はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

デビュー戦

2013-08-27 10:51:38 | はがき随筆
 ソフトテニスを初めて2カ月。小4の次男が7月下旬、東開コートで開催された小学生夏季ソフトテニス大会に出場した。私もテニスシューズを購入し、試合前練習の球拾いに加わる。
 コーチの計らいで、予選試合にプレーできるよう薩摩川内市のチームメンバーでの参加となった。どの子も、サーブもままならないレベルながら、必死にボールを追う姿に、父母や祖父母の応援ボルテージもこの日の温度計同様、うなぎ登りに上がる上がる。
 初の一勝はならなかったが、夏の思い出の一㌻に深く刻まれたことは間違いない。
  垂水市 川畑千歳 2013/8/27 毎日新聞鹿児島版掲載

本はともだち

2013-08-27 10:30:06 | ペン&ぺん


 小中高校時代、8月後半になると、泣きべそをかいて宿題に向かった。分かっていながら、怠けていた。午前中は勉強をするふりをして机に向かっていたが、頭の中は午後からの遊びの算段でいっぱい。中高校では夏休みも柔道に燃えていた。暑さと練習でクタクタだった。アッという間に夏休みは終わった。
 元来勉強に関心のある子供ではなかったので、成績はさっぱり。夏休みに「不得意科目を克服」なんて無理で、自他共に認める劣等生だった。
 怒られるので話題転換。教科書や問題集より、私は本を開く時間が圧倒的に長かった。親に言われて読むのではなく、小さい頃から好きだった。父が読書家で生まれた時から本に囲まれて育ったためかもしれない。タイトルに惹かれて手に取るが、当時の私が理解できたとは思えない。
 県学校図書館協議会(事務局=鹿児島市立西田小学校)の協力で、読書の楽しみを知ってもらおうと学校図書館司書、国語担当教諭の5人の先生に「本はともだち」(5回連載)を執筆してもらった。「行ったことのない場所や行けるはずのない時代を自由な行き来できる」「自分と向き合い、相手を理解することの意味を考えさせてくれる」などと本の魅力を紹介してくれた。私の空想癖は、本のせいに違いない。それに私がこの道を選んだのは読書の影響が大きいのかもしれない。
 私の娘たちには野口英世や伊能忠敬ら偉人と呼ばれる人たちの伝記を読むよう薦めている。少年だった私はヘレンケラーの人生に「僕の悩みなんて、こんなにちっぽけだったの」反省したのを今も覚えている。
 更に大手予備校講師で、今話題の林修さんはテレビ番組で「考える力は本で鍛える」と話していた。なるほどだと思う。私も少年時代に戻り、じっくり本を読みたい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2013/8/26 毎日新聞鹿児島版掲載

ツマベニチョウ

2013-08-27 10:16:35 | はがき随筆





 ツマベニチョウ(褄紅蝶)が今、西之表のT病院の中庭で乱舞している。4階建の病棟に囲まれた、それほど広くない空間の上部に網を張り、好物の魚木を植えて、人工飼育されているので、羽化した姿を間近に見ることができる。
 ガラス戸越しにカメラを向けていたら「何というチョウですか?」と聞かれた。転勤されてきた学校の校長先生の奥さんのようだ。「ツマベニチョウと言います」「きれいなチョウですね、南国のチョウですか?」「そうです。北限は宮崎です」。移住して17年目。地元の人のような顔をして知ったかぶりをした。
  西之表市 武田静瞭 2013/8/26 毎日新聞鹿児島版掲載

「暑い日」

2013-08-27 10:11:34 | 岩国エッセイサロンより
2013年8月26日 (月)

   岩国市  会 員   片山 清勝

暑き日が来ると思い出す。世界で初めて原爆が投下された日、父は命ぜられて、岩国から広島へ自転車で向かった。
 核兵器とは知らぬまま、直後の惨状を目にしただろう。その様子を聞こうとすると顔をしかめる。話すことがつらい、その表情から読み取れた。ただ、一つ残してくれた話。「人も犬も馬も、頭から防火用水槽につかっていた」。被爆された人は、水を求めながら亡くなったと聞く。残してくれた話はその一コマだろう。
 父は50代半ばで急逝した。葬儀の日、とても暑い日だったのは偶然だろうか。
  (2013.08.26 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載