はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

移動映画が来た

2021-02-01 21:29:17 | はがき随筆
やいば
映画「鬼滅の刃」が久々の反響である。映画といえば子どもの頃、映画を見る機会の少ない山里に移動映画がやってきた。会場の小学校講堂は村人であふれていた。 僕は中村錦之助のチャンバラが好きだった。懐かしく心に残っているのは「宮本武蔵」である。武蔵が一人で次々に敵を斬る場面にはハラハラドキドキさせられた。ところが一番いいところで突然フィルが ムが切れた。すると、何も写らないスクリーンに向かって「どげんした(どおした)!」と数人が叫ぶ。映写技師が慌ててい たのを今でも覚えているが、 映画は娯楽の花形だった。
鹿児島県さつま町 小向井一成(72)  2021/1/30 毎日新聞鹿児島版掲載


さぁ歩こう

2021-02-01 21:12:23 | はがき随筆
 寒くなりコタツの番が多くなった。運動不足解消にと、一日3000歩を歩く目標を携帯に設定した。 脚が悪いので、無理のない範囲で歩く。 1000歩を超えると「がんばっちょる」、3000歩以上で「こんちょうしじゃが」とメールが届き、歩こうとやる気が出てくる。
 畑の周辺を歩いていると、トラクターが次の植え付け準備をしている。土色一面の風景の中、 1カ所だけピンク色の畑が目に 留まった。高齢者の方が育てた  コスモスだった。
 冬になっても鮮やかに咲いている。コスモス観賞をしながら目標達成にさぁ歩こう。
 宮崎県串間市 林和江(64)  2021/1/30 毎日新聞鹿児島版掲載

みいつけた

2021-02-01 21:03:06 | はがき随筆
 先の見えない不安な非常時の 中で明けた新年は、雪の舞う日 が続いた。
 お隣で生まれたさくら草が、 うちで一番に朝日が届く所にあ る大鉢で、みずみずしい若草色 の葉を思いっきり伸ばしてい る。「おはよう」の声かけをす る。あらっ、まあるい蕾が葉の間から外界を見上げている。 寒いのにー、と思わず叫んだ。
 ちょっとでも雪雲が流れると 太陽が一瞬のすばやさで顔を出 し冬の居間が温室のようにな る。寒気で小枝を震わせていた 柿の古木も威厳を取り戻した。 落ち葉をころがして吹き寄せる ざわめきも春の足音にも似て。
 熊本市東区 黒田あや子(88)  2021/1/30 毎日新聞鹿児島版掲載


動画

2021-02-01 20:56:51 | はがき随筆
 スマホを購入した。 ガラケー も、固定電話で十分だったので必要性がなく、友に説得されて 画 渋々購入した。人間はのろし、手旗、伝書バト、飛脚、回覧板、などで思いの丈を伝え、書く流 れから電話で話す文明の代物 へ。その文明の利器にあやかろ うとガラケーになじみ、いつでもどこでも話せる便利さを感じる時分に、巷ではガラケーが なくなりスマホの時代と聞く。 娘に確認したら「孫の動画が見れる」との一言に購入したが、 操作が込み入り難行苦行。妻が 根気強く教えた。後期高齢の私 には大変な労力だったが、今で は孫の動画に、余は大満足。
  鹿児島県出水市 宮路量温(74)  2021.1.30