ツルを見れば、10年前に逝った同僚の君を思い出す。「ツルは私の家からよく見える」と毎年、誘ってくれた。久しぶりに君に会いたくて、紅梅と水仙を一輪ずつ持参し墓参り。
小高い丘の一角の墓石は整備され、納骨堂と化していた。鶴観察センター、休遊地、鶴群が一望できる。鶴の夫婦仲、家族愛、団結力に、人を重ね合わせた鶴談義に生前がしのばれる。 合掌し、鳥インフルの顛末を語るが、無言の君は、僕の心から北帰行する。あたかも、休遊地辺りから、早春の穏やかな大空高く、鶴の一団が鳴きながら旋回し、上昇気流に乗る。
出水市 宮路量温 2015/3/19 毎日新聞鹿児島版掲載