はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

うちわ

2013-08-21 16:29:10 | はがき随筆

 柔らかい優しい風が顔面から足元へと流れていく。この快い風に、川の字に寝ている幼い姉妹は眠りに就いた。
 この優しい風にふと気付いてうっすら目を開けると、浴衣姿の母がうちわ片手に座っていた。その風は今も脳裏に残っている。当時は扇風機も冷房も普及しておらず、うちわや扇子で涼をとっていた。母親たちは実に細やかで子思いだ。
 今、冷房などで瞬時に暑さがしのげる。私は南北に開け放した座敷で、うちわであおいでみた。優しいゆったりした涼風が頬をなで、気持ちまで和ませる。母にあおいでやりたかった。
  出水市 年神貞子 2013/8/21 毎日新聞鹿児島版掲載

「宝 物」

2013-08-20 21:33:35 | 岩国エッセイサロンより
2013年8月19日 (月)

   岩国市  会 員   樽本 久美

今月の川柳の課題が「宝」。なかなかいい句ができない。主人に「我が家の宝物は何?」と聞いてみたら「おまえ」と。「そんなばかな?」と言いながらも、 少しうれしい私。「そうだ」。一句浮かんだ。
 住む家があり、今のところ健康で好きな仕事をして、趣味もたくさんある。「ありがたや、ありがたや」。この幸せを忘れないように毎日を暮らしていかなくては、ばちがあたるな。よく見ると、私の周りにはたくさんの宝物を持っている人がいる。ハーモニカ、フルートやアコディオンが弾ける人。笑顔のすてきな人。みんな私の宝物。

  (2013.08.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載



鹿屋夏祭り

2013-08-19 18:24:50 | アカショウビンのつぶやき

どこも今の時期、お祭りで賑やかでしょうね。
鹿屋夏祭りも先週末にありました。
踊り連の出発が鹿屋市役所前なので、
役所裏の駐車場は、待機組の山車がずらーっと並びました。
暑い中、威勢の良い太鼓の音が響きます。

市役所がお隣…と言う位置にある我が家は、
次々にやってくる山車を自宅の窓から眺めてお祭り気分です。

夜更けまで、賑やかな踊り連のお囃子や歌声が聞こえていました。

これが平和なんですね。

夏に考えること

2013-08-19 17:03:23 | ペン&ぺん

 この夏をどのように過ごされていますか。多くの犠牲者を出し、甚大な被害に見舞われた1993年の8・6水害から20年。県などの行政や報道機関は改めて8・6水害を検証、「教訓を生かせ」と呼びかけた。7月の山口・島根豪雨災害が記憶に新しい。これからは台風も襲来する。備えを怠らぬよう注意したい。
 68回目の終戦記念日を迎えた。鹿児島からも多くの若者らが特攻出撃。今年も隊員の遺書や遺品などが展示されている南九州市の知覧特攻平和会館、鹿屋市の海上自衛隊鹿屋航空基地資料館がテレビなどで紹介された。特攻を多くの人たちに知ってもらうよい機会で、視聴者は改めて平和や歴史を見つめ直しただろう。夏休み中、ぜひ子供たちは訪ねてほしい。
 8月は盆と終戦記念日もあって、亡くなった人たちを思い出す。先日、父の十三回忌で熊本に帰省。叔父、叔母らに会ったが多くが80代。「親戚がこうして集まるのもこれが最後かな」と思った。子供だった私に水泳や餅つきを教えてくれた叔父は車椅子に乗り、会話は介護や死後の財産分けなどに終始した。いとこたちも多くが県外で働き、母(84)や高齢の親戚らが互いに老老介護をしている現実があるのに、私はどうすることもできない。この仕事を選んだ時点で分かっていた。今、何をすべきか考えると眠れなくなる。
 叔父らから「定年はいつ?」と尋ねられてもまだ間がある。仮に60歳で退職し古里に戻っても職は、ない。実家で1人暮らしをする母もいつまで元気でいてくれるか。こんな悩みを抱えている方は大勢おられるだろう。
 さて話は変わって、楠南は夏の甲子園で最後まで諦めないプレーを見せてくれた。次は秋の九州大会だ。その先に「センバツ」がある。新たな目標に向かって、また頑張ろう。
鹿児島支局長 三嶋祐一郎

2013/8/19 毎日新聞鹿児島版掲載

サプライズ

2013-08-19 16:56:52 | はがき随筆
 夏休み前に湯布院の保養所に旅しようと、東京の次男からの誘い。家族を置いて? まーいいかと福岡空港で合流。息子は親のわがままを聞き入れ、緑豊かな湯布院を案内してくれた。
 保養所は高台にあり、由布岳を望む露天風呂に身も心も癒され、いよいよ夕食。姿勢を正して「父さん喜寿おめでとう。おれが一番金使ったね。感謝しているよ。今夜はゆっくりくつろいでね」と。夫は「ありがとう。思ってもいなかった」と息子のサプライズに照れながらも、うれしそうに乾杯した。
 粋な計らいをする息子の成長がまぶしく苦労も吹き飛んだ。
  薩摩川内市 田中由利子 2013/8/19 毎日新聞鹿児島版掲載

ヨーコトースト

2013-08-19 16:50:15 | はがき随筆
 たっぷりの牛乳に卵と蜂蜜を混ぜ、食パンを浸す。それをバターをひいたフライパンで焼く。栄養満点。甘くてトロリとのどをこす。夫が「ヨーコトースト」と名付け、よくリクエストした。最後になったあの日にも。
 午前2時、電話が鳴った。夫が大喀血したという。小5の娘を起こし、義理の母とタクシーで加治木の病院へ。容体は落ち着いていた。朝食はヨーコトースト。きれいに食べておいしかったと喜んだ。その3時間後、再び喀血、末らぬ人に。病と向き合った6年間だった。命日には私も好きなヨーコトーストを食べる。笑顔の夫がそばにいる。
  鹿児島市 内山陽子 2013/8/18 毎日新聞鹿児島版掲載

第九の練習が続きます

2013-08-17 19:52:34 | アカショウビンのつぶやき

12月1日の、「かのや第九演奏会」に向けて、練習が続いています。
練習日が殆ど日曜になるため、
教会の行事と重なりなかなか練習に参加できません。
やっと3回です。
これで本番は歌えるんだろうか…さすがに焦りを感じますねぇ。




いつもソプラノは少ないのですが、応援の鹿屋女子高生ばっかり。
団員は7名しかいませんでした。
アルトは多いんですが。
少数精鋭!
なんてわけにいくのかなあ。
若い美しいソプラノの女子高生の声にうっとりしながら、
歌ってきました。

風習の大切さ

2013-08-17 19:28:15 | はがき随筆
 待ちに待った夏休み。孫達が千葉から我が家を訪れた。「おばあちゃ~ん」と孫がお土産を差し出したので、どれ「なんなんさあ(御仏壇に)供えてたもろ(食べる)かいね」と孫達を連れて仏壇の前に座った。すると、おばあちゃんの言っている意味がよく分からなかったのか、「おばあたゃん、日本語でしゃべってよ」と一言。これには2人で大笑いだった。
 私の集落では頂き物や通信簿などひとまず「ご先祖様」に供える風習がある。鹿児島育ちではないが、生活様式が変わった今だからこそ、大切な風習は伝え残していきたいと思う。
  さつま町 小向井一成 2013/8/17 毎日新聞鹿児島版掲載

コンビニカフェ

2013-08-16 20:45:21 | はがき随筆
 コーヒーに香りがふわ~っと漂う店内。これがうわさのコンビニカフェ。わっ!
飲みたいけれど、買い方が分からない。
 店員のマニュアル的トークに、ドリンクバーにサラダバー。ガソリンスタンドに、うどん屋さん。どうぞご自由に、とセルフのお店。ついていけない。
 キンキンに冷えたコーヒーとコンビニの店員。交互に何度もチラ見した。「コーヒーを1杯ください」。そう言えない自分を棚に上げ、「戸惑うお客に気付いてくれる、そんな優しいサービスないのかな」。そうつぶやきながら、コーヒーの香りだけいっぱい吸って店を出た。
  垂水市  宮下康 2013/8/16 毎日新聞鹿児島版掲載

庭の畑に茂る青ジソ

2013-08-16 20:31:16 | 岩国エッセイサロンより

2013年8月16日 (金)

    岩国市   会 員   山本 一

 庭の一角に約5坪の畑がある。その内の畳1枚ほどのスペースに、毎年青ジソが生い茂る。
 10年前に当地に越して来てすぐに青ジソの種をまいた。以来、毎年何もしなくても5月になると畑全体に芽が出てくる。
 ところが1度だけ、わずか3本しか芽が出なかった年があった。秋になって早々に全てを撤去し、他の野菜に場所を空けたことで、こぼれる実がなくて、翌年の発芽に備えることができなかったのだろう。
 その年はこの3本を大切に育て、実の自然落下を待った。おかげで翌年からは、再び畑一面に芽が出た。
 私は毎週釣りに行く。夕方には帰宅し、釣った魚で晩酌をするのが楽しみである。その時の手巻きずしに、このシソがなくてはならない。
 最近、母が亡くなり、また連日の猛暑もあり、釣りに行くのをちゅうちよしている。青ジソは、もつばら虫の餌となっている。

   (2013.08.16 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載







忘れられない日

2013-08-15 12:37:35 | はがき随筆
 熱い日、近くの丘でチャンバラごっこをしていて、ついサツマ芋畑に入ってしまった。その瞬間右足に激痛が走った。「くぎだ!」と叫び、人を止めた。
 当時、芋畑には泥棒よけに五寸くぎを打ち、逆立ててあったのだ。仲間が声を合わせて抜いてくれたのでうれしかった。
 痛いので四つんばいになって帰っていると、島原半島の先で「ピカーッ」と閃光が走り、もくもくと上がる雲がきのこ形になっていく。足の痛みも忘れて不思議な現象に見入っていた。それは長崎に残酷な原爆が落とされた時……。6歳で荒尾から見たピカドンは忘れられない。
  出水市 清田文雄 2013/8/15 毎日新聞鹿児島版掲載

蝉時雨

2013-08-15 12:31:53 | はがき随筆
 テレビ体操をし、「さう今日も」と5本指の靴下に力を込める。制服にアームカバー、深めの防止と紫外線対策はOK。在宅の介護に携わった約10年。
 いつも待っていてくださるご夫婦。ご主人は身なり整然と柔らかな物腰の紳士。睡眠中の奥様は「もう朝ですか」と笑顔。着替えを手伝うと「すみませんねえ、いつも」と陽気である。洗いものをしていると「私がやりますよ、ハハハ」と用意した食事を口にされる。遠目にご主人の視線が優しい。羨ましく切ない。
 外に出ると、全てかき消すような蝉時雨……。それぞれに限りある生命のドラマがある。
  出水市 伊尻清子 2013/8/14 毎日新聞鹿児島版掲載

トンボの姿が

2013-08-15 12:18:36 | はがき随筆


 あんなにいたシオカラトンボの姿を、最近はほとんど見かけなくなった。山地や湿地だけでなく、住宅地まであらゆる環境に適応してふつうに見られ、もっともなじみの深いシオカラトンボの姿がない。
 庭の一角に、二十数年も前に造ったメダカの池でよく見かけていたので、来たら止まりやすいように棒を立てて待つことにした。
 数日後、干し物をしていた妻が「来てるよ。止まってるよ!」と呼ぶ。しめた! 急いで写真に撮りブログに書いた。あんなにいたトンボだったのに写真を取る手に緊張を感じた。
  志布志市 一木法明 2013/8/13 毎日新聞鹿児島版掲載

「消せぬ記憶」

2013-08-15 12:05:31 | 岩国エッセイサロンより
2013年8月14日 (水)

岩国市  会 員   横山 恵子

恒例の錦帯橋花火大会。朝からすし等作り大忙し。昼ごろから妹夫婦たちが次々とやってきた。にぎやかな夕食後、歩いて花火見物に出かけた。近くの橋はもう人、人、人。夜空に七色の星、大輪の花が咲く。
 「ドドーン」という音は、例年にも増して胸に悲しく響いた。それは昨年、父亡き後の花火大会の日。「そういえば父さん、花火を見に行ったことなかったね」と言うと、母のいとこが「それはね、花火は手榴弾の音に似とるんと。それを聞くと思い出すから……」と。花火見物できる幸せは、戦争の犠牲の上にあることを忘れまじ。 

  (2013.08.14 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

残暑お見舞申し上げます

2013-08-10 17:34:51 | アカショウビンのつぶやき


立秋がすぎたとたんに、各所で酷暑…。
今日はあちこちで40度を超えてしまいましたが、
我が家にも40度近くまで上がる場所があるんです。

今年は夏になっても桜島の灰は大隅半島に降っています。
例年夏場は南東の風に乗って薩摩半島に向かうのですが、
今年は季節を問わず、大隅半島に灰を降らせます。

活発な火山活動を繰り返す桜島は、
観光資源としての価値は大ですが、
灰まみれの住民にとっては大変…。
一部屋だけは、終日クーラー
(電気量もウナギ登り…)、

窓を開けることもできず…
締めっ切りの二階など、
温度計を見ると39度を超えています。
「ヒャーこの暑さなんだー」
大急ぎで窓を全開、風を通してまた閉める。
こんな生活です。
涼しい図書館で過ごすという手もありますが、
もう外には出たくないよー。

ふうふう言ってる時に、
大好きな「はなオクラ」を頂きました。
優雅な姿を食べちゃうのは…
でも、しっかりいただきましたよ。
本当に久しぶりの花オクラでした。
ごちそうさま。