病床の夫への後悔の念にかられる。こんなときはこのようにと足指の爪を切ってやれなかった。爪が妙に曲がり黒ずみ伸びた。何だか切るのが難しい。医師が処置した。感慨無量。夫は明朗な気分に浸った。爪は大切な身体の一部だが、つい見逃してしまう。10年余り病魔に襲われ壮絶なガンとの戦いに暮れた。
ただ、傍らにいるだけが孝行者と認めて、微少な力が注がれた。昼下がり、のどが乾いたと、綿花に水を含ませて口元に誘うと、ごくごくとのどは響いた。のどはやさしく潤う。夫は永遠に幸せの美しい家族愛に包まれた。
姶良市加治木町 堀美代子 2015/11/16 毎日新聞鹿児島版掲載
ただ、傍らにいるだけが孝行者と認めて、微少な力が注がれた。昼下がり、のどが乾いたと、綿花に水を含ませて口元に誘うと、ごくごくとのどは響いた。のどはやさしく潤う。夫は永遠に幸せの美しい家族愛に包まれた。
姶良市加治木町 堀美代子 2015/11/16 毎日新聞鹿児島版掲載