はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ちょっといい話

2021-02-07 23:54:18 | はがき随筆
 仲間と五ケ瀬川の堤防で花を育てているが、たまにそこを歩く知らない人たちからありがとうの言葉や差し入れを頂くことがある。年末のある日、傘寿でボスと呼んでいる仲間に男性が声を掛け、しばらくして缶ビールを片手に戻ってきた。「どちらさま?」の問いにも答えず、 すぐにきびすを返したそうだ。 
 「こんなことをしてくれるのはおば様だけかと......。いい話ですね」「おじ様だっているん だよ。 見てる人はいるんだね...」と感慨深げなボス。 
 年が明け、その人に会うことができ、お礼が言えた。 
 彼は杖をついていた。
  宮崎県延岡市 露木恵美子(69)

柳名

2021-02-07 23:38:07 | はがき随筆
 「仲畑流万能川柳」に投稿を始めてから3年余になります。地元の新聞には、その2年前から投稿をしています。柳名は「愚凡法明」でありますが、この「愚と 凡」の名前の由来についてよく聞かれます。
  浄土真宗の開祖、親鸞聖人は自らを「愚禿親鸞」と名乗っておられます。この名にあやかっ て「愚」の字をもらいました。
 「凡」は凡人とか平凡とかありますが、実は仏教で言う「凡夫」の言葉から付けたもので、愚と同じようにへりくだっていま す。「柳名が謙虚でいいと褒められる」。これは先日万柳に投稿して掲載されたものです。
 鹿児島県志布志市 一木法明(85)  2021/2/6 毎日新聞鹿児島版掲載

隠れ蓑

2021-02-07 23:16:00 | はがき随筆
 私の中にもう一人の私がいます。厳しい、でも頼りになる私です。その私が耳元でささやきました。「今日のカレンダー見ましたか。一年の計は元旦にあり。一年の計はできましたか。やがてあなたの誕生日ですよ。94歳ですよ」「やっぱり年にはかなわないよ」「またそれを言う。毎年言ってるではありませ んか。 年を隠れ蓑にしてはだめです。正月の駅伝は大好きでしょう。一緒に心を走らせるのですよ。 ワクワクする空気をいた だくのです。丑年はコツコツ頑張ることです。 シャキットして笑顔で春咲く花を見つけなが 」「ハイ分かりました」
 熊本県八代市 相場和子(94) 2021/2/6 毎日新聞鹿児島版掲載 

修学旅行

2021-02-07 23:02:03 | はがき随筆
 小学生1泊2日、中学生3泊4日の修学旅行は今でも懐かしい残像としてある。
 しかしコロナ禍の中、加世田中学生は4月にある予定が、12月にわずか1泊2日の短期修学旅行とのこと。小生、山のガイ ドは屋久島を中心に10回以上しているが、市内観光ガイドは今回初めてであり、緊張したが9名の生徒を史跡巡りで満足させただろうか?  小生の熱い情熱の説明を感じてくれただろうか? 
 無事に事故なく担任に引き継ぎしたが、約2時間のガイドは走馬灯のように過ぎ去ってしまった。
   鹿児島市 下内幸一(71) 2021/2/6 毎日新聞鹿児島版掲載

ハトの目覚まし時計

2021-02-07 22:45:57 | はがき随筆
 寒い朝、もう少し寝ようと布 団を引き上げる。仕事をしているときは、どんなに寒くても朝早く起きて、朝食の準備をして、自分を含め3人分の弁当を作り慌ただしく出掛けていたが、今はそれもない。温かい布団でいつまでも寝ていられる至福のひと時だ。 
  ところがその幸せを奪われる。うとうと眠る私に、外からククー、ククーと耳障りな声。 隣家の屋根にいるハトだ。「早く起きろ、早く起きろ」と聞こえる。 ソーラーパネルの下に巣を作りヒナをかえしたらしい。 近ごろ、家の周りを飛ぶハトが増えたような気がする。 
   宮崎市 高木眞弓(66) 2021/2/6 毎日新聞鹿児島版掲載

妻のチャレンジ

2021-02-07 22:28:02 | はがき随筆
 昨年の2月に起こった妻の突然の事故から我が家の人生は一 変した。術後の妻の心境は不明であるが、彼女の生き方、チャレンジに感謝している。事故後、妻の生活は大きく変わり、自分のありのままを受け入れていることだ。事故後の介護生活から病院通い、更には水頭症の手術後、リハビリ生活が続いている。しかし、妻から一度も不平、不 満を聞いたことがない。その感情がなくなったのか、それとも  すべてを受け入れているのかわからないが、私は、彼女のその生き方に驚く。術後3カ月にな るが、次のステップのリハビリに期待したい。
 熊本県大津町 小堀徳廣(72) 2021/2/6 毎日新聞鹿児島版掲載

カラオケ

2021-02-07 22:12:52 | はがき随筆
「独りで家に籠もっていたら ボケるよ」と諭して、娘が介護 老人施設への入所手続きをして くれた。月金曜日の10時から14時半まで通所している。昼食後 のカラオケを趣味にしている20 人余りが歌を楽しんでいる。
 喉の筋トレを心がけている私 もその仲間である。毎回同じ曲を歌っている人もいるが、私は 曲を変えている。
 歌う曲目はNHKラジオの深 夜放送で毎晩3時から始まるに『 っぽんの歌こころの歌という番組を聴いて選んでいるが、ラジ,オのスイッチは付けたままで熟 睡していることが多い。0時ごろの放送なら助かるがなあ。
  熊本市東区  竹本伸二(92) 2021.2.

英語を楽しむ

2021-02-07 21:55:34 | はがき随筆
 再任用で高学年の担任をして いる。今年度から外国語が教科 となった。せっかくの機会だ。英 語をやり直そうと思い、職場の 行き帰りにCDを聞き始めた。 携帯ラジオでラジオ英語講座をき 聞くことも楽しみになった。
 学生時代、カナダからの留学 生と友達になった。一緒に汽車で長崎、熊本を旅行したことが 今でも思い出だ。40代初め、2 年ほどラジオ講座を聞いた。
 そして今回。覚えた (思い出 した)ことは即、忘却のかなた に消えるのが寂しい。 いつまで 続くか分からないが、英語を楽 しもうと思う。
 初御空一生三度の英会話
 鹿児島県霧島市 秋野三歩(64) 2021/2/2 毎日新聞鹿児島版掲載

朝の祈り

2021-02-07 21:37:14 | はがき随筆
 子どもを学校へ送り出し、仕 事場へ向かう。駐車場に車をと めると、登校中の子どもたちの 動きが慌ただしく見える。
 フロントガラス越し、毎朝、 白い息を吐きながらさっそうと 登校する中学生の姿がある。必 ず同じ場所で立ち止まり、マン ションの上の階へ向かって大きく手を振る。相手は母親だろう か。一瞬口元を緩めると、手袋 を着けた両手に息を吹きかけ、 またすぐに歩き出す。毎朝の儀 式は子どもの祈りか。それとも 親の祈りか。
 明日も「頑張ってこいよ」と 何気ない朝の一言に尊い祈りを 込めて学校へ送り出そう。
 宮崎県都城市 平田智希(44) 2021.2.4 毎日新聞鹿児島版掲載