はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

目をそらさずに

2015-03-14 22:27:06 | ペン&ぺん


 川崎市の多摩川河川敷で中学1年、上村遼太さん(13)の刺殺体が見つかった事件。顔見知りの少年らが逮捕され、全容解明に向け動きだした。上村さんは年上がいるグループに入ったものの、友人に「抜けたい」と漏らしていたという。テレビで流れた目の周りの青あざ、それと屈託のない笑顔のギャップに、誰もが「この少年にいったい何があったのか」と思っただろう。私は柔道の選手だったので、相手の肘などが顔面に当たり、あざができたのを覚えている。私の経験からテレビで見たあざは、相当強く殴られているようだ。
 多くの人が「10代の若者は、友人や年上の者に生活態度や学習、物の考え方が大きく左右される」と思っているはずだ。少年時代の私の友だちにもいた。まだ自分自身の物事に対する考えや善悪の判断、人生の目標が定まっていないかもしれない。社会への反発、欲求不満があるのも分かる。
 「ガラスの○○」などとガラスのようにもろく、壊れやすい10代の若者の気持ち、葛藤をテーマにしたヒット曲も多い。一方、親や周囲も彼らに気を使い、なるべく波風立てず、10代を過ぎてほしいと願う。できれば運動や文化系の部活に専念して。明るくたくましく成長してほしい。これって、私だけの考えか。
 テレビや新聞各紙にるよと、上村さんから苦悩や危機のシグナルは出ていたようだ。暴力を振るわれていた13歳を救えなかったのが悔やまれる。いじめも暴力も殺人も、許されるわけがない。
 本紙社説「遼太さんの死 大人たちが問われる」(1日付)を読まれましたか。私も暴力やいじめは学校や家庭、行政が総がかりで対応しなければ解決できないと思う。今回の事件を教訓に、私を含め親も人ごととせずに鹿児島全体で地域の目としてあらゆる知恵を出し、近所の子供たちを守っていきたい。
  鹿児島市局長 三嶋祐一郎 2015/3/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ロケット見学

2015-03-14 22:12:39 | はがき随筆


 最近、ロケットの打ち上げが頻繁だ。我が家も2月1日、種子島にロケット見学に行った。
 打ち上げが見える高台の公園には見物人が集まり、出店も出て、お祭りのようだった。打ち上がると歓声が上がった。「お腹が痛い」と横になっていた長男(5)も急に元気になった。
 実は鹿児島市内の自宅からも打ち上げの瞬間を見たことがある。深夜2時ごろ、南側の窓から遠くに炎の柱が上がり、ゆっくり上がっていくのが見えた。夜だと、ここからでも見えるのだなあと感心した。今回は子供たちにとって初めての経験となり、いい思い出になった。
  鹿児島市 津島友子 2015/3/3 毎日新聞鹿児島版掲載

狩猟民族

2015-03-14 22:06:03 | はがき随筆
 春一番の頃、石狩の海でギンナン草やワカメを採り、夏から秋にニセコで山ブドウやキノコを採り、オホーツク海ではサケを釣り、一年中楽しい時間を過ごしています。
 札幌に嫁いでから43年ぶりに、古里である出水の温かい冬を満喫さてせいただいています。出水でも野山を駆け巡り、川や海たちと遊んでいます。奥山深く分け入っても、必ず元の場所に戻ることができる私を、同行される北海道の人も、出水の人も「狩猟民族」と呼びます。
 古里を歩き回り、懐かしい人たちと出会う時、狩猟民族の私でも、目頭が熱くなります。
  札幌市 古井みきえ 2015/3/2 毎日新聞鹿児島版掲載

春を待つ

2015-03-14 22:00:05 | はがき随筆
 冬の寒さを引きずりながら立春を迎えた。春の感触は、あまりない。それでも白梅、紅梅が咲いて花は春を迎えたようだ。
 やがて梅は散り、これから桜の季節を迎える。戻り寒に耐えて、春を待ちたい。趣味の文芸もいろいろ勉強し、残り少ない人生ではあるが、退屈しないよう充実させたい。また、「お茶の時間よ」と言える夫が元気でいることは、ありがたいことなのだと毎日感謝している。
 長生きしてみて人生の基は、やはり優しさだと思う。しみじみそう信じている。寒さに負けず、これからも自然や人に対して、優しく生きていきたい。
  出水市 橋口礼子 2015/3/1 毎日新聞鹿児島版掲載