2013年3月 1日 (金)
岩国市 会 員 片山清勝
近所にある有形文化財の敷地の片隅に、赤い塗料の剥げた年代を感じる郵便ポストが立っている。
消えかけている白ベンキの説明で、1985年まで使用されたものと分かる。どんな故あって、こんな片隅にたどり着いたのだろ。
郵便ポストには思い出がある。高校の3年間、夏と冬の休みに郵便局でアルバイトをした。仕事の一つが1日2回、管轄のポストを回っての郵便物収集だった。
超大型のがま口様のかばんをハンドルにかけて回る。終わり近くになると重くて、ハンドルを取られそうになり苦労した。そんなアルバイト代は、校納金に充てて母を喜ばせた。
片隅に立たされている古ぼけたポスト、もしかしたら五十数年も前、バイトで収集に回った中の一つかもしれない。
そう思うと、剥げ落ちた塗料の跡にも、100年を超える堂々とした風格を感じる。
(2013.03.01 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載