はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

友人家族の幸せ祈る

2013-03-22 21:13:21 | 岩国エッセイサロンより
2013年3月21日 (木)

   岩国市  会 員  横山恵子

 広島に住む友人が昨年退職したと聞いたので、会ってねぎらいの気持ちを伝えた。
 友は36歳のとき、夫を不慮の事故で失い、娘と2人で生きてきた。まさに「母は強し」だが、悲しみを胸に秘めて、仕事と子育てを夢中でやってきたのだろう。
 友の娘は結婚して福島に住んでいたが、原発事故のため、生後間もない息子を連れて広島に帰って来た。昨年やっと夫も合流し、3人の生活をスタートさせた。
 突然、福島を離れざるを得なかった無念さは察するに余りある。同じ境遇の人たちが、日本中に多くおられると思うと心が痛む。
 友が孫の写真を見せてくれた。「私たちおばあちゃんになったんよね…」。同窓会以来、4年の空白を埋めるかのように話した。
 その言葉の端々に亡き夫への変わらぬ愛情を感じた。天国から「よく頑張ったね」という声が聞こえてきそうだ。
 これから彼女たちに、心穏やかな時間が流れますように。



   (2013.03.21 中国新聞「広場」掲載)  

「ふる里の味」

2013-03-22 21:12:10 | 岩国エッセイサロンより


岩国市  会 員   横山 恵子

 母の友人Oさんと話に花が咲く。田舎出身と聞き、番茶と手作りコンニャクを出した。「まあ、コンニャクおいしいー。お茶も懐かしいわ。実家に帰ったみたい」と喜ばれた。
 田舎に住むおばたちが毎年、お茶の葉とコンニャク芋をくれる。お茶は葉を摘み、蒸してもんで天日干しにするとほんの少しになる。コンニャク芋は収穫までに3年かかるとか。アクが強く、悪戦苦闘してやっとコンニャクの出来上がり。何事も経験しないと苦労は分からない。改めておばたちに感謝する。
 梅の花が舞っている。田舎にもやっと春が訪れたと感じる。

 (2013.03.21 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載