はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

お猿さんと猪君

2019-05-26 20:29:20 | はがき随筆

 店頭に並ぶ新タマネギ。スライスしたサラダは実においしい。主人の唯一の趣味、家庭菜園で育てたタマネギが今年は全滅。昨年は近隣の人の気配に敵も遠慮したのか、無事に口にできた。無残に茎をちぎって食べた跡があった。犯人はお猿さん。友人に嘆くと、以前、同様な被害にあい、食べごろの柿を猿軍団にしてやられた。枝からもぐ、落果した実を拾う係と役割分担し、全て食べられたそうだ。みごとな連係プレーにただただ感服。前年には猪君に里芋を持っていかれたばかり。空振り続き。その度に義父の「よろっで食べればよか」を思い出す。

 鹿児島県鹿屋市 中鶴裕子(69) 2019/5/17 毎日新聞鹿児島版掲載


乙女の頃

2019-05-26 20:21:32 | はがき随筆

 モノクロキャビネサイズの写真に、整理中の手が止まった。「ワァー懐かしい、あったなー、こんな事が」。昭和40年代前半、西鹿児島駅(現鹿児島中央駅)で、谷山出身の歌手西郷輝彦氏を真ん中に、総勢35人で撮ったもの。「君だけを」という大ヒット歌の映画化でロケのため来鹿。勤務先の会社のブラスバンド部が歓迎セレモニーを行った。「私たちも生輝彦に会いたい」と上司に懇願、許可が出た。目の前に大スターが! 部員外の私たちは端っこに静かに納まった。だが20代の胸は震えていた。あの頃のフレッシュな気分に戻れた一瞬であった。

 鹿児島県鹿屋市 日高美代子(72) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


当たった!

2019-05-26 20:14:37 | はがき随筆

 めげずに続けていると、幸運の女神はときとして微笑んでくれるものだ。日曜の毎日新聞に掲載されるクロスワードを解くようになって久しいが、ついに「おめでとうございます。抽選の結果貴方に……」ときた。

 始めた発端は随筆仲間の先輩が「脳トレで毎回トライしている」と知ったことにある。

 よし、ならば賞品のクイズ雑誌をゲットして、それをこの先輩にプレゼントしよう、と目標を決めた。とはいえ投函しても投函しても、強運も味方になる必要があった。運は使い果たした感があるが彼女のたまげた喜び方が痛快でならない。

 宮崎市 藤田悦子(71) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


おせっかい

2019-05-26 20:08:08 | はがき随筆

 市電で大学生グループと乗り合わせ。1人が財布を見ながら「1万円しかない」と首をかしげている。「立て替えておこうか」と仲間が言っているところに「両替できるよ」と声をかける。

 ほどなく水前寺公園に到着。「先ほどはありがとうございました」と頭を下げて下車した。どこから来たのか確認しなかったが、日ごろ通学などでICカードを使っているなら、国内の大抵のものは共通使用できると教える方が、より現実的でなかったろうか。おせっかいの割に肝心なところがあと一つ抜けていたなと反省しきり。

 熊本市東区 中村弘之(82) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


若い女優を応援

2019-05-25 22:43:23 | はがき随筆

 劇団民芸の新作「正造の石」を見てきた。足尾鉱毒事件の渦中にある村で育った、無筆の20代半ばの女性の物語。

 田中正造のつてで東京に出、女性活動家宅で女中として働くが、官憲に情報を流す役割を与えられる。石川啄木と出会ったり、活動機関紙に載った詩を読んでもらううちに読み書きをおぼえ、職業婦人を目指すように。演じているのは、鹿児島県出身の森田咲子嬢。市民劇場の例会でも、過去に奈良岡朋子、日色ともゑと共演し、成長著しい。今回も大看板の樫山文枝と互角に渡り合っていた。小さなブーケと応援メッセージを届けた。

 鹿児島市 本山るみ子(66) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


日記を続ける

2019-05-25 22:37:19 | はがき随筆

 私は、随分昔から日記を付けている。とは言っても、その日の天候と出来事くらいで、メモと言った方がいいかもしれない。

 昔読んだ作家の忘れられない言葉がある。

 「女性はおしゃべりが上手で何十分でも話をしている。それをそのまま文章にすれば良いのです」

 しかし、いざ文章にするとなるととても難しい。

 けれど、書くという作業は心身を使う事であり、良い認知予防になるのではないかと思い、今日も続けている。

 宮崎県延岡市 木戸浩子(78) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


境界の線

2019-05-25 22:30:02 | はがき随筆

 熊本地震の時、阿蘇山は無残に剥がれ血肉をさらす痛々しい姿を見たが、いま採石のために人力でそぐ山肌はそれよりひどい気がする。

 自然のサイクルはこれほどに山を痛めても再生してくれるのだろうか。人知では計り知れない力の均衡、それを犯していないか。あのときの地震も人の手で自然を操った結果が破壊力を増幅した部分はなかったか。人は道路や橋を造るために自然を随分破壊している。しかも調和など構わずに踏み越える。限界がどことも知れない境界を、知らぬ間に人間は越えていないのだろうか?

 熊本県阿蘇市 北窓和代(64) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


愛読書

2019-05-25 22:23:10 | はがき随筆

 その本に出会ったのは、20年くらい前、仕事で福岡と宮崎間を往復していた頃だった。待ち時間に売店で薦められ、分厚い本を買った。

 読み始めると、わかりやすく一晩で読み終えた。その後も何度も繰り返し読んだ。第2巻、第3巻と出版されて映画にもなった。あの有名な「ハリーポッター」だ。主人公は男の子で、あらゆる試練を乗り越え、立派な魔法使いになるという物語だ。

 全7巻を買いそろえ、映画も全部見に行った。何度でも読みたくなる心躍るその本は今でも大切にしている。

 宮崎市 藤田綾子(73) 2019/5/16 毎日新聞鹿児島版掲載


女性騎手

2019-05-25 22:14:33 | はがき随筆

 競馬場には一度も行ったことはないけど競馬は大好きです。番組は必ず見ます。

 新聞に「女性騎手、藤田菜七子騎手(21)」とあり、びっくりしました。どんな人だろうと興味津々でテレビを見ました。黄色にオレンジのシャツ。藤田さんの落ち着いた姿は際立っていました。馬が飛ぶように走り出します。騎手たちのムチが交差します。超カッコイイです。藤田さんムチが見えません。右の手は馬のたてがみを何度もなで下ろしているのです。馬がスピードを出し5位になりました。あの時藤田さんは馬とどんな会話をしたのでしょうか。

 熊本県八代市 相場和子(92) 2019/5/15 毎日新聞鹿児島版掲載


女性騎手

2019-05-25 22:14:33 | はがき随筆

 競馬場には一度も行ったことはないけど競馬は大好きです。番組は必ず見ます。

 新聞に「女性騎手、藤田菜七子騎手(21)」とあり、びっくりしました。どんな人だろうと興味津々でテレビを見ました。黄色にオレンジのシャツ。藤田さんの落ち着いた姿は際立っていました。馬が飛ぶように走り出します。騎手たちのムチが交差します。超カッコイイです。藤田さんムチが見えません。右の手は馬のたてがみを何度もなで下ろしているのです。馬がスピードを出し5位になりました。あの時藤田さんは馬とどんな会話をしたのでしょうか。

 熊本県八代市 相場和子(92) 2019/5/15 毎日新聞鹿児島版掲載


ペットの力

2019-05-25 22:07:49 | はがき随筆

 志布志のペット霊園から、毎年行われているペットの彼岸供養をたのまれ出かけて行った。驚くのは、いつ行っても参加者が多いことである。今回の参加者も約100人とか。四、五十人は座れる霊園のホールには入りきれず、外にはテントが張ってある。参加しているすべての人が、飼っていた犬や猫たちを亡くして悲しんでいるだけでなく、愛するペットが彼岸の世界に生れてほしいと願っている同心の集いである。参加者の中には、志布志市以外からの人も多いという。こんなにも人の心を動かすペットの見えないちからに感動させられる。

 鹿児島県志布志市 一木法明(83) 2019/5/14 毎日新聞鹿児島版掲載


さとうさんは何処

2019-05-25 21:59:40 | はがき随筆

 河津桜と菜の花が咲き誇っていた2月中旬の五ヶ瀬川の堤防。コノハナロードでの花物語の祭りを間近にして仲間数人と化粧直しと称した、結実した菜の花の枝切りや枯れた下葉のはぎ取り作業をしていた。多くの人が花見にきたが、その中の1人の若い女性が手伝いますと、2日間来た。祭りも終わり、その出来事も忘れかけた頃、市外のカメラマンから、仲間のところに写真が送られて来た。風の又三郎のようだった彼女のことを誰もさとうさんとしか知らないから、彼女がモデルの写真を渡すことができない。さとうさんは何処の状態が続いている。

 宮崎県延岡市 露木恵美子(68) 2019/5/13 毎日新聞鹿児島版掲載


孫のみやげ

2019-05-25 20:23:49 | はがき随筆

 孫娘の修学旅行は、京都、奈良であった。古の都は、中学生の目にどう映ったか聞いてみたいが「奈良公園の鹿がかわいかった」とか答えるのでなかろうか。

 私へのおみやげは線香だった。「せんこう?」と思ったが、そういえば私はたまに線香をたいている。事前に決めていたのだろうか。それとも清水寺の売店で「そうだ、じいちゃんには線香がいい」と思ったのだろうか。いずれにしても心に残るおみやげになった。

 今度実家に帰ったとき、両親の墓にあげようと思っている。

 熊本市北区 岡田政雄(71) 2019/5/12 毎日新聞鹿児島版掲載


クマ対策の輪広がれ

2019-05-25 20:22:35 | はがき随筆

2019年5月21日 (火)

    岩国市   会 員   吉岡賢一

 岩国市南部で最近、クマの目撃情報が相次いでいる。「クマの餌となる生ごみの扱いに注意し、朝晩の外出時は特別に警戒するように」と、各所の防災スピーカーから、ひっきりなしに警報が発せられている。
 近くには幼稚園や小、中学校も多数あり、児童生徒の通学も危険だ。学校側の安全指導はもちろん、通学路の見守り隊の協力強化や、送り迎えを保護者に呼び掛けるなどの緊急対策がとられている。それでも十分とは言い難い。
 そこで、地域の高齢者という人的資源に協力を仰ぎ、ラジオや笛など音を発する器具を持って、通学路の各所に立っていただく。そういう輪を広げたい。それだけでも当面の力になりそうである。私たちにできることをやりたいものだ。 
 
大切な子どもたちを育てるには、地域の協力なくしては考えられない。互いに確認したいものである。
    (2019.05.21 中国新聞「広場」掲載) 


同時に

2019-05-25 20:21:50 | 岩国エッセイサロンより

2019年5月14日 (火)

   岩国市  会 員   樽本 久美


 「令和」。なんといい響きであろうか。父が亡くなってから御朱印を始めたが、新しい年になったので、改めて、近くの神社に御朱印をいただきに参った。新年とはまた違った風を感じた。初めていく神社。こんな近くに、このような神社があったなんて。緑がたくさんで、空も青い。 
 「青い空今日も見上げて手を合わす」。私が昔作った川柳だ。川柳を始めて10年余り。なかなかいい旬はできないが、毎日少しずつ作ることが上遠のこつかと思い、老人ホームに入居している母と一緒に川柳を投稿している。2人同時に掲載されることが目標だ。
  (2019.05.14 毎日新聞「はがき随筆」掲載)