はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「左手のありがたさ」

2013-10-22 11:00:06 | 岩国エッセイサロンより
2013年10月22日 (火)

   岩国市  会 員   林 治子

 力夕力夕とにぎやかな食器の音。「どうしたん」と犬小屋へ。食事の真っ最中。うまく舌を使うね、と見とれていた。ふと2年前に左手首が折れた時のことを思い出した。手術はしないで済んだものの、ギプスで固定してもらった途端、異変に気が付いた。元気のはずの右手まで動きが鈍い。きっと頭の中で、手に行く指令が混線してしまったのだろう。自分の手であって人の手のよう。食べるということがこんなに大変なことだと思い知らされた。
 「それにしてもお前はうまく食べるな~」と頭をなでると、追加をしっかり催促された。

 (2013.10.22 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載