第17回毎日はがき随筆大賞に山口県岩国市、山下治子さん(70)の「老いて『ごっこ』」(昨年8月20日掲載)が選ばれ2日、福岡市中央区のアークホテルロイヤル福岡天神で表彰式が開かれた。
はがき随筆は九州・山口の毎日新聞地域面に掲載しており毎年、各地の年間賞13作品から大賞などを選んでいる。
表彰式には約130人が参加。選者を務めた芥川賞作家、高樹のぶ子さんが山下さんの作品について「夫婦の会話が生き生きしている。小説を読むような感じがした」と好評した。山下さんは「思いがけない受賞で『まさか』と思いました」と喜びをかみしめた。
また「働く」をテーマに募集した「文学賞」には167点の応募があり⑤作品が選ばれた。
【石井尚】
大賞受賞作品
老いて「ごっこ」 山口県岩国市・山下治子
大きな水筒に冷茶を入れる夫に「暑いから今日はやめたら」と言うと「悪魔よ、ささやくな。野菜という子供たちが待っている」と畑へ向かう。昼近くに「こんちわぁ、奥さん」と裏口から声がかかる。「採れたて野菜はいかがスか」「あら八百哲さん、今日もすごい収穫ね」とバカな八百屋ごっこが始まる。
定年してはや5年。ちびけた不細工な野菜ばかりだったのに、このごろは品数も増え豊作だ。ご近所にお分けする。「八百哲さん、お代は冷たいソーメンでいかが。スイカもつけるわ」
あれほど肉食系だった夫は今、青虫のごとく菜食で元気だ。
はがき随筆は九州・山口の毎日新聞地域面に掲載しており毎年、各地の年間賞13作品から大賞などを選んでいる。
表彰式には約130人が参加。選者を務めた芥川賞作家、高樹のぶ子さんが山下さんの作品について「夫婦の会話が生き生きしている。小説を読むような感じがした」と好評した。山下さんは「思いがけない受賞で『まさか』と思いました」と喜びをかみしめた。
また「働く」をテーマに募集した「文学賞」には167点の応募があり⑤作品が選ばれた。
【石井尚】
大賞受賞作品
老いて「ごっこ」 山口県岩国市・山下治子
大きな水筒に冷茶を入れる夫に「暑いから今日はやめたら」と言うと「悪魔よ、ささやくな。野菜という子供たちが待っている」と畑へ向かう。昼近くに「こんちわぁ、奥さん」と裏口から声がかかる。「採れたて野菜はいかがスか」「あら八百哲さん、今日もすごい収穫ね」とバカな八百屋ごっこが始まる。
定年してはや5年。ちびけた不細工な野菜ばかりだったのに、このごろは品数も増え豊作だ。ご近所にお分けする。「八百哲さん、お代は冷たいソーメンでいかが。スイカもつけるわ」
あれほど肉食系だった夫は今、青虫のごとく菜食で元気だ。