はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ジェジェ!

2013-10-05 19:11:27 | はがき随筆
 夫婦で始めたグラウンドゴルフだが、10年にもなった。が、好調な妻に反して私は上達はおろか年を経るにつれ、スコアは悪くなるばかり。そんな矢先、ちょっとした大会でパートながら、な、何と準優勝! メンバーもびっくり。と同時に喜んでくれた。妻に電話すると「ジェジエ! うそ!」とすっとんきょうな声で何度も確かめる。
 妻は「二度とないことだから」。愛情いっぱいの言葉で、盛大な宴会となった。妻も上機嫌でグラスが空になるのが早かった。人様の祝い酒も悪くないが、初の主人公としての祝いの酒の味はまた格別だった。
  肝付町 吉井三男 2013/10/5 毎日新聞鹿児島版掲載

夢のまた夢

2013-10-05 19:00:48 | はがき随筆


 ここには笛や太鼓の応援はない。投球と同時に息をのむ。その静寂の中で打球音だけが響く。夜空に舞い上がった白球は総立ちの観衆を確かめるように弧を描いて右中間のスタンドに消えた。同点で迎えた九回2死からイチローが放ったサヨナラホームランである。
 ヤンキースタジアムで大リーグ観戦が夢だった僕達にイチローからのプレゼントだと思う。
 さらに周囲の観衆がハイタッチを求めてやって来る。グラウンドではイチローがもみくちゃになっていた。時計は0時を指そうとしていて、夢のヤンキースタジアムで夢を見ていた。
  志布志市 若宮庸成 2013/10/4 毎日新聞鹿児島版掲載 
写真は若宮さん提供のヤンキースタジアム

植物の恩返し

2013-10-05 18:48:08 | はがき随筆
 Yさんは2年前、突然脳梗塞で倒れた。彼はどれほど衝撃を受け、無念だったことだろう。
 それでも、友人のYさんは毎日リハビリに励み、今年は右手だけで鉢にナスやキュウリを植えられるようになった。
 キュウリは、彼の不自由ながらも、水やりや肥料の懸命な世話への、感謝をするかのように珍しい実をつけた。なんと、約25㌢の実の先端近くに葉をつけている。評判になった。
 彼はよほどうれしかったのか、遠方の家族へ送る、キュウリを手にした写真を私に依頼した。私は、キュウリがYさんの世話に恩返しをしたと思った。
 出水市 小村忍 2013/10/3 毎日新聞鹿児島版掲載