜園倶楽部

週末の菜園、土いじり、採れたて野菜の料理レシピ等々、農と食と環境を考える

晴耕雨読(書評) 土を喰らう日々

2012-10-19 | 晴耕雨読(書評)

先日、書棚に収めた書類を探していたら、偶然、懐かしい本が、目に止まりました。

皆さんも、経験がお有りかもしれませんが、


昔、自分が感銘を受けた本や歌を、久方ぶりに読んだり聞いたりすると、
その頃の思い出や、時代背景が鮮明に蘇って来たりしますよね~。

この本は、私にとって、そんな一冊です。
水上勉、著 「土を喰らう日々」


今から、18、19年前になりますか、家の娘が、まだ1歳か2歳くらいの頃、
重度のアトピーに悩まされ、家と皮膚科の病院を往復する毎日が続き、
その後2~3年は、家族の食生活にも、非常に気を使いました。

有機無農薬野菜や無添加調味料、ミネラルウォータ等々、体に良いと云われる物を、
あちこちから、定期契約で取り寄せて・・・。

週一、定期的に送られてくる、段ボウルに入った「有機無農薬」と書かれている
少し元気の無い野菜を、ありがたがって食べていました。
これは、これで、色々な発見もあり、今思えば、良い経験にもなったのですが、
我が家の、エンゲル係数が異常に跳ね上がった時期でもありました。

そんな時、ある友人の紹介で、貸し菜園の存在を知り、何でも、やりたがりの私は、
月5000円の宅配野菜を止め、1区画、年間3万円(少しお高めですが)の民間菜園
契約して、自分達での、野菜作りをスタートさせたのでした。

休みの日は、家族総出で、ちょっとしたピクニック気分で、お日様の光を浴びながら、
子供と一緒に汗をかきながら、土いじりを始めた頃に、偶々、近所の書店で、
「土を喰らう日々」というキャッチが目にはいり、購入したのが、この本との出合いでした。

 

初版は、昭和53年で、随分前に執筆されたものです。
サブタイトルに「わが精進十二ヶ月」とあり、
水上氏が、軽井沢の山荘で畑を耕し、そこで採れた旬の野菜、山菜を中心に、
幼少の頃に禅寺の修行で覚えた、精進料理を作り、日々感じた事柄とあわせて
文章に書き記されたものです。

構成は、シンプルに以下の通り、

一月の章
二月の章
三月の章
四月の章
五月の章
六月の章
七月の章
八月の章
九月の章
十月の章
十一月の章
十二月の章
おわりに

で結ばれており、季節毎の食材やそれにまつわるエピソード等がつづられています。

「おわりに」の章で、水上氏が、
「やはり、芋も大根も、菜っ葉もみな生きもので、当人(?)たちが、それぞれの工夫で、
霜の多い年や、雨の多い年や、干天の年やを、必死に生きていることへの感動だった。
出来の悪い大根にも、それなりの理由がある。その理由に思いをかけることによって、
わたしたちの食生活にふかみが生じることを悟った。」と、執筆後の感想を述べていますが、
私も、畑を自分でやってみて、その事に、大変な共感を覚えました。

そして先日、この本を再度、読み返しましたが、随所に、以前読んだ時とは、
全く違った気づきや感動が持てた事に、あらためて驚かされました。

人は、その時代、時代で感じ方が、変るものなのでしょうか?

いつの時代も、名著とは、そんなモノなのかもしれませんね。


【 書 籍 名  】 土を喰らう日々
【 著   者  】 水上勉
【 出 版 社  】 文化出版局
【 値   段  】 1,365円
【 コメント書評 】 ☆☆☆☆

amazonで検索してみたら、新潮文庫から、別に文庫本が安く出ているようです。

読書の秋、

秋の夜長、畑好き、料理好き、文学好きの方には、お勧めの一冊かと!

 

コメント (8)
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