はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

大人のマナー

2008-05-01 23:16:09 | かごんま便り
 先日、福岡出張で新幹線を利用した。走り出して間もなく、後方で大声がする。振り返ると中年の男性が携帯電話で話していた。「携帯電話は電源を切るかマナーモードにしてください。使用はデッキでお願いします」との車内アナウンスの直後にもかかわらず、だ。
 身なりはきちんとしており、見た目は私より年配。年下にずばり指摘されるのは体裁が悪かろうと、それとなく視線を送るが、鈍感なのか横柄なのか一向に気にする様子はなかった。
 2カ月ほど前、所用で奄美に赴いた折にも、同じような光景に出くわした。空港から市内へ向かうバスの中。通路をはさんですぐ横で、初老の紳士?が携帯電話を取り出し大声で話し始めた。せき払いをしてみたがまったくお構いなしだった。
 他県での話だが数年前にこんなことがあった。PTA関係者が集うシンポジウム。基調講演が佳境に入ったころ、突然コミカルな音楽が鳴り響いた。携帯電話の着信音である。場違いなメロディーはなかなか鳴りやまない。ちなみにシンポジウムのテーマは「心の教育」だったと記憶する。
 若者の行儀の悪さ、公徳心の欠如がしばしば話題になる。「テレビゲーム世代は他人とかかわることが苦手なため、周囲への気配りに欠ける」との分析を耳にしたことがあるが、それなりに説得力のある話ではある。
 ただ最近、個人的に目につくのは若者よりむしろ大人のだらしなさで、こちらがより深刻だ。そもそも模範となるべき大人がなっていないから、自然と若い世代に波及するのではとさえ思ってしまう。
 国の消費動向調査によると、携帯電話の世帯普及率は90.5%(3月末現在)。老いも若きも片手にケータイの時代であるからこそ、マナーには気をつけたい。優等生ぶって言うのではない。無作法は「みっともない」ではないか。
鹿児島支局長 平山千里 2008/4/28 毎日新聞掲載

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