真実は藪の中 １４５号

親爺の遺伝子と、お袋の遺伝子が混じり、私の遺伝子がある。両親のレベルで見ると、私は２つの遺伝子の混合物である。両親の遺伝子はそれぞれ爺さん婆さんを受け継いでいるから、祖父母レベルの私の遺伝子は４個である。遺伝子は生化学の用語ならＤＮＡ(デオキシリボヌクレリックアシッド)で、仏教的には阿頼耶識である。

１０代前まで遡れば１０２４の遺伝子、２０代前は１０４万８５７６、３０代前は１０億程度、４０代前は１兆９９５億人分の遺伝子が私の遺伝子に集約されていることになる。３３世代で８５億となり、６７億の世界人口を超える。全人類は親戚なのである。科学的に祖先を訪ねると、アフリカの一人の女性(ミトコンドリア・イブ)に辿り着く。

「ブッシュ大統領はチンギス・ハンの遠縁。ものすごく遠いが一応血は繋がっている」というブログネタを信じたくなるのである。

モンゴル人横綱・朝青龍明徳は心の病気に掛かってしまった。個人の心の深層は他人にはうかがい知れない領域である。しかし想像して物語ることは可能で、許される。

アメリカ大統領はアメリカ合衆国憲法第2条第1節の規定により、４年に１度、国民の投票によって選出される。修正第22条の規定により３選は禁止されている。モンゴル人のブッシュ大統領はまもなく、職を辞する事になる。そして盟友の小泉純一郎は、源義経がチンギス・ハンであるならモンゴル人であるが、首相を辞して久しい。福岡まで出向き、総理大臣杯を自ら手渡し、年６場所制覇した横綱朝青龍に対して、「新記録！大記録！みごとだ！おめでとう！」と賛辞を送った。二人の同郷の有力な後ろ盾を失った、孤独な狩猟民族のモンゴル人は、悪事の数々の尻拭いを頼む友人がいない。万事窮した感が強い。

変人・小泉首相がファンであるエルヴィス・プレスリーの故郷まで大統領専用軍用機のエアフォースワンに同乗し案内したブッシュ大統領。エアフォースワンに外国の政府首脳を同乗させることは、安全保障上の問題から極めて稀な事である。大統領が心許したのか、政治家の打算からなのか、人畜無害な相手と軽く考えたか、ブッシュは藪であるから「真実は藪の中」である。

立ち直る方策が無いわけではない。今の自分で万事窮したら、変わればよい。変われば世間は認めてくれる。正眼寺の故梶浦逸外老師の「窮而変変而通　窮して変じ、変じて通じる」の言葉を実践すればよい。

日本に帰化して相撲協会に残るのもよし、モンゴルに帰り大統領になるのもよし、自分で決めればよいことである。この世の中、頼りに成るのは自分だけであり、他人は自分のことで精一杯である。しかし懸命に努力している人を世間は見捨てない。自然の世間は厳しさと優しさの２面性がある。「心技体」を充実させ、一時期大相撲の頂点の横綱を張った、親戚・朝青龍関、どう変じますか。彼の心の「真実は藪の中」である。