はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

終戦の村

2013-08-25 20:58:51 | はがき随筆
 終戦の日、村は静まり返った。空を見上げると、いつもの敵機の姿はなく、村人は道々でひそひそと立ち話をしていた。
 小学校は8月に空襲で全焼、2学期は校舎の焼跡のくぎ拾いから始まった。やがて引き揚げ者の子供たちも入学、仮設校舎もできて、授業が再開した。
 翌年、進駐軍の2人がジープ型の車で村役場にやってきた。私たちは車を取り囲み、機器に見入った。初めて見る米兵は赤ら顔の大男たちで、終始笑顔であった。終戦を機に全ての価値観が一変した。2年後の農地改革では農地の得失が生じ、小さな村は大きく揺れた。
  鹿児島市 田中健一郎 2013/8/25 毎日新聞鹿児島版掲載